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マンホールの怪物  作者: 小石沢英一
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第三章 六 りりかの作戦

 まだ進展はない。


 昨日、佐村先生に言われた事を実行しようと、呼び出す文章は決まっていた。『クラス会の事で相談が』と、どうしても送信をタップ出来ない。


 これで嫌われたらどうしようかと迷っていた。ため息しか出なかった。


 削除しようとして間違えて、送信してしまった。


「やばい!」


 りりかは部屋の中で右往左往した。


 そして、流都から返信が来た。


『忙しい』


 と、いつものパターンだ。


『メールでは無理』


 と、送信しても返信がない。


 どうする?


 二十分待ったけれど、流都からは反応がない。


『ハンバーガーショップで待ってます』


 と、地図も添付した。


『忙しい』


 と、すぐに返信はあったが、がっかりさせる内容だ。


 ここで折れたら進展はない。


『何時間でも待ってます。来ないと、凍えてしまいます』


 りりかは必死だった。


 すぐに流都から返信があった。


『しょうがないから、待ってろ』


 ようやく流都が会ってくれる。


 りりかは嬉しくて天にまで飛び上がりそうだった。


『はーい』


 と、ハートマークのオンパレードも忘れなかった。


 りりかがハンバーガーショップの前で待っていた。流都はいつ来るかと気がかりで、ドタキャンされる可能性もあるからだ。ドキドキしていた。スマホから目が離せない。


 予想に反して、流都は小走りだ。


「遅いよ。凍えたらどうすんの?」


 りりかは嬉しかった。


「急いで来たんだぞ。暑いくらいだ」


 流都は怒っている。


 りりかと流都はハンバーガーショップ内で話す事にした。


 りりかはずっと喋っているが、流都の反応は鈍い。退屈そうだ。


 どうしようか。困ったりりかは「カエルを捕まえると、何か欲しい物と換えてくれるんだって」


「ええ? カエル? それ本当か?」


 流都は急に慌てふためいている。次第に興奮して「おじさんにカエルを渡さないと地球が滅亡するんだよ!」


「どうして?」


 りりかは冷静だった。


「さがしに行こう」


 と、流都から誘ってきた。


「えっ?」


 りりかは耳を疑った。あれほど興味を示さなかったのにどう対応していいかわからなかった。


「じゃあ、一人で行くから」


 と、流都は先に行ってしまった。


 突然の事で声すら出せなかった。


りりかも急いで流都を追った。


 公園内は賑わっている。ウシガエルさがしの小学生たちが占領していた。


 流都をさがすのが先決だ。


 しかし、簡単だった。ベンチに座っていたからである。


「見つけた?」


 りりかは流都を見つけたと言いたかったが、ウシガエルの事に置き換えてしまった。


「どうした?」


 と、流都は質問には答えず、りりかがいる事が不機嫌に聞こえる。


「カエルさがすんでしょう?」


 と、りりかが言ってもやる気を失せている。ハンバーガーショップでの勢いがない。ほしい物を訊いた。


「チケット」


 と、流都にも目標はあるようだ。


 それを聞いたりりかは思わず、否定的な事を言ってしまった。


 流都にほしい物を聞かれ、りりかは正直に言えなかった。もちろん怒った。言えるわけがない。恥ずかしいのだ。


「さがさないの?」


 と、りりかは関係修復を望んだが、流都の怒りは治まらず、帰ってしまった。何を言っても聞き入れてくる状態ではない。黙って後ろ姿は見つめるしか出来なかった。


 わかってよ。


 心の叫びが届くはずもなく「ばか!」と、りりかは流都に毒づいているが、実は自分自身のふがいなさへの言葉だった。


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