見つけた理想のモンスターはなんだと思いますか?
前回、パーティという呼び名をクランに変更すべきか否かというアンケートを取らせていただきましたが、総合的に見てクランという呼び方の方が良いとおっしゃられる方々が多かったので、クランに変更させていただきました。
とりあえずこちらで確認できた範囲での改稿は済ませました。突然の変更に戸惑う方々もいらっしゃるかもしれませんが、これもより良い作品作りの一環であると、ご理解のほどをよろしくお願いいたします
ネームドモンスター……そう呼ばれる特殊なギガントモンスターたちが存在する。
ギガントモンスターの中でも冒険者たちを幾度も撃退、逃走を繰り返して強大となり、ギルドから多額の懸賞金が掛けられている、二つ名を与えられた個体の事だ。
戦闘力は最低でも十万を超えているらしく、懸賞金や魔石目当てでクランを結成してでも狙う者も多い。
「で、そんなネームドモンスターがアタシたちの相手って訳ですね」
「そういう事。目撃情報から、第二十一支部のゲートから行ける地点の付近にいるってことは分ってるし、他の冒険者に倒される前に討伐にいかないと」
「了解っす! ……ところで、狙っているのってどんなモンスターなんすか?」
自室で【アイテムボックス】の中身をチェックしながら、カズサは問いかける。
「ギルドが与えた二つ名は《毒蛇竜》……頭が九つもあるっていう、超デカい蛇らしい」
名前の通り、多彩な毒攻撃を使ってる難敵であり……そう言ったところが、俺たちが標的に選んだ理由だ。
「【ポイズンヒール】があるアタシなら毒攻撃は効きませんもんね。また格上相手の戦いですけど、確かにこれならある程度有利に戦えそうっす」
今のカズサの戦闘力は5万ちょい。件のネームドモンスターの戦闘力がどれほどのものになっているのか分からないけど、戦闘力差が二倍ちょいで、主力となる攻撃手段が毒のモンスターなら、俺たちは近接攻撃にさえ気を付けていれば勝てる相手だと判断した。
「一番最近ネームドモンスターとして認定された相手だから、戦闘力が十五万も二十万もある相手ではない……と思いたい。ただ問題があるとすれば……攻撃が通じなかったという、報告があることか」
「ほうほう……となると、あれっすかね? また条件を満たさないと攻撃が通じない系のモンスターってことですかね?」
「まだ情報が足りなくてその辺りまではなぁ。実際に冒険者と戦ったのだって、三~四回くらいらしいし」
だが不安要素があるからと言って見逃すわけにはいかない。プロ資格を得るために必要な、ギガントモンスター二体の討伐……これを達成させなきゃならないんだから。
ただでさえギガントモンスターの出現は稀なんだ。他のネームドモンスターは今の俺たちの手に余りそうなのばかりだし、《毒蛇竜》もそろそろ上位ランカーや、戦闘力だけ鬼のように高い隠れた実力者に目を付けられててもおかしくない。
異世界にはギガントモンスターばっかり存在する、頭のおかしい魔境が存在するらしいけど……そういうところはプロ冒険者以外の立ち入りを禁止しているしな。ていうか、最低でもギガントモンスターを単独で討伐できるだけの実力がないと間違いなく死ぬし。
「という訳で、今回の探索は初めてとなる野営です。探し回っている冒険者が多い中、三~四回しか発見されていない以上、どこか隠れ家的な場所に潜んでいるんだろうし、それを見つけ出さなきゃだしな」
「おぉっ! キャンプって事っすね!? なんか夏休みっぽいじゃないっすか!」
「確かにな」
遊びに行くわけじゃないんだけど……正直、俺も少し楽しみだ。
そもそも、ギガントモンスターが付近に確認されていなければ、異世界は冒険者たちにとってピクニックやキャンプの名所だ。
場所にもよるけど、在野のモンスターっていうのはランイーターみたいな弱いのが殆どだし、モンスター除けのマジックアイテムも数多く存在する現在、ある程度強くなったエンジョイ勢の冒険者が集まってキャンプするのも珍しくない。
実際俺たちは異世界でゆっくり過ごす事なんてほとんどなかったけど、山脈から流れる大河は雄大だったし、星空は地球ではまず拝めない程に煌びやかだった。
「ネームドモンスターを無事に倒せたら、いっちょ異世界でキャンプでもしてみません? 今のユースケの戦闘力なら、在野のモンスターくらいものの数じゃないですし」
「確かに、それは良いな。夏休みもまだまだ残ってるし、そろそろモンスターをテイムしに行くついでにキャンプっていうのは、悪くないな」
実を言うと、テイムするモンスターがようやく決まった。
八谷と二村が俺たちの理想の条件を元に、膨大なモンスター図鑑の中からリストアップしてくれて、その中に強さと移動能力とモフモフ、この三つ全てを兼ね備えた理想そのもののモンスターを見つけたのだ。
テイムするにはちょっと戦闘力は高めで苦労しそうだけど……今の俺たちに出来ないほどじゃない。
「んー……壺爆弾少なくないですか? あと格上が相手なら、回復ポーションはもっとあってもいいような……」
「首が九つもあるって言うし、手数も多そうだ。……買い出しのついでに、キャンプ用品も買ってみるか」
「おっ、良いっすね」
夏休みらしい楽しみが出来た。こういう時に【アイテムボックス】はめっちゃ助かる。大荷物を運ぶ苦労がなくていいんだから。
そうして足りない物の買い足しついでにキャンプ用品を見繕うためにギルドへ行こうと家を出て、庭にある屋根付きの駐輪スペースへ向かうと、そこに置かれてある自転車にカズサが跨る。
