表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/138

初めて東京行った時、人の多さに面を喰らう地方都市出身って多いよね

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


 戦闘力上げついでに色んなダンジョンで実戦的な練習を積み重ね、粗削りだけど【魔王覚醒】を用いた戦闘方法を確立できたと思う。

 アイテムの準備は万端。戦闘力は11万を上回り、スケジュールも問題無し……駅で弁当を買った俺とカズサは、意気揚々と新幹線へと乗り込んで東京へと向かった。


「それで、今から行くダンジョンってどんなところなんすか?」

「んー、ちょい待てよ」


 俺はスマホに入れておいたダンジョンの情報を、確認がてらにカズサに伝える。

 暁ダンジョンは、東京本部のゲートを通っていくのが一番近い場所にある、迷宮型ダンジョンだ。出現するモンスターは戦闘力こそこれまでのダンジョンとは比較にならないほど高いが、幽霊系のような厄介なモンスターは存在せず、広大でギミックこそあるものの一人での攻略も可能。

 推奨戦闘力こそ15万と、今のカズサの戦闘力を上回ってはいるが……強力なスキルを有する俺たちなら踏破出来ると判断し、こうして向かっている訳である。


「まぁ、推奨戦闘力が高い分、挑む冒険者の数も少なくて情報不足なのは否めないけどな」

「出てくるモンスターの情報も、分かっていないところが多いっすね。外見だけ確認されたのもいたり……あ、このカマボコ美味しい」

「ウチの地元は、カマボコとか竹輪とか、練り物作ってる工場の本社があるからな。駅弁には皆そのカマボコ入ってるらしいぞ」


 こんな感じで、時々話を脱線させながら東京へ続く線路を進む。それから結構な時間が立ち……ついに東京のシンボルが見えてきた。


「わぁ……! 見てください、ユースケ! 東京名物、魔王殿(まおうでん)っすよ!」


 かつて東京には、東京タワーという赤い塔がシンボルとなっていたらしいが、それも大昔の話。

 初めてこの世界にモンスターが侵攻してきた際にタワーは倒壊し、東京そのものが瓦礫の山と化した。その際に出現したのが、魔王と名乗った世間で初めて確認されたモンスターであり、主を失った今も東京の上に浮かぶ巨大な城……魔王殿なのだ。


「今現在、地球に存在する唯一のダンジョンらしいな。もっとも、ダンジョンとしての機能を失ったのか、モンスターも宝箱も一切出現しないみたいだけど」


 ……まるで、俺たちが信長を倒した後に残った、焼け落ちた廃寺のように。

 現在でも冒険者以外は立ち入り禁止区域とされているけど、近々観光資源としての活用が実現化するという話でもちきりで、有料で中に入れるようにしようという運動が活発に行われているそうだが、それを聞いたカズサは首を傾げる。


「でもあんな空、どうやって行くんすかね? アタシたちの【三段ジャンプ】でも届かなさそうですけど」

「そこはほら、ヘリコプターでも何でも使うだろ。昔、初めて魔王殿を攻略した冒険者たちは戦闘機に乗って突っ込んだらしいし、あんなにデカいんだから着陸する場所だってあるだろ」

「あー、なるほど。それもそうっすね。アタシったらどんな飛行スキルやマジックアイテムでなら観光客全員運べるのかなって思ってましたよ」

「あはははははは! 完全に冒険者脳じゃねぇか!」

  

 まぁ、かく言う俺もスキルやマジックアイテムを基準にして物事を考えることが増えてきたから、カズサのこと言えないんだけどな。

 そんな俺たちを笑うように、遥か上空に浮かんでもなお巨大に見える魔王殿は、夕焼け前の光を反射しながら輝いていた。 


   =====


「異世界行くまでは、帽子とグラサンを外さないようにな」

「はいはい、分かってますよ。ユースケも、ほら」


 もうじき東京駅に着くというアナウンスが流れる新幹線の指定席で【コスチュームチェンジ】を発動し、長い銀髪を帽子で隠し、サングラスをかけたお忍びスタイルのカズサは、俺に帽子を被せた。

 何でこんなことをしてるかというと、ここ最近俺たちが有名になってきた事が起因する。ネットで検索してみても俺たちは冒険者業界の新星として騒がれていて、最近じゃあ地元を歩いているだけでも、ファンだという見ず知らずの人に頻繁に声を掛けられるんだよね。 


 魔王を打倒して百年……かつての大敗北を乗り越えたと言わんばかりに、首都として再び返り咲いた東京は、魔王殿の観光効果も相まって、地元とは比較にならない人口密度だ。

 人が集まれば、当然俺たちの動画を見てくれている視聴者も多いわけで……有名冒険者は、出歩く時には芸能人並みの変装が求められる……そんな話はずっと昔から聞いていたけど、まさか本当に変装する必要が出てくるとは。


「まぁ、俺は顔出しOKな気もするけど」


 カラクリという冒険者の看板となっているのはカズサであって、俺自身は殆ど顔出しもしていないし、声も流していない。これまで声をかけてきたのは皆カズサ目当ての人だ。

 カズサを全面に押し出してアピールしてたから当然と言えば当然なんだけど……正直、ちょっと羨ましかったり。俺もこれからは動画で少しは顔出ししていこうかな?


