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一人ぼっちの夏休みの楽しみ方は考え方次第

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


 こんなに暇な夏休みは生まれて初めてかもしれない……私、水無瀬薫はぼんやりと考えながら、目的も無しに外をブラブラする。

 記憶に残っている限りでは、私に友達が途切れた事がない。成長に応じて趣味は変わっていったけど、それでも遊び相手が一人もいなくなる……なんて事は無かった。

 でも司くんの事件が切っ掛けになって私は学校から孤立した。犯罪者と親しくしてた子となんて遊びたくないんだろう……私が逆の立場なら、きっと同じような事をすると思う。それが理解できるだけに、今が余計に辛い。


 去年の夏休み明けからプライベートがガラリと変わり、趣味はショッピングとか映画とか、友達と一緒に行って初めて楽しめるようなものばかりになったのも災いした。

 お喋り無しのショッピングなんて面白味が無いし、一人映画なんて知り合いに見られたら恥ずかしくて学校に行ける気がしない。中にはそういうのを気にしない人だっているかもしれないけど……少なくとも、今の私には無理だ。


「……昔はそんなことなかったのにな」


 昔……というほど前の事じゃないかもしれないけど、少なくとも一年前の夏休みは、一人で漫画とかゲームとか買ったりしたし、雄介と都合がつかなかったら一人で映画を見に行ったり、自室で遊んだりするのは当然だった。

 それが寂しいことや、恥ずかしいことなんて微塵も思っていなかったし、世の中多様性だ何だって言って充実した日々を過ごしていたのを、何となく思い出す。今となっては人目が気になって出来る気がしないけど。


 ならもう前みたいに戻れば良いんじゃないか……そんな考えも頭をよぎったけど、凄い抵抗がある。

 だってせっかくオシャレになったのに、他の趣味にかまけてそれを自ら手放すなんて考えられない。ゲームとか漫画とかもう子供っぽいイメージしかないし、そんなのに夢中になったらますます友達が出来なくなってしまう。

 私は早く前みたいに戻りたいんだ。陰気なオタクなんて、一体誰が相手をしてくれるんだ。そんな考えがずっと頭の中をグルグルしてる。


「……あ」


 その時、向かい側から自転車で二人乗りしながら、楽しそうに笑い合う雄介と一之瀬カズサの姿が見えた。

 また冒険にでも行くのか、それとも二人で遊びにでも行くのか……何というか、凄い青春してるなって感じがして、凄く羨ましく思える。


「…………」


 擦れ違い際に雄介と目が合う。

 もしかしたら、止まって話しかけてくれるかも…………そんな期待をしたけど、雄介はまるで路傍の石でも見たかのように、すぐに視線を切ってあっという間に通り過ぎていった。

 ……雄介は今でもオタクなんだってことは、学校での様子を見れば分かる。冒険者として有名になって色んな人に話しかけられるけど、一番よく話す友達は二村君と八谷君だし、耳を済ませればゲーム用語が飛び交う会話をしているから。


 雄介はスクールカーストを登り詰めた今でも変わらない。雄介は何だかんだで優しいから、前からの友達と簡単に縁が切れなくて困ってるのかな?

 だって雄介はもう、手を伸ばせば自分に見合った友達なんて簡単に作れるはずだ。あんな冴えないオタクとの付き合いなんてさっさと切ってしまえばいいのにって思うし、私が逆の立場ならそうしている。


 まぁその辺りは好きにすればいいと思うけど……許せないのは、雄介の隣という私がいたはずの場所に、我が物顔で一之瀬カズサが居座り続けているという事だ。

 一之瀬カズサはズルい。司くんが死んでクラスのカーストトップに繰り上がったグループともよく話して良い関係を築いているみたいなのに、その一方で雄介たちとのゲーム談義も楽しんでいる……そんな器用で自由な生き方をしている彼女が妬ましくて仕方ない。 


 私だって、初めはそうしたかったはずなんだ。でもそんな学校生活が出来なくて、より一層輝いている方に傾倒した……その結果がコレだ。

 だから私は一之瀬カズサが嫌いだ。人気も、友達も、雄介も……私が欲しいものを何もかも持っている、あの人形女の事が。


   =====


 翌日、全ての準備を整えて、俺たちは第二十一支部のゲートから異世界に向かった。事前に確認した地図情報を頭の中で反芻しながらネームドモンスターを探す。


(おーっ! 良い景色っすね! 見てください、滝っすよ滝!)

(この辺りは水源が多いらしいからな。事前情報によると、こういう滝も多いらしいぞ)


 第十七支部のゲートから行ける、海からほど近い森とはまた雰囲気が違う、水源溢れる山脈地帯。その中腹あたりに足を付けたカズサは感嘆の声を上げる。

 この近辺には至る所に滝が存在し、中には日本では決して拝めない……世界三大瀑布さながらの巨大な瀑布が、異世界写真家でも人気のスポットだ。


(キャンプ行くならこういうところもアリじゃないっすか? ほら、魚とか獲れそうですし)

(夏でも涼しそうだし、良いかもな。……まぁそれもネームドモンスターを倒してからだけど)

(分かってますって。それで、どこに向かえばいいんですか?)

