ちょっとは修行の成果が出たと思う
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
獅子村さんのペガサスに乗せられて辿り着いた洞窟は結構な大きさで、冒険者と思しき武装した人たちが三十人ほど集まっていた。
「お疲れ様にございます、獅子村臨時武官殿」
「あぁ」
いずれも佇まいが違う……と言うべきか。ギルドや動画とかでよく見かける冒険者とはどこか違う。獅子村さんが戻ってくると同時に、敬礼で出迎えてきたのだ。
……っていうか、臨時武官って何?
「この人たちは?」
「国際連盟所属の冒険者だ。今回の事態に備え、予め来日していた者たちと同行してきたのだ」
国際連盟所属……確か国そのものに雇われている冒険者の事だったか? 基本的に自由に活動する一般的な冒険者と違い、国からの任務で動く、各国から集められた少数精鋭部隊とか聞いたことがある。
(今回の事態に備えて……つまり、獅子村さん……ていうか、国際連盟やギルドはあのモンスターの出現を予見していたってことなのか?」
そうでなければ、備えるなんて言い方はしないだろう。
どうしてあんなの現れるのが分かったか……そんな詮無い質問をするつもりはない。どうせスキルやら魔法の装備やらの力だろう。
ゼル・シルヴァリオの正体とか目的とか、そういう疑問はもちろん尽きないけど……今はそんな事を聞くつもりは無いのだ。俺はカズサを通じて、獅子村さんに問いかける。
……奇しくも、彼女も同じ気持ちだった。
「獅子村さん、アタシたちはどうすればいいっすか?」
あの威容、あの巨体、あの力……ゼル・シルヴァリオが人智を超えた存在であるということくらい、俺にだって分かる。獅子村さんや国連の冒険者が出張ってきたのは、間違いなく奴絡みだってことは簡単に察しが付く。その上で、この面々を取り纏めていそうな獅子村さんに問いかけた。俺たちはどうするべきなのかと。
「……少し意外だな。もう少し狼狽えるものかと思ったが、存外冷静ではないか」
「あはは……いやまぁ、驚いてはいますよ? あんなモンスターが出るなんて、聞いて無かったっすから」
ホログラム画面越しでも伝わってくるプレッシャー。少し前までの俺なら、みっともなく狼狽えていたかもしれない。
ていうか、ぶっちゃけ今でも喚いて狼狽えたい。あんな化け物がポンって出てくるなんて聞いてねぇぞって、誰も悪くない理不尽を当たり散らしたい気持ちはある。
でも……そういうのはもう止めたんだ。なぜなら俺たちはこれでも――――。
(「冒険者ですから」)
何のために泣きながら生身でモンスターと戦ってきた? 何のために揺るがない心を手に入れようと躍起になってきた?
覚悟を決めろ、九々津雄介。こんな俺の決断に迷わず答えてくれて、必要とあらば一心同体となって戦うと決めてくれた彼女の為に。
ここまで関わってしまえば、もうあのモンスターとの戦いは他人事で済ませられることじゃない。もう何時までも高校生だからとか、元一般人だからと甘えられる段階は過ぎている。
だから共に戦えというなら戦うし、邪魔だから大人しくして居ろと言われればそうする……獅子村さんの判断に従うのが、今の俺たちに出来る最善だと判断した。
「そうか……それでは時間もないので簡単に簡潔に、かつ省略的に説明しよう。気になる質問は後日改めて、だ」
ほんの少しだけ綻んだ表情を鋭く引き締める獅子村さん。質問を一々返答する余裕はない……ということか。
「勘づいているかもしれないが、あのモンスターはギガントという規格にすらない、まったく別種のモンスターだ。これまでも複数確認され、その都度秘密裏に討伐してきた、天災クラスの力を秘めた奴らを、私たちはディザスターモンスターという総称で呼んでいる」
名は体を表すというけど……そんな大仰な呼称も納得できる。天候を操作するモンスターなんて、今まで聞いたこともない。
「そして奴の目的はゲートを通って、地球に住まう人類を皆殺しにすること……いいや、例え異世界からでも、奴はゲートを通じて地球を攻撃できるだろう。更に質の悪い事に放置し続ければ無限に成長し続ける……あれらはそういう存在だ」
(ゲートを……?)
