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超巨大モンスター防衛作戦 5

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


 ■■■■■■――――ッ‼‼


 埋まった前足を勢いよく引き抜き、巨大な口を開けてカズサを食べようとするゼル・シルヴァリオ。

 図体が図体だけに、ただの噛みつきが途方もない範囲攻撃だ。【三段ジャンプ】と【ブースト】を掛け合わせて回避しようとしたけど、間に合わないか……!


(だったらこうだ!)


 上下の牙がカズサを挟み潰そうと迫る中、魔王銃剣をデュアルモードに変形させて【ノックバックカウンター】を二点同時に決める。

 閉まろうとした口は再び大きく開く。これだけの隙があればフォローが入るには十分……魔法の絨毯が空中にいるカズサを拾って、素早く離れていってくれた。


(……城壁がない今、獅子村さんも敵視誘導を切ってるみたいっすね)

(こっちの状況を正確に察知したんだろうな)


 流石はトップランカー……ゼル・シルヴァリオがカズサに向けて明確に敵意を向けたのを察したんだろう。

 特殊なモンスターなだけあって頭も良いのか、基本的にゲートを目指すという行動に変わりはないけど、視界に入れば叩き潰そうとするくらいには警戒心を抱かせることは出来た。

 その証拠に、獅子村さんに向けられていた氷柱の一部が、明らかにカズサに対して放たれるようにもなったし!


「くっ……!」

「大丈夫っすか!?」

「……問題、ありませんっ。そちらは攻撃に集中を……!」


 先ほどよりも激しい氷柱の弾雨がカズサが乗る魔法の絨毯に迫る。ダメージ量無視で連射を当て続けて、一度途切れたヒット数を再び稼ぐが、先ほどみたいに簡単にはいかないだろう……なら。

 

「ディザスターモンスターの体の下……脚の内側に潜り込む感じで飛べます!?」

「……やってみましょう!」


 巨大な氷柱を無制限に生み出し、至る所から発射するスキル。威力、速度、範囲共に強力なスキルだけど、自身の周囲を発射地点にしている以上、あの巨体の下に対してだけは弾幕が薄くなるという欠点もある。

 向かってくる氷柱を回避し、時に遠距離攻撃で迎撃しながら、こちらの指示通りに巨大な胴体を支える前脚の内側に狙いを定める。安全面なら腹部を攻撃するのも考えたんだけど、塔みたいに巨大な氷柱がビッシリ生えてるからな。下手に攻撃したら氷柱が落ちて撃墜される。


「ヒット数稼いでいくっすよぉー!」


 連射をコンボの繋ぎにし、先ほどと同じようにヒット&アウェイでカズサの攻撃の威力を上げていく。


(うおっ!? 危なっ……!?)


 それでも全弾回避とはいかない。巨大な脚の隙間を縫うようにして、ゼル・シルヴァリオが自身の体の下に対して発射した氷柱がカズサに直撃した……かと思ったんだけど、直前に魔力の膜のようなものがカズサを覆い、氷柱と相殺する形で砕け散る。おかげでダメージはおろか、撃墜されることもなかった。


(獅子村さんの【スケープバリア】か!?)


 獅子村さんも多彩なスキルでゼル・シルヴァリオの行動を妨害し、時に攻撃を喰らいそうになる俺たちを結界系スキルでサポートまでしてくれている。

 本当に頼りになる人だ。こんな化け物相手にしながら、遠目では点未満の大きさにしか見えないであろう俺たちの援護までしてくれるなんて、一体どんだけ視野が広いんだ。


(おかげで、威力は十分高まったぞ……!)


 魔王銃剣をバスターモードに変形。首から頭部にかけて、一発一発が大砲のような威力と化した連射を叩き込みながら接近。体に捻りを加え、ゼル・シルヴァリオの横っ面に力一杯叩き付ける!


 ■■――――ッ!?


 感覚としては、鈍器でぶん殴る感じだ。巨大な紫電の剣でぶっ叩かれ、顔が横を向いたゼル・シルヴァリオに更に追撃を掛けるべく、魔法の絨毯を再び近づけるようにしと短く指示を飛ばそうとする。


「もう一発お願いしますっ‼」


 そんな俺の考えとシンクロしたかのように、いち早くカズサが指示を出した。手早くコマンドを入力し、繋ぎの連射で【コンボアタック】の効果を維持しながら再び接近。もう一度上から脳天目掛けて叩き込んで――――


「うわあああああっ!?」


 やろうとした瞬間、丁度一撃叩き込んだ横っ面から凄まじい冷気が噴き出して、俺たちが載る魔法の絨毯を遠くへと吹き飛ばした。

 不味い、反撃を喰らった! 体力ゲージが見る見る減っていってやがる……! 何とか体勢を整えようとしたその時、突然空中に展開された障壁が冷気を妨げた。


『三人とも、無事か!?』


 通信機から聞こえてくる獅子村さんの声。どうやらまた助けられたようだが、あらかじめ張っていてくれた【スケープバリア】は全部割られた。今の冷気は、どうやら多段攻撃の類らしい。   

 危なかった……直撃しただけあって、体力ゲージの減少速度に回復が間に合わなかったかも……!


