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10万円勇者のスキルは「当たる君」

作者: ミステリオ

とある異世界。

転生勇者アルスは、今まさに魔王を討伐するところであった。

たじろぐ魔王は叫ぶ。

「ばっ、ばかな!我のレベルは、100万だぞ!それを1人で圧倒するとは、き、貴様のレベルは幾つだというんだ!」

「俺のレベルか?俺は、」

アルスは手元の何かを見ながら自身のレベルを告げる。

「07,09,11,19,27,30,36 だ!!」


静寂


「…すまん。もう一度言ってくれ。」

アルスは慌てて「ちょっと待って、計算するから!えーと」

少し間があり、

「7兆911億1927万3千36、だ!!」

「何いぃぃーーーーーー!!!!!!」

「この差に絶望して、消え去るがいい魔王ーー!!」

アルスは、無造作に剣を振り下ろす。

その剣は、魔王を、魔王城を、魔王城がいた場所を次元ごと切り裂き、跡形もなく消滅させた。

その空間にただ一人いる存在、アルスは、天から光が降り注ぎ、「どうやらこの世界も救われたようだな。帰るか。」光と共に天に上り消えていった。


「お疲れ様だったねぇ。アルス君。報酬の10万円は、いつものように指定口座に振り込んどいたよー。」

全く威厳が無く、くだけた調子で話すこの男は神であり、アルスを危機に瀕している異世界に送り込む存在である。

「いやー、やっぱりすごいよねぇ。そのスキル【当たる君の数で自分のレベルが決まる】って、レベル兆まで行けば、大抵の存在は、ぶっ殺せるからねぇ。」


ここで、アルスのスキルを説明しよう。

【当たる君の数で自分のレベルが決まる】とは、宝くじ売り場に置かれている数字選択式くじの数字を出す機械「当たる君」で出た数字によって戦闘時やイベント時の自分のレベルが決まるという能力である。例えば、7桁の数字を当てるくじの数字を出すボタンを押し、その結果「31,32,33,34,35,36,37」という数字が画面に出たとする。そうすると、アルスのレベルは、31兆3233億3435万3637になるのだ。ちなみに、現在の数字選択式くじは、7桁が最高で、上記のレベルがアルスの最大レベルとなる。

「あー、アルス君ごくろうさん。もう帰っていいよ。」神は、アルスの後ろの扉をチラ見して、帰るよう促した。


はっきり言ってアルスは、この神がすっげぇ嫌いである。

まず、1つの世界を救う報酬が10万円とは安すぎないか。

こっちは、自分の世界の生活もある。それを急に呼ばれて(神なりの配慮で大抵、仕事の休み時間や休日であるが。神の能力で、ほとんどタイムラグなしで帰る事が可能だが。)世界の救世主になったのに毎回10万円。何回か賃上げを要求したが、「嫌なら辞めてもいいんだよ。代わりはいくらでもいるから。」と、パワハラを言われた。アルスが、神が嫌いな理由の最大点はこれである。

神は、パワハラ上司。レベルが31兆もあれば、神も殺せるのではないかと考えたが、神のレベルは「無限」であった。逆に殺されてはかなわない。アルスは、憮然とした態度で、現実世界へ帰還した。


アルスは(現実世界では本名があるが、匿名希望としたい)、何故自分に「当たる君」のスキルになったのか考えた。答えはすぐに出た。自分が宝くじをよく買うからだ。中小企業のパッとしない部署にいるアルスは、成績もあまりよくなく、出世も遅い方だ。そんな彼がはまったのが、宝くじだ。投資とかがわからない自分の様な頭の悪い人間でも一獲千金のチャンスがある。よく、「宝くじは貧乏人の税金」とか揶揄されるが、頭の悪い貧乏人には、それしか人生挽回のチャンスが無いから仕方がないではないか。ちなみに、異世界を救っている事は口外できないので、動画配信等で稼ぐこともできない。宝くじしかない。


