やっぱ俺の妹はこんなにも可愛くねえ
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
帰宅早々、悍ましい声で俺に笑いかける妹に対し、俺は即座に臨戦体制に移行する。
美波の奴が俺に対して「お兄ちゃん♡」なんて言ってくるなんて、絶対にありえない……! 何か、何か良からぬことを企んでいるに違いない!
「企んでいるなんて人聞き悪いよ、お兄ちゃん。私はただぁ、大好きなお兄ちゃんを出迎えただけなのにぃ」
全身が、震える。
決して感動とかそういうのじゃない。全身からサブイボがブワッと出てきた。真夏だっていうのに、寒気を感じたぞ……!?
「お、お前ふざけるなよ!? 普段のお前は冒険から帰ってきた俺に対して「何だ、生きてたの?」なんて真顔で言ってくる冷め切った妹なんだよ! カズサのことは笑顔で出迎えるのに、俺の事は華麗にスルーするような奴なんだよ! それなのに俺の事を大好きだと!?」
さては心にもない冗談で俺の精神力を削り、衰弱死させた後に遺産を奪う気か……!? そうはさせん、そうはさせんぞ……! 万が一俺が死んだ時、貯金は全て両親に相続させるように手配してあるからな!
「そんな、酷いよお兄ちゃん……! 私、お兄ちゃんたちが冒険に行ってる間、ずっと心配してたんだよ……? だから二人が無事に帰ってきた時はすごく嬉しかったのに……くすん」
「やめろぉおおおおおおおおっ‼」
突き抜けるような違和感と全身を蝕む蕁麻疹に俺は悶え苦しむ。
全身が痒すぎて過呼吸になりそうだ……! 一体コイツは何がしたいんだ!?
「ゼェ……ゼェ……そ、そっちがその気なら、俺にも考えがあるぞ……!」
「うにゃ?」
一瞬ブチ切れそうになったが、それを必死に堪える。なにが「うにゃ?」だ。ワザとらしくあざといポーズを取りやがって……!
「今すぐその余裕を絶望に染め上げてやるぞ……!」
「何言ってるんすか? ユースケ」
奴の優勢を一瞬にして瓦解させる方法はただ一つ……俺は立ちあがり、満面の笑みを浮かべて美波に言う。
「おぉ、出迎えてくれたんだね! ありがとう、我が愛しの妹よ! 相変わらず天使のように可愛いお前の為に、東京土産を買ってきたぞ!」
「いやああああああああああああああっ! 蕁麻疹がぁあああああああああああっ!?」
首をガリガリ搔きむしりながら廊下にのた打ち回る美波。やったぜ!
「おやおや、どうしちゃったのかな? そんな苦しそうに悶えちゃってさぁ……!」
「こっちが下手に出ていれば、何時までも図に乗らないでよ、お兄ごときがぁ……!」
「どういう兄妹喧嘩してるんすか」
遂に化けの皮を剥がしやがった妹を盛大に見下し、あらん限りの嘲笑を向けてやる俺。やはり、兄と妹の関係性はこうでなくちゃな……! 兄より優位に立つ妹など、あって堪るかってんだ。
今にも兄妹喧嘩が佳境に入りそうな雰囲気が充満する中、カズサがパンッと両手を鳴らして俺たちを制止する。
「とりあえず、少し落ち着いて話しましょうか」
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カランという、氷がグラスを叩く軽やかな音色と共に、リビングのテーブルに座る俺たち三人の前に冷たい緑茶が置かれた。
「今日は暑いっすからねぇ。これ飲んで頭冷やしましょう」
「「はふぅ……」」
朗らかに笑うカズサに毒気を抜かされながら、俺と美波は揃って緑茶を口にする。
緑茶の冷たさと苦み、そして鎮静作用が気持ちを落ち着かせる……おかげで美波の心無い言葉によって噴き出していたサブイボがようやく収まったぞ。
「で、何企んでいるの? 理由もなしに俺にあんな態度取るような奴じゃねぇだろ、お前は」
「流石に企んでいるって程でもないと思いますけど……何か頼みごとくらいはあるんじゃないんすか?」
当たり前だろう。内心ではともかく、表面上仲良くするような間柄でもないんだから。
「はぁ……ちょっと機嫌とってから言おうと思ってたけど、通用しないかぁ。お兄みたいなのは、こういうのが好きかと思ったんだけど」
それはオタク全体に対するちょっとした偏見というものだ。そもそも俺に妹萌えの気はないしな。
「もう率直に言うけど、まぁ……依頼をね、お願いしたいの」
「依頼って……もしかして美波ちゃんから《カラクリ冒険営業所》にってことですか?」
コクリと、無言で頷く美波。
一応、俺の家族全員にはクランを立ち上げたことを話してはいる。でもまだ依頼を直接受ける体制は整っていないのだ。俺に直接に申し込めば目当ての資源を持ち帰ることもできるけど、値段設定もまだまだ出来ていないし。
