第五章 二十六 エマの想い
エマは手紙を二通書いた。一通は流都にだ。昨日の事件は流都が頑張ったから地球が救われたのだ。誰もが諦めかけていた。その勇気をもらったお礼にコンサートのチケットを二枚入れた。もう一通はエマの将来のことだ。アイドルを続けるにしてもモヤモヤしたものがあった。それをすっきりさせるために修太への想いを書いた。
コンサートも近いので、練習も大変だった。
今日は早く終わった。と、時刻は午後九時を過ぎていた。
エマは修太の手紙をポストに投函しようとしたが、止めた。
直接、渡したい衝動にかられた。
足が修太の自宅に向かっていた。運が良ければ会って直接手紙を渡せるかもしれない。少し期待してである。と、する反面、最後に会ったのは後ろ姿だった。それも女子と一緒のところだ。一度は諦めたが、流都の諦めない行動が心変わりさせたのだ。何もせずに諦め切れない。どうせなら想いを伝えて、振られた方がすっきりするはずだ。アイドル生命を賭けてである。
住宅街。夜更けに歩いている人もいない。修太がいればすぐにわかるだろう。
次の角を曲がれば、修太の家だ。
エマはドキドキしていた。運命を左右するからだ。
角を曲がると、人影があった。
修太だ。丁度、門を通っている。
声をかければ振り向いてもらえる距離だ。
しかし、エマは立ち止まってしまった。修太の背後に女の子がいたのだ。
「紗良、どうした?」
修太は玄関のドアを開けて、振り返って言った。
「何か、見られているような……気のせいね」
紗良は言って、修太の後を追うように、玄関のドアにに入って行った。
エマは紗良に見つからないように身を屈めた。見つからなかったはずだ。
修太に声をかける事はおろか、手紙まで出す勇気を削がれた。
修太が名字ではなく、名前で呼んでいるので、仲が良いと推測した。それもこんな時間に自宅に入るなんて、エマの入る余地はないと思えた。




