再会
俺は一人、芝生の上で寝転んでいた。
緊張が解けた。そういうことなのだろう。
しかし学校の方は相変わらずだ。
教室にいるときただ一人、椅子に座ってジッとしている。
たまに霧山さんが話しかけてくれる時がある。
それが学校での唯一の会話だ。
俺はこれまで何度も引っ越しを経験してきた。
親が転勤族なのだ。
途中で転校したことも多々ある。
だから、俺には親友と呼べるような友達がいなかった。
いつだって一緒にいる。そんな深い友達はいなかった。
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「影助~?」
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だけど思い出す。
今までになった友達とは少し違う。
親友になれたかもしれない友達を。
直也……。
「あの~、すいません。そんなところで何してるんですか?」
そう言い俺の顔を除いたのは水色の髪をした少女。
左右の髪は束ねられツインテールになっていた。
年は俺より下だろうか。身長も俺よりそこそこ低そうだ
「少し、思い出に浸ってたんです」
俺がそう答えると彼女は少し寂しげな眼をして
「そうですか」
と返した。
「あの、私もいいですか?」
「どうぞ」
俺が頷くと彼女は俺の隣に腰を下ろした。
「「……」」
しかし、この子どこかで見たことあるような……。
沈黙の中、俺は一人そんなことを考えていた。
「「あのっ」」
俺と彼女は同時に声を発した。
「どうぞ」
俺は彼女にそう言った。
「ありがとうございます」
彼女はそう言ってから続けた。
「もしかして……奥野影助さん、ではないですか?」
彼女は不安そうにそう言った。
「あ、はい。そうですけど……」
誰だろう。なんか見覚えある気がするんだが……。
「やっぱり!やっぱりそうでしたか!」
彼女は嬉しそうに言った。
本当に誰だったか。なんか、申し訳ないな。
「あ、一人でごめんなさい。私の名前は川上 灯です。川上 直也の妹って言った方が分かりやすいですかね?」
え、本当に?あの直也の?って事は、あの小さかった灯ちゃん?
「本当にあの灯ちゃん?」
俺がそう言うと灯ちゃんは嬉しそうに
「はいっ!お久しぶりです!影助お兄ちゃん!」
と言った。
うん。久しぶりに言われるとなんか照れくさいな……。
「あぁ、久しぶり。灯ちゃん」
灯ちゃんがいるって事はもしかして直也もいるんじゃ……。
「あのさ灯ちゃん」
「なんでしょうか?」
「直也はいるの?」
「はい。いますよ」
あ、やっぱりいるんだ。
まぁ、直也と灯ちゃんは二人してゲーム大好きだったもんな。
よく一緒ゲームやったなぁ~。
あの時は灯ちゃんがまだ小さくて、負けて悔しがってたな。
「ふふっ」
「どうかしましたか?」
「いや、何でもない」
俺がそう言うと、灯ちゃんは遠くを見ながら言った。
「もしかして……昔の私とか、思い出してました?」
「あはは……。正解」
「そうですか~。あの頃は楽しかったですよね~」
「そうだね……ってあれ!」
俺は咄嗟に指を指した。
その方向にあったのはこちらに飛んでくる火の玉だった。
「私がやります!」
灯ちゃんはそう言うと、火の玉に向かって走り出した。
走りながら灯ちゃんは「魔法破壊拳!」と叫んだ。
そしてそのまま火の玉を殴りつけた。
すると火の玉は僅かに火の粉を散らしながら消失した。
凄いな。火の玉を拳で。
あれはスキルか。
「大丈夫?」
俺がそう言いかけよると
「大丈夫ですよ」
と微笑んで答えた。
「それより……」
灯ちゃんは先程火の玉が飛んできた方向を睨んだ。
その方向にいたのは……。
「兄さん!何でこんなことするんですか?!あんなのかすり傷にもなりませんけど、それでもです!」
「直也!」
「ごめんって灯。それと久しぶり、影助」
直也は俺と灯ちゃんの方に歩きながらそう言った。
『魔法破壊拳』
通常魔法攻撃に対して、あまり意味をなさない物理攻撃だが、このスキルを使うことによって干渉力を得る事が出来る。
その効果は攻撃の威力に依存する。