令息なのに婚約破棄ってあるんですか!?
久しぶりです。
拙い文で申し訳ない…
「ゼジル・フォン・ラインハルト次期公爵殿、貴方に婚約破棄を求めますわ!」
そう言い放ったのはマリア・フォン・アリテシア第三王女。金髪に美しい青色の瞳、そして整った顔立ちに卓越した知識や能力でアリテシア王国史上類を見ない才媛と呼ばれる彼女から婚約破棄。
辺りは騒然とする。
「お、おいおい、歴史ある王立学園卒業パーティーで婚約破棄かよ…」
「ゼジル様と言えばアリテシア王国の最大貴族たるラインハルト公爵の次期当主よね?そのような大物降って誰と婚約するのかしら?」
「あいつじゃないか?平民から来たっていうあの」
「あぁ、あのクリス・ミドラルか、彼は美青年だからね。男の僕すら見とれてしまう程の顔だ、惚れてしまうのも無理はない」
「だからといって国内最大勢力のパイプを断ち切るかね…」
クリス・ミドラルは平民出身でありながら、王立学園に高い成績で特別に入学が認められた、才気溢れる青年である。
(え?こ、こっこ婚約破棄?それ、令嬢側がやることってあるの?え?え?)
ゼジルは酷く困惑していた。
というのも、彼は転生者であり、前世の日本で不幸にも死んでしまいこの世界に転生してきた人間である。
ゼジルの前世ではなろうを、ある程度は読んでいた為こういう話を知っていた…が、まさか自分がその立場に、ましてや男の彼が婚約破棄される立場になるとは思わなかったのである。
(つーか、我、王国の最大派閥の貴族筆頭次期当主ぞ?破棄したら、王族立場危うくなるのでは?)
キャラ崩壊しかけているジゼル、然し前世が外交官という意外な一面と腹芸の多い貴族に生まれたことにより、ポーカーフェイスを何とか保つことができていた。
「流石は王立学園首席だ、まるで動じていない」
「凄いわ…い、今婚約破棄されたのなら今度は私と…」
「いいえ、私と…」
ジゼルの必死のポーカーフェイスのお陰で何とか周りは勘違いしているようだった。
しかし、マリアは気にせず続ける。
「貴方はこの、愛しいクリスと私が仲の良いことに嫉妬し、凄惨な虐めをしました!そんな人はこの私には相応しくありません!それがこの証拠です!」
そういうと第三王女側近のものが周りの人達にビラを配って回る。
一応ジゼルも貰い内容を確認したが、どれも身に覚えがなく、証拠にしても、状況証拠しか無く、説得力に欠けるものだった。
(え、うっそーん…仮にも才媛と呼ばれる方がこんな杜撰な…なんか失望しちゃった…)
しかし、周りの人達はこのビラを見て信じ始めているようで…
「おい、この階段から突き落として骨折らせたって酷くねーか?」
「それに、好きなタイプは…幼年学校に通う位の歳頃の子だって!?!?」
「まじかよジゼル最低だな」
(いや待ってほしい。確かに幼女趣味はあるが二次元限定だ。決して三次元の女の子に手を出さない。紳士なのだ)
…とは言えない。言ってしまえばもっと勘違いが加速すると言うのが容易に想像できた。
(にしても…ここの連中っておバカなの?もしかしなくてもおバカ?こんな状況証拠しか無いビラ見て信じるとかおバカしかありえないだろ)
「おい!何とか言えよ!この変態!」
「そうよ!そうよ!」
「君には説明義務がある!」
(あーあ、どうしてこうなった?…もしやこのパターン…まさかクリスが黒幕なのか?)
今まで俯いていたジゼルかクリスの顔を凄い勢いで確認する、しかし、傍から見れば睨んだように見えたのだろう。
「おい!ジゼル様がクリスを睨んでいるぞ!」
「まぁ!責任転嫁するつもりなの!?」
「MJS(最低だな)」
そのクリスの顔は、元々白かった肌をもっと蒼白にし、身体をブルブルと震わせていた。
(あ、これ第三王女が勝手に暴走してる感じだわ。被害者だわ)
一方のクリス
[あぁ〜…なんてことになったのでしょうか…
先程からジゼル様から睨まれてます…申し訳ないです]
クリスの正体は美青年ではなく、”美少女”
なのである。何故性別を偽っているのか?
