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超巨大モンスター防衛作戦 7

すみません、今回ばかりは超難産で、投稿が遅れてしまいました。楽しみにしてくださった方々には、謹んでお詫び申し上げます。

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください


「うぉっととっ!?」


 突然現れた魔王の力に、流石のゼル・シルヴァリオも侵攻を止めざるを得なかった。ぶつかり合う超巨大な怪物たちが巻き起こす衝撃は盛大に地面を揺らし、カズサは思わずバランスを崩したが、慌ててコントローラーを操作してバランスを保つ。

 魔法の絨毯からは既に降りている。獅子村さんを援護する冒険者は一人でも多い方がいいし、なにより自由に動ける方が、【魔王覚醒】会得の手掛かりを見つけられるかもしれないから、その方が都合がいい。


(すっごいぶつかり合いっすね……! 近くにいるだけで吹き飛ばされそう……!)

(だけど、戦線を離れてでも【魔王覚醒】を会得する可能性に賭けたくなるのも頷ける……詳細は分からないけど、かなり強力なスキルだ)


 空を覆い隠す竜……獅子村さんが変化した姿であるヴリトラの体は水のような流動体で、ゼル・シルヴァリオが放つ氷柱を受け流しつつも、ダウンバーストさながらの冷気を受けても凍りつかない。

 神話において、ヴリトラは限られた条件でしか倒せないことで有名だ。天災染みた攻撃さえ、完全に受けきっている。

 その上、攻撃性能も飛躍的に上がっているようだ。莫大なゼル・シルヴァリオの体力ゲージがジワジワと削れて言っているし、持続時間がもっと長ければ倒しきれそうな勢いだ。


(俺たちも【魔王覚醒】を会得できれば……!)


 もちろん、戦闘力の違いから獅子村さんと同じように……とはいかないだろうけど、増援が来るまでの足りない時間を埋められるんじゃないか……そういう希望が出てきた。


(となると、鍵となるのはカズサの記憶か)

(あのー……水を差すようでなんですけど、本当に思い出せてませんよ?)


 そりゃそうだ。簡単に思い出せるんなら、カズサは今の今まで正体不明であり続けられるわけがない。それでも思い出さなきゃいけない……無駄になる可能性があったとしても、【魔王覚醒】を会得する切っ掛けとしては、それしか手掛かりらしい手掛かりがないんだから。


(一応、【天眼】で魔王装備をくまなく探っては見るけど……何でもいい! 何か思い出せないか!? 俺と出会う前……それこそ、ダンジョンから持ち帰られて売られる前の事とか!)

(そう言われましても……アタシの記憶がかろうじてあるのはダンジョンでどっかの冒険者の手に渡るとこまでですし……何か、何か取っ掛かりが欲しいです)


 取っ掛かりか……そう言えば、俺はカズサの記憶が無いことを理由に、彼女がどこのダンジョンで発見され、どこの冒険者に売られたとか、そういう経緯を一切探ろうとしたことがない。……どうして生み出されたのかもだ。

 基本的に、ダンジョンにはどんなマジックアイテムが存在していても不思議ではない。地球から数多の情報を受信し、影響される異世界の特性上、それは当然の事。


(だが、それでも意志を持つマジックアイテムなんて存在していない)


 カズサを手に入れ、カズサの事を世間に公表してからも色々調べたから、それは間違いないと思う。

 料理や〇まい棒の開け方などは知ってるのに、簡単な一般常識も知らないと言った、最初から持っていた知識の妙な偏りも気になっていた。

 カズサが生まれたのが、件の冒険者がダンジョンの宝箱を開けた時だとするなら、カズサには知識を手にするだけの時間なんて無かったはず。これらの事実から察するに、カズサはダンジョンで発生した宝箱に入っていたんじゃない……予め何者かが設置しておいた宝箱に入っていて、カズサは事前に知識を得る機会があったんじゃないのか?


(ダンジョン産のマジックアイテムじゃなくて、何者かの手によって作り出されたマジックアイテム……それがカズサの正体なんじゃ……?)


 色々と疑問はあるし、確証はないが、そう考えてもしっくりくる。偏った知識を持っているのも、つまりはそういう事か。


(【全スキル習得可能】を最初から覚えていたのは、何らかの理由……それこそ、記憶を失っていることが影響して、【英雄】スキルを変な形で失ったからとか……)


 いずれも確証のない話だけど、あり得そうではある……が、そこまで推察したところでどうにもならない。

 ただ悪戯に時間だけが消耗していき、残り一時間を切り、三十分を切って焦りが生まれてきた。なんとか客観的な視点を失わないようにしながら、カズサと出会ってからこれまでの出来事から記憶を取り戻す糸口はないか、彼女と示し合わせていく。


(……そういえば、お前は最初っから嗜好があったよな)


