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一国一城の主にはロマンがある

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


「俺らでクランを?」


 その考えはちょっと盲点だった。大量の勧誘がきたもんだから、どっかのクランに所属する方向で思考が偏ってたからなぁ。

 プロになろうと思ってたのも、プロしか雇用しないクランの方が条件が良いところが多いからだし。


「そもそも、クランってどうやって結成するんすか?」

「実際にやるには難しいだろうけど、内容は単純だよ。プロ冒険者になって、冒険者を二人以上メンバーに勧誘してからギルドに申請すればいい」


 プロ冒険者というのは、推奨戦闘力1万以上のダンジョンの五回以上の踏破、ギガントモンスターを二体以上の討伐、一定数以上の資源の調達をした後、ギルドから人格検査を受けることでなれるんだが、資格を取得することで冒険者や事務員の雇用……つまりクランを結成することができる。

 俺たちの場合、ダンジョンに関する条件はクリア済みだけど、ギガントモンスターは残り一体討伐しなきゃだし、資源に関することはギルドに直接聞かなきゃだけど……多分、あともうちょっとでプロ資格を取れるところまで来ているはずだ。

 ちなみに、こうした条件を満たしていない冒険者は皆アマチュアと呼ばれている。 


「僕も八谷氏も、冒険者として活躍している二人を見て色々考えさせられてね。実際に戦うのは正直遠慮したいんだけど、将来は異世界で頑張っている冒険者を支える仕事をしたいねって、前から話し合ってたんだよ」

「それでここ最近は簿記とかWEB関連の資格とかスケジュール管理とか、冒険者のサポートに関わる資格を色々と取得するための勉強をしてましてね。流石に税理士資格までは手を出していませんけど」

「マジでか?」


 俺たちの知らないところで、二村と八谷がそんなことをしているとは思いもしなかった。忙しそうとは思っていたけど、資格集めをしていたとは。


「動画の向こうで戦う二人の勇姿に、僕たちも胸を打たれたんだ。直接モンスターと戦う勇気は無くても、こういう形で二人のサポートを出来ればって」

「将来、これと言ってやりたいこともなかった僕たちにとって、それほどまでに九々津殿たちの活躍が鮮烈だったんですよ」


 まさか俺たちの活動が二人の進路を動かしたとは思いもしなかった。ここまで言われると、何か面映ゆい気持ちになる。


「で、将来はギルドの職員にでもと思ってたんだけど、二人がクランを結成するとなったら、何か力になれないかと思ってさ」

「つまり、俺たちがクランを結成したら、そこで雇ってもらえるかを聞きたいってことか?」

「そういうことです。打算的な話もすれば、ランカーがリーダーを務めるクランのマネージャーの給料はギルドの事務員よりも高額というのは有名ですしね。将来ランカー入りを果たす冒険者、カラクリのクランに入るなら最初期の方が就職率が高いと思いまして」


 つまり、学生によって結成された冒険者パーティという事か……! また話題を呼びそうなワードに俺の胸が高鳴る。


「聞いた限りだと難しい仕事に思えるんすけど、大人も無しにそういうのってできるんすか?」

「法的には問題ないらしいぞ。俺もそこまで詳しく知らないけど」


 二百年以上も前の魔王襲来から世界中を襲撃したモンスターの脅威……それによって世界の総人口は一度激減した。

 復興を始めたここ百年ほどで、絶滅を恐れた世界中の人々にベビーブームが何度か到来して減った分を取り戻しつつあるけど、それでもかつての総人口よりも十数億人は少ないらしい。

 余談だけど、俺がアイテムマスターの可能性を世に発信したことがあんなにも騒がれたのにも、この辺りが関係している。モンスターの襲撃によって研究者の数も減り、限られた人員の中で、非戦闘職よりも優先して研究すべきものが多かったのだ。


「今は色々と安定したけど、復興を始めた当初は本当に大変だったみたいで、年齢を理由に仕事が出来ないなんてことは無くてね。十五歳になったら成人として扱われて、会社とかに正式雇用できるっていう法改正がされたんだよ。時代が進んでいって就職に年齢だけじゃなく、資格が必要な企業とかが出てきたけどね」


 それこそ、魔王襲来前は二十歳が成人年齢で、それ以下の年齢の奴にはいろんな制限が課せられていたそうだけど、時代は変わった。義務教育が終われば自由に冒険者になれるっていう制度も、こういった背景があってこそだ。 

 単に金がないからしない奴が多いだけであって、金さえあるのなら一人でアパートとかと契約して独り暮らししたり出来るし、中には学生でありながら起業して社長になったりする、とんでもない高校生がテレビで取り上げられることもあるのだ。それに比べればクランの結成くらいなんてことはない。


「でもそうか……自分でクランを……」 


 この二人の申し出に、俺は光明が差した気分になった。

 冒険者ランキングは実力だけでなく、知名度や人気度、貢献度も大きな影響を与えていて、ランカー入りを果たすにはクランを結成するのが不可欠というのが常識だ。

 でも冒険者業をしながら、広告やスケジュール管理、ギルドへの申請や報告、依頼整理に資産運用までするなんて流石に無理。時間が足りないし、いくら冒険者の体力が底無しと言っても、精神的疲労の蓄積は半端じゃない。比較的安全に冒険をしている俺ですら、命を失うリスクを常に感じて精神的に疲れているのだから。

