第四章 三 昇格発表
数日が経ち、エマは修太の告白に返答はしていない。もちろん修太からも何も連絡はない。
厳しいレッスンと意地悪に嫌気がさし、アイドルを目指すのを辞めようかと考えていた。どうせ美々奈が昇格するのだろう。
もしかしたら、ティーンフュチャーに昇格出来ずに終わってしまうかもしれない。だから、辞めて修太と恋愛するのもいいかもしれない。高校生チームは特に辞める子が多い。十九歳で卒業が決まっているので、高校二年生になると、他の道に進む子がほとんどだ。すでにエマを攻撃していた一人の子も脱落した。
今日のダンスレッスンも振りを覚えるのに苦労した。ファーメンションを無視して、ぶつかり、そして、エマがダンスの先生に怒られるのだ。
もう嫌だ。
と、叫びたかった。
「今日は重大発表があります」
と、ダンスの先生が言ったので、騒つく。みんなすぐに昇格の事だとわかっているのだ。しかし、結果は美々奈なのはわかりきっているのになぜかドキドキする。
美々奈は自信たっぷりに仁王立ちをしている。落選したら、どんな顔をするのだろうか。想像するだけで、笑える。現実にはありえないだろう。
さらにチーフマネージャーが現れ、神妙な顔をしている。高校生チーム全員が緊張状態だ。
「みんなも知っているだろうけど、嶋田涼花が卒業に伴い、メンバーをこの中から昇格させる」
静まり返った。「与瀬美々奈。昇格だ」
「はい」
と、美々奈は威風堂々として、当たり前のような顔をしている。それだけにエマは悔しかった。
拍手が起こった。さぞ嬉しいだろう。
エマの頭の中は敗北感しかない。
「目時エマ!」
エマは急に名前を呼ばれた。何の事だかわからず戸惑った。チーフマネージャーは相変わらず、神妙な顔なので、もしかしたら、高校生チームからも脱落なのか。
「何でしょ」
エマは怒りを抑え、重い口調だ。もうこうなったら辞める。そして修太の元に行く。
「昇格だよ。嬉しくないのか?」
「えっ?」
「エマ、昇格よ」
ダンスの先生に言われて、エマは急に実感した。頬が緩み、そして、辛い日々を思い出して、涙が流れた。
周囲の冷たい視線。特に美々奈は鋭い目つきで睨んでいた。
二人同時に昇格は想像していなかったので、嬉しかった。しかし、これからがもっと大変になる事は確実で、喜んでもいられない。