 好きな食べ物もそうだけど、トレードマークであるマフラーを最初からやたらと気に入っていた。これも記憶と繋がりのある要素の筈だ。


(確かにそうですけど……好きになった切っ掛けは何って聞かれても、記憶がぷっつり途切れてて……)

(そうか……)

 

 刻一刻と迫ってるくタイムリミット。今からでも別のアプローチをするべきかと考えていると、ふとあることを思い出した。


(そう言えば、昔もこんなことがあったな)

(え? それって……)

(あぁ、ほんの子供の頃の時だよ。寒い冬の日に、親友と二人で迷子になってさ。最終的には海の方まで歩いて行って、自力じゃ帰れなくなったんだよ。二人でどの道を通ったっけって、うんうん悩みながら思い返しててさ)


 初めてできた親友……一颯が亡くなる数週間前の事だ。俺たちはふとした気紛れで、今まで行ったことのない場所を目指して歩き回ってたんだけど、ものの見事に道に迷ったんだ。

 でもその時は何かテンションがハイになってて、知らない場所を探検するのが楽しくて……最終的には電話しか出来ない子供携帯があるのを思い出して、お袋に迎えに来てもらったんだけど、あの日一颯と二人で辿り着いた海は忘れない。


(よくよく思い返してみれば、あれが二人で冒険者に興味を持ち始めた切っ掛けだったな)


 どこか遠い場所へと探検する楽しさを覚えたあの日、俺たちは冒険者になろうって、子供ながらに将来を決めた。

 そう言うと、カズサが少し息を呑んだような気配がした気がしたけど、それに構わず俺は当時二人で交わした言葉を思い返す。明確な内容は覚えてないけど……あの時、確か俺たちは……。


 ――――すっげー! ボク、海なんて初めて来たー!

 ――――知ってる? 冒険者になったら、もっともっとすごい景色が見られるんだ。

 ――――本当に!? じゃあボクらも大人になったら冒険者になって、色んな所を探検しに行こう!

 ――――それじゃあ、今日はオレたちの初めての冒険だな。 


 そう言うと、一颯は水平線に沈んでいく太陽にも負けないくらいの快活な笑顔を浮かべて……。


 ――――うんっ! この海を、(ボクはずっと忘れないよ)


 頭の中で鮮明に再生される親友の声と、誰かの声が重なった……その瞬間。魔王銃剣から放たれる強い光が、俺たちの意識を一瞬、真っ白に塗り潰した。


   =====


 視界が白一色に塗り潰されたのは一瞬の事。気が付けば俺たちは、平野に並ぶ無数の騎馬兵を高い丘から見下ろす、木瓜紋の外套を羽織った男……織田信長の背中を眺めていた。

 この光景が幻覚や夢の類であるっていうのは、すぐに察することが出来た。体が思い通りに動かないし、言葉も発せられないし、そもそもいきなりこんなところに飛ばされる理屈も分からないし、頭もボンヤリするし。


「とんだ大うつけよの……遠回りに巡り巡ってようやく此処に至るとは、全く以て遅すぎる。危うく神如きに人類が屈するところだったではないか」


 その言い方……まるでこれまでの状況を理解しているかのようだ。

 そんな事を考えていると、ここが魔王装備が作り出す精神世界であるという知識が不思議と頭の中に流れ込んでくる。目の前にいる信長は、魔王装備に隠されたスキルがこの精神世界で擬人化した存在なのだという事も同様に知ることが出来た。


「だが……業と妄執に囚われた人形とて侮れぬな。結局、あの小娘(・・・・)が言ったとおりになるとはな」


 一体何のことを……誰のことを言っているのか……相変わらず意味深な事を言っている信長は、一丁の火縄銃をカズサに差し出す。


「資格を失ったまま、想念一つでここへと至った事、実に見事である! ■■■■■が見初めた英傑どもがどれほどのものなのか……この世界に示してみせるがいい!」



「また会おうぞ! 落日を超えたその先で!」


ご質問があったのでお答えします。


Q『空腹ゲージ設定が完全に死んでるような気がするんだけど気のせい?お腹空いたーとか叫んでも良きに思うのだけど。』

A『気のせいですね。雄介がゲージ管理上手くなってきているんで、文章からは見えないところでエネルギーポーション使ってこまめに回復してるんです。今でもゲージ切れになったらスキル解除されて空腹で動けなくなったりしますよ』


面白いと思っていただければ、お気に入り登録、または下の☆☆☆☆☆から評価ポイントを送って頂ければ幸いです。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] そういえば、ティムモンスターは決まってますか?
[気になる点] ファンタジー作品でこれは鬼門なのかもしれませんがあえて質問します カズサは美少女だからトイレなんか行かない! これは納得します 主人公(雄介)はこの二日間どうしてたんでしょう? ま…
[一言] ゼル・シルヴァリオの流れ次で10話になりますが、まとめて読むならともかく、こう一話づつずっと読まされるとめっちゃだれます; ただライフもまだまだありますし、続きそうですね、 せめてもっと少…
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