第五章 四 中学生
「ん?」
留樹緒は人太に関わりたくないので、走って校門を出たが、男子と女子の中学生が二人いたのを今さらながら気がついた。
男子中学生の後ろ姿に見覚えがあった。すぐにウシガエルを持って行った中学生に何となく似ている。
確認したいが、戻れば人太と会ってしまう。
気になる。
公園を迂回して、校門が見える位置に戻った。
校門の前には女子中学生だけがいる。
留樹緒は焦った。肝心の男子中学生がいないからだ。見失ったか。と、視線を動かした。ゆっくりと歩いている。この位置と距離からすれば走れば追いつく事は可能だ。
一歩が出なかった。視界に人太が入ったからだ。校舎の中にいるが、校門までの距離は近い。幸いなことに人太は気がついていないようだ。
チャンスだ。
公園を出て、男子中学生を追った。背後から人太の声がする。見つかった。
「待ちやがれ!」
人太はなぜ怒っているのか。やはり、ウシガエルが必要なのだろう。長身の男とは犬猿の仲だ。マンホールの穴にウシガエルを入れてしまうだろう。
関わるのは危険だ。
それにC計画とか意味不明な事まで言って、不気味だ。
当初、人太がいなくなった時は家出か誘拐と騒がれた。戻って来たときに入れ替わったのだろうか。
やはり、追って来るのは人太ではなく、別人なのか。そうすると、納得出来るが、一つだけ、疑問がある。一貫して、人太は長身の男を信用していないのだ。
留樹緒も正直、ゲーム機欲しさに、信用したけれど、色々な事が起こり、誰を信じればいいのか見失った。
ただし、ここ数日に起こった事はただ事でない。非常事態と言えよう。人太を信用するには前のように戻れば、素直にカエルを渡しただろう。
しかし、今の人太は別人だ。
留樹緒は恐る恐る振り返った。
人太の姿はなかった。
追って来る気はなかったのか。それとも別の意図があるのか。
そうこうしている間に留樹緒の足が止まった。男子中学生の家がわかったのだ。ついでに名前まで判明した。目の前は一軒家だ。これがマンションだったら、中には入れず、部屋番号もわからないので、名前もわからず、ここで立ち往生していただろう。
留樹緒は念のため周囲を見回した。人太は追って来ていなかった。逃げ切ったのだ。
と、ポジティブな事ばかりと思えばそうでもない。あの中学生は何者だ。ウシガエルを盗った理由があるのだろうか。長身の男と面識があるのであれば対応が違ってくる。
男子中学生の顔はまだ見ていないので、怖い顔なら怖じ気づいてしまい話すら出来ないだろう。
留樹緒は『野丘』と書いてある表札と建物を交互に眺め、男子中学生が出て来るのを持っていた。
しばらくしても、出て来る気配さえない。 どうするか。
待つか退散するかの二択だ。