「でも良かったんですか? 最近声かけられることも多くなってきましたけど、アタシは移動中【アイテムボックス】でも良いんすよ?」

「変な遠慮すんな。どうせ暁ダンジョンに行くのは明日なんだし、それまで軽く駅周りを見ていこう」

「……にひひ。どうもっす」


 ちょっと照れるように、カズサははにかんだ。

 状況に迫られれば自らの自由を制限することも厭わないけど、【アイテムボックス】を自在に出入りするカズサはどちらかというと、外を出歩く方が好きなんだってことくらいは理解している。

 せっかくの遠出だ。東京観光ができるほどじゃないけど、予約したビジネスホテルのチェックイン時間にはまだ時間はあるし、大きな駅というだけあって施設も充実している。土産を見繕うついでにプラプラするのもいいだろう。

 

「んーっ。やっと着いたなぁ」

「テレビで見たことありますけど、本当に人だらけっすね。気を付けないと迷子になりそう」


 新幹線に揺らされること数時間。人に溢れた東京駅に到着し、俺たちは首都の人口密度に圧倒される。

 同じ新幹線が通っている駅でも、広さにしても人の多さにしても、俺たちの地元とえらい違いだ。まぁ、地方都市と比べる方が色々間違っているんだけども。


「それにしても……やっぱ人が多いんだよなぁ」


 人ごみに酔う……なんて言葉をよく耳にするけど、この状態がまさにそれだ。カズサは小さいから、逸れないように気を付けないと――――


「えいっ」

「うおっ!?」


 その時、カズサが俺の腕に抱き着いてきた。薄い布越しに伝わってくる、重量感のある柔らかい感触……正直、凄く気分が良い。


「にししっ。これなら逸れないっすね」


 遠出先でサキュバス級の美少女と腕を組んで歩く……カズサはどう思っているのかは分からないけど、少なくとも俺は凄いリア充気分だ……!

 昔の薫は大人しい性格だったからこういうことしなかったし、イメチェンしてからは接触とか無かったからなぁ……まぁ、もう遠い過去の事だから記憶も定かじゃないんだけど。  

 男一人、もしくは男だけで通り過ぎている通行人に優越感を抱きながら進んでいく。周囲の目から、俺たちはどう映るんだろうか。


「ユースケユースケ! 見てくださいよー!」

「ん? どれどれ」


 改札口を超えてすぐのところにある駅中のモール。数々の飲食店の他にも、多種多様な店が立ち並ぶ中、観光客に狙いを定めた土産屋を冷かしていると、カズサが菓子折りの箱を指さした。

 東京名物、魔王殿バナナである。

 歴史を遡れば、昔は違う名前でありながら全く同じ味の菓子だったらしいんだけど、魔王殿の登場によって名前と外観が変更。薄黄色の生地に魔王殿の焼き印が付けられるようになったとか。


「他にも魔王殿クッキーに魔王殿まんじゅう。魔王殿プリンに魔王殿もなか……いくらなんでも魔王殿推しすぎだろ」

「でも普通に美味しいっすよ。美波ちゃんや瑠衣ちゃん、沙月ちゃんへにお土産に買いましょうかね」 


 試食用の破片をつまみながら、カズサは軽く土産物を吟味する。

 かくいう俺も魔王殿プリンは気になるところだ……二村と八谷への土産に、郵送でもしようかね?



ご質問があったのでお答えします。


Q『ネタスキルとして出てきた歯磨きや増毛をアイテムマスターが強化しまくったら、そのうちホワイトニングや発毛など一部の人にはいくら出しても欲しい神スキルになることはありますか?』

A『なりますね。まぁ総合的にかかる金額はホワイトニングや発毛の方が安いですけど、長い目や将来的な選択肢を考慮すれば、スキルカードを宿して冒険者になるという手もあります』


面白いと思っていただければ、お気に入り登録、または下の☆☆☆☆☆から評価ポイントを送って頂ければ幸いです



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 主人公の顔出し……装備型の性変換アイテムでも使うのか? 異世界と地球はどう電波が繋がってるんですか? ゲートから数キロか特殊効果で遮断されてるところ以外か 逆に異世界から地球では電波が届か…
[気になる点] ダンジョンで人口が減少したって言う設定が有ったと記憶しているんですが、今回の話で東京は人は多いと有りました。 現在はどれだけ人口が回復してるのでしょう? 全体的に回復しているのか、回復…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