男は皆、最強の二文字に弱いんだ
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
その後俺たちは、上流に向かって進み始めた。
大河の大本となっている水源を目指し、痕跡を見逃さないようにする為、全力疾走を控えながら移動した結果、大河がCの字に曲がるところで、一度ネームドモンスターが河から上がったような跡を見つけることが出来たのだ。
(こんな痕跡は報告に無いし、まだ濡れている。これは上流に向かった可能性大だぞ……!)
疑念が確信へと徐々に変わっていき、意気揚々と山の麓まで辿り着いた俺たち。その時点で時刻は16時……今からネームドモンスターと戦えば、夜闇の中で戦う羽目になるだろう。地形が悪い場所で戦う可能性だってあるし、今日のところはこの辺りでキャンプにすることにした。
(この辺りにネームドモンスターはまだ来ていません……よね)
(多分な。【窮鼠の直感】にも反応は無いし、魔物除けのマジックアイテムもちゃんと効果を発揮してるみたいだ)
簡易テントを囲むように設置された四つの煙筒。これはモンスターが嫌がる成分を含む異世界の植物から調合して作られたもので、焚くだけでモンスターを遠ざける力がある、異世界で野営する際の必需品だ。【アイテム強化】の影響も受けているから、もしかしたらギガントモンスターでさえも遠ざけるかもしれない。
(なら折角ですし、ちょっと出てきません? 空が凄いっすよ)
丁度俺もそうしたいと思っていた。カズサも近くにいるし、モンスター除けに危険察知スキルもある今なら、少しくらい外に出ても大丈夫だろう……俺は【木偶同調】を解除し、カズサの隣で夜空を見上げる。
「おぉ……!」
「にししっ。生で観れて良かったでしょ?」
画面越しで見るのと、実際に見るのとでは訳が違う……カズサの外側に出て見上げた夜空には、数え切れないほどの星の光が届いていて、時々流星が通り過ぎていくのが見えた。
今まではそんな余裕がなくて、ちゃんと見上げるのは今回が初めてだ。街灯が要らないほどの光量を放つ星。地球ではめったに拝めない流星も、この異世界では頻繁に見ることができると聞いていたけど……まさかこれほどとはな。
「はい、どうぞっす」
「おう」
カズサから【アイテムボックス】の中に入れていたコンビニ弁当とペットボトルのお茶を受け取り、星見酒ならぬ星見飯と洒落込む。見るだけでも圧巻ものの星空だけど、だからこそ悔やまれるというか……。
「手っ取り早く済ませるためにコンビニ飯にしたけど、やっぱり異世界で星を見上げながら飯食うなら、焚き火で焼いた魚とか食ってみたいなぁ。異世界の川で獲った奴とか」
「確かに。コンビニのご飯も美味しいんですけどね……せっかくなら情緒とかも楽しみたいですし。何でしたら、アルミ製のカップに入れた熱いコーヒーとか飲みながらとか!」
「おー、映画とかでもよくあるよな! 俺も一度はやってみたい感がある! ……でも今の季節にコーヒーは暑くね?」
「じゃあアイスコーヒーにします?」
「……何だろう。一気に情緒がなくなった気が……。ホットをアイスにしただけでどうしてこうも違うのか」
「まぁ熱いものは熱いものなりの楽しみ方ってのがあると思いますし、冬に機会があればやってみましょう」
とっとと飯を食い終わり、ゴミを【アイテムボックス】に回収すると、俺たちは倒木に腰かけて星を見上げながら好き勝手に語らう。
こうしていると、普段インドア万歳な俺ですらキャンプの一つや二つをしたくなる……これが夏休みの力だという事か。
「……ん?」
その時、ポケットに入れていたスマホが震えた。画面を確認してみると、ギルドからの通知みたいだ。
「何かのお知らせっすか?」
それが気になったのか、カズサは身を乗り出しながら俺の手にあるスマホの画面を覗き込む。
無防備に押し付けられた体は細いのに柔らかく、絶大な戦闘力を秘めているとは思えないほど華奢で、男子の中では小柄な部類の俺から見ても小さい。しかもサキュバス級の美少女ときたもんだ。
異世界の満天の星空の下、寄り添い合う男女。……あれぇ? もしかして俺は、リア充に返り咲いたのか? 薫と別れて以降、彼女が欲しいとか考えもしなかったけど、このシチュエーション、どっからどう見てもリア充なのでは……?
