寝ているモンスターは爆弾や溜め斬りで叩き起こしてあげるのがマナー
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
翌朝、時折ネームドモンスターの痕跡らしきものを見つけながら河を辿り続けた俺たちは、大きな瀑布へと辿り着いた。
まるでナイアガラの滝を思わせる雄大な光景。恐らくこの滝の上がこの近辺にある河の水源なのだろう。
(……【窮鼠の直感】が反応している?)
漠然とした嫌な予感を滝壺あたりから感じる。ただ落ちれば激流に晒される危険だけじゃない……どちらかというと、滝壺の中から嫌な気配を感じるのだ。
(わわっ!? 居ました! 居ましたよユースケ!)
どこまでも澄んだ水が流れ落ちる滝。激しい水泡が無数に漂っていて全容は見えないけど、覗き込んでみれば確かに滝壺の下に大きな蛇の頭が見えた。
間違いなくネームドモンスターだ……! かなり図太い神経をしているのか、はたまた途方もない水圧など気に留めないほど耐久力があるのか……どうやらあの中で眠っているらしく、まだこちらに気付けている様子はない。
(……こうなると、一撃目が重要だな)
眠っている相手には可能な限り強烈な一撃をお見舞いしたい……一番に頭に思い浮かんだのは【滅陽】だったけど、それは止めた。
ただでさえ戦闘力はこちらを上回っているであろうモンスターが相手なのに、大量の水が盾になっている状態。【暴君特権】込みでも半日に一回しか撃てないスキルを使うのはリスキーか。
(となると、やっぱりこっちだな)
力、速度、耐久力に魔力と、各種強化ポーションを予め使っておき、【アイテムボックス】から巨大な壺を取り出して三つほどネームドモンスター目掛けて沈める。
今投げたのは、機雷型大壺爆弾だ。水の中に居るモンスターを攻撃するためのマジックアイテムで、普通の壺爆弾同様に衝撃を与えれば爆発する奴。
(そして仕上げは当然コイツだ)
続けて、魔王銃剣をバスターモードに変形させ、上空に跳躍することで空中攻撃の威力を上げるスキル、【空中殺法】の発動条件を満たし、照準をネームドモンスターの胴体があるであろう場所に定める。使う攻撃スキルは言うまでもなく【天魔轟砲】だ。
何気に、【滅陽】以外で今出せるだけの最高火力をモンスター相手に叩きつけるのは初めてである。これだけの火力なら、戦闘力が大きく上回るギガントモンスターでも有効打を与えられるだろう。
(吹き飛べ……!)
二又の大剣になった魔王銃剣の切っ先から、赤黒い極大の光線が放たれて滝壺を貫くと、大壺爆弾が炸裂。大爆発と共に凄まじい水柱が上がった。
「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
凄まじい絶叫と共に滝壺から飛び出すのは、九つの頭を持つ大蛇。澄んでいた水が大量の血によって瞬く間に赤く染まって流されていくのが見えた。
(……今の、間違いなく効いたと思ったんですけどね)
少し苦々しそうに呻くカズサに、俺も心の中で同意する。あの流血から察するにダメージを与えることはできたはずなんだけど……どういう訳か、陸に上がったネームドモンスターの体には傷一つ付いていなかったのだ。
(……どういうスキルかなのかを探るには、まず色々と試してみないとな)
魔王銃剣をデュアルモードに戻し、俺はホログラム画面越しに合計十八個の血走った瞳でカズサを睨みつけるネームドモンスターに【天眼】を使う。
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種族:ヒュドラ
戦闘力:118970
猛毒と水を司る不死の大蛇。吐き出す毒霧は吸うだけで臓腑を腐敗させ、その毒牙は鋼鉄すら容易に砕くとされる。
―――――――――――――――――――――――――
(相手はやっぱりヒュドラだったか)
事前情報から察していたけど、敵は神話的にも有名な怪物の中の怪物……その情報を元に生み出されたギガントモンスター。ギガントモンスターとしてはまだまだ成長途中のようだけど、その威圧感は一線級だ。
『『『ブシュゥウウウウウウウウウっ‼』』』
九つの口から一斉に噴出される毒の霧が辺り一帯を包み込み、木々はあっという間に枯れ果てていく。花橋ダンジョンのギョロ木とは格が違う、一般人なら触れるだけで体が融けそうな猛毒だが、それは悪手である。
「ふっふっふっ! 全然効かないっすよ! 何ならマイナスイオンみたいなのすら感じます!」
知らなかったとはいえ、【ポイズンヒール】持ち相手に毒攻撃なんて隙をわざわざ作ってくれるようなものだ。即座に間合いを詰めながら【星切之太刀】を発動、ヒュドラの体に刃を走らせた。
戦闘力差は二倍を超えているけど、【星切之太刀】の切れ味に加えて、恐らく耐久関係のスキルがないのか、思ったよりもあっさり刃が肉を切り開く。
魔王銃剣は薄い鱗を割り、深々と肉を裂いてヒュドラの体を通過した瞬間……切り裂かれたはずの傷口がピッタリとくっついて跡形もなく消え失せた。
((は!?))
