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マンホールの怪物  作者: 小石沢英一
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第五章 二十七 緊張

 午後三時三十分だった。

 

 ハンバーガーショップの前に流都は突っ立ていた。店内に入る客は少なかった。

 

 メールでりりかとやり取りはしていたが、会うのはあの事件以来一週間ぶりだ。

 

 待ち合わせの時刻に近づくにつれ、心臓がバクバクし、息も苦しくなった。

 

 流都はこんなに苦しいのなら帰ってしまおうと何度も考えた。

 

 駄目だ。

 

 息も出来ない。

 

 帰ろうと、流都は歩き出した。

 

「流都!」

 

 りりかだ。

 

 流都は一呼吸し、落ち着かせた。「遅いぞ。帰ろうとしたぜ」

 

「ゴメンね」

 

 と、りりかはペコリと頭を下げた、

 

「わかったよ……」

 

「話って?」

 

「えっ!」

 

 流都は単刀直入に言われたので、戸惑っていた。

 

「……」

 

 この静かな間が余計に空気を重くした。話すことは決めていた。いざ、目の前にりりかがいると、接着剤でも塗ったかのように口が開かない。

 

「あの……」

 

 流都はゆっくりと口を開いた。


「はい……」

 

 りりかは微笑んでいる。流都が言おうとしているある言葉を期待しているのだろう。


 流都は心臓がバクバクは頂点に達していた。

 

「……」

 

「大丈夫?」

 

 りりかは流都の顔色が悪くなったので、心配そうな表情に変わった。

 

 流都は大丈夫と、言えなかった。その代わりに「これ、もらって」と、言ってりりかに一枚の封筒を渡した。

 

「何これ?」

 

 りりかは首を傾げた。いきなり茶封筒に面食らった。

 

「一緒に。返事は後でいいよ」

 

 と、流都は緊張に堪えられなくて、逃げ出してしまった。

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