超巨大モンスター防衛作戦 2
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
口からキラキラ光る蒸気のようなもの……ダイヤモンドダストを吐き出しながらカズサを睨みつけるのは、ライオン型やイノシシ型、カバ型と形状こそ違いはあるものの、いずれも四足歩行の獣のような姿をした、氷でできたモンスターたち。
なのに関節の動きなどは生身の生物にも匹敵する柔らかさで、最早生物というよりも自由自在に形を変えることができる氷のようだが、問題はそこじゃない。
(戦闘力が想像の三倍は高いんだけど……!?)
コボルトナイトを始めとし、【眷属召喚】のようなスキルを使って味方モンスターを生み出す敵とは何度か戦った事があるけど、ここまで突出した強さを持つ眷属を生み出す奴は、当然のようにいなかった。
(厄介なスキル使いやがって――――っ!?)
ゴウッ! と、耳に鳴り響く猛吹雪の音を掻き消す風圧と共に、二体のゼル・ジーヴァがまるで弾丸のような速度で突撃してくる。
「うわっと!? ぐぅう……!」
氷イノシシの突進を回避し、氷ライオンが振りかぶった爪を魔王銃剣を交差させて防御。
突撃前に支給されたマジックアイテムの中には、強烈な滑り止め効果があるワックスがあった。事前に調べた調査で氷のモンスターであるという可能性が高いと分かっていたらしく、こうやって体の上に乗り込む事態に備えて、氷で足が滑らないように対策をしていたのだ。
そのおかげで滑ってコケるようなことはなかったが、戦闘力20万から放たれる力は相当で、カズサは背中から氷山に叩きつけられた。
「いっつ……!?」
そのまま地面に倒れる暇なんて当然ない。吹き飛ばされた直後に、奥に控えていた氷カバが大口を開き、青白い光を収束させているのが見えたからだ。
(やっべ!?)
転がるように回避した瞬間、カバの口から放たれた青色のレーザーが氷山に直撃し、巨大な氷の結晶が上に向かって伸びる。その威力は明らかに俺たちの【絶氷】よりも上だった。
向こうの戦闘力はこちらのほぼ二倍だ。直撃だけは避けなくてはならない訳だが……生憎と、今の俺は調子がいい。
(単調なんだよな、お前らの攻撃は!)
しばらくの間、防御と回避に集中しながら戦ってすぐに分かった。
こいつらはスピード、パワー共にカズサよりも大分高いものの、スキルがかなり乏しいのか、攻撃手段が近接攻撃か、氷属性の遠距離攻撃の二つのパターンしか存在しない。
多分、単体としての強さはなく、数と速度と攻撃力で圧倒するタイプのモンスターなんだろう。それはそれで厄介だけど、これなら何とでもなる。
(まずは氷カバに向かってダッシュ!)
観察してもう一つ分かったのは、三体それぞれの攻撃傾向だ。
氷イノシシと氷ライオンは主に近接攻撃を繰り出してくるけど、氷カバは離れた場所から凍結レーザーをブッパしてくるのが殆ど。だから【ブースト】を使い、こうやって氷カバに向かって近づいてやれば、迎撃としてレーザーを放つし、氷ライオンたちはカズサを追いかけてくる。
(位置は最高だな!)
氷イノシシの突進が後ろから。氷カバのレーザーが正面から。丁度カズサの挟む形で攻撃してくる二体のモンスター。攻撃が当たるのはレーザーの方が先だろうが……それを【ミラージュステップ】で、軌道修正も間に合わせないギリギリのタイミングでレーザーを通り抜けることで回避。
するとレーザーをまともに食らった氷イノシシは瞬時に氷の中へと閉じ込められた!
(計算通りに進むと気分爽快っすね!)
見るからに氷耐性有りそうなモンスターだから死んではいなさそうだけど、動きを止められただけでも重畳。攻撃を転じるには十分すぎる隙が出来た。
【ブースト】による高速移動が終わらない内に【星切之太刀】を発動し、氷カバが対処できない内に近づいて二度切りつけると、深々と刻まれた二本の割れ目から亀裂が広がっていき、氷カバは砕け散る。
高火力スキルに加えて、今までにないくらいバフを盛っているが、一撃とはな。【天眼】で見れた説明通り、戦闘力に反して耐久値はかなり低いようだ。
「もう一丁!」
片足を軸に回転しながら、魔王銃剣をバスターモードに変形。既に間合いの内側まで迫っていた氷ライオンを一閃で砕くと同時に上空へと跳びあがる。
狙いは氷漬けになった氷イノシシ。【空中殺法】により威力増加を加えた兜割りで真っ二つに切り裂き、砕いてやった。
(よしっ! 耐久も低いなら何とかなるな!)
