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今でも美味しい、合成着色料

ここ連日、予定通りに投稿できなくて申し訳ありません。一応、誤差一時間以内を目指してはいますが、楽しみにしてくださっている読者の方々にはご迷惑をおかけしております。

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


「やったわ! すごいわ! 流石私の英雄(アリス)たちね!」


 キリギリスの楽師たちがオーケストラを開き、魚の舞姫たちが空中で踊る玉座の間。豪奢なドレスに身を包んだ少女が心底楽しそうに微笑んでいた。


「とってもとっても綺麗だったわ! まるで雪の夜に少女が灯したマッチの火みたい! 絶対絶対、私の英雄(アリス)が勝つって信じていたわ! 猫のお姫さま(・・・・・・)の一寸法師が手伝いに来たけれど、それでもそれでも勝ちは勝ち! 最後の最後まで諦めないカメさんは、威張りん坊なウサギさんに負けないんだから!」


 正真正銘、良くも悪くもただの子供である彼女は両手を広げ、クルクル回りながらステップを踏むと、パンパンと手を鳴らす。


「そうと決まったらパーティの時は近いわ! タイムリミットは夜中の零時、シンデレラの魔法が解ける前に急いで急いでお出迎えの準備をしましょう! チョコレートの扉を飾り立てて、魔女のお婆さまたちをゲストに呼んで! 沢山のタルトでお持て成し! きっときっと私の英雄(アリス)も喜んでくれるわ!」


 少女の言葉、意思に応じて白亜の城から一斉に騒ぎ立てる声が響き始める。古今東西関係なく、様々な童話の登場人物が飛び交い始めた。


「余興はどうしましょうか!? 男の子もいるからドッジボール!? それともそれとも双六が良いかしら!? いいえいいえ、私たちはレディーだもの! やっぱり綺麗なカップに満たされた紅茶とお菓子を載せた白いテーブルを囲んで、優雅にお茶会よ! そうと決まれば接待役のピノキオを完成させなくちゃ!」


 そう言うと少女は玉座の間を離れ、足で踏む度にピアノの音色を鳴らすらせん階段を下って地下へと降りると、無数の意図で繋がれた巨大な木偶人形に話しかける。

 関節部分が糸で出来ている、大きさ以外は比較的簡素な作りの人形。だがその顔の部分だけは生々しく、ヒューヒューと掠れた呼吸を吐いていた。


「さぁさぁ出番よ!? 起きて!? 目を開けて!? 最初で最後の舞踏会が始まるわ! 絶対絶対素敵な夜にしてみせるわ! 苛められた海亀に英雄(アリス)を乗せて、ここまで連れて着てちょうだいね! きっときっと英雄(アリス)は喜んでくれるもの! どっちつかずのコウモリをスープにして、親子が売ったロバはステーキに! ディナーにだって抜かりは無いわ! 冷めない内に英雄(アリス)を迎えに行ってね!?」


 純真無垢。どこまでも無邪気でありながら、内面に底知れない残酷さを隠し持つ少女はクルリとターンして、まるでこの場に居ない第三者に語り掛けるように、高らかに詠う。


「原初の魔王さまが倒されて百年! ワンダーランドを舞台に物語は遂に佳境! 川の女神さまが持ち出す金と銀の斧に惑わされないで、英雄(アリス)たち! 絶対絶対私のお城まで辿り着いて、一緒に一緒に追いかけっこをして遊びましょう!」


 ――――辿り着くはずのない、とびっきりのフィナーレに向かって!


   =====


 戦いから数日が経った。

 あの強大な脅威を目の当たりにした俺たちだったけど、魔王装備やディザスターモンスターに関する詳しいことはまだ聞かされていない。

 想像していた通り、ギルドでは重要機密として扱われているらしく、俺たちに全てを話すかどうか少し話し合う事になるそうだが……とりあえずは、説明する方向で話が進んでいると、獅子村さんと親父から聞いた。


「まさかパパさんも関わってたとは、流石に思わなかったっすねぇ」

「本部にも顔が利く、結構なお偉いさんだとは聞いてたけどな……」


 今回の冒険は俺たちに色んな謎を植え付けてきた。その全容を明らかにしたいと逸る気持ちはあるけど……今は気持ちを切り替えて大人しく待とう。情報も無しに色々考えてても仕方ないし、やるべきこともある。

 

「カズサの記憶、思い出させる手伝いしないとだしな」

「いやぁ、ホントお手数おかけします」

「いいって。それは言わない約束だ」


 ゼル・シルヴァリオとの戦いの翌日、カズサは言った。どうしても忘れてしまった誓い……その内容を思い出したいのだと。

 正直言って、俺もカズサの過去や成り立ちに興味あるし、何よりようやく自分の願いを持った相棒の頼みを無下にするほど、俺の心は狭くない。

 だから俺と出会う以前、カズサが心に誓ったとても大事な事を二つほど忘れている……それを思い出させるための手掛かりを探るという、新しい方針が加わった。

 現状では雲を掴むような話なので、基本的にはランカー入りの為の活動に注力する方向だけど、それと並行して出来る限りカズサに関する情報を集める……そういう感じで話が付いた。