しかし、異世界を救うのも飽きてきた。

何より、あのパワハラ神に従うのがもう嫌だ。

何とかしたい…。

アルスは考え、ある案がひらめいた。


アルスは、異世界を救った後、神にこう聞いてみた。

「神様、兆のレベルでもかなわない異世界ってあるんですか?」

神からすぐに返答が来た。

「あるよ。10京の魔王がいる異世界。手出しできる奴が見つからないから放置してるんだけど、何とかならないかなぁ、あそこ。」

アルスは、

「神様、当たる君をこう改造してくれれば、俺が魔王倒せますよ。」と言って神にささやく。

神は「あぁ、それなら簡単だよ。ほれ。いやぁ、あの世界が救われるなら助かるなぁ。お礼に、その世界救ったら、30万円上げよう。」

(どこまでもケチだな、このクソ神は。)

アルスは、心の中で思ったが、とりあえず、その世界へ行く事にした。

レベル10京の魔王が支配する世界だけあって、そこはまさに宇宙レベルで凄まじい事になっていた。星を喰うドラゴン、光の速さで星々を移動するゴブリン等、今までとはスケールが違う世界だった。

しかし、アルスの予想通り改造された当たる君のレベルの余裕で討伐、魔王のいる空間までたどり着いた。

魔王は形容しがたい形態をしており、戦闘も宇宙が壊れるのではないかというレベルだった。

それでも、アルスは勝利した。

何故なら、今のアルスのレベルは、99京9999兆9999億9999万9999だからだ。


当たる君を見た事が無い人に説明すると、当たる君の数字表示画面は9つある。そして、アルスが神に改造を依頼したのは「当たる君の数字画面9個を1から9まで出して欲しい事、そして出る数字も1から99まで出して欲しい事」であった。

そして、アルスはもう一つ確かめたいことがあった。

他のスキルが使えるかどうかだ。

それは、途方もない数のスキルが使えた。

まずアルスは、スキルの1つでこの宇宙で魔王たちの被害を全て無くし、元通りにした。そして、神の場所へ帰還した。


「アルスくんありがとねー。30万円振り込んどいたから。」

神の態度は相変わらずだった。最後に改心するかと思ったがしなかった。よって、アルスは計画を実行する事に決めた。

神殺しだ。

アルスは「神様、俺、この仕事辞めます。」

そう言って、当たる君を神に手渡した。

神は当たる君を受け取りながら、「ふーん、君も良く働いてくれたんだけど、残念だねぇ。ま、別の人材探すよ。」と言って、当たる君を見た。神が見た数字は、1つだった。


「4」


ここで、アルスは帰る扉を開け、帰る前に3つのスキルを発動した。

1つ:「スキルを譲渡するスキル」

1つ:「当たる君の数で自分のレベルが決まるスキル」

1つ:「相手スキルを即発動させるスキル」


神は、アルスの計画に気が付いたが遅すぎた。

アルスは、とっくに元の世界に帰還したが、呼び戻す事も出来ない。

何しろ、今の神のレベルは「4」だからだ。

「やめてくれ、こんなレベルでは神の力を失ってしまう!そうしたら…」

神は後ろを振り向いた。

そこには、新たな神がいた。

神の力を失った神は用済み。すぐに新しい神が用意される。そして力を失った神は…

神は絶叫した。


アルスは、自分の部屋で大の字になった。

「やってやった。」というより安堵に似た気持ちだった。

神が消えたので、自分も何の能力も使えない。

でも、今まで散々ウザかった神を消して、心底ほっとした。

神の最後を見たかったが、自分が帰れなくなるので我慢したのが唯一の心残りだが。


神の力を消したことで、アルスは気になって自分の預金通帳を見た。

そこには、最後の30万の振り込みを含めて今までの預金があった。

10万円勇者も続けたので、結構な額になっている。

決して裕福では無いが老後の心配はしなくて良さそうな額だ。

アルスは、これからどうしようか考えて、すぐに決めた。

宝くじを買いに行こう。

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