伏線というのは、読者から見れば意味が分かりそうで分からない、ギリギリを攻めることである
前回のサブタイトル、直しておきました。寝起きで頭が呆けている状態で投稿とかするもんでもないですね。完全に気付かずにヒュドラを買っちゃってました
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
雄介とカズサがヒュドラとの戦いを始めた日の朝まで、時を遡る。
しばらくクランでの活動を部下の面々に任せて異世界を探索し続けた獅子村萌子は、幾日かぶりに帰ってきた冒険者ギルド東京本部にあるシャワー室で軽く汗を流し、敷地内にあるギルド本館とは別の建物……立ち入り禁止という看板が大きく掲げられ、厳重な鉄扉で閉ざされた場所へと赴いた。
「お疲れ様です、獅子村様」
「そちらこそ、お疲れ様です」
彼女にとって、ここは既に馴染みの場所だ。慣れた様子で出入り口を見張る警備員にパスカードを見せて中へ入ると、建物内の何重ものセキュリティを通過して中枢部の部屋へと立ち入った。
同じくギルドの立ち入り禁止区画でも、以前訪れた遺体解析室とはまた雰囲気がかなり異なる。無数の映像画面とそれに連動したスーパーコンピューターが常時稼働する、異世界観測室と呼ばれる場所だ。
「進捗情報はどうだ? ジェーン・ドゥ」
「現在異常は見当たりませんよ、モエ」
そんな一室の中にあって、最も特異な存在に萌子は声をかける。
観測室の中央に浮かぶ、水晶のような物質で出来た玉座に座り、淡く黄緑色に光る魔力で構成されたコードを背中から無数に放って、この部屋の電子機器全てに接続する、長い金髪の女性は瞳を瞑ったまま萌子に返事をする。
冒険者ランキング第4位、ジェイミー・カシルバーク。ジェーン・ドゥというハンドルネームを使い、非冒険者が代表兼総合マネージャーを務めるアメリカの大手クランに所属する、アメリカトップクラスの冒険者だ。
余談だが、モエというのは萌子のハンドルネームである。
「この千里眼の座は魔力の流れを見抜く……スキルや他の魔道具と仲介する形で機械と接続すれば、異世界中の魔力の流れを観測することも可能です。貴女と、アイゼンの二人が大量の痕跡を集めてくれたおかげで、無数に漂う魔力の中から標的を特定することが出来ました」
そう言って彼女は自身が座る玉座を軽く撫でた。
元々彼女の天職は暗殺者。隠遁はもちろん、探知にも長けており、それらに関するスキルや魔法の装備を数多く所有している冒険者だ。
常にモンスターの位置情報を正確に捉えることで不意を突くことに功績を上げて見事トップランカー入りを果たしたが、ある共通目的の為にギルドが所有する超広範囲の魔力を観測する大型マジックアイテム、千里眼の座の使用者に選ばれ、日本に長期出向している。
「前回、火山を凍り付かせた時は顕現前の余波だったが、前例から察するに恐らく次は……」
「間違いなく完全に顕現することでしょう。そして魔力の集まり方からして恐らくA大陸…………第二十一支部のゲートを狙うでしょう。予測時間にして、残り五日です」
「五日か……ならそれまでに、ゲートの点検調査を設けるように九々津さんに通達しなければな」
「そちらは先ほど手配に向かっているのでご安心を」
冒険者ギルドは時々、ゲートの点検調査と称して、不定期でゲートの利用を禁止する時がままある。
点検及び調査するゲートに法則性は無く、そもそもゲートに干渉するスキルやマジックアイテムが一切発見されていない現在、多くの者が首を傾げてはいるが、その殆どは国お抱えの研究者チームが出向するという話を聞きつけ、理解できないにしても納得をしているのだ。
……実のところ、点検調査など単なる名目でしかないのだが。
「……ですが予測は予測。このペースでならあと五日というだけですから」
「何が起こるか分からない……まぁ何時もの事だな。実際、予期せぬ事態は既に起こってしまっているからな」
萌子は異世界の大まかな地図が映る大画面を苦渋の表情で睨む。
オーストラリア大陸のゲートから行けるC大陸、その左側の海域と、ユーラシア大陸のゲートから行けるB大陸の中央山脈は、危険信号を意味する赤で染まっていた。
