表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

明日がくれば、

作者: はる

明日がくれば


このかび臭い場所から出ることができる


明日が来れば、この「膝を抱えて座るしかない場所」から出られる。


でもこの場所を準備した彼らは、ここにあの女がいると思っているはず。あの女にもしものことがあった場合に準備していたはずだから。


ここに入った時、あの女の悲鳴が聞こえた。


あれに気づいたんだろう。

あれは動物も人間も同じように食べるから、聞こえてくるあのひどい音は、そういうことだろう。人間よりずっと大きいくて会ったらどうにもできないから。


それなのに私がここにいたら彼らはどうするのだろう。


ここがあることであの女が助かっているはずだと、希望をもって開けたときにいるのは、私なんだ。殺されてしまうかもしれない。彼らはあの女へひどい執着をもっていたから。



…大丈夫、あの女と私は同じ顔をしている。



彼らとの記憶なんて一切ないけれど、こんなことの後だから、動揺しているとか、記憶がないとか言えば彼らの事だ、信じて丁寧に扱うんだろう。


それにあれは骨を残して全部きれいに食べてしまう。

どうせ気づきはしないはず。


まだぐちゃぐちゃと音が聞こえるけれど…きっと大丈夫。


この部屋は彼らが特別に作った部屋だ。外からは中の音が全然聞こえないから、あれに狙われることもないらしい。


膝をかかえて座るしかない、かび臭くて真っ暗の場所だけれど、明日が来れば彼らが助けに来ると言っていた。




でも「明日」っていつだろう?


ここに入ったのはいつだった?


昼間だっただろうか、夜だっただろうか

今はどれくらい時間がたった?


…ここに連れてこられたのは昼間だったはず。


奴隷か何かだと思っている彼らとあの女に住処が見つかって、ずっと歩き通しだった。ばれないように回復してたから何とかなったけど、何の力もなかったらここに来るまでに死んでいたんじゃないかな。


それで、あの女の世話をするように命令されて、彼らは出て行った。あの女をどうしても守りたい彼らは、ここをあの女一人を守るための場所にしたんだ。


それから、あれが出てきたのは、あの女がこの場所を得意げに説明しながら窓際に寄った時。


ちょうど真後ろにあれがいた。


私は私がかわいいから、あの女が死のうとどうでもいい。私がこの場所に走るなんて思っていなかったあの女の変な顔を見たのが最後だ。


そのあとは、一度の悲鳴とひどい音。


そう、窓を見たとき、真っ暗だったはず。

だからきっと夜だった。


でもそれからどれくらい時間がたったかわからない。

もう明日になってる?


本当に彼らはあの女を迎えに来るんだろうか。



彼らにその意思があったとしても、あれがここに来たなら、彼らも食べられた後なのだろうか。

それともここにあれが現れるとも思わずに別の場所に行っていたのか。それも私はわからない。



ここの音が聞こえないって本当なのかな?



あの女を食べ終わったら、隣にいる私を食べに来ないのだろうか。心臓の音がガンガンに聞こえているのに、本当に私に気づかない?あれは人間を食べるから、どんな生き物かなんてまともにわからないはず。それなのに、ここにいれば助かるなんて、どうやって?




これが罠だったら?




本当はあの女が煩わしくて、ここに捨てていった?




この場所はあの女を閉じ込めるだけの場所だったら…?





外にあれがいるかもしれないとか気にしていられなかった。

とにかくこの場所から出してほしくて、扉をたたいた。


でもここは膝を抱えて座るしかない狭い場所。


強く叩こうとしても勢いなんて付けられなくて、軽く音が鳴るだけ。




だれか、


だれか、


だれか―





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