超巨大モンスター防衛作戦 4
読者の皆様へのお詫び
前話のサブタイトルが少しおかしなことになっていたので訂正しておきました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
■■■■――――っ‼
まるで塵でも入ったかのように目を細めるゼル・シルヴァリオ。一応、【会心の瞳】で弱点が本当に無いのか探っては見たけど、急所を表す赤い光はどこにも見当たらない。一見耐久力なんて全く無さそうな眼球でさえもだ。
(【ゲージシステム】の力か……! 肉体が傷付かない以上、どこを攻撃してもダメージに変動がない……!)
連射の合間を縫っての【天魔轟砲】を目に当てても全く同じ。
さっきは皮膚の上からの攻撃だったから一見ノーダメージ同然だった。ならば眼球ならと思ったんだけど……それでも体力ゲージの減り方は相変わらずだ。ほぼノーダメージ同然……相手が大きすぎて、極大の光線も毛が一本触れてるようにしか見えないし。
(いや……それでもこれはちょっとおかしいっすね)
(何がだ?)
(誤解があるみたいっすけど、いくら【ゲージシステム】で怪我しないからって言っても、当たるところに当たったら超痛いんすよ。アタシの場合、鳩尾とか目とか喉に当たったら、その分ゲージが大きく削れますし)
(……なんだって?)
言われてみれば、思い当たるところがある。
【ミラージュステップ】を始めとした回避スキルや、俺自身がカズサの操作に馴れたこともあって、攻撃を喰らう機会自体が極端に減ったし、支障をきたさない誤差範囲だから気にしなかったけど、同じモンスターの同じ攻撃でも、ダメージの入り方が上下していたことがあった。
(ゲージの減り具合には乱数が混じってると思ってたんだけど、実際は急所に当たってたからってことか?)
(体の作りが殆ど人間みたいなもんですからね、アタシ。他に【ゲージシステム】持ちの生き物も同じような感じだと思いますよ。でも、ゼル・シルヴァリオはなんか違うと言いますか……パッと見たところ生物なんですけど、生物っぽくないんすよね)
俺は織田信長との戦いを思い出した。同じ【ゲージシステム】を持つ信長との戦いでも、俺は当然【会心の瞳】を使ったんだけど、奴には急所が存在しなかったのだ。
信長は甲冑と青白い炎で構成された外見だったし、生物特有の弱点が無いのもその場では納得できたが……眼球とか柔らかそうな首筋とか、明らかに弱点っぽい部位が存在するゼル・シルヴァリオにまで急所が無いっていうのは可笑しな話だ。
(獅子村さんは、コイツの事をモンスターというよりも現象だって言ってた……あれはもしかしてそう言う事なのか?)
確信にも似た直感が脳裏をよぎったが、それを頭から振り払う。例え敵が何であろうと、抗い続けなきゃいけないのには変わりはないのだから。
(しっかし、全然体力が減らないんですけど……! 威力上がってるはずっすよね!?)
(あぁ、それは間違いない! ……でもそれ以上に、体力が多すぎるんだ!)
まるでMMORPGで、大多数での攻略が大前提のボスモンスターをソロで倒そうとしている時など比べ物にならない手応えの感じなさだ。少しずつ、ほんの少しずつ減って入るんだろうけど、まるで終わりが見えない。水滴で岩に穴を開けようとしているかのような気分だ……!
(【コンボアタック】の欠点もあるんだろうな……試行錯誤の暇もなかったから実感なかったけど)
(たしか、遠距離攻撃で連続攻撃する場合、威力の上昇率がかなり低い……とか何とかでしたっけ?)
【コンボアタック】は遠距離攻撃との併用には向いてないかもしれない……スキルの詳細を確認した時、そんな気はしていたんだけど、威力の上がり方は近接攻撃でヒット数稼いでた時よりも大分低いような気がする。
実際、さっきから千発以上は連続で当ててるはずなのに、放たれる魔力弾は気持ち大きくなっているようないないような……そんな微妙な上昇率だし。
(実際にゼル・シルヴァリオに対して有効的なダメージを当てるには、魔力弾そのものの威力も、手数も足りていない……!)