「全ての終わりが近づいてきている影響なのか……同時顕現など前例のない事態です。アイゼンもこの事態への対応に追われて日本を離れてしまいましたし、もしこれでA大陸の獣まで目覚めれば……」
「私が足止めをする他ないだろう」
深刻な面持ちで呟くジェイミーに、萌子は平然と告げる。
「何、私は時間稼ぎに向いているのでな。他の四人の内の誰かが救援に来るまで、耐え忍んでみせるさ」
「…………」
力強い意思が秘められた瞳にジェイミーは何も言えなくなるが、不安は消えることはなかった。
もちろん、萌子の事は信頼している。かつて東京上空に現れた魔王の城、その最前線で戦っていた《神奈川守衛隊》の現リーダー。彼女ほど守りと足止めに特化した冒険者は他に居ないと断言できる。
……だが、一瞬で山を海に引きずり込んだり、上空へと巻き上げることができる存在と同格とされる敵を前にして、彼女一人で一体どこまでできるというのか。
不安は尽きることはない。だがそれでも託すしかないのだ。自分を始めとした多くの冒険者たちなら戦力になるだろうが……この事態を打開できるのは、獅子村萌子を始めとしたたった六人しかいないのだから。
「そう言えば、九々津さんのご子息が先日、第二十一支部のゲートを通じて異世界へ向かったようです」
「あぁ、知っている。近況報告の動画がアップされていたからな。……丁度迎撃準備をしなければならないし、ついでに二人を地球に戻した方が――――」
その時、ビー! ビー! と、けたたましい警報音と共に薄暗い観測室が赤く点滅する。
「どうした!? 一体何事だ!?」
「……馬鹿な、これは……!」
真っ先に異常の正体に気が付いたのは、ジェイミーだった。全身から激しく冷や汗をかきながら、マジックアイテムと接続した大画面に異世界の魔力の流れを簡易絵図で映し出すと、そこにはA大陸近海のとある一点に向かって膨大な魔力が収束していっているのが分かる。
「そんな馬鹿な!? こんな急速に魔力が集まるなんて!?」
「こんなことは今まで一度もなかったじゃないか!? 一体どんな手段を使えば!?」
「落ち着け! 今は原因を考える時ではない!」
狼狽え、盛大に慌てふためく観測員たちだったが、萌子の一声によって瞬時に落ち着きを取り戻す。
「ジェイミー、改めて聞くが、このペースならあとどのくらいで完全顕現を果たす?」
「……恐らく、五時間もあれば……」
「つまり十二時には……ということか。どうやら私が残った甲斐があったらしい」
それだけ聞くや否や、萌子は颯爽と背中を翻して出入り口へ向かう。
「出撃待機をしている国連直属の冒険者たちに連絡を! 私は彼らと二十一支部で合流し、奴を迎え撃つ!」
大声で指示を出すジェイミーの存在を背中で感じながら、萌子は急いで建物を飛び出し、威嚇にも似た獰猛な苦笑いを浮かべた。
「まるであの人が居なくなり、私しかいない瞬間を見計らったかのようなこの三点同時襲撃……どうやら連中も本気を出したらしいな……!」
誰もが平穏に暮らしているように見えるこの地球だが……刻一刻と、平穏に終わりが告げられようとしている。
ならば何としてもこの星に生きる者たちの営みを守らなければならない……脅威が差し迫る異世界で、何も知らずに戦っているであろう雄介とカズサの二人を守ることで。
ご質問があったのでお答えします。
Q『ロマサガ見たいに技術点とかあったりするんですか?後、バックアタックとかサイドアタックとかあったりしますか?』
A『技術点とかは流石に無いですね。ただ、背後からの攻撃に補正が掛かるスキルや、同様に横側からの攻撃に補正が掛かるスキルとかはあるという設定です。例として挙げるなら、モンスターの背後から攻撃した時、威力が二倍になるとか』
Q『質問です今回の戦闘で使った狂化ポーションをモンスターに使う事できるのでしょうか?
狡猾で搦め手をするタイプのモンスターに使用すれば行動がワンパターンになって倒しやすくなったりしますか?』
A『それ、超採用したいです! こちらでは想定していませんでしたが、凶化ポーションの使い道の一つとして有効な手段として設定させていただきます』
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