食欲やら生存欲関係なしに、モンスターは人間を狙って殺そうとする。かつて地球にモンスターが侵略してきた時代に、とある一人の農家が牛五体を鎖に繋いで、それを囮にモンスターから逃げようとしたが、モンスターは食い甲斐のありそうな牛には目もくれずにも農家一人を狙ってきたというエピソードは有名だ。
だからあのモンスターも人間を狙っていても不思議でもないんだけど……ゲートを通らずに人間を殺せるモンスターが居るだなんて。
(……ユースケ)
(……あぁ)
ますます放っては置けない敵だと、そう認識した。放置すれば余計に危険な存在になるようだし、もし奴がゲートを通じて地球に出現してしまえば、地球は氷漬けになって人類が滅んでもおかしくはない……そう思わせるだけの力が、ゼル・シルヴァリオにはある。
「本来ならもっと万全の状態で迎え撃ちたいところだったのだが……不運にも、度重なるトラブルと想定外の出来事によって、この場に集まれる戦力はこれだけだ。現状では、奴を倒すことは出来ないだろう」
「…………」
獅子村さんの戦闘力は90万前後……それでも倒せないのは、彼女が攻撃ではなく防御やサポート寄りの冒険者であるからに他ならないからだろう。勿論、攻撃が不得意という訳でもないんだけど。
「我々の目的は戦力が到着するまでの間、奴を足止めし続けること。奴を倒すことができる力を持つ者の到着まで、奴をゲートへは近づかせないことだ」
「その戦力っていうのはいつ来るんですか?」
「正直、分からない。彼らもまた戦っているからな。もしかしたら、数日間戦い続ける事になるかもしれない」
……獅子村さんは、ディザスターモンスターが複数体存在すると明言していた。もしかして、ゼル・シルヴァリオ並みのモンスターが、今なお異世界で暴れまわってるんじゃ……だから救援がいつ来るかも分からないって、そういう事か?
「更に言えば、ディザスターモンスターの攻撃は特定のスキルが無ければ耐えることが出来ず、傷付け、倒す時もまた特定のスキルがなければならない。それが出来るのは部隊でも私一人で、本来ならば極めて分の悪い戦いだ。客観的に言えば、増援は間に合わず、地球への侵攻を許してしまうかもしれない…………だが、この土壇場で一縷の希望を見出すことが出来た」
そう言うと、獅子村さんはじっとカズサを……そしてその内部空間に居る俺を見据える。
「私は防衛に手一杯になってまともに戦えないだろうが……そんな状況下であって、ただ一人奴を倒せる可能性を秘めた冒険者。この戦いの鍵を握っているのは君たちだ」
「え? アタシたちっすか?」
俺は視点を変更しながら、周囲にいる冒険者たちの戦闘力を【天眼】で確認する。
「……アタシより戦闘力が高い人がチラホラいるんすけど、どうしてアタシたちなんですか?」
何でもやってやる腹積もりだったけど、サポートに回るのがメインだと思っていた。なのにまるで俺たちがキーマンだって?
「先ほども言ったとおり、奴に対抗するには特定のスキルを所持している必要がある……君たちや私の装備に秘められているスキルがね」
その言葉を聞いて、俺たちはハッとした。
信長が言っていた神という単語。ギルドからきつく口止めされた【滅神属性】、【対神属性】、【神越属性】の存在。氷河神獣というゼル・シルヴァリオのもう一つの名。そう言った情報がバーッと頭の中で繋がっていく。
もしかして、信長が言っていた神の正体は……!?
「本来ならば、先達として君たちを守るのも私の役目だ。このままゲートを通って地球に戻ったとしても決して責めはしないし、責めさせはしない。……だが、君たちは先ほど冒険者と名乗った。それを踏まえて、私は君たちに要請したい」
獅子村さんは勢い良く頭を下げる。世界有数の冒険者にそんなことをされるとは思っておらず、俺たちは思わず慌ててしまうが、すぐに平静を取り戻せたと思う。
「どうか無力な我々に力を貸してほしい……! 親しき者の為、君たち自身の為……何よりも、我らが生きる世界を守り抜くために!」
それは様々な思いがない交ぜになったものを絞り出すかのような叫び。これに対して狼狽えず、真摯に向き合わなければならないと直感した。
動機はどうあれ、守るものは同じ。俺たちの答えなんて、最初っから決まっていたんだ。
「作戦を……何か作戦くらいはあるんすよね? それを教えてもらっても良いですか?」
ご質問があったのでお答えします。
Q『Q.冒険者の税制度はどうなっているのでしょうか?魔石やオーブを売却した時に、税率によって売却額から引かれているのか?それとも確定申告などするのか?またトップランカー、平均的な実力の者、新人冒険者の年収なども気になります!』
A『異世界資源の売却によって利益を得るのが冒険者ですが、売却には必ずギルドが仲介します。この際、税金分を売却額から引かれますね。確定申告に関しては、異世界資源の売却以外の方法で利益を得た時に行うものです。平均年収というのはまぁ、個々によってかなりのバラツキがあるんですよね。中には簡単に手に入る資源を集中的に集める、戦闘力低めの冒険者もいますし。今言えるのは、平均年収に関しては設定を決めている最中ってところです』
Q『ギガントモンスターと規定される基準は何でしょうか?
ストーリ上どうしても強さのインフレが起こるので最初のウサギ型が今ではレベルが低く思えてくるのは仕方がないですが、そのダンジョンレベルでは突出しているという条件なのか?あるいは、特殊な能力を持っているからなのか?ウサギ型も後々の成長を込みで認定されたのか?』
A『ギガントモンスターの大雑把な基準は、全長十五メートルを超えていること、初期戦闘力が1万を超えることと、ゲートを一時的に封じるスキルを持っていること。そして時間が経つにつれて少しずつ戦闘力が上がっていく性質があるですね。詳しいことは決めかねていますが、今考えている設定はこんな感じ。また後々本編で出してみたいです』
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