こちとら元々、戦闘力差が二倍以上で厄介なスキルも多い敵とは何度も戦ってきたんだ。あんな単調な攻撃を奴ら、複数体束になっても負ける気がしない。
『…………通達する! 突撃班全員に通達する!』
(っと、獅子村さんからの通信っすね)
『氷山から出現したモンスターは【滅神属性】無しでも討伐できることを確認! さらに連続召喚も停止した模様! 恐らくスキルの効果が終了したものと思われる! モンスターを駆逐しつつ頭部を目指し、目的を遂行せよ!』
【滅神属性】無しでも、ゼル・ジーヴァは倒せるのか……それなら他の突撃班も大丈夫そうだな。
あとはスキルのインターバルが終わる前に他の冒険者たちと合流して態勢を整えられればいいんだけど……一体どれくらいのゼル・ジーヴァが召喚されたんだ?
偶然にもその答えは、すぐに通信機から聞こえてきた。
『召喚されたモンスターの総数は約六百六十六体! こちらも遠距離射撃で援護する!』
「そんなに!?」
なんて不吉な数字だ。突撃班なんて十五人くらいなんだけど!?
(あっ!? 今度は氷ワニと氷シカが出てきましたよ!?)
(上等だ畜生! やったらぁっ!)
それから数分間、単調な攻撃を繰り出すゼル・ジーヴァたちを手早く始末しながら頭部を目指す。途中、大きな爆発が起きたり、火柱が上がったり、雷が迸っているのが見えたから他の冒険者たちも善戦してるようだ。
一度、キリンの姿をしたゼル・ジーヴァが立ち塞がったけど、城壁の方から放たれた極大光線によって砕かれたし、この調子なら頭部へ無事に辿り着けそうだ……!
「冷たっ!?」
だがここで倒れていたゼル・シルヴァリオが体勢を整えたのだろうか……氷山の所々から隆起している噴出孔から猛烈な冷気を城壁へと浴びせ、その余波がカズサに直撃する。
流石にダメージを受けるほどでもなかったけど、それでも服や体の表面に薄っすらと氷が張っている……遠く離れた位置から食らっても大ダメージだったんだから、この至近距離からは絶対に食らいたくない……!
(ユースケ! 城壁が!)
カズサの言葉に釣られて城壁を見てみると、ものの見事に氷漬けになっていた。
別のスキルで守ったのか、獅子村さんたち防衛班はどうやら無事のようだけど……防壁は大丈夫なのか!?
(わわっ!? 地面が動いて……!?)
(これは……体当たりだ!)
ゼル・シルヴァリオが氷漬けの城壁に体当たりをしようとして、俺たちが立っている場所が大きく揺れ動く。そしてそのまま勢いをつけ、ゼル・シルヴァリオは防壁に自身の体を叩きつけた!
超質量を受け止めた防壁から凄まじい音が鳴り響く。衝撃波は俺たちのところまで伝わってきて、カズサの体が地面に転がった。
覆い尽くしていた氷は一撃で木端微塵に砕かれていて……城壁は依然健在。まるで損傷すら見えていない!
(そうか! 【スケープバリア】を城壁に使ったのか!)
【対神属性】を持つ獅子村さんの【スケープバリア】なら、どれほどの攻撃でも凌ぐことができる。《神奈川守衛隊》のリーダーでもあるし、【スケープバリア】の連続使用ないし、重ね掛けも出来るだろう。アレがあるなら時間稼ぎも余裕で――――
(……いや、違う)
ゼル・シルヴァリオと同類の敵と戦ってきたらしい獅子村さん本人が難しい作戦だといって、俺たちまでをも動員した。それはつまり、経験則で上手くいく可能性が低いことを予見してるからなんじゃ……?
■■■■■■■■――――っ‼‼‼‼
鼓膜を破るんじゃないかというくらいの咆哮が響く。するとゼル・シルヴァリオの周辺に巨大な氷柱が無数に出現し、雨あられと城壁に殺到する!
一発一発が直撃する度、城壁が削れたかのような魔力の粒子が飛び散っていくのが見えた。攻撃を喰らっても防げているみたいだけど……俺の嫌な予感は的中してしまった。あんな手数で攻撃されたら、【スケープバリア】なんて意味がない……!
(とにかく急ぎましょう! 頭部に辿り着いて、意識を逸らさないと!)
……それだけじゃダメだ。攻撃される城壁を見て、俺は何となくそんな予感がした。
あんな集中攻撃を喰らい続けたら、城壁は俺たちが考えているよりも早く破壊されてしまうだろう。それを阻止するには注意を逸らすだけじゃなくて……。
(ゼル・シルヴァリオの攻撃を城壁から俺たち自身に誘導するくらいでいいかもしれない……!)
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