幾ら夏でもこんな冷房はマジいらねぇ
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
今、異世界は夏だ。そんな季節に冷たい雪が降るなんてありえない……たとえ何らかの力が働いて上空に雪雲があったとしても、この外気温ではカズサに届く前に溶けてしまうはず。
(ユースケ、何かちょっち寒くなってきたんですけど……)
(マジか……ホットポーション使っておくか)
【アイテムボックス】に残っていた、体温低下を妨げるアイテムを使用する。スキルによって効力と持続時間共に向上しているはずだ。
(……うん。温まってきました)
その効果は遺憾なく発揮されたらしく、ホログラム画面に映るカズサの頬が少し赤みを指しているのが分かる。
……それにしても、この雪は一体どういうことだ? 何んとなしに上空を見上げると、先ほどまで晴れていたはずの空は、いつの間にか薄い灰色の雲で覆われていた。
(あれは雪雲か? こんな季節に、一体どうして……)
(ていうか、どんどん雪の勢いが強くなってきてません?)
画面一杯に映し出される降雪が、ゆっくりと地面や岩、木々に降り積もっていく。まるでテレビで位しか見たことがない、東北地方のような光景だ。このまま降り続ければ、半日以内には足が埋まるほど積りそうである。
そんな豪雪は留まることを知らず、次第に白い粒のようなものまで降らし始めた。
(ふぉっ!? 何すか、これ!? 砂っすか!?)
(いや、霰だ!)
突然、銀世界に変貌していく光景に呆気を取られていると、雪に霰が混じり、ポチャッという水音がところかしこから聞こえてきた。
一体何事かと思えば、砂利のような大きさの雹まで降り始め、河や地面に落ちてきたのだ。
(いや、これはもう絶対何かヤバいことが起こっている……! とりあえず、急いでギルドに戻ろう!)
(ラジャーです!)
異世界では、地球では考えられない現象が日々巻き起こっている。常に砂嵐が発生している砂漠とか、頻繁に燃える岩を吐き出し続けている火山島とか、そういう危険地帯の存在は俺も知っている。
だがここは比較的気候が安定し、現在の地球のそれに近い自然が広がっている地点だ。少なくとも、夏場に突然大雪が降りだすような現象など、事前に調べた情報では一切得られなかった。
(もしかしたら、強大なギガントモンスターが襲来してきた可能性もある。ギルドに報告して――――)
対策を練ってもらおう……そう告げようとした、その瞬間。
■■■■■■■■■■■■■■■■――――‼‼‼‼
まるで海鳴りか地鳴りかを録音し、スピーカーを通して大音量で放ったかのような音が響き渡る。
なんて音だ……! それでいてどこか聞き覚えのある……これは、もしかして鳴き声か!?
(うっさ……!? ユースケ、耳大丈夫っすか!?)
(なんとか……それより、これ多分モンスターの鳴き声だよな!? 一体どこから!?)
もし本当にモンスターが近くに迫ってきているなら、その位置を正確に把握しなければ危険だ。降雪で見晴らしの悪い画面を展開させ、視点を海へと向けると、視界全てを真っ白に埋め尽くす猛吹雪が迫ってきていた。
「わっぷ!?」
(カズサ!?)
ホログラム画面はあっという間にホワイトアウトする。雪に霰に雹にと続いて、今度は吹雪!? さっきから一体全体何が起こっているのか……俺はカズサに防御態勢を取らせつつ、頭の中で思いつく限りのアイテムでカズサの体を吹雪から保護する。よく見れば、HPがガリガリ削れていっているじゃないか!?
(カズサ‼ 無事か!?)
(な、何とか……!)
ホワイトアウトが収まり、ホログラム画面が再びカズサの周辺の光景を映し出すと、木々は強風に煽られたかのような状態で凍り付き、滝も河も何もかも氷となって固まっていて、カズサは魔王銃剣を交差させた状態で、顔以外の殆どに分厚い氷が張り付いていた。
(マジかよ……六天のマフラーで氷属性に耐性のあるカズサを、ここまで……!?)
吹雪が収まるまでの間、俺は二回にわたって回復ポーションを使わされた。ヒュドラとの戦いを経て、戦闘力が10万にも達したカズサがだ。
一体どんなモンスターなのか……ここからでは何も見えない。とりあえずここに居ては危ない。そう思った俺はレバガチャで氷による拘束からカズサを解き放つ。
ホットポーションが効いているのか、見るからに寒そうな異世界でも、カズサの血色が目に見えて悪いものじゃないのが幸いだ。特に動きが鈍っているようには見えない。
(なんとか逃げながら撤退をしないと……!)