『何らかの条件……推察するに、【滅神属性】による強力な一撃によって発動されるカウンタースキルかもしれん! 追撃は考えず、一撃離脱を心得ろ! 必ずしもフォローを入れられるとは限らん!』


 厄介なスキルを当然のように隠し持ってたか……悔しいけど、注意を引き付けられるようになっただけでも御の字と、今はそう考えるしかない。

 再び巨大な城壁が聳え立つ。頭を切り替えた俺は、まだまだ残っているゼル・シルヴァリオの体力ゲージを視界から外して足止めに専念するのだった。


   =====


 あれから戦って、戦って、戦い続けて……極寒の猛吹雪が荒ぶ中、冒険者たちは既に二日休みなく戦い続けた。

 インターバルが終了する度、獅子村萌子が構築する城壁が何度も何度もゼル・シルヴァリオの行く手を阻み、一日に二回……合計既に四回目となる【撃神】が、巨体を僅かに押し戻しながら大ダメージを与える。

 負けじと九々津雄介とカズサの二人も、高めに高めた強烈な一撃を何度も叩き込んでは注意を引き付け、出来る限りの時間を稼いだ。

 いずれもランカー入りを果たせるだけの戦闘力を保持する冒険者たち。五体さえ無事なら二日間程度、高い集中力を維持しながら休みなく戦い続けることは出来る。

 唯一カズサの中の人……雄介だけは戦闘力は低いが、運動量が皆無に等しい彼の場合、全ての体力を集中力と指にだけ集約できるので、まだ余力はあるだろう。

 途中、ゼル・シルヴァリオやゼル・ジーヴァの攻撃によって体の芯まで凍り付き、氷柱で貫かれて命を散らした冒険者もいたが、それでも彼らは全力を維持しながら決死の防衛を続けていた。


(それでも……ここまで進められてしまったか……!)


 ゲートが存在する山は、もうすぐそこまで迫ってきていた。このペースのままでは、あと五時間もしない内にゼル・シルヴァリオはゲートを通り、地球へと向かうだろう。

 そうなってしまえば、まず第二十一支部が吹き飛ぶのは確実。その跡地を起点に日本という国が雪と氷で閉ざされるのは想像に容易い。観測班やギルドの対応が早く、残留している冒険者たちを連れ戻したり、ゲートを封鎖して情報規制などをしてはいるが、それも全て意味を失う。

 誰もが焦燥感に駆り立てられていることだろう。増援が来るのを今か今かと待ち続けて、こんなギリギリのところまで追い込まれてしまったのだから。


「……っ‼」


 萌子ですら焦りで戦法を誤りそうになっていたその時、耳に取り付けられた通信機にギルドからの連絡が届いた。すかさず通信機に手をやって通話モードに切り替えると、電波を介してジェイミーの声が萌子に届く。 


『通達! 通達! C大陸に出現したディザスターモンスターの討伐を確認! アイゼンたちがやってくれました!』

「本当か!?」

『間違いありません! 現在アイゼンが最短ルート……オーストラリアから日本への直線海路を疾走中(・・・)! 到着までおよそ五時間です!』


 報告を聞いて、萌子は歯噛みした。それでは間に合わない……と。 


(彼らはよくやってくれた)


 この場に居る誰よりも戦闘力やスキルの数で劣る雄介とカズサが、萌子たちの予想を大きく上回って善戦してくれたおかげでここまで足止めすることが出来た。どのような事になっても、彼らを責めることは決してしない。

 だが現実問題、力不足ではあった。スキルも火力もまるで足りていない。少なくとも、たった今張り巡らせたばかりの城壁を突破されれば、もう後がないくらいには追い詰められている。


(そうなれば奥の手を切るしかないが……)


 自身の実力を正しく判断できている萌子は悟っていた。奥の手……すなわち【魔王覚醒】を発動させればまた時間は稼げるが、城壁による守りを含めてもせいぜい四時間ほどだろう。

 転移のマジックアイテムでも使えればと思うが……残念なことに遠く離れた海外まで転移できるようなマジックアイテムは現在確認されていない。萌子が全てを出し切っても、ゼル・シルヴァリオは残りの一時間でゲートに到達してしまうのは目に見えている。


 本当に一縷の希望に掛けるしかなくなるとは……萌子は命すら捨てる覚悟を決めて、静かにジェイミーとの通信を切るのだった。



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ウカムシャンロン
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