「で、だ。コレ(・・)もいい加減に決めないとな」


 モンスターのテイムなど、やることは多いけど、気持ちを切り替えて目の前の問題に集中する。

 九々津家のリビングにあるテーブルの上。対面に座るカズサとの間に置かれた一枚の用紙……ギルドから持って帰ってきた、新規クラン登録用紙を指でコツコツと叩く。

  

「必要な項目は殆ど埋まっている……あとは一番肝心なクラン名だな」

「一番悩む奴っすよね、それ」


 あの後、ギガントモンスターを倒したことで資格を満たした俺たちは、人格検査もパスして見事プロ冒険者となった。

 それで兼ねてから決めていたクランの立ち上げをするために登録用紙の項目を埋めていってたんだけど、クラン名という書くのに一番時間が掛かる項目にぶち当たったという訳である。

 名は体を表す。これから長く付き合っていくことになるクランの名前を決めるのに、俺たち二人は揃って頭を悩まされていた。


「他のメンバーはアタシたちで決めてもいいって言ってましたしねぇ。アドバイスとか期待でき無さそう」


 二村や八谷、百瀬や千堂といった、いわば初期メンバーと言える面々からは、俺とカズサを中心に結成されるクランなんだから、俺たちで名前を決めてほしいと言われている。よほど変な名前でさえなければ受け入れてもらえるんだろうけど……それでも悩みどころだ。

 

「ユースケと愉快な仲間たち、稲妻サンダーズとかどうっすか?」

「そんな頭痛が痛いみたいなクラン名、名乗る度に死にたくなるわ! もっとこう洒落た名前……名前……が、思いつかない……!」

「ネーミングセンス以前の問題なんですけど!? 何も出てこないって何すか!?」

「そんなこと言われても思いつかねぇんだもん! そういうお前は頭痛が痛いネーム以外に何か思いつかないのか?」

「んー……そう言われると、返す言葉もないんすよねぇ。もういっそのこと、ね〇ね〇ね〇ねとかどうっすか? 覚えやすさだけはあると思いますよ?」

「著作権を侵害しそうなのは流石になぁ」


 水と付属の粉を混ぜて作る、駄菓子にしては高級な品を食べながら、カズサは投げやりに言う。

 こうして話し合って分かったんだけど、どうにも俺たちはネーミングセンスがないっぽい。カズサの言う通り、もう考えるのが面倒臭くなってきたぞ。


「やっぱり、ポピュラーな名前の方が良いな。変に名前の由来とか求めてスベるのも嫌だし」

「ですね……アタシたちだと、最終的に後で赤面しながら悶絶する名前になりそうっす」


 クラン名というのは、《神奈川守衛隊》みたいな本拠地+○○、《御堂冒険会》みたいにリーダー名+○○といった名前の物が多い。

 もちろん、横文字で小洒落た名前のクランも多く存在するけど、日本のクランで滑らない名付け方とすれば、やっぱり会社名みたいなシンプルで簡素な名前の方が受けがいい。


「世の中には、《ヘルブレイズ・エリーターズ》とか、《混沌騎士団》とか付けて、周りから「中二(笑)」と嘲笑われるクランも多いからな……自分でそう名乗るのは流石にきついって」


 現に俺もそんなクランと関りがなければ、ネーミングセンスの無さに遠慮なく笑い飛ばしてただろう。

 ネットでさんざん言われてるのを知っているだけあって、同じ轍を踏みたいとはどうしても思えねぇ。


「んー……じゃあ、シンプルにこうで良いんじゃないっすか?」

 

 冷蔵庫に磁石で張り付けられていたホワイトボードと水性ペンに、カズサは軽快に文字を綴る。


「《カラクリ冒険営業所》! これならどこの誰に宣伝しても恥ずかしくなっすよ」

「じゃあ、それで行くか」

  

 何かと色々悩んだけど、最後の最後には妥協して決定した。

 せっかくの名付けの瞬間だというのに全くドラマを感じない……でもその方が俺らしいか。変に格好つけてもボロ出るだけだし、このくらいが俺たちらしい。

 こうして俺たちのクラン……《カラクリ冒険営業所》は発足するのであった。



ご質問があったのでお答えします。


Q『ダンジョン出現から二百年経過したのでしたら自衛隊の高等工科学校みたいに冒険者育成の学校とか設立されていないのでしょうか?』

A『そういう計画もあるんですけどね。でも復興が開始されたのが百年前で、好景気に突入したのはごく近代。初期費用さえあれば冒険者になること自体は簡単な事もあって、少なくとも現状ではありません。ですが近々、冒険者育成学校設立計画が本格始動するところまでは来ていますよ』


