学生にとって一番の悩みは進路に関することだと今実感してる
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
地球に戻った時、時間はまだまだ昼だった。
幾ら広いと言っても、モンスターも粗方片付けて、ギミックも全て解除されたダンジョンなんて一本道みたいなもんだ。帰りはあっという間だったな。
無事にテイムシールを手に入れた俺たちは、深山さんと別れ、第六支部のカフェテリアへと来ていた。
前にも似たようなシチュエーションがあったけど、今回も待ち合わせである。カフェで待ち合わせって、冒険者的には定番らしいし。
「それにしても、一体何の用事なんすかね? 連絡来た時はちょっと驚きましたけど……」
「……最近の事を考えると、もしかしたらって思うけどな」
《神奈川守衛隊》に派遣の依頼をした時、受諾のメールと一緒にある人物から会談の場を設けられないかと通達が来た。相手が相手だけに、俺たちはそれをオーケーしたんだけど……どんな用事かどうかは、何となく察しが付く。
「やぁ、こっちだ」
カフェテリアに入ってすぐ、奥の方の席から声を掛けられる。視線を向けてみると、そこには黒髪をハーフアップにした、凛々しい印象の女性がこちらに軽く手を振っていた。
「すみません、待たせちゃって」
「気にすることはない。時刻通りだし、何よりアポを取ったのはこちらだ。むしろ君たちを待たせてしまっては私の立つ瀬がない」
女性はどこかお道化たように微笑むと、懐から名刺を取り出して俺に差し出す。
「改めて、先日メールで挨拶をさせてもらった、《神奈川守衛隊》隊長、獅子村萌子だ。今日は時間を取ってもらって感謝する」
ランカーと言ってもピンキリだ。俺……というか、カズサは下手なランカーよりも強いと評判を得ているが、それは本当に〝下手なランカー〟に限った話。
ランキング100位から90位くらいの冒険者の戦闘力は数万ほどで、それ以上が大体10~20万を超えているんだけど、これが50位より上になった途端に戦闘力が最低30万が当たり前で、40万を超える冒険者も珍しくない世界になる。
所謂、上位ランカーと呼ばれる面々だ。俺たちが今まで挑んできたのとは桁違いの難易度を誇るダンジョンを攻略する、人間どころか冒険者という枠組みすら外れた、モンスターよりも化け物やってる、世界でも一握りの存在。
そんな上位ランカーの更に上に位置するのが、ランキング上位十名に君臨する、トップランカーと呼ばれる最強の冒険者たちだ。
全員が戦闘力90万前後。まさに選りすぐりの中の選りすぐり、選ばれた存在の中のほんの一摘みみたいな、雲の上の存在。
そんなトップランカーの内の一人。ランキング三位に位置するのが、《神奈川守衛隊》隊長の獅子村萌子さんだ。
トップランカーの席を占める日本人冒険者二人の内の一人で、天職はレア職の聖騎士。噂では、複数のギガントモンスターの総攻撃を受けても無傷で切り抜けるという、無敵の防御力の持ち主なんだとか。
そんな人が俺たちに用事とは何なのか……カズサと一緒に獅子村さんの対面に座り、その答えを聞くことに。
「私はまだるっこしいのは苦手なのでね。単刀直入に言わせてもらうんだが、君たちを《神奈川守衛隊》にスカウトしに来たんだ。……もっとも、君たちは何となく予想がついていたかもしれないがね。勧誘に来る者も多いと聞いていたし」
「あー……まぁ、はい」
最近パーティからの勧誘メールが多かったから、関りのないクランから話があると聞くと、どうしてもそっちの方を想像しちゃうんだよな。
まぁ、わざわざ遠い他県から出向いてきて、面と向かってスカウトしに来たのは獅子村さんが初めてだけど。
「君たちの成長速度はランカー入りを果たした冒険者の中でも目を瞠るものがある。これに匹敵する者がいるとすればアイツくらいだが……まぁとにかく、我々は君たちの冒険者としての今後にも期待していてね。どこかのパーティに取られてしまう前にと思って、こうして場を設けさせてもらったという訳だ」
「お、おぉ……!」
世界的な有名人にこうも褒められると、ちょっとニヤニヤしちゃう……! まさかここまで買われているとは……。
「とりあえずこちらの資料を。ここには君たちがクランに加入してくれた時の待遇を纏めてある」
そもそも、なぜ冒険者クランというものが結成されるのか。その理由は様々なメリットがあるからだ。
まず人数という戦力の確保が簡単に出来るようになること。戦闘にはもちろん、資源調達にも非常に役立つ。
そして何より、より多くの大金を得られる可能性があるからだ。一定条件を満たしてからギルドに通達をして、公式にクランとして登録を行えば、そのクランメンバーだけがギルドが管轄するクエストボードというサイトにアクセスすることができる。
今の時代、世界中の企業から異世界の資源が求められている。冒険者はマジックアイテムや魔法の装備を重要視しがちだけど、それ以外の職種からすれば薬の原料となる霊草や、機械の材料となるレアメタルの需要が非常に高い。
だが当然、資源があるのはモンスター蔓延る異世界。一般人が直接採取しに行くには無理がある。しかも異世界資源の売買は基本的にギルドが一手に引き受けているので、民間人が異世界資源を手に入れようとしたら、ギルドから直接買い取るしかないわけだけど……冒険者は農家とは違う。
大抵が好き勝手に資源を持ち帰っては売っている為、ギルドだけで目当ての資源を買い揃えるのは非常に難しいのだ。
そこで役に立つのが、資源を求める民間からの依頼を公開、受諾することが出来るクエストボートである。クラン所属の冒険者はこのクエストボードに無数に張り出されている依頼をこなすことで、資源の売値だけじゃなく、報酬金というものを別に受け取ることができるのだ。クランの名が上がれば指名依頼なども来るようになり、企業と契約をすれば安定した収入源とすることもできる。これがクランを結成する大きな理由の一つだな。
