イヌ科の動物はとても頭が良いのです
昨日投稿できずに申し訳ありません。ちょっと体調がすぐれないような気がしたので、執筆をお休みさせていただきました。
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
数多のギミックを乗り越え、多くのモンスターたちを葬りながら辿り着いた屋上の一つ下の階。カズサの内部空間で仮眠から覚めた俺は、眼を擦りながらいの一番にコントローラーを握る。
(おはようです、ユースケ。ちゃんと寝れました?)
(ぐっすり……とまでは行かないけどな。集中力は完全に戻ったと思う)
暁ダンジョンの攻略を始めてから既に二日目……ぶっ通しで進み戦い続けて、ようやくボス部屋の直前まで辿り着いた。
これから戦う強敵相手に少しでもコンディションを取り戻すために取った仮眠だけど、神経が冴えてちょくちょく目が覚めたなぁ。モンスター除けのマジックアイテムを使いはしたけど、戦闘力10万越えばっかりのモンスターたちにどれだけ通用するか分からないし、カズサに見張り番を頼むしかなかった。
まぁそれでも普段のパフォーマンスを発揮するには十分……時間をかけて探索したおかげで、良いアイテムも手に入ったしな。
(さて、ボス部屋突入前に【アイテムボックス】の中身を確認しないとな)
悪魔系モンスターとの戦いの必需品と言える聖水は、作り過ぎなくらい作ってきたからまだまだ有り余っている。マルコシアスとの戦いでも十分もつだろう。エネルギーポーションも【魔王覚醒】に合わせて大量補充してる。
回復ポーションに各種強化系ポーションも十分。強いて言うなら、壺爆弾を始めとした攻撃アイテムを消費しすぎたってところか。大壺爆弾が、残り五個しかない。
(こう、迷宮型ダンジョンみたいな四方が囲まれた通路続きの場所だと、壺爆弾系の攻撃アイテムってかなり使いやすいですもんね。適当に投げても当たるっていう)
(狭い場所でこそ最大力を発揮するアイテムだから、迷宮型ダンジョンだとついつい使っちゃうんだよな)
まぁ今回のマルコシアス戦では壺爆弾の出番は殆どないと思うけど。
開けた広い屋上の上に、スピードもあって飛行能力もある敵に壺爆弾を当てるのは至難の業だ。余程状況を整えない限り当てられないだろうし、魔王銃剣や六天のマフラーもあるからダメージソースには困らない。
空を飛ぶという特性上、罠系アイテムの需要も低めだ。基本的に罠系アイテムっていうのは地面や床、天上に設置してこそ効果を発揮するしな。
(爆弾を多用したおかげで、ポーションの消費を最低限に抑えることができたから良しとしよう)
(それもそうっすね。……で、残りが暁ダンジョンで手に入れたアイテムっすね)
ここに来るまでに、俺たちは五つの宝箱を発見して開けた。
まず一つめの宝箱に入っていたのが、増毛のスキルオーブ……全世界の禿げにお悩みの人々に高く売れることで評判のオーブだ。クエストボードにもこれを求める依頼が結構な数が届いていたし、出来るだけ高い報酬金を出せる人に売り飛ばそう。
二つ目の宝箱には、鬼神の刃薬。ゼル・シルヴァリオ戦でも使った、一撃限り攻撃の威力を跳ね上げらせるアイテム。
三つ目の宝箱に入っていたのはアスクレピオスの葉薬。外傷を癒す効果はないけど、かわりに風邪とか内臓の異常……病気なら殆ど治せるっていう秘薬だ。冒険者的には難病に苦しむ人に渡るよう寄付とかするべきだろうが、まぁそこは後で考えよう。
そして四つ目の宝箱には両端に小さい刃と腕輪が付いた短い鎖だった
―――――――――――――――――――――――――
品名:アンドロメダの鎖
かつて神々の怒りに触れた女を縛り上げた神具。伸縮自在にして、装備者の思い通りに動かせることができる魔法の装備。
《装備スキル》
・オーラブレード
・伸縮神鎖
―――――――――――――――――――――――――
ギリシャ神話に登場する、アンドロメダの逸話をモチーフにした一品のようだ。こんな外見だけど、分類としては武器らしい。