これには俺もカズサも驚いた。どれだけ攻撃しても喰らわないって、そういう意味!? 生半可な攻撃じゃ、まともに血を流させることすら出来ない再生力ってこと!?
「ジャアアアアアアアアアッ‼」
攻撃直後の隙を狙ったかのように、ヒュドラの頭が三つほどがいっせいに襲い掛かる。戦闘力がかけ離れているだけあってかなりの速度だけど、体が大きすぎる分、隙も多い。戦況を俯瞰的に眺めている俺は慌てずコマンド入力をし、【ノックバックカウンター】で首三つを弾き飛ばす。
近接攻撃を弾いて無理矢理仰け反らせる【ノックバックカウンター】は、隙の大きい攻撃を繰り出すギガントモンスターを相手にする時にこそ最大の効果を発揮する。毒も効かず、近接攻撃にも対策されている格下の人間というのは、さぞ相手し難いことだろう。
「ふっ!」
魔王銃剣をバスターモードに変形させながら、仰け反った首の内の一つを目掛けて跳躍。残りの首も迎撃しようと向かってくるが、長い首が九つもあれば絡まらないように気を遣うだろうし、そもそも小さな人間相手に寄ってたかって攻撃するには頭がデカすぎる。
【三段ジャンプ】で回避し、時に襲ってきた頭を踏み台にしながら上を向いている頭に近づいて、紫電迸る刃で首を刎ね飛ばす……が。
(うわっ。マジっすか……)
何と首を撥ね飛ばしたその直後、傷口から新しい首が二つ生えてきたのだ。しかも毒や近接攻撃は効果が薄いと悟ったのか、ヒュドラは攻撃方法を切り替え、岩すら切り裂く高圧の水ブレスを全ての口から吐き出してきた。これは……首を撥ね飛ばしたのは間違いだったな。
(神話に沿ったスキルを持っていたか……!)
地球でヒュドラと言えば、世界的な知名度を誇る大英雄ヘラクレスとの戦いで有名だが、神話のヒュドラも今目の前にいるモンスターと似たような再生方法を使っていた。これは何の対策もなく挑み続けられないな。
「ビィームっ‼」
試しにインターバルが終わった【天魔轟砲】をぶっ放してみたけど、体に大穴を開けるだけで、その穴も二秒経たない内に塞がってしまった。
(これは……膠着状態っすね)
毒も近接攻撃も効かず、水ブレスは【ミラージュステップ】で回避しまくるカズサに、どんな傷でも即座に塞いでしまうヒュドラ。神話とかじゃ傷口を火で炙って再生を塞ぐっていう手段を取っていたというから試そうと思ったけど、こんな水辺で、水攻撃を連発してくる奴相手に炎攻撃はさほど意味がない。そういうところは神話通りにはいかないらしい。
少しずつ、コイツは殺せないモンスターなのではないかという考えが頭を掠めるが、頭を振って弱気な気持ちを振り払う。俺が諦めてどうする、何か倒せる方法はあるはずだっ。
(……【滅陽】を使うか)
倒しきれる可能性は低いという予感はある。インターバルが半日もある【滅陽】は闇雲に使っていいスキルではないのだから温存しようと思っていたけど、完全に手詰まりで他に手が無いのも事実。超火力をぶつけることで、何か活路を見い出せるかもしれないし。
(いくぞカズサ! 衝撃に備えろっ!)
(うっす!)
十に増えた口から放たれる、直撃すれば一撃死ものの水ブレスをバックステップで回避しながら、最大の威力が発揮できる距離を開けると同時にボタンを押す。
「「「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼」」」
「ああああああああああああああっ‼」
カズサの頭上に出現した、ギガントモンスターすら呑み込みかねない黒い小太陽はその大きさを一気に膨張する。炎の様に揺らぐ黒い破壊の力は陸地を抉り、大瀑布の半分をヒュドラごと呑み込んだ。
ご質問があったのでお答えします。
Q『質問ていうか確認。アイゼンが動画とかアップしないのって、機械音痴だからですよね?』
A『そうですね。本文で既に機械音痴であると明言していますし、老人携帯すらまともに扱えないのが、パソコンで動画編集作業なんてできるとはとてもとても……』
Q『風俗かキャバにでも行ってみては?(ザラキ)』
A『ぶっちゃけ、一度は考えました。でも残念なことに……二次元に魂が漬かりきった私は、三次元の女性では息子のテンションが上がらなくなってしまったんです。二次元の方が断然エロいなと……高校生の時には既に、こんな状態に』
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