 そう言った負担を請け負い、クランの冒険者たちが出来るだけ異世界探索にのみ注力できるようにする縁の下の力持ち……クランマネージャーも、ランカー入りを目指す者には必要な人材だ。


「……それは、楽しそうだな」


 どうせなら皆でクランを組む方が楽しそうだし、何より遠慮なく接することができる分、気楽だ。

 ランキングを駆け上がるために二村と八谷に給料を払うのは当然の必要経費だし、それで時間がより多くとれるなら二人の申し出はかなりあり難いものに思えてきた。


「もちろん、僕たちはまだ学生でノウハウっていうのがない。最初の内は他のクランマネージャーみたいな活躍は出来ないと思うし、二人が他所のクランに加入するっていうなら、この話は忘れてもらって大丈夫だよ」

「いや」


 二村の言う通り、俺たちはクラン運営なんてやったことのない素人の集まりだ。どれだけ勉強しても実際やるのとは違うし、上手くいかないことも沢山あるだろう。

 でも保障がないからって、何もかも諦めるのは違う……今はそう思う。


「出来る出来ないじゃなくて、やってみよう。自分たちだけでクランを組むとか、なんか面白そうじゃん」

 

 どっかで妥協するんじゃなく、理想をどこまでも追及していく。明るい冒険者人生を歩んでいくなら、自分にとって居心地の良い環境は、自分で作り出していかないといけない。根拠はないけど……カズサと、気心の知れた二村と八谷とならそれが出来るって確信してる。


「……九々津殿、どこか逞しくなりましたね」

「え? そうか? 俺ってそんなに変わった?」


 八谷にそう言われたけど、自分じゃよく分からない。確かめるようにカズサをの方を見ると、彼女は少年のように八重歯を剥き出しにして笑った。


「はいっ!」


 こうして、俺たちの夏休みの目標は決まった。

 モンスターの使役にクランの結成。いずれも簡単な事じゃないけど……俺たちのモチベーションは高い。今年は色んな意味で、充実した夏になりそうだ。



ご質問があったのでお答えします。


Q『ゲームを元にしたアイテムやモンスター出るのかな』

A『異世界は地球の情報を常に受信し、影響される特性を持ちますから、世界的知名度のあるゲームを元にしたアイテムやモンスターが異世界に出現する可能性はありますね。逆にマイナーゲームは異世界に影響を与えません。なのでボール型のテイムアイテムがその内出現することも……』


Q『地球の生物で魔力を持っているのが人間だけということはつまり人間は外来種?』

A『どちらかというと、進化の過程で他の生物にはない力に目覚めた変異種ですね。同じ霊長類でも猿やゴリラには魔力がないんですよ』


Q『そいえば異世界の出現によってゴミ問題とか解決されているのでしょうか?異世界の魔石によってエネルギー問題が解決されたとはいえ今まで使用していた原子力発電所とかの廃棄物とか汚染水を処理できるゴミ処理専用の異世界とかあったりしますか?』

A『完全にとはいかなくても、現実世界ほど問題はないという設定ですね。少なくとも、魔石が電気やガスなどに代わる超画期的なエネルギー源となるのは早い段階で判明していたので、現在ほぼすべての発電所は完全なエコな状態で、廃棄物とか汚水が出ないですし。ちなみにゴミ処理用の異世界は無いですが、汚水を浄化して飲めるようにするみたいなスキルやアイテムは結構見つかっているので、水質汚染はそれを利用してどうにかしてますね』


Q『魔力云々で、テイムされた動物系モンスターと地球産の動物との間に子どもをつくることができますか?それならスキルカードを使うことができるのでは?』

A『確かにその可能性はありますね。現実でも冷凍マンモスの遺伝子を使ってゾウにマンモスを産ませるという実験が行われていますし、異世界には犬猫に似たモンスターもいるので可能ではないかと。まぁテイムされたモンスターの数がかなり少ない上に、地球の動物に近い姿をしているからと言っても基本的には別種なので、解明には時間が掛かるでしょうけど』


Q『レベル1が3体で倒されるとか初心者にありがちな努力値ストーリーで振ってるんかな? 襷がむ石火とギャンブル言うしはちまき、せんせいの爪、特性頑丈辺りかな?』

A『作者本人もそこまで廃人ではないのでわかりかねる部分もあるのですが、プレイヤーの中にはレベル1を1匹だけで伝説3体潰してる人も実際に居ますし、努力値ちゃんと振っててもやられる可能性あります。二村はそれが出来る廃人であり、あの超大作がどれだけ完成度高いバトルシステム化を理解させられますね』


Q『カズサを操作する為のコントローラはどのようなタイプなんですか?プレステ系?PSP系?DS系?Wii系?Switch系?黒箱系?アケコン?VR系?釣りコン?』

A『プレステ系ですね。個人的に、手の形にフィットしたコントローラーをずっと採用し続けるプレステは神だと思っています』


Q『オーブ調合を行って、格上げされたオーブをギルドに売っての資金調達もなぜしないのでしょうか?

特に物欲センサーでダブった時にしなかったのが疑問です。毒耐性なら能力としては低くても、冒険者には有用だと思うのでそこそこの資金になったのではと』

A『実はこれ理由なんてないんですよ。雄介はただただ失念していて、後々になって「こうしておけば良かった!」と猛烈に後悔していたんですが……そこを描写してなかったですね』


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