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男子高校生のベッドの下には、無限の秘密が眠ってる

ようやくチュートリアルが終了し、ドンドン成り上がっていきますので、第一話でお伝えしたとおり、次からは1日1回、18時投稿に切り替えますので、ご了承ください。

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


「おい、君! 大丈夫か?」

「……へぁ?」


 次に意識を取り戻した時、俺はゲートの地球側に戻ってきて、心配そうにしている冒険者に声を掛けられて起きたところだった。


「体に異常はないか? とりあえず医務室に……!」

「だ、大丈夫! すみません、大丈夫ですから!」


 とりあえず適当に誤魔化しながらその場を後にし、更衣室で着替えてからギルドを出て自転車に跨って走り出す。辺りは既に真っ暗になっていて、フラフラの体でゆっくりとペダルをこぎ続ける。


「……あ。換金忘れてた」


 本当なら地球に戻ったらすぐに換金する予定だったのに忘れてた。

 ……まぁ、でも明日でいっか。なんかもう、色々とあり過ぎて他に何かする気力も湧かねぇし。もうシャワーだけ浴びて寝たい。

 

「……ただいま」


 家に帰ってきて玄関扉を開け、小さく声を掛けるけど誰の返事もない。

 まぁ、両親は海外だし、妹は俺が帰ってきたくらいで出迎えるような奴じゃないし、何の問題も無いだろ。

 俺は泥のように重い体を引きずってシャワーを浴び、勢い良くベッドに倒れ込む。スマホを確認してみると時間は二十一時過ぎで、八谷や二村から心配のラインが何通か届いていた。


「今家に戻った……疲れて眠いから詳しいことはまた話す……っと」


 とりあえずそんな一文だけ送ってスマホを放り出し、俺は瞼を閉じる。

 今日の事は一体何だったんだろう……ランイーターの大群……木偶人形の美少女化……ゲームコントローラー……もう詳しく考えるのは明日で良いよな……?

 襲い掛かる睡魔と疲労に身を委ねて、俺はそのまま眠りについた。

 

   =====


 次に目が覚めた時は、全身が痛かった。

 あぁ……こりゃあ完全に筋肉痛だわ。普段そんな動き回るような生活してないし、昨日は全力疾走で逃げたり、メッチャ噛まれたり、滝壺に落ちたりしたからな。間違いなく、人生で一番ハードな時間だったと思う。


「いててて……とりあえず起きないと……」

「大丈夫っすかマスター? アタシで良かったら肩を貸しますけど?」

「いや、大丈夫。身動き取れないほど酷くないし」

「そっすか! なら良かったです!」

「心配してくれてありがと――――」


 ……はて? 俺は今、誰と会話したんだ? この家にいる人間と言えば、俺を除けば妹くらいなもんなんだけど、アイツはこんな喋り方をしないし、俺を労わるような事を言う奴でもない。

 ギギギって擬音が鳴りそうな、錆び付いた人形並みのぎこちない動きで声がした方向に顔を向けてみる。そこには、昨日の美少女がベッドの隣に胡坐をかいて俺の漫画を読んでいた。


「おはよーございます、マスター! ところで、この漫画の続きって無いんすか?」

「ほでゅわああああああああああっ!?」


 堪らず変な悲鳴が出た。待って待って待って待って、何でここに居るの!?


「人の顔見るなり悲鳴なんて酷いっすね。アタシはこれでも、一応マスターの命の恩人だと思うんですけど。昨日マスターが気絶した後、こっちの世界まで背負って戻ってきたのもアタシですし」