Q『アイテム調合を連続して使えば超チートアイテムができませんか?鑑定眼×2で天眼なら天眼と天眼を調合したら神眼とかになったり?あと違う種類のアイテムを調合することは出来ますか?』

A『オーブや強化槌の調合は、入手率の問題で非常に難しいですが、やり方によって例に挙げられたようなチートアイテムが出来る可能性もありますね。スキル習得に関するアイテムは同種同士でなければ調合は出来ませんが、それ以外のマジックアイテムなら結構融通が利く設定ですよ』


Q『召喚系のアイテムってありますか?例えばランイーターを召喚するアイテムにアイテム強化で使ったら召喚するランイーターが増えたり、ワンランク上のモンスターになって召喚されますか?』

A『一応、ある設定です。ただ、モンスターを召喚するだけのアイテムを使っても、そのモンスターを使役できるわけではないので、戦闘に役立つものは殆どないと思っていただいた方が良いです。ちなみにその手でのアイテムを雄介らが使った場合、より強力なモンスターより多く召喚され、一斉にはアイテム使用者に襲い掛かってくるという自滅オプション付きです』


Q『アイテムボックスの容量の判断って表面積、体積どっちですか?重さにも制限はありますか?』

A『車と同じくらいの大きさの物は入りますね。重さ制限は無しです。ちなみに、スキルや魔法の装備でアイテムボックスの容量を拡張することができる設定ですね。まぁ、工場を有する企業とでも契約し、多量の資源を持ち帰る必要でもない限り、あんまり役に立ちませんが』


Q『そもそもアイテムマスターって如何いう職?アイテムを作る生産職?戦闘をこなす戦闘職?仲間を助けたり仲間や自分を強化したり敵にデバフを与える支援職?』

A『一番近いのは、アイテムを作る生産職ですね。冒険者たちが異世界から持ち帰ってきた資源の詳細の確認。マジックアイテムの調合の試行錯誤。雄介の活躍によって、最近では強化槌の発動役もになっています』


Q『アイテムボックスから物を出す時の射程ってありますか?例えばなんですが、主人公の近くにいる敵の背後にアイテムボックスからカズサを出してからの不意打ちとか。逆にカズサの内側からとかでも同じようなことができるのかな?』

A『アイテムボックスから物を出す射程は凄く短く、自分の手元にしか出せません。逆もまた然りで、戦闘面で役に立つことはないんですよね。モンスターを含めた生物の収納とかも無理ですし』


Q『魔王装備が一種のスキルオーブなら他の魔王装備と融合することはできますか?関連の魔王装備を装備せずに魔王覚醒を使用することはできますか?魔王装備を他人に譲ることはできますか?』

A『魔王装備の融合ですが、まったく同種の魔王装備でもない限り無理ですね。これはスキルオーブにも言える性質ですが、魔王装備というのは二つとないユニーク装備なので、実質不可能です。

次の質問ですが、魔王覚醒の発動条件は本編にも書かれた通り、関連する魔王装備三つを装備することなので、これも無理ですね。

そして最後の質問ですが、譲ること自体は出来ますが、魔王を倒した者以外が装備してもスキルはロックされた状態になりますね』


Q『ゲージがゼロになったことで、なんらかのペナルティーがありますか?ないならゾンビアタックができそう』

A『エネルギーゲージがゼロになれば、【木偶同調】が強制解除され、カズサは身動きを取れなくなります。体力ゲージがゼロになれば、カズサ共々雄介も死にますね。そういうデメリット付きのスキルですし』


Q『なんで本人の戦闘力を上げないの?スキルを取らないのはわかるけど主人公も戦闘力上げれば、戦力が一人から二人になるのでは?』

A『たとえ数の利は得れたとしても、総合的な強さは【木偶同調】発動して質を求めた方が圧倒的に強いからですね。【木偶同調】を発動しなければ、装備スキルを除いた殆どのスキルが使えない状態ですし。魔法の装備も簡単に手に入るものじゃないですし。何より技量に置いても自力で動いた時に比べれば差は圧倒的ですし』


Q『戦闘力が上がると病気になりづらくなったり、寿命が伸びたり、見た目の年齢が若返ったりしますか?』

A『寿命が延びる、若返ることは流石に無いですけど、体が非常に丈夫になる分、病気には掛かりづらくなりますね。少なくとも、今世間を騒がせる憎いウイルスくらいは効きませんよ』


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死ね死ね団?
[一言] なんか乙姫やハートの王女などなどがごちゃまぜになっていますね。地球の御伽話の情報が異世界で合体事故して生まれたナニカですか?
[一言] 主人公がマイティーブラザーみたいに分身するスキル覚えたりしますか?
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