「さぁユースケ、後ろに乗ってくださいな」
「逆じゃね?」
さも当然のように漕ぐ側に回るカズサ。コイツには男女間のセオリーというものは存在しないらしい。
まぁ戦闘力的にどっちが漕いでも同じなんだけど……傍目から見た印象以外にも、問題が一つ。
「あ、あれ? 足が届かな……あれ?」
「全体的にサイズが合ってないんだから無理すんな」
俺の自転車は、俺の身長と出せるスピードを考慮して買った物で、タイヤもフレームもそれなりにデカい。俺との身長差が二十センチ近くもあるカズサには、乗りこなすには苦労するだろう。ハンドル握ろうとしたら前傾姿勢になるし、そんな不安定な運転をしてる奴の後ろに乗りたくねぇ。
「むぅ……たまには自転車を漕いでみたかったんですけど、仕方ないっすね」
「そう言えば、運転中は何時も【アイテムボックス】の中に入ってたもんな。ていうか、自転車で出せる速度なんて、お前の全力疾走の足元にも及ばないと思うけど……気になるのか?」
「それはそれ、これはこれっすよ。実際に走るのと乗り物に乗るのとじゃ違うんです。例えるなら、ランニングとデパートの屋上にある100円入れたら歩く動物ロボットの違い……みたいな? 傍から見るとちょっと楽しそうなんですよ」
「あー……何となく分かる。速度とか関係なく、自分の足で走るのとは何か違うんだよな」
詳しく説明しろって言われても困るけど……ふむ。
一般人からすれば自転車の二人乗りって難しいから、何となく避けてたんだけど……今の俺の戦闘力は6000オーバー。カズサ一人後ろに乗せて走るなんて造作もない。
「荷台でよければ乗るか?」
「え? いいんすか? 幾らチビの私でも、それなりに重くなりますけど……」
魔王とモンスターの襲来によって、法というのは一度瓦解した。今現在の道路交通法は結構急ごしらえのもので、自転車や歩行者に関する規則は緩い。
昔は自転車二人乗りはアウトって聞いたけど……そこら辺の問題はお偉いさんが頑張ってるって言うし、多分その内、正式に二人乗りは禁じられることになるだろう。二人乗りを楽しめるのは、今だけなのだ。
「大丈夫大丈夫。今の俺の戦闘力がどのくらいだと思ってんだ」
「……それじゃ、お言葉に甘えまして」
俺がサドルに座ると、それに続くように荷台に腰かけたカズサは、振り落とされないようにと俺の腰に腕を回す。
……なんだろう。背中に当たる吐息がやけに熱く感じる。そしてこの大きくて柔らかいものが押し潰されたような感触は……。
「ユースケ? どうかしたんすか? 急に黙っちゃいましたけど」
「イヤ、ナンデモナイヨ? ソレヨリ、振リ落トサレナイヨウニ、モットシッカリ掴マッタ方ガイイト思ウンダ」
「おっと、失礼。こうっすかね?」
性に関して疎いところがあるカズサは、俺の浅はかな企みなど意にも留めずにより強く抱き着いてきて本当にありがとうございますっ!
「ゴホンッ。そんじゃ、行くとするかっ」
「おー!」
利き足に力込めてペダルを踏むと、自転車は一気に加速して道路を進む。異世界産の軽くて頑丈な金属で出来た素材のおかげか、単なる戦闘力の賜物か、人が二人乗っているとは思えないほどペダルは軽く、坂道もスイスイ上っていけた。
「おー……何気に初めて乗りましたけど、悪くないっすね!」
「ちょ、立つなっての! コケるコケる!」
「あっはははははは! 大丈夫! コケそうになったら支えるんで! さぁ行けユースケ号! どんどん飛ばせぇー!」
自転車に乗る感覚に早速慣れたのか、腰に回していた両手を肩に置き、後輪部分にある僅かな引っ掛かりを足場に立ち上がって、顔で風を感じるカズサ。一見無茶な体勢なのに、後ろで重心が崩れる気配がまるでない。すげぇバランス感覚だ。
かくいう俺も、口では色々文句言いながらも笑っていた。モンスターのと実戦で少しは恐怖に対する耐性でも付いたのか、今までにないこの状況とコケそうになるスリルをカズサと一緒に楽しんでいる。ついでに言えば、頭にオッパイの感触が伝わってきて最高だし。
「……あ」
そんな道中で、元カノの薫……もとい、水無瀬とすれ違った。
少し前まではずっと陽キャ友達と行動をしていた彼女はたった一人で、何を考えているのかが察し難い、複雑な表情でこちらを凝視していたけど……正直、もうどうでも良い事だ。俺は横切った水無瀬の事なんて速攻で忘れて、ギルドへ向かって走り抜けていった。
ご質問があったのでお答えします。
Q『冒険者になるときに使う技能札は戦闘能力が1上がるやつでも100以上上がるやつでも天職に変化はありませんか?』
A『変化はありませんね。非冒険者にとってスキルカードというのは、内に秘められた魔力を目覚めさせるためのきっかけに過ぎず、損な話ですが、どんなに取得戦闘力の高いカードを使っても天職に影響はないんです。天職の決定基準というのは、カードではなく、冒険者となる人間本人に依存しますからね』
Q『異世界の四季が地球と連動していると言われても...
北半球と南半球で季節が逆になるし、熱帯地域では季節が二つしかないし、北極と南極とかどう考えても連動は無理なんですが。ほとんど猛暑ってことは異世界は地球のような球体ではなく、フラットアース説のように平面ですか?』
A『なんて事だ……学のない作者をどうか許していただきたいです。とりあえずうまいこと改稿してみるので、どうかよろしくお願いします』
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