「ほら、私ってAデザイナー目指してるでしょ? それで今年の末、学生部門のコンテストみたいなのがあるから、それで素材が欲しくて」
Aデザイナー……アドベンチャー・デザイナーの略称だ。強化槌の発見により爆発的に需要を増した職業で、名前の通り冒険者に向けられた服や装飾品全般を作る専門家のことを指す。
指輪やネックレスと言った戦闘に支障をきたさない、スキルを付与するためのアクセサリーは、オシャレと実用性の観点から冒険者たちから特に人気がある。テレビに映る冒険者を煌びやかに飾るアクセサリーのデザインに美波は小学生の時から強い関心を抱いていたっけ。
その結果が、高嶺山学園の入学でもある。あの学校、美大とか音楽大とか、専門的な学校への進学を目標とした生徒をサポートするのが売りらしいし、当然のように将来Aデザイナーを輩出することを目的とした大学への進学サポートもある。
詳しいことは聞いてないけど、千堂や百瀬が高嶺山学園に進学したのも同じような理由らしい。
「コンテストで良い結果出せれば、相応の注目を浴びれる……デザイナー目指すなら少しでも知名度上げなきゃだし、出来る限りの準備をしたいってわけ。素材の厳選だって審査基準に響くし、毎年異世界資源で作った服飾品が入賞してるし」
虹色の光沢を放つ金に、絹のように肌触りが良いのに極めて頑丈な布など、異世界で採れる衣服の材料や貴金属は、地球のそれとは比較にならないほど人気が高い。現にクエストボードには数多くのAデザイナーから資源調達の依頼が来てるしな。
実際に売れるものかどうかはともかく、少なくともコンテストと言う場では材料の質に物を言わせるのも、間違いではないだろう。
「高いのは分ってるけど、私も高校に入ってからバイトするようになったしさ、何とか分割払いで受けられない……?」
「高額なのを理解してるなら、尚更止めといた方がいいぞ? 物にもよるけど、練習用の分も含めれば新車が買える値段になるかもだし……俺にはよく分からないけど、さっきの口ぶりから察するに、地球産の素材でも良い結果出せる可能性はあるだろ?」
これは面倒だから適当に言ってるんじゃなくて、本当のことだ。安定して手に入れられる物じゃない分、異世界資源というのは馬鹿みたいに高い。
将来的にクランを経営する身としては、身内だからと言って完全無償で危険な場所にある資源を調達するのは筋が通らない。それは美波も分かっているから、最初から金は払うと言ってるんだろう。
「……別に、将来の為だけにコンテストで良い結果を出したいわけじゃないよ」
「あん?」
「これでも本当に心配してるんだから。なんだかんだ言って、私にとって大事な家族なんだよ? いつか異世界で人知れず死んじゃうんじゃないかって不安になるし。……だから縁起の良いお守り代わりにコンテストで箔の付いた、未来の職人として自信をもって贈れるアクセサリーを使ってもらいたいの。無事に帰ってこれますようにって、願掛けをしたアクセサリーを大切な……」
「……美波」
俺たちは、たった二人しかいない兄妹だ。普段はいがみ合ってるけど、内心ではお互い大切に……。
「大切な家族であるカズ姉に付けてもらいたいの!」
「え? アタシ?」
どーせこんなオチだと思ってたよ畜生め。
ご質問があったのでお答えします。
Q『おマルちゃんは性別はオス?メス?それとも両性でしょうか?』
A『メスですね。機会があれば、擬人化させたい。無表情系ロリっ子にしたい』
Q『モンスター展やモンスターカフェのようなモンスターと触れ合えるイベントや店は無いんですか?
モフモフフワフワや美女なら需要あるから誰か考えそうですが』
A『将来的に、そういう店やイベントを見据えている人は一定数存在しますが、現状ではテイムシール自体が貴重なマジックアイテムである為、数的に厳しいんですよね。個人経営の店ならともかく、イベントともなるとかなりの数をかき集めなきゃですし』
Q『おマルは酷い。酷くない?』
A『当初ではマル子という最有力候補があったんですけどね。でもそれだと、『ベルゼブブ嬢のお気の召すまま』という漫画に出てくるとある人物とキャラが被りまくっちゃうんです。
それにしても適当と思う人も多いかもですけど、現実でもペットに付ける名前は適当というか、フィーリングで決める人も多いですし。雄介は便器のおまるの事を完全に失念した状態で、語感の良いニックネーム、おマルを付けたんですよ」