どうするべきか……手をこまねいている内に、また一度轟音が鳴り響く。連射をそのままに視点だけ切り替えてみると、城壁全体に大きな亀裂が走っているのが見えた。
(あれ、もうあと一発食らったら粉々になりますよっ!?)
大急ぎで迎撃兵器を【アイテムボックス】に仕舞い、各々城壁から飛び出してゲートがある方角へと後退を始める防衛班。そんな獅子村さんたちを追いかけるように、ゼル・シルヴァリオは大きく前足を持ち上げて、勢いよく振り下ろした!
「くぅうっ……!?」
粉々に砕け散る城壁。強烈無比な踏みつけによって巻き起こる雪煙と暴風が、魔法の絨毯に乗る俺たちを押し飛ばし、ゼル・シルヴァリオの体の上に乗っていた冒険者やゼル・ジーヴァたちが転落していくのが見えた。
それでも連射を止めなかった判断を自賛したいところだ。これだけ大きい敵だと適当なところに撃っても当たるから、ヒット数を途切れさせずに済んだけど……恐れていた事態がいきなり起こったか……!
(不味い……突撃班だけで奴の注意を引き付けられない今、城壁を突破されたら侵攻を止める手立てがない!)
あの城壁を生み出すスキルを再発動するために必要なインターバルは三十分。ゼル・シルヴァリオの移動速度なら、ゲートまでかなりの距離を詰められてしまう。
獅子村さんは城壁ほどでないにしても巨大な結界や防壁を張るスキルを幾つも持っているので、それをゼル・シルヴァリオの足に引っ掛ける形で発動し、侵攻の妨害をしてはいるみたいだけど、精々侵攻速度を落とす程度だ。
(どうする……!? どうやって奴の足を止める……!?)
目に照準を合わせながら連射をし続けるが、視界を妨げても侵攻を止めるどころか、注意を引くことも出来ない。決定的に威力が足りていないんだ。
いっそのこと近接戦闘に切り替えるか……!? 近距離攻撃でなら【コンボアタック】の攻撃威力の上昇率は跳ね上がるが、同時に危険度も跳ね上がる。あれだけの大質量のモンスター、身動ぎ一つ当たっただけでも吹き飛ばされて――――
(いや……違うだろ)
保身を捨てて賭けに出ろ。そうしないと奴には届かない。そういう風に考え方を切り替えると、それに同調したかのようにカズサはあることに気が付いた。
(……あれ? 魔王銃剣のビリビリ、何か大きくなってないっすか?)
ビリビリ……【星切之太刀】を発動している最中、魔王銃剣に迸る紫電の事だ。僅かだけど、確かに紫電の量が普段よりも多くなっているのが分かる。
(そうか……そういう事かっ‼)
やはり【コンボアタック】が攻略の鍵となる……その決断は間違いではなかった。
途中まではダメージを出来る限り多く与えるという考えは捨てていい……とにかく、連射を止めずに近接攻撃を当て続ければいいんだ!
俺はカズサの口を通じて、魔法の絨毯を操る冒険者に指示を出し、ゼル・シルヴァリオへ接近。ヒット&ウェイを試みる。同時に威力重視のバスターモードから、手数重視のデュアルモードに魔王銃剣を変形させた。
(攻略方法を思い付いたんすね、ユースケ。……良いっすよ、存分にやっちゃってください‼)
射撃コマンドである〇ボタンは常時押しっぱなし。魔力弾を連射しながら、通り過ぎ様にゼル・シルヴァリオを二度、四度、六度と切り付け、距離を取りながらも魔力弾を絶やさず当て続ける。移動と回避を完全に人任せにしている今だからこそできる戦法だ。
(よし、魔王銃剣に纏う紫電は、更に大きくなっている……!)