あと、ギルドを中間に入れて契約書を交えた取引次第では、クランは資源を好きな値段に設定し、報酬金を好きな値段に設定して、取引相手に売ることもできる。資源代には相場というものはあるけど、それはあくまでギルドが定めた適正価格。命懸けで資源を持ってきた側がどんな形で売ろうと、それは冒険者の勝手だ。
デメリットを言うなら、クランが有名になっていけば指名依頼も鬼のように増えて、それらを管理するクランマネージャーというのを雇わないといけないってことか。それ用のパーティの公式サイトも作って、宣伝とかもしないとだし。
個人でギルドとだけ対応するソロ冒険者とは知名度や人気の上がり方が違う。面倒だし、手取りは減るけど、ランキングを上げるために重要な人気や知名度を稼ぐにも必要な事だから、クラン結成を目指す冒険者も多い。
「クランといえども、冒険者の手取り金は歩合が鉄則だ。所属したからと言って、何もせずに金など手に入れられないが……我々は防衛省を始めとした、数多くの団体と契約を交わしている。依頼には困らないし、今と同じように個人で資源をギルドに売ることもできる。自画自賛な物言いになるが、ウチは大きなクランだから、活躍すれば大手企業といった影響力のある面々の目にも留まり、ランカー入りも現実的なものになるだろう。現にウチには深山を始めとした、私以外のランカーも何人かいるしな」
「でも……学校がありますからねぇ」
「もちろん、君たちが学生であるという事も理解している。高校生の身で友人や家族と離れて暮らすのも心苦しいだろうし、君たちにとって今の学校よりも良い環境の学校を紹介できる自信もない。なので我々は、君たちが高校を卒業するまで待つ準備をすることができる」
聞けば聞くほど良い話に聞こえてくる。高校の卒業後、安定した業績のホワイト大企業からスカウトされてるようなもんだ。
正直、俺もカズサもそこまでして金が稼ぎたいわけじゃない。必要な分と生活分、遊び倒せる分を確保できればそれでいい。
だがランカー入りを果たすなら、いずれにしろソロでやっていくにも限度がある。クランを組むなり、クランに入るなりしないとって思っていた。《神奈川守衛隊》のような大手にスカウトされたなら、それは願ってもない話なんだけど……そういうのって、なんか違うんだよなぁ。
組織に入れば依頼受諾の義務が当然のように発生するわけで……クランはもっと自由な感じのところが良いんだよ。好条件だとは思うし、活動も立派だと思うけど、《神奈川守衛隊》は俺たちが求めている感じじゃない、やりがい重視のクランっていうか……。
「まぁ、私の勧誘はあくまでも提示された選択肢の一つと捉えてもらえばいいだろう。今ここで答えを出さなくてもいいし、例えこの話が断られようとも、私は君たちの活動を変わらず応援する。個人的に、君たちの動画のフォロワーでもあるしね。是非とも、君たちが理想とする道を選ぶといい」
そう言って獅子村さんはメモ用紙に電話番号とLINEのIDを書いて、それを俺に渡してくる。
「これは私個人のスマホの番号だ。九々津さんのご子息とこうして出会ったのも何かの縁……冒険者として相談したいことがあれば、何時でも連絡するといい。私も先達として、出来る限りの助言はしよう」
結構時間がたったので、今日のところはこれでお開きという流れになり、獅子村さんは颯爽とカフェから立ち去っていった。
それにしてもクランか……色んな所からも勧誘着てるし、これに関してはちゃんと答えを出した方が良いかもな。その答え次第で、今後の冒険者業に大きな影響があるだろうし。
ご質問があったのでお答えします。
Q『何というか自分など刃物を持った相手に怪我はした物の特に慌てることなく取り押さえた過去がありますがそういう人間でもモンスター相手には恐怖耐性ないとダメなんでしょうか?加えて主人公など自分で冒険者になるとか言ってた癖にこの無様さで虎の威を借らないとダメダメな人間って余りに思想と行動の不一致が激しすぎませんかね?』
A『読者様の職業は警官か何かでしょうか? 刃物持った相手を慌てることなく取り押さえるとかスゲェ……。ですが世の中肝の座った人間ばかりではありません。気持ちだけは立派でも、実際に直面してみると何も出来なくなる……そんな人間は山ほどいます。最初から完璧な心構えができている、そんな学生はまず存在しません。どんなに無様で情けなくて、思い描いた理想とは違う形になっても、最後には必ず前に向かって歩き続ける……そんな主人公を、書きたいですね。ちなみにですが、個人的に刃物を持っただけの一般人と、絶滅した巨大生物並みのモンスター……この二つが与える威圧感が同じとは到底思えないですね。恐怖耐性抜きでも平然として居られるなら、その人は多分自分の命を何とも思ってないタイプです』
Q『同じ種族のモンスターカードでもカードによって絵柄が違ったりするのでしょうか?例えば幼女サキュバスや男の娘インキュバスとかいたりするのでしょうか?』
A『表示されている取得戦闘力が異なるだけで、カードの柄は全部同じですね。ですが、サキュバスやインキュバスにはそれぞれ個性があります。ロリサキュバスやボインボインのサキュバスもいれば、男の娘インキュバスもいますよ』
Q『ボスの名前はコッペリウス博士なんじゃ?』
A『ボスモンスターの名前として、コッペリアの方が気味悪く感じてよかったんですよね、個人的に。まぁ、根拠も何も無い、作者個人の感性ですけど』
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