それはクリスの入学前に遡る。
「やぁやぁやぁ!我が学園にようこそ!平民は初めてでね!……っと、君…女の子だったのかい?」
と、勢いよく扉を開けながら美女が入ってくる。何を隠そう、彼女はハイエルフと呼ばれる種族で、この学園の学園長なのである。
「は、はい!女の子でしゅっ!」
驚いて噛んでしまったクリス。
「はっはっは!いやぁ、悪かったね。驚かせてそれで…女の子ってことに変わりないんだね?だとするとまずいんだよねぇ」
「まずい…とは?」
「君のような可愛い子はねぇ…下半身が脳に直結したバk…ゲフンゲフン情熱的な貴族に熱烈にアピールされるとおもうんだ。そうなると、勉学には集中出来なくなってしまうだろう?」
「え、えぇ」
「なので、君にはこの学園では男の子として振る舞ってくれ。なーに、安心してくれ。このネックレスをあげるよ。これを付けていると変なやつが寄り付かなくなる」
「は、はぁ」
「まぁ、そんな事だよ。困ったら相談してね」
[真逆こんな事になるとは…]
目下には喧喧囂囂とジゼルを非難する声と、私に同情し、第三王女との仲を応援する声の両方が響き渡っていた。
『どうしましょうこの状況』
クリスは目配せでジゼルに助けを求めることにした。
すると、伝わったのかこう返してくる。
『このまま不名誉なレッテルを貼られ続けるのも癪だし、何よりあの第三王女をギャフンと言わせてやりたい、協力してくれ』
『誤解を解くんですね!』
『あぁ!一緒にギャフンと言わせてやろう!』
『私が女である事も同時に告白してくれるなんて…ありがとうございます!』
そもそも、目配せで会話出来るわけないのだ。
妙に食い違った二人は動き出す。
先に動いたのはジゼルだった。
「マリア様、婚約破棄には事前に申告の上、両家要相談の上、正式に認められるのです。
それを、このようなパーティーの場でやるなど…言語道断ですぞ」
「あら、変態が言うじゃない。残念ながら父上、、、この国の国王陛下も了承済み、となれば、貴族であるあなた方もお分かりでしょう?」
「その国王陛下が許可を出したという証拠は?婚約破棄の正式書類を見るまでは、そう簡単には信じられませんな」
「チッ…口が達者のようねぇ……まさか、ここまでされてまだ、私のことが好きなの?」
(うむむ………あっ、いいこと思いついちゃったー)
ジゼルは悪い笑みを浮かべてこういった。
「そもそも、このビラに書かれている証拠とやらも状況証拠ばかりでなんの確証もない!!
よもや、歴史ある王立学園の生徒までも、このような戯言に騙されたのではあるまいな!!!」
「た、確かに…」
「そういえば証言者も出てきていない…」
「もしかして、これは偽物なのか?」
ゼジルの説得に、ビラの信ぴょう性を疑い始める者たち
「人を貶めるような人にクリスのような聡明で
美しき者が相応しいと思うか!」
「そうだ!そうだ!」
「私にこそ相応しいお方よ!」
「いいや、私に!」
第三王女は分が悪くなって来たのを感じ取ったのか、必死に反論しようとするも、全てジゼルに論破されて行く…
「お静かに!聴衆達よ!この第三王女に、哀れにも利用されてしまったクリスに相応しいのはこの俺、ジゼル・ファン・ラインハルトだ!」
この言に一気に場は静まり返る。
クリスは顔を真っ赤に染め上げたため傍から見れば、そういう関係にも見えてくる。
「おぉ!可哀想なクリス!俺が助けてやるから待っていろよ!」
[なーにやってんですかああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!]
「え、ジゼ×クリ…?待って尊い」
「は?そこクリ×ジゼでしょ?死ぬの?」
「表出ろやぁ!?!?」
「ああぁん!?上等だゴルァ!!二度とお茶会に出れねぇ顔にしてやんよ!」
ジゼルの一計により、さらに混乱を極める会場、しかしジゼルは止まらない。
「俺が狩人な君はオオカミ…私がきちんと捕まえたげる(イケボォ)」
「ちょ、ちょ待ってジゼル?これは貴方とクリスをくっつけるための───」
流石に、やり過ぎたと思ったマリアが、止めに行こうとしたが押しのけどんどんとクリスに近づいて行く。
「あぁ!世界は俺達を認めてはくれないようだ!…だが、君と俺ならきっと乗り越えられる!そう信じてる!」
「嫌だから──」
またもや、第三王女が止めようとするも挑戦虚しく、おしのけられる。
「さぁ、俺の手を取って…飛び出してしまおう!こんな小さな国から!」
「クリスはー!女の子でー!あなたのー!事がー!好きだからー!私がー!ピエロにー!なったのー!因みにー!君と!クリス以外は!みーんな私のー!仲間なのー!!!!」
絶叫であった。
「私もー!貴方のことー!好きだしー!クリスのこともー!好きだからー!側室としてー!招待するためにー!作戦をー!練ってたのー!それをー!あなた達はー!ぜーんぶ!無駄にしたのー!馬鹿!ばかばかばかばかー!」
うえぇぇぇんと、泣く第三王女と、冷たい目線投げかけてくる第三王女の仲間たち。
「いーけないんだいけないんだ。女の子泣かしちゃいけないんだぞー!」
「そうよ!そうよ!」
「いや、お前らもノリノリだっただろうがあああああああああ!!!」
「え?あ?は???」
未だに状況が分からないクリスと、恥ずかしい思いをしてまでBLごっこをしたのに全てを無駄だと悟ったジゼルの悶々とした悲鳴が響き渡るのであった。
その後、無事マリアと結婚したジゼルはクリスを側室に迎え三人で暖かな家庭を作り上げたとさ。
めでたし、めでたし。
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