【天眼】の説明文によると装備した者の意志によって伸縮自在に動かすことができ、【不壊の担い手】と併用して拘束具としての使い方がメインになるかな……とりあえず、装備するだけしておくか。試運転もまだだから、今のところ信用できる装備じゃないけど。
ちなみに、最後の一個は戦闘力十四万くらいのミミック系モンスターだった。カードも落とさなかったし、実に不愉快だ。
(とりあえず、マルコシアス戦でも有用そうなのが三つも見つけられて良かった。これで挑むとしよう)
現状、これが今の俺たちに出来る最大限の準備だろう。腹を括り、ボス部屋の扉を開くと、高所特有の強めの風がカズサの髪を大きく揺らす。
落下を防止するには心許ない短い柵が四方を囲む広い屋上、その中央で体を丸めるように寝そべりながら挑戦者を待ち構えていたのは、黒い体毛と翼をもつ巨大なオオカミ。
間違いない……あれが悪魔系モンスターの中でも有名な部類のモンスターであり、強大な力を持つ種族、マルコシアスだ。
―――――――――――――――――――――――――
種族:マルコシアス
戦闘力:150000
三十の軍団を率いる、侯爵級悪魔。かつては主天使であり、強い闘争本能を秘めているが、認めた相手には礼節を尽くす悪魔としては異端の精神性を持つ。
―――――――――――――――――――――――――
図鑑通りの外観……実際に生で見てみると、ますますテイムしてみたくなってきた。
「ゥウォォォォォォオオオンッッ‼‼」
そんな俺たちの意思に応じるかのように、カズサを睨みつけながら立ち上がったマルコシアスは凄まじい咆哮を上げる。
とんでもない絶叫だ……! あまりの咆哮の強さに床や大気がビリビリ震えて……って!?
「あいたっ!?」
生じたソニックブームによってカズサは吹き飛ばされ、ボス部屋の扉に背中から叩きつけられる。
スキルなのか地声なのか、咆哮に見せかけた見えない攻撃……! いきなりかましてくれるじゃんか……!
「グルルルルルル……!」
(休ませる暇は当然無しっすよね!)
そんな俺たちに追撃するように、マルコシアスの全身が黒い霧に変化する……【悪魔憑き】を使ってくる気だ。
でもそのスキルはここに来るまでの間、大量のデーモンから食らい続けてたし、対処にはそこそこ慣れている……俺は慌てず□ボタンを押して聖水を使ったんだけど、カズサの体が光のベールに包まれるや否や、マルコシアスはすぐさま【悪魔憑き】を解除してしまった。
(……明らかに警戒しましたね)
(防御と同時に痛みを与えて、その隙に一気にダメージを与えようと思ったんだけどな)
モンスターと言うのは基本的に知性がないものが多い。ボスモンスターにもなれば知性が発達するのも多かったが……そんなモンスターたちの中でも、特に警戒心の強いのは総じて厄介だ。
「ガァアアッ‼」
すぐさま近接戦闘に切り替えるマルコシアス。鋭い爪が生えた前足でカズサを引き裂こうとしてきたけど、それは俺たちからすれば一番対処しやすい手だ。
即座に右手の魔王銃剣による【ノックバックカウンター】で反撃。体勢を崩したところで、左手に持つ得物から【天魔轟砲】をぶっ放そうとした。
(なっ……!? 切り返しが早い!?)
マルコシアスは崩された体勢をコンマ一秒で整え、がら空きになったカズサの右脇に向かって前足を薙ぎ払い、カズサの体は盛大に床に擦れて止まる。
そのまま追撃とばかりに飛び掛かってくるマルコシアス。明らかに拘束するつもりだ……それを直感した俺はコントローラーを操作して、カズサをマルコシアスから距離を取らせると、奴はそれ以上追撃するようなことはせず、ゆっくりとカズサの周りを旋回している……。
(なんか懐かしい戦い方だって思ったら……コイツあれだ、多分コボルトナイトと同じような感じだ。
ご質問があったのでお答えします。
Q『消費型の性変化アイテムを使えば主人公もサキュバス級の美少女になる可能性がありますか?』
A『いや、無理でしょ。主人公はちゃんと整えればカッコいい系男子ですし、TSしても可愛いが作れる下地はある系の女子にしかならないかと』
面白いと思っていただければ、お気に入り登録、または下の☆☆☆☆☆から評価ポイントを送って頂ければ幸いです




