第五章 二十五 一件落着
留樹緒は登校する際にマンホールをチラッと見た。昨日、ここから怪物が飛び出した事など夢のようだ。痕跡すら残っていない。
校門の前は登校する生徒で賑わっている。
留樹緒は怪物を倒せて良かった思っている。誰かに言いたいが、信じるてもらえるだろうか。
「よお!」
と、人太だ。
「よお!」
留樹緒も返した。人太は元に戻った。
「しばらくの記憶がないんだけど、知っている?」
人太は不安な顔で言った。数日の記憶がないので当たり前である。
「別人だったよ」
「そうなのか」
「無表情だし、すぐ怒るし……」
「覚えてないよ」
「大変だったよ」
「それなら、ゴメン……」
「良かった」
「俺は良くないぞ!」
「そう言う意味じゃなくて、元の人太に戻ってだよ」
「ちょっと……」
留樹緒は話に夢中で佐村先生がいることに気がつかなかった。
授業前なのに教室の前の廊下にいるのだろうか。
「いいかな……」
佐村先生は小声で弱々しかった。
「何でしょう?」
留樹緒は佐村先生に怒られる事でもしたかと脳裏をめぐらせた。思い当たる事はない。
「あの……カエルだけど……昨日、教室を見たらなくて……」
「カエルのことか。それならいいです」
「でも、昨日はあんなに……」
「あっ、気が変わって家に持って行ったので、大丈夫です」
「そう、それならいいけど……」
佐村先生は笑顔に戻った。
これで一件落着した。あとは人太にここ数日のことを詳しく説明すれば終わりだ。
留樹緒は人太が元に戻ったので、これで終わりだと思った。