それはつまり、順調に攻撃力が上がっているという証拠。広範囲にわたって飛来する巨大な氷柱も相まって近接攻撃を当て続けることは難しく、【コンボアタック】で攻撃力を上げていくのは難しいと思っていたけど、問題無かったんだ。
遠距離攻撃は全てヒット数を途切れさせないための繋ぎと考えろ……俺たちなんて歯牙にも掛けられてない今なら、確実に成功させることができる。
「ぜぇああああああああああっ‼」
連射によってヒット数は途切れさせず、隙を見て近接攻撃を繰り出して攻撃力を上げていくのを延々と繰り返す。そうすること大体十五分くらい経っただろうか……二振りの魔王銃剣から迸る紫電は巨大な雷の刃を形成し、切りつければゼル・シルヴァリオですら明らかに嫌がるほどの威力を発揮するようになった。
「獅子村さん! 突撃班は今全員ディザスターモンスターの体の上に居ますか!?」
『……あぁ! 突撃班総員、ディザスターモンスター上に確認した!』
「じゃあ全冒険者に通達してください! 巻き込むと思うんで頭部から逃げて、アタシたちに瞬間強化を‼」
『っ! 総員、ディザスターモンスター頭部から一時離脱し、カラクリに瞬間強化を発動せよ! 繰り返す! 瞬間強化をカラクリに!』
通信機を通じて獅子村さんにたどたどしく伝えたけど、こちらの意図を察したのかすぐに冒険者全員に命令を下した。
瞬間強化というのは、【神速】や【剛腕】のような恒常的に効果を発揮する常時発動型スキルとは正反対の、ほんの一撃分、ほんの数秒間だけ攻撃力を上げる任意発動型スキルないしアイテムの事だ。
効果が限定的である分、威力の上昇率は並みの強化スキルを遥かに上回る。
(いくぞカズサ‼)
(おっす!)
丁度ゼル・シルヴァリオの頭の上を飛ぶ魔法の絨毯から飛び降り、バスターモードに変形させながらヒット数を途切れさせないように連射を繰り返す。魔力弾の威力は目に見えて上がっているけど、本命はここからだ。
一撃限り近接攻撃の威力を倍増させるマジックアイテム、鬼神の刃薬を【アイテム使用動作キャンセル】によって即座に発動。【アイテム強化】込みなら一撃の威力を三倍……下手すれば四倍にも跳ね上げるだろう。
(瞬間強化も届いてますよ!)
もはやカズサの身長の何十倍もの長大さとなった紫電の剣。それを目印にしたのか、冒険者たちから強力なバフが届けられ、魔王銃剣から迸る紫電は更に巨大になった。
それを大上段に構え、重力と【空中殺法】を加えて……ゼル・シルヴァリオの脳天目掛けて思いっきり振り下ろすっ!
■■■■――――っ‼‼‼
直撃と共にすさまじい衝撃波が波紋のように広がって風雪を散らし、ゼル・シルヴァリオは甲高い悲鳴を上げる。それに構わず俺は△ボタンを長押しして、カズサに魔王銃剣を振り抜かせた。
■■■ッッッ!?
前足が埋まり、地面に下顎を打ち付けるゼル・シルヴァリオ。まさに会心の手応え……決して大きくはないが、奴の体力ゲージを目に見えるほど削ることに成功した!
(だがまだだぁ!)
そこで最大の攻撃スキル、【滅陽】を頭に叩きつける。【コンボアタック】とまだ残っている瞬間強化の効果によって、これまでよりも遥かに強力で広範囲に炸裂した黒い太陽は、再びゼル・シルヴァリオの体力ゲージを削り取った。
これでもまだ奴の体力ゲージは一割も削れちゃいない……だが、それでもこの攻撃には大きな意味があったのだ。
(やっとこっちを見たな……!)
先ほどまで取るに足らない羽虫程度にしか思っていなかったであろう俺たちに対する意識を、侵攻を妨げる障害にでも切り替えたのか……ゼル・シルヴァリオは怒りに血走った瞳で、確かにカズサを睨みつけていた。
ご質問があったのでお答えします。
Q『1度だけ物理攻撃を跳ね返すとか1度だけ魔法攻撃を跳ね返すとかそういうアイテムってないんですか?』
A『本編に出すかどうかはともかく、存在するという設定ですね。物理攻撃を跳ね返すというのなら、限定的ではありますが【ノックバックカウンター】がすでに登場済みですし』
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