表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱スキルの使い方  作者: 春山 隼也
7/21

変化

「影助お兄ちゃん!お疲れ様です!」

「いや~中々凄い戦いぶりだったな。影助」

 あれ?砂煙で視界が悪かったはず……。

「見えてたのか?」

「あぁ。俺も灯もしっかり見てたぞ」

「そうじゃないとお兄ちゃんを助けに行けないでしょ?」

 灯ちゃんまで……。

 直也、灯ちゃん。

 俺、強くなるよ。

「でも、どうして見えてたんだ?」

 俺がそう聞くと直也は

「そういうアイテムがあるんだ。ほらこれ」

 と俺にそのアイテムを手渡した。

「効果は戦闘中、同パーティーのプレイヤー、または対象プレイヤーの動きが確認可能になるってやつだ」

「普通はパーティーメンバー全員が使って、お互いの動きを把握しながら戦うために使ったりするんだが、今回はお前の観戦に使わせてもらった」

「あ、そう言えば直也。聖属性ってなんだ?俺は初めて知ったんだが……。見たこと無かったし……」

 そう言うと、直也は

「まぁそうだろうな」

 と言った。

 どういうことだろう?

 俺が首を傾げると灯ちゃんが

「聖属性はね、高いランクの魔術とかじゃないとそもそも使えない属性なの」

 そうか。俺がいたところは俺みたいな初心者が集まっていた場所。

 道理で見ないわけだ。

 俺が納得してると直也は確認するように

「分かったのか?」

 と聞いた。

 俺は

「あぁ」

 と頷いた。

「それと影助」

「ん?」

「おめでとう」

「そうだね。お兄ちゃんおめでとう!」

「あぁ。二人ともありがとう」

 昔からの知り合いだからなのか。

 なんだか凄く安心した。

 いつか、俺が二人を助けられるようになりたい……。


---


「またな影助」

「またね~。影助お兄ちゃん」

「あぁ。またな」

 俺たちはそう言い合い、ゲームをログアウトした。

 ……長い1日だった。

 俺はそのままベッドにダイブして寝た。


---


 眩しい。

 朝だ。

 俺はいつも通り食事、準備などを済ませ家を出た。

 俺が通学路を歩いているといつも通り後ろから霧山さんが声をかけてくる。

「おはよう」

「はい。おはようございます」

 俺がそう返すと霧山さんは少し残念そうに

「うん」

 と、言う。

「ねえ、影助君?」

 相変わらずなれないその呼び方。

 そう。霧山さんは登校中に初めて話した次の日から呼び方が『影助君』になっていた。

 全くこの人は……

 そう思うのもほぼ日常化しかけている。

「なんですか?」

「うん、やっぱりだね」

 何がだ……。

 やっぱりこの人は意味不明だ。

 俺が心中で言い返してると霧山さんが

「何か、いいことあったんじゃない?」

 顔をこちらに近づけてそう言った。

 なんでわかった?

 俺、何も言ってないんだが……。

 と言うか顔が近いです……。

「やっぱりあったんだね」

 何故わかる!?

「あの、なんでそんなこと分かるんですか?」

 俺が聞くと霧山さんは、ふふっ、と微笑して

「昨日までの表情より明るかったから」

 そう、か。

 確かにそうかもしれない。

 一昨日までの俺は完全に孤独であった。

 だから誰から見ても暗い表情に見えたのだろう。

 しかし昨日。

 直也たちと再会した。

 環境が一変した。

 それで表情が変わるのは自然、か。

「はい。ありましたよ」

 俺はそう霧山さんに言った。

「そっか。いい、笑顔だね」

 霧山さんは微笑みそう言った。

「いいことってどんなこと?」

「はい。ゲームで、古い友人と再会しました」

 俺は自然と優しい口調でそう言った。

 何故だろう。昨日とはまるで違う。

 重たかった気持ちはまるで無い。

 心が……軽い。

「そっか。それは良かったね」

「はい」


 ……


「ねぇ」

 霧山さんは短い沈黙を破り言った。

「なんですか?」

「私もそのゲーム、やりたい」

「え?」

 俺は無意識にそう言った。

 彼女はそういうものに興味がないと思ってたのだ。

「え?じゃないよ。やりたい。何て言うゲーム?」

 あ~これは止められないやつかな……。

 聞かれるがままに

「スキグロって言えば分かりますか?」

「あ、あれね。うん。ありがとう」

 霧山さんは微笑みそう言った。

 なんか、いつもより綺麗な笑顔だな。

 純粋な感じだ。


---


 放課後。

 俺は一人で通学路を歩いていた。

 すると後ろから「お~い」と声が。

 まぁ、俺じゃないだろ。

 と、俺が気にせずに歩いていると、

「ちょっと待った」

 と、肩をつかまれた。

 振り返ると霧山さんだった。

「あ、霧山さんか」

「あ、じゃないよ。呼んだのに無視?」

 霧山さんは少し膨れてそう言った。

「すいません。俺じゃないと思ったもんで……」

「まぁいいよ。影助君の敬語じゃない言葉を聞けたからね」

 そう言った霧山さんはまた、ふふっ、と微笑した。

「……」

 気を抜いちゃったな。

 もういいか。霧山さんもそれを望んでいるようだし……。

「そうだまり込まないの」

「分かった。もう敬語は使わない」

 俺がそう言うと霧山さんは

「ホント?」

 と、いつもとは違う小さな声で言った。

「ほんとです」

 俺が敬語でそう言うと

「嘘つきっ!」

 と、叱られてしまった。

「ごめんごめん」

「もうっ」

 霧山さんは膨れてそっぽを向いてしまった。

 怒らせちゃった、な。

 じゃあ

「それで、何か用があったんじゃないの?細華」

「へっ?」

 霧山さんはそう声を漏らした。

「い、今。名前で……」

 そう言いながらこちらを向いた霧山さんは少し頬を染めているように見えた。

 そんなはず、無い、よな。

「で、用ってなんだ?ここで立ち止まっててもしょうがないんだが……」

「あ、そう、だね。うん」

 霧山さんは慌てたように立ち上がった。

「あ、それで用って言うのは……」

 歩き出し、細華は用を言った。

 要するにゲームのお誘いだった。

 一緒にやらないか、と。

 これは楽しくなりそうだ。

 直也たちにも紹介しなくちゃな。

 細華と別れた後、俺はワクワクしながら家に帰った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