第五章 三 小学校の校門
虫かごにウシガエルはいる。昨日、小学校の前からかっさらったが、これからどう行動するか決めかねていた。
異様な光景を目の当たりにした流都は怖くて、外に行くのさえ怯えていた。
これは夢ではない。地球滅亡の危機だ。少なくとも大人には頼れない。もちろん同級生だって信じてもらえるはずがない。
長身の男さえ小学生と、争っていたし、誰を信じていいか迷う。
どうすればいいのか
何も思い浮かばない。
狭い部屋の中をウロウロしても、何も変わらない。
落ち着こう。
流都はティーンフュチャーのアップテンポな曲を流した。
今、出来るのはそれくらいだ。気を紛らわす逃げの方法がそれしか思いつかなかった。
曲に集中出来ない。
いつもならエマを眺めていたはずだ。それどこれではないからだ。
急に浮かんだのはエマではなく、りりかの顔だった。
流都は急に頭の中に蘇った。
携帯に文字を打っていた。
『家にいるの?』
流都は即行、送信した。
考える暇もなく、着信音が鳴った。
『いる』
と、りりかだ。返信は早いが、文章が以前と違い簡素だ。砂奈からの情報がなければ、気にならなかっただろう。別人ではないかと疑いたくもなる。
『ウシガエルを捕まえたよ』
『今、どこにいる』
『家だよ』
『ウシガエルを持って、小学校の前に来て』
『すぐ行く』
流都はりりかに約束をしたが、ウシガエルを持って行くつもりはない。別人かもしれない。易々と渡して後悔しないための対策だ。虫かごにウシガエルがいる事を確認して、手ぶらで小学校に向かった。
小学校の門から児童がチョロチョロと出て来る。下校時間なのだろう。小学生ではない人影があった。
りりかだ。
流都の方が先に到着すると思っていた。マンホールをチラッと見たが、何の変哲もない。蓋が浮いているなどありえない事だ。まして、中から影や光線とか空想の領域だ。
「ウシガエルは?」
りりかはあいさつもなく、いきなり本題だ。もちろん笑顔もない。
「忘れた」
流都はニッコリと笑った。
「早く、持ってこい!」
りりかに笑顔はなく、眉間にしわを寄せ、怒りをあらわに出している。怖い。
「それが……」
流都は顔がそっくりだがりりかではないと思った。
「何?」
こんな怖いりりかは始めてだ。
流都はこの場を逃れる策を思案した。「途中で逃げられちゃったよ」と、嘘をついた。
「忘れたのか? 逃がしたのか? どっちだよ。さがして、持ってこい!」
流都は騙せる自信はなかったが、簡単に信じたようだ。
「さがしてくる」
と、流都は走りたいのを抑えて、ゆっくりと歩いた。逃げられたと思われないためだ。りりかからはどう映ったのだろうか。追って来ないので、さがしに行ったと思ってくれたのだろう。




