灯と細華
宿敵?
「それって、ゲーム内でって事だよな?」
「あぁそうだ。こいつとは以前別ゲーで戦ったことがあってな。それが何度も続いて。その内になんか競い合うようになってたんだ」
そうか。
と言うかやっぱり霧山さんってゲームやる人だったんだな。
「お兄ちゃん。なんでこの人を連れてくることになったのか、教えて欲しいな~」
そう言い灯ちゃんがジトっとした目でこちらを見てくる。
「あぁそうだな。俺も知りたい」
直也まで……。
相当こいつら敵対してるんだな……。
「しょうがない……」
俺はそう言い経緯を二人に話し始めた。
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「まぁ、こんな感じだ」
俺がそう言うと直也が
「そうか。お前とは敵、だが、色々と影助の話し相手になってくれたみたいで……。一応、礼は言っておく。ありがとう」
そう言い軽く頭を下げた。
「俺もお礼、言ってなかった。ありがとう、俺の面倒見てくれて……」
そう言い俺も直也に続いて頭を下げた。
勿論深く、感謝を込めて。
しかし霧山さんは
「あ~うん。そうだね。どういたしまして?一週間ぐらいだったと思うんだけど……私は何もできなかったんじゃないかな……」
と微妙な表情を見せた。
でも。俺はそう思った。
一週間、俺はほぼ孤独だった……。
そう、ほぼだ。
霧山さんのお陰で助かっていたのだろう。
そうじゃなかったら俺は直也に会うことも無かっただろう。
だから……ありがとう。
「やっぱり、ありがとう。霧山さん」
俺はもう一度そう感謝を伝えた。
「そう?それならよかった……かな?」
霧山さんはやはり微妙な表情でそう言った。
微妙な空気が漂う沈黙を破るように灯ちゃんが言った。
「あのさ、細華さん?お兄ちゃんに手を掛けたりしてないよね?」
何を言ってるんだ?灯ちゃん。そんなことなにも無いんだが……。
俺がそう言いかける前に言い返す霧山さん。
「なに?そしたら何か困ることがあるの?灯さん」
そのまま二人は睨み合った。
どうしよう?俺には何もできそうにないこの雰囲気……。
俺がオロオロしてると
「ストップだ!」
そう言ったのは直也。
直也はそのまま二人を引きはがすように距離を取らした。
抵抗するかと思われた二人だが、意外にすんなり離れた。
「よかった」
俺がそう呟くと灯ちゃんと霧山さんは俺に向かって
「「よくない!」」
と叫んだ。
うん。よく分からない。
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「全く、何やってるんだ」
そう言ったのは直也。
「ごめん。事前に言っておくべきだったな……」
「あぁそうしてくれるとありがたかった、が、もうしょうがない。影助、お前が何とかしてくれることに期待する」
「まぁそのつもりだ。直也も灯ちゃんを頼む……」
「そうだな。ほっとくとさっきみたいになりそうだからな……」
俺たちはそう言い合いながらとある場所に向かっていた。
討伐クエストだ。
新たなパーティーメンバーで大物を狩ろうと今回は大型を選んだそうだ。
俺は……出番がなさそうな気がするが……。
「「着いたね」」
灯ちゃんと霧山さんは同時にそう言った。
そしてまた睨み合った。
「ホントはこんな人とパーティーなんて嫌なんだけどね」
灯ちゃんがポツリと言った。
「ホントは影助君と二人がいいんだけどね」
霧山さんもポツリと言った。
「「ストップだ!」」
俺と直也は同時に止めに入った。
俺は霧山さんを、直也は灯ちゃんを。
二人を離して仕切り直し、
「さて、今回討伐するのは二股のオロチ」
と直也が言うと灯ちゃんと霧山さんは頷いた。
俺も取り敢えず頷いた。
「大型の中ではそこまで強くないが気を付けて……」
と直也がいい終る前に灯ちゃんが駆けだした。
「オロチの首は貰います!」
それに続いて霧山さんも
「負けないよ!」
と追いかけて行った。
実は仲がいいんじゃないかこの二人……。
「あいつら昔からずっとあんなんなんだよな……俺も確かに宿敵って感じなんだが、あれを見てるとなんかその気さえも失せてくる」
広い草原を走っていく二人を眺めて直也が言った。
なんかわかる気がする。
「灯が何かをするとそれに対抗して細華が飛び出す。そんな感じだった」
年下に対抗してどうするんだよ……。
「直也。俺たちも行かないとおいてかれるぞ?」
「そうだな。よし。加速!」
直也が魔術で移動速度を上げ、俺たちは二人を追いかけた。
なんだか上手く書けてないのではないかと不安になってしまいます。
恐らくそうなのでしょう。
自分の実力不足なので仕方ないと思うのですが、良ければこれからもよろしくお願いします。
毎回読んでくださっている方々ありがとうございます。
『加速』
2分間対象の移動速度を1,1倍にする。