「え……? そうなの……?」


 言われて頭の中が一気に冴えていき、昨日の事を色々と思い出した。

 言われてみれば……確かにそうだ。俺は昨日、ランイーターに食い殺されるところを彼女の力によって助けられたんだよな……? 正直、分からないことだらけだけど。


「なぁ、アンタは一体――――」


 何なんだ? そう聞こうとした瞬間、腹の虫が盛大に鳴った。

 そう言えば、俺昨日の昼から何も食べてなかったな。


「とりあえず、ご飯にしちゃいましょうか。冷蔵庫漁っていいなら、アタシが何か適当に作るっすよ」

「いや、それは大丈夫だけど……悪い。話聞く前に飯食ってきても良い?」

「はいはーい」


 断りを入れてから俺はリビングに行って、テレビを見ている妹をスルーして即席で卵かけご飯を作って食って食器を洗ってから再び私室に戻る。

   

「ただいま」

「おかえりっす」

「うん。……で、話を戻すんだけど……アンタって一体……何なの?」


 そう問いかけると、少女は意味深なまでに不敵な笑みを浮かべる。


「ふっふっふっ……アタシの正体が気になるみたいっすね。いいでしょう、教えてあげましょう。実はアタシは――――!」


 思わず固唾を呑む。一体、目の前の少女は何者なんだ――――!?


「……あー……何なんですかね? なーんにも憶えてないです。あっはははははは!」

「俺の期待を返せ」


 拍子抜けとはこのことか。なんか凄く……凄くガッカリだ。


「まぁ確かなことは、アタシはマスターが使った木偶人形ってことっすね」

「あぁ、やっぱりか」


 あの光景を見れば、それ以外の答えなんて出てこないし、それは何となく予想していた。そして考えられる原因があるとすれば、それは俺の【アイテム強化】のスキルだ。

【アイテム強化】は木偶人形も強化できる。でもだからって美少女化したりしないし、ランイーターの大群を一方的に蹂躙するような戦闘力は得られない筈なんだけど……?


「マスターと出会う何日か前の記憶なら朧気ながらにあるんですよ。どーもアタシはどっかのダンジョンの一番奥にあった宝箱から見つけられたみたいで、他のアイテムマスターも試しに使ってみたけど特に特殊な効果もなかったから、そのまま売られてサービス品にされたみたいなんすよね。…………今思い返してみると、すっごく納得いかない扱いっす。人の事を安い女みたいに……」


 木偶人形はブツブツ文句を言いながらも、心底不思議そうに唸っていた。

 ダンジョンの一番奥の宝箱……それはつまり、ダンジョン攻略の報酬に入っていたという事だ。基本的にレアアイテムしか入っていないっていうダンジョン踏破の報酬に入っていた木偶人形だから、他の冒険者も何かあると思ってアイテムマスターに使わせたりしたんだろうけど……ならどうして俺が使った途端にこうなったんだ?


「とにかく、アタシの成り立ちなんて言うのは全然分かんないっす。性能に関しては分ってることもありますけど、そこは異世界で直接見せた方が説明しやすいですかねー」

「そうか? それじゃあ、今日あたりにでも行ってみるか」


 自分でも意外だけど、昨日あんなことがあったのに、こんな言葉がすんなり出てきた。

 喉元過ぎれば熱さを忘れる……というわけではない。モンスターに食われかけた恐怖と感触は、今でも頭と体に張り付いている。

 それでももう一度異世界に行ってみようと思えるのは……多分、自分の中で譲れないものが出来た……というか、思い出したからだろうな。


「それじゃあ昼に出発するから、それまでの間漫画でも見て暇潰しといて。そこの本棚の奴なら皆見ていいから」

「はーい」


 それにしても、コイツ一応アイテムなんだよな? ダメってわけじゃないけど、何で普通に漫画とか読んでるんだろう?

 そんな木偶人形になんとも言えない気持ちを抱きながら部屋を出ようとすると、木偶人形は本棚ではなくベッドの下に手を伸ばして――――


「待て。どうしてベッドの下に手を伸ばす?」

「え? いや、マスターが起きる前にゴロ寝しながら漫画読んでてたら、何かベッドの下に本が見えたんで、それを読んでみよっかなって」


 俺はベッドと木偶人形の間に立ち塞がる。


「……どうして、邪魔をするんですか?」

「言わせんなよ。恥ずかしいだろ」


 年頃の男がベッドの下に隠す本なんて、その十割が女子に見られたくない系の本に決まっているだろ?

