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マンホールの怪物  作者: 小石沢英一
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第五章 十 偶然の出会い

 輝は何の成果もないまま退散していた。当初、映像が駄目なら、文書で何とかしようとしたが、手が火傷のように赤く腫れ上がり、それどころではない。いや、怪奇現象に恐れたのだ。

 

 情けない。

 

 数日が経過し、手は元通りだが、憂鬱さだけが残った。

 

 行く当てがあるわけではない。家に閉じこもってもしかたないので、ブラついていた。

 

 いつの間にか電車に乗車していた。

 

 輝は座席から立つ事が出来なかった。電車の心地よい揺れで眠気のせいだ。

 

 ある駅で一人の女性が乗って来た。

 

 ちょうど輝の前の吊革に掴まった。

 

 サングラスをかけ、黒い帽子をかぶり、白い長袖シャツにジーンズを穿いていた。

 

 サングラスで目元は隠しているが、端整な顔だ。


見覚えがある。

 

 知り合いか?

 

 話した事もない人だ。

 

 たぶん、ティーンフュチャーの目時エマだ。

 

 記憶にある人物はそれしか浮かばない。

 

 輝は急に身体中にエネルギーが注入されたようだ。あれほど立つのさえ億劫だったのに、今はこれはチャンスと思い始めていた。

 

 いつでも立てる状態だった。エマの後を追う準備は出来ていた。

 

 輝はエマに気がつかれないように顔は見ないように座っていた。

 

 その時が来た。


 エマは電車が止まるまで動かず、ドアが開いた瞬間にホームへと降りた。素早い行動だ。

 

 輝もホームに降りた。

 

 エマは乗り換えをした。自宅に戻るのだろうか。ストーカー対策のためにわざと乗り換えを多くししているのか。

 

 しかし、無名ならともかく、テレビにも出演しているので、若者には顔が知られているだろう。だから、サングラスをかけて変装しているのか。しかしバレバレだ。

 

 真実はわからないが、そのお陰で何か面白い事に巡り会えた気がした。

 

 エマは尾行されているのに気がついていないようだ。ストーカーなら自宅ばれして危険だ。


 随分と無防備だと思った。

 

 エマが電車を降り、歩いた先は自宅だと思っていた。

 

 違った。

 

 小学校の前で立ち止まっていた。

 

 母校?

 

 校門から校舎が見えるが、中には入ろうとせず、スマホを見ながら確認しているようだ。

 

 ここで誰かと待ち合わせでもしているのだろうか。

 

 校門に二人の中学生がいた。男子と女子は言葉を交わし、女子だけ外に、男子は校舎に入った。

 

 エマは校門の前をウロウロしている。挙動不審者で通報されてもおかしくない行動だ。

 

 輝は小学校の前にある公園に移動し、ベンチに座り、観察を続けた。

 

 しばらくすると、エマは校門の前にあるマンホールをじっと見ている。


 何かあるのか?

 

 輝は気になるが、そのまま観察をしていた。一人、不自然な男子小学生がいる。校門を彷徨いている。ランドセルは背負っていないので、公園に遊びにでも来たのか?

 

「ん?」

 

 輝は男子小学生に違和感があった。その理由はすぐに正面を向いてわかった。無表情でどことなく、操られているような感じだ。生気がないように見えるのはあの現場で見た、小学生の一団にそっくりだ。

 

 それに先ほどの女子中学生も今、思い出せば無表情でそっくりだ。この地域は何者かに変えられてしまったのか。

 

 不気味だ。

 

 すでにスマホの録画ボタンを押していた。

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