情報も分からない敵に無暗に突っ込むわけにはいかない。幸い、ゲートがある方角は頭に叩き込んである。
持てる全ての力を以てして逃げの一手を決めた俺たちはゲートの方へと全速力で駆け抜け、森林地帯を抜けて山の中腹を目掛けて駆け上がる。遮蔽物が無くなり、大地を見渡せる高さに登り詰めてから再び海がある方角へと目を向けて……俺もカズサも絶句した。
(何……だ……アレ……!?)
例えるなら、世界一巨大な山、エベレスト。
頂点が雪雲を突き破って見えなくなるほど巨大な氷山を背負う、六本足のモンスターが海をかき分けながらこちらに向かってきているのだ。
ここから海までかなりの距離があるというのに、その姿がハッキリ分かるほどの巨体。ここまで届くほどの咆哮と、尋常じゃない氷属性攻撃。明らかにギガントモンスターとしての規格すら超えている……! 一体あのモンスターは何なんだ……!?
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種族:氷河神獣ゼル・シルヴァリオ
戦闘力:?
全ての■■を悉く■■すべく■より■■■た■■の化■。■■を永久凍土■■に■■込める■■■の具現――――
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【天眼】で確認しようとしたけど、戦闘力が不明な事に加えて、説明文までもが文字化けした上に、後半は完全に潰れてしまっている……!? どういうこと!? 生半可なスキルじゃ、その正体を見抜くことすら出来ないってことか!?
(やっば!? またあの攻撃が――――っ!?)
超巨大モンスター……ゼル・シルヴァリオの背負う氷山から凄まじい勢いで白い煙が噴出……先ほどの猛吹雪が迫ってくると同時に、カズサから焦った様子の念話が届く。
あんな攻撃、何度も喰らってたら堪ったもんじゃない! この距離と攻撃範囲じゃ、避けることも妨害することも出来ない……とにかく、障害物に身を隠そうとした、その時。
「無事だったか、君たち!」
純白の翼を翻して猛スピードで迫ってくる馬……ペガサスに跨った、鎧姿の獅子村さんが颯爽と現れ、カズサの手を掴んでそのまま上空へと連れ去った。
「獅子村さん!? どうしてここに――――」
「すまないが、今は話している暇はない! 疑問は尽きぬだろうが、今は私を信じてこのまま共に来てもらうぞ!」
獅子村さんがカズサの体を引っ張り上げ、ペガサスの背中に乗せた時には、猛吹雪は最早回避不可能な距離まで迫っていた。このまま呑み込まれるかと思っていたが、獅子村さんは長い長いトンネル状のバリアーを張り巡らせ、猛吹雪の直撃を避けながらペガサスで通り抜けていく。
なんていう防御スキルだ……あれほどの氷属性攻撃を完全に防げるなんて……!
「本来ならばこのまま地球へ送り届けたいところだが……残念ながらそれも難しい状況だ。一先ずこの近くの洞窟を拠点としたので、そこで話をさせてもらってもいいだろうか?」
「はい……ぜひお願いします」
一体あのモンスターは何だったのか、獅子村さんは何を知っているのか……疑問は尽きないが、とにかく今は獅子村さんと共に行動するのが安全と踏んだ俺たちは、そのままペガサスに揺らされるがまま、拠点らしき洞窟へと向かっていった。
ご質問があったのでお答えします。
Q『お香的なアイテム、香りでバフ、デバフ、寝ている時に自己治癒力上昇、デメリットで敵にエンカウントする危険性が高まるなどはありましたっけ?』
A『お香的なアイテムは、現状モンスター除けくらいしか出ていなかったと思います。あと、クランが一般人に売る異世界資源で作ったアロマとか。一応、さまざまの恩恵が授かれるお香アイテムは沢山ある設定ですよ』
Q『クラスメイトからすると、カズサの自己紹介の後、雄介は自分のアイテムに彼女のふりさせてたのかよヤベーなみたいな感じになりそうですが、その辺はどうなのですか?』
A『まぁ、彼女だと明言してませんし。クラスメイトたちには冒険者業の相棒で、自分との距離感の近い気安い関係の戦友であるといった感じで説明してるんじゃないですか? いくら周囲が勘繰ろうと、本人たちが違うといえばそれまでですしね』
Q『煙幕ってありましたっけ……?アイテムマスターがつかったら凄そう(KONAMI感)』
A『視界を妨げる煙幕は登場していませんが、似たようなマジックアイテムなら使ってますね。花橋ダンジョンのラミア道場で用いる、催涙爆弾がそうです。本来の使用用途とは全く違う使い方をしてますけど、本来なら刺激成分たっぷりの煙を辺りに充満させるアイテムですから』
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