 睨み合い、ジリジリと互いが互いの間合いを占領しあう。そんな目に見えない攻防の最中、先に動いたのは木偶人形だった。勢いよく滑り込むようにベッドの下に伸ばされようとした腕を、俺は全力でガードする。


「いいじゃないですかケチー!! 暇潰しにマンガ読んでいいって言ったのそっちじゃないっすか!!」

「本棚のを読めって言ったでしょーが!! ここには男子高校生の夢と欲望が……って、強っ!? なにこれ!? お前力強っ!?」

「ふふふ……ゴミみたいな戦闘力しかないマスターとアタシとじゃ、パワーの差は歴然なんすよ」


 腕も足も細くて、身長は俺の顎くらいしかないのに、とんでもねぇ力だ……! 昨日もランイーターを一方的にシバいてたし、戦闘力たったの5の俺にはどうしようも出来ないっていうのか!?

 あっという間に俺を押し倒してベッドの下に手を伸ばそうとする木偶人形の服の袖を引っ張って何とか止めてるけど、押し切られるのは時間の問題だ。そうなったら最後、俺は美少女に心の恥部と性癖を晒してしまうだろう。それだけは何としても阻止しなくちゃ……!


「男子の夢と欲望? はよく分かんないですけど、そこまで必死に隠そうとしているからには、さぞ面白い漫画に違いないっす! 観念して、アタシにも読ませてくださいよー」

「あぁっ!? ちょ、コラ!? そんなくっつくなよエッチ!」

「だ、誰がエッチですか!?」


 コイツ……! 小柄ながら立派な胸部装甲を装備してやがる……! しかも無自覚とは本当にありがとうございます!

 って、違う! このままではベッドの下の秘密と、俺のパンツの下の秘密が同時に暴かれるという危機だ! そんな事になったら俺は次からどんな顔で木偶人形と話せばいいってんだ!?  

 

「お(にい)うるさい!! さっきから何暴れて――――」


 そんな状況を救ったのは、ノックもせずに扉を開けた中学生の妹、美波(みなみ)だ。

 釣り上がった目尻と短いサイドテールが特徴の、普段は小生意気なだけの妹が今日ばかりは天使に見えて……あれ? 何か妹がまるで潰れたゴキブリを見るような目で俺を見てくるんだけど?


「あ、マスター。ちょっと手ぇ放してもらっていいですか? このままじゃポロリといきそうなんで」


 突然の乱入者を前にしてマイペースな奴だな、コイツ……。まぁ、それは置いておいて、ここで状況を整理しよう。

 俺は木偶人形に押し倒され、木偶人形は俺との取っ組み合いで服がはだけ気味だ。その様子を妹に見られた。すると妹はどんな反応をするのか?


「朝っぱらから女の子を部屋に連れ込んで、自分の事をご主人様(マスター)なんて呼ばせながら如何わしいことをしようなんて…………このクズ兄。お父さんとお母さんに言うから」

「お願いですから弁解する時間をください」


 兄たるもの妹に媚びるようなことなどあってはならないが、今回は話が別。俺は全力で妹に土下座して時間を分けていただくことにした。



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― 新着の感想 ―
[一言] うわぁ...おにいって呼ばれとる... 可愛い系の妹やん...普通ちゃうやん... 主人公くそリア充っしょ?
[気になる点] ランキング上位に入ってきて、それなりに面白いかなって思って読み始めたけど木偶人形がなぜか女性になるわすべてマニュアルとか言ってた割には自由に動くわ喋るわ性格悪いわでかなり無理。タイトル…
[良い点] ゴミみたいな戦闘力って言われた!マスターなのに!マスターなのに!! [一言] ありがとうございますw
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