 

 カズサに辺りを警戒してもらいながら、俺は八谷たちが事前に調べてインストールしてくれた目撃情報と地図をスマホで確認しながら、ネームドモンスターを探す。


(こっから割と近くに、《毒蛇竜》の痕跡が残ってる場所がある。既に近くにいるかもしれないから覚悟しといてくれ)

(了解っす)


 ホログラム画面の向こうにいるカズサは山脈を下り、巨大な根が壁として立ち塞がる森を軽快に駆け抜け、開けた場所へと着地する。

 そこは森の中心部から平野へと一直線に続く、大木をなぎ倒しながらできた巨大な獣道だ。恐らく、《毒蛇竜》が通った道だろうということは容易に想像がつく。


(おっ……あれは確か……)


 その時、獣道の端に白い膜のようなものを見つけた。よく見てみると、鱗のようなデコボコがある。


 ―――――――――――――――――――――――――

 品名:大蛇の皮膜

 巨大な蛇型モンスターの脱皮した跡。一部地域では幸運の証とされていた。

 ―――――――――――――――――――――――――


 これがあるということは、情報通りネームドモンスターが通った道で間違いないだろうな。実際に目で見て確証を得れて良かった。

 手に入れた皮も一応、何かに使えるかもだから【アイテムボックス】に入れておく。もしかしたら、運を司るマジックアイテムの素材になるかもだし。


(大きいとは聞いてましたけど、この道を見る限りだと相当ですね。こんなおっきいのが何時までも見つからないもんなんすか?)


 獣道の幅を見た範囲での憶測だけど、前に俺たちが戦ったキモウサギ以上の体躯だろうな。勿論、そんなデカブツがただ岩陰や木陰に隠れられるわけもない……ネームドモンスターが姿を晦ますことが出来た、その答えは獣道の先にある。

 獣道に沿って森から平野へと出て、草原を削り取ってできたであろう這いずりの跡を辿ると、ギガントモンスターでも難なく収まりそうな、極めて巨大な大河に着いた。


(なるほど……水の中に隠れたって訳っすか)

(水中移動できるスキルの持ち主だって限られているし、この河自体流れが強いからな。この大河は西に向かえば分岐しまくってるし、ずっと河の中を移動してるみたいだから、這いずり跡から追いかけるのは難しいな)


 問題としては、どこに向かったかだ。河の下流での発見例が殆どだけど、この先は海に繋がっている。

 もし海に出られてたら、こっちはもうお手上げだぞ……全速力で追いかけるしかないけど、河に飛び込んだとされる日から既に数日。海に出られた可能性は高く、そうなっていたら見つけられる可能性は低いかもな。どうしたものか……。


(……あれ? ユースケ、あそこに何かありません?)

(んー? ……ありゃあ、爪痕か?)

 

 大河の岸には巨大な爪で抉ったような跡が残っていた。

 例のネームドモンスターは、目立たないけど四本足だ。胴体部分が巨大なので腹を引き摺ることになり、結果として直線の移動跡が残るだけで、別にこういう痕跡があったとしても不思議には思わない。

 岸に爪痕くらい、残すこともあるだろうし……って、あれ?


(この爪痕の向き……もしかして、上流に向かった跡なんじゃ……?)


 まるで下流から上流へと遡るために、前足で岸に爪を立てて出来たような抉れ方だ。しかも掘り返された土はまだ乾いていない。


(賭けになるけど、上流に向かってみるか?)


 目撃情報から下流へ向かっていると思っていたけど、そうじゃないかもしれない。

 ギガントモンスターくらいの体格なら、大河の流れに逆らって移動することもできるだろう。


(水が流れてきている山も割と近いですし、行ってみる価値ありだと思いますよ!)

(んー……よしっ。行ってみるか)



ご質問があったのでお答えします。


Q『冒険者の動画配信するさいにサキュバスやインキュバスとか人間に近く性的なモンスターとかはいる場合には年齢制限されたりするのでしょうか?またモンスターとはいえ命を奪う行為ですから自称愛護団体とかのクレームが今でもあるのでしょうか?』

A『まぁサキュバスの格好によりますかね。水着くらいならどうってことはないんですが、水着を脱ぎだすと年齢制限が掛かります。ちなみにエロ動画サイトの人気ランキングの上位は、常にテイムされたサキュバスが独占しているとか何とか。あと、モンスターの愛護団体というのは存在しませんね。テイムシールなどを使わない限り、モンスターというのは人間に対して害意しか持ちませんから。一般人の手で御すことができ、悪意のない生物である動物とは訳が違うんです』


Q『冒険者は戦闘力の向上に伴って身体の頑丈さも増すけど今の雄介(戦闘力6,000前後)が地球上で以下のような事態に遭遇した場合どの程度のダメージを負うのでしょうか?

①スタンガン攻撃②魔力なしの刃物や鈍器、ピストルによる攻撃③猛スピードのトラックと正面衝突④10F程度の建物の屋上から転落⑤重火器で爆撃

A『①はノーダメージ。②は現実世界基準でなら対物ライフルでも使わない限りは痛いですむ。③は吹っ飛ばされるけど自転車で転ぶくらいのダメージ。ただそのまま建物などとサンドイッチされて押し潰されるなら話は変わる。④は③と似たようなもので、⑤になると流石にヤバいってところでしょうか?カズサは①~⑤をノーダメージの怯みなしで受けきれます。

特に設定していないのでかなり大雑把ですけど……こうしてみると、雄介も完全に人間辞めてますね。ちなみにモンスターに現代兵器が効かないように、冒険者にも現代兵器が効かないという設定です』


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― 新着の感想 ―
[一言] 元カノが出てくるとビ〇ズのMann〇quin Vil〇ageって曲を思い出す。 遅れてるヤツほどダサイものないもんな~ 元カノはこれからどうなるのかな。
[一言] 主人公の元カノの思考が新藤のストレス発散でボコられて頭のネジが外れたとしか思えないですね・・・ 復活する予定の新藤に再度ボコられれば少しはマシになるのかな・・・
[一言] 結局進藤が生きてたら主人公の優しさに気づくことなく人生終えてたくせに何言ってんだビッチ お前とは違って一緒にいる相手はアクセサリーじゃないんだよ
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