使い方の道しるべ?
「はぁ。失敗したな」
俺は塔弥達から離れてある森の木の下で座っていた。
正直さっきのは、俺が感情的になってしまっただけ。
「よし。謝りに行くか」
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あ、いたいた。
「お~い」
俺の声に気づいたのか塔弥達はこちらを向いた。
俺は塔弥達に駆け寄った。
「ごめん!俺が悪かった」
俺は頭を下げた。
「おいおい。何誤ってんだよ」
塔弥はなにも無かったように言った。
本当に気にしていないのだろうか。
そう思う俺の心とは反対に塔弥達は笑顔だった。
そして、塔弥が言った。
「俺達もう、友達じゃないんだから、気にすんなって!」
塔弥はいつもより強く背中を叩いた。
――痛い。
「そうだね。君みたいな弱い人は要りませんね」
ッ颯馬!
「面倒だ。さっさと行け」
ッ白神も!
「そうかよっ!一度でもお前らに悪いと思ったのが間違いだった!じゃあな!」
走り去っていく俺に、視線の一つも向けず、塔弥達は反対方向に歩いて行った。
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チッ。
そんな舌打ちさえも寂しさに満ちていた。
――孤独。
これで俺は孤独になった。
これで何も背負わず……。
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「影助~?」
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直也……。
あれからもう何度目だろうか。
俺は孤独になるたび直也を思い出していた。
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「はぁ。なんか、寝ちゃってた。んだな」
今日はもう疲れた。
ログアウトしよう。
ログアウトしますか?
「はい。します」
俺は言わなくてもいいことを口に出し、はい、を選択した。
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翌日。
俺は久しぶりに一人で通学路を歩いていた。
久しぶり、と言っても、ほんの一ヶ月ぐらいだ。
それでも孤独感は拭えないが……。
そんな風に一人寂しく歩いていると、後ろから俺を呼ぶような声が……。
いや、気のせいだろう。俺を知っている人なんか、ここらにはあまり……。
「奥野君?」
あぁ。気のせいじゃなかったのか。
彼女はその紅の瞳で俺をジッと見た。
そして言った。
「何か、あった?」
「いえ、何も」
俺がそう言うと彼女は少し残念そうに
「そっか」
と呟いた。
彼女の名前は霧山 細華
髪は黒く長い。眼は紅に染まっている。
身長は俺より少し低い位だ。
何というか、かっこいいと思える。
彼女はクラスでも、よく人に話しかけるような性格をしている。
引っ越してきた。入学当初、俺がそう言ったからか分からないが、俺の事を何かと気にかけてくれるいい人だ。
「あのさ、前から言ってるけど、その敬語やめてもらっていいかな……?」
何故か彼女は人からの敬語を嫌がる。まぁ、敬語を使っているのは俺ぐらいのもんなのだが。
「ごめんなさい。それは出来ないです」
「なんで、かな?」
それは決まってるでしょ?あまり慣れてない、しかも女の子に対して、そんなに直ぐに敬語を外す事が出来るはずがない。
「まだ、慣れてないからです。霧山さん。俺は、貴方の友達でもないんですから……」
「――そう。ごめんね。それじゃあ」
彼女は寂しそうな笑みを浮かべてこちらを見てから、走っていった。
一体何だったのだろうか。
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それから一週間。俺は朝、霧山さんに会い、学校では一人。ゲーム内ではスキルの使い方について考えた。
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あれから一週間が経った。
その間に一度、中ボスを倒した。
その後、何度か挑戦したが倒す事が出来なかった何故だろうか。
それをずっと考えていた。恐らく、属性だろう。
それが今日までの戦いでわかった。
俺はこの一週間。このスキルの使い道に頭を悩ませていた。
正直このゲームについて何も知らなかったので戦った。
最初は雑魚から。
雑魚。
そう言っても盗賊の装備の短剣はそんなに攻撃力が無く、
それに加え防御力もあまりないので中々倒す事が出来ず苦戦した。
そこで一応短剣に火属性を付与してゴブリン的なモンスターを切りつけた。
ゴブリンは一撃で倒れた。
なんと。
その時の俺はそう思った。
属性があれば敵を早く倒せる。
そう思った俺は中ボスと戦ってみることにした。
中ボス。
それは、ゴブリンの何倍もの大きさである――ゴブリンだ。
ゴブリンロードとかいうらしい。
俺は森のやや深部にいるゴブリンロードに戦闘を仕掛けた。
火属性の短剣が刺さると、ゴブリンロードのHPゲージが大きく削れるのが分かった。
それを2,3回繰り返すと、ゴブリンロードは倒れた。
その経験値でレベルアップすると共に、俺は、新しい盗賊スキル。
『盗人』を手に入れた。
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『盗人ぬすっと)』
モンスター撃破時の経験値、アイテムドロップ率の増加
増加率はスキルレベルによる。
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こんなに簡単に倒せるものなのか。
そう思い俺は次の中ボス討伐に向かった。
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やって来たのは、海。
徒歩で移動するとかなりの時間がかかる広大なゲームマップ。
しかし、転移と呼ばれる移動魔法でそれぞれの町に移動できるのでそれほど時間はかからなかった。
戦うのは中ボスグランドオクトパス。
海中でなく砂浜に生息するヤツは見つけづらいがHPは少ないらしい。
そんなことがクエスト帳に載っていた。
クエスト帳と言うのはクエストを選ぶときに使うゲームの機能だ。
そこには戦うモンスターの特徴が示されている。
俺はヤツを見つけるのにかなりの時間をかけた。
いざ勝負。
そんな感じで、火属性付与の短剣で切りつけたもののほとんどHPは減っていなかった。
そのまま、俺は攻撃をくらい、一撃で転移してきた町へ戻された。
それから五日かけてヤツに挑み続けた。
しかし、属性攻撃は一向に効く気配を見せなかった。
これが一週間の成果。
そして、分かったことが二つ。
一つ弱点属性と言うものが存在するということ。
二つモンスターによっては存在しない者もいるということ。
さて、少しは希望が持てるだろうか。
俺の黒い眼には少しづつ光が戻りつつあった。
本編始まりました。
良ければこれからもよろしくお願いします。