「ユースケ?」
「……あ、うん。どうも冒険者ランキングの定期更新に関する自動メールっぽい。トップランカーの順位が変わったって……うわ、マジかよっ」
ランキングが表示された画面を見て、俺は思わず信じられない気持ちになった。
「アイゼンってまだ順位上がるの? いや、もしかしてとは思ってたけど……」
「八位……トップランカーの人の事ですか? でもあんまり聞いたことない人ですね。一位から十位の人って良くテレビでも見かけますけど、この人は全然知らないです」
首を傾げるカズサだけど、無理もない。アイゼンという冒険者は、ランカーの中でも異端中の異端だからだ。
「冒険者ランキングを上げるには戦闘力も重要だけど、それ以上に貢献度……実績がモノを言う。だから俺たちもクランを結成して、民間からの依頼を受けることで貢献度を稼ごうとしてるわけだけど……アイゼンは強さだけでトップランカー入りをした前代未聞の冒険者だ」
ただ強いだけではランキングを駆け上がれない……そんな常識をひっくり返したアイゼンという冒険者には、代表的な武勇伝がある。
今から五年前、アメリカでも特に人口が多いとある大都市からほど近い山に異世界へのゲートが出現したんだが、それはモンスターの大群が地球に押し寄せる大災害……モンスターパレードの始まりでもあった。
しかもただのモンスターパレードではない……小型から中型のモンスター数千体以上に、極めて戦闘力の高いギガントモンスター数百体以上からなる、下手をすればアメリカという国そのものが滅んでいてもおかしくない、特大のモンスターパレードだったのだ。
モンスターというのは人間の気配に敏感で、人間を優先的に殺そうとする傾向がある。出現したモンスターたちは挙って一番近くにあった大都市への侵攻を開始した。
アメリカにも当然冒険者がいるんだが、突然のことに対応が遅れた上に、戦力が足りなかった。人々は大混乱に陥り、誰もがモンスターに蹂躙されるだろうと絶望したが、モンスターは一匹たりとも大都市へ侵入することが叶わず、光の粒子となって消え去った。
偶然にも、アメリカの冒険者ギルドを一時的な拠点として活動していたアイゼンたった一人によって、モンスターの大群は一掃されたのだ。
しかも人的被害はゼロ。精々都市と都市を繋ぐ道路や山道が破壊された程度の、規模に反した被害だけで食い止められた……そんな神話に出てくる大英雄のような活躍に世界は注目した。
アメリカ国民たちはまるで救世主の様にアイゼンを称え、刀を武器にして戦う彼の事をサムライと呼んで、国内の冒険者たちを差し置いて英雄視されている。
更にはアイゼン以外のトップランカーたちが皆して「最強の冒険者は誰なのか」と問われた際に、「一対一でやるなら間違いなくアイゼンである」と答えたことから、アイゼンは名実共に世界最強の冒険者と呼ばれるようになった。
「……ただ、どういう事情があるのか分からないけど、本人はメディアに殆ど顔を出さない上に、動画投稿も活動報告もしていない人でな。一応、異世界やスキル取得方法に関する情報提供はギルドを通じてしてるみたいだけど……詳しいことは俺も良く分からない」
「はぇ~……そんな凄い人がいるんですねぇ」
加えて、企業や公的な機関に属している訳でもない。アメリカ大統領直々に国家所属の冒険者になってくれとスカウトがあったというが、それすら袖にしたのは有名だ。
風の噂によると、殆ど地球にすら帰らず、異世界で延々と修行を繰り返しているとか何とか。
トップランカーでありながら謎の多い冒険者……俺たちもランキングを駆け上がり、異世界を巡り続ければ、いつか出会う時が来るかもしれないな。
久々にご質問が無かったので軽くご報告を。
実は私、恋愛描写は好きなのですが、実際に執筆するのは得意ではないと感じております。なにせあと1年弱で魔法使いですからね……経験がないんです。一身上の都合で、結婚するつもりもないので経験を詰むことも出来ず……。
ですが物書きとして面白い作品作りのために不得意から逃げることはせず、より一層妄想力と執筆を重ね、多くの読者様の感想を取り入れることで精進したい。
そこで現在、少しずつ時間を取って練習用兼息抜きの短編を書き綴っております。無理のない範囲でやっていて、投稿ペースに影響が出ないようにしているのでご心配なく。
完成したら軽くご報告させていただきますので、よろしければ見ていってくださると幸いです。
本編に関わりの無いことを後書きに書いて申し訳ありません。ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!
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