オロチ戦
「あ、あれはオロチ」
そう言ったのは灯ちゃん。
見つけたのか。
「私が先に倒す!」
霧山さんが言い返す。
で、俺と直也がそれを追いかけている訳だが一向に追いつく気配がない。
「なぁ直也。灯ちゃんと霧山さん何であんなに早いんだ?霧山さんはともかく灯ちゃんの事は分かるんだろ?」
「そうだな。灯のGS。まぁギフトスキルの事だ。それは速度上昇と言うもので、色んなものの速度を上げる事が出来るんだ」
「それであんなに……」
「細華の事は知らん」
直也は少し不機嫌そうに言った。
なんだかんだ、直也も霧山さんとはなれ合うような中じゃないって事なのかなぁ……。
俺たちが話して内に二人はオロチに追いついたようで、もう戦闘態勢を取っているようだった。
流石だな。
「おい影助。見てないで俺たちも行くぞ」
そう直也に言われ俺も二人の下に向かった。
「ちょっと遅いよ兄さんたち」
そう灯ちゃんが言うと
「お前らが早いんだ」
と直也。
そのやり取りを見ると俺は何故か安心した。
普段通りの二人だからだろうか……。
俺がそんなことを思いながら二人の方を見ていると
「影助お兄ちゃんもほら行くよ」
と灯ちゃん。
「そうだな。ありがとう灯ちゃん」
それに返して俺もオロチに向き直った。
ふと霧山さんを見ると霧山さんは一人、少しは慣れた場所にいた。
俺がそちらに視線を向けているとこちらに気づいたようで、霧山さんは俺にどこか寂しげな笑顔を見せてからまた、オロチに向き直った。
「霧山さん?」
俺がそう呟いた直後、二匹の蛇を下半身だけくっつけたような見た目をしたオロチは目の前で一匹の大蛇に分裂した。
「何というか見た目に反しない動きをするんだな……ってこっち向かってきてるのか!」
俺は腰のベルトに刺している短剣を両手に。
先ずは弱点属性探知からだ。
「サーチクリティ……」
とそこまで言いかけたところで霧山さんの声が響いた。
「影助君!避けてっ!」
俺はその叫びの通りギリギリで大蛇をかわした。
はずだった。
大蛇はしっかりと俺の移動先にその巨体を這わせて突っ込んできた。
終わりだ。
俺はそう思い目を瞑った。
「なに目瞑ってるの!」
そう言われ俺は即座に目を開いた。
「霧山さん」
俺は右手に刀を持ったままの霧山さんに手を引かれている状態だった。
「何ボーっとしてるの!?ほら、次の攻撃が来るよ!」
「え、ちょ、ちょ」
俺は手を引かれるままに大蛇の突進を回避した。
しかし凄いな。
こんなにスピードが高いとは……。
「ねぇ影助君。もうちょっと早く走れないかな?」
「ごめん……」
「そっか、じゃあ仕方ない!反撃強化!」
霧山さんは向かってくる大蛇の方を向いた。
だ、大丈夫なのか?
「行くよ、流撃!」
霧山さんは俺の手を握ったまま若干右側に移動し、横に構えた刀の刃で大蛇の表面を受け流した。
そしてそのまま霧山さんが刀を横に薙ぐような動作をするにつれ段々と大蛇の体を刀が切り裂いていった。
最後に霧山さんが刀を振り終わる時、既に大蛇は横っ腹が割かれ、動きを止めていた。
「す、凄かった、な」
左手で掴まれていた俺は大蛇すれすれの所で固まっていた。
まさかあのまま大蛇を切り裂くとは……。
「大丈夫だった?」
「あ、あぁ大丈夫、だ」
大丈夫。大丈夫なのだが、心が大丈夫じゃなさそうだ……。
「そう言えばさっき何かスキル使おうとしてなかった?」
「よ、よく覚えてたな。俺なんかさっきの恐怖感でどうにかなりそうだ……」
「まぁ、まだ慣れてないんじゃない?それよりさっきのスキルは?」
「なんか、霧山さん肝っ玉だね~。さっきやろうとしたのは弱点属性探知。相手の弱点属性を知れるっていうスキルだ」
「肝っ玉じゃないって。私は慣れてるだけ。でもなるほどね。確かに最初に使うスキルだ。あっちのがまだ残ってるから、ちょっとやってみれば?
「そうするよ。弱点属性探知!」
俺がスキルを発動し、出てきたのは
無効化されました。と言う文字。
「無効化、された、みたい」
「まぁそうだろうね。大型モンスターは大体そう言う情報系のスキルが無効化されるから……って影助君!大蛇がこっちに!」
霧山さんが指さしたほうを見ると直也たちの方にいたはずの大蛇がこちらに向かってきていた。
それも先程よりさらに早いスピードで……。
『流撃』
刀の刃で攻撃を受け流し、そのまま攻撃に転じるカウンター技。
威力は使用者の攻撃力に依存。そして武器の攻撃力が高いほど成功率が高くなる。