強い味方はお金で雇え
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください
弓原ダンジョンは第六支部のゲートからほど近い場所にある迷宮型ダンジョンだ。
これまでコレと言った特徴のないダンジョンだったんだけど、人気の高いレアアイテムであるテイムシールが踏破報酬の宝箱に入っていたという動画がアップされてからは注目度は飛躍的に増した。
それまで、テイムシールは推奨戦闘力が50万くらいの超高難度ダンジョンからしか入手できないというのが通説だったんだけど、それがたったの4万くらいの戦闘力で踏破出来るダンジョンで入手できるとなれば、周回効率の事も考えれば注目されて当然。
もっとも、比較的簡単に踏破出来るだけあって、テイムシールが出る可能性は輪をかけて低いらしいんだけど。日本にいる上位ランカー二人が戦闘力上げのついでに出現率の調査をしたところ、確率としては1パーセント未満だとか。
内部構造も広く、今のカズサの戦闘力でも、弓原ダンジョンの攻略には助っ人込みで一日以上かかるだろう。深山さんを雇うたった二日の間でテイムシールを手に入れられるなんて、まずありえないんだけど……今回は秘策アリだ。
「ゴゲーッ!」
弓原ダンジョンに突入してすぐに現れる、広い通路にひしめき合う四体のモンスター。その中の一体であるダチョウのような骨格をし、大蛇のような太い尾を生やした鶏、コカトリスはしわがれた鳴き声と共に目から光線を発射した。
コカトリスは石化の状態異常が厄介。一般人でも一度は聞いたことがある、冒険者の有名な知識だ。おまけに戦闘力も高く、ダチョウのように強靭に発達した足から放たれる蹴りはカズサにも痛烈なダメージを与えるだろう。
「効かないっすよぉ!」
だが石化の光線も、全ての状態異常を防ぐ【覇王之威光】スキルを宿したコートを身に纏うカズサにはあまりにも無力。光線自体に威力がないため、光線を浴びながらも魔王銃剣をバスターモードに変形。【天魔轟砲】をぶっ放した。
電流を撒き散らしながら迸る赤黒い極大光線が通路の殆どを埋め尽くす。こういう迷宮型ダンジョンでは、範囲の広い直線攻撃は非常に有用だ。
その圧倒的な火力はコカトリスと後もう一体のモンスターを消し飛ばしたが……残りの二体は光線を透過しながら、猛スピードでこちらへと向かってきている。
『ケタケタケタケタ……』
『ケラケラケラケラ……』
物理攻撃を完全無効化している……前情報に合った通り、幽霊系のモンスターか!?
幽霊系のモンスターには実体がなく、相応のスキルが無ければ倒せない冒険者泣かせのモンスターだ。しかもこっちの攻撃は通用しないのに、向こうは生気を吸い取って人間を一瞬で干からびらせることも出来るのだから質が悪い。
……そしてそんなモンスターが居ると分かっていて、何の対策もしていないわけがないのだ。
『ケララララ……?』
カズサに向かって直進し、もう少しで彼女に触れそうになっていたはずの幽霊系モンスター二体は、突然深山さんの方へと意識を向けたと思うと、突然標的を変更し、深山さんに襲い掛かる。
「はぁっ!」
そして深山さんは無防備に向かってくる二体のモンスターに向けて右手に持つ剣を一閃させ、左手に持つ盾で幽霊をぶっ叩く。
すると物理攻撃が効かない筈のモンスターの体は崩れ、そのまま空気に霧散していった。
(おおっ! 【天魔轟砲】でも倒せなかった相手をあんなに簡単に!)
深山さんの天職は騎士。攻撃よりも守りに特化した前衛職だ。
何らかの行動をとり続けることでスキルを獲得することも出来るのが冒険者だけど、天職に合ったスキルなら普通よりも少ない試行回数で習得することもできる。
騎士の特徴としては防御系のスキルを比較的簡単に覚えることができる。だからオーブや強化槌を頼らなくても、今深山さんが使ったモンスターの意識を引き寄せるスキル、【デコイ】の他にも、彼は味方をサポートするスキルを幾つも保持しているのだ。
そして俺たちが深山さんを雇い入れた大きな理由の一つ……それは騎士が【儀礼】というスキルを最初期から使えるという事だ。
僧侶やモンクなど、信仰に関わりがある天職も初めから使えるスキルだけど、これの何が凄いのかって、それは幽霊系のモンスターにダメージを与えることができるってことなんだよな。
弓原ダンジョンに出てくるモンスターは幽霊系がちょくちょく出てくると聞いていたし、実体のない敵を倒す手段を確立させていない俺たちには、高い戦闘力を持つ【儀礼】持ちの冒険者の力が必要だった。
「っと、戦闘音を聞きつけて後続のモンスターが来たみたいっすね!」
今度は幽霊系のモンスターは……居ないらしい。ただその数は十体近くと多めだ。いずれも人型で決して大きい部類じゃないから、閉所でも問題なく戦えそうなのばかり。
……ていうか、アイツら体が腐ってね?
「前方からゾンビナイト十体出現! 手足や胴体を攻撃しても怯まないので、頭を狙ってください‼」
「またアンデッド系っすか!?」
バスターモードからデュアルモードに変換。二本に分裂した魔王銃剣の銃口から、ガトリングのような連射が放たれる。
ゾンビナイトの頭を中心に照準を合わせた高速連射は甲冑を身に纏った動く死体三体の頭を砕いたが、残りは武器や防具で弾いたり、胴体を抉られながらも猛スピードで突撃してきた。
やだ機敏! ダッシュゾンビかよ! ホラーゲームで一番怖いタイプだ!
「アアアアアアアアアッ‼」
甲高い叫び声を上げながら、ゾンビナイトたちは炎や雷、竜巻などを纏わせて一斉に武器を振るってきた。
剣圧と魔法攻撃を合成させた遠距離高火力攻撃……! まともに喰らえば一溜りもないだろう。……なんていうか、俺が今まで持ってたゾンビ像を打ち砕くような連中だ。
基本的にゾンビっていうのは噛みつきやひっかきが主な攻撃ってイメージあったのに。これが高難度ダンジョン産のゾンビか。
「念のため、そちらに【スケープバリア】を張ります! あの初撃は私が防ぐので、その隙にダメージを!」
そんなゾンビたちの攻撃に対し、カズサの前に出た深山さんが盾を構えると、盾から青白い障壁が展開。
破壊と守護。それぞれ正反対の性能でありながらもその力は同等なのか……しばらく拮抗しあった後に、ゾンビたちの一斉攻撃と深山さんの障壁は同時に弾け飛んだ。
(チャンス!)
スキルが相殺されたことで生じた白光に、ゾンビナイトたちが怯んだ。その隙を見逃さず、【ブースト】で一気に距離を詰めながら【星切之太刀】を発動。紫電が迸る二振りの魔王銃剣で、二体のゾンビナイトの頭を同時に両断した。
(そのまま一気に……ってわけにもいかないっすね)
(あぁ。流石は推奨戦闘力4万のダンジョン。出てくるモンスターも手強めだ)
虚を突いた攻撃で数を減らしたけど、それ以上は追撃を許さなかった。ゾンビナイトたちは武器を構えながらジリジリと後退している。
明らかに警戒している動きだ。あんな見た目で知能があるのか、それとも直感的に危険だと分かる者に対して備えようとしているのか……そうやって縮こまられて攻めあぐねるほど、俺たちはもうそんなに弱くない。
俺はコントローラーを操作し、マフラーに込められたスキルを発動させる。
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品名:六天のマフラー
第六天魔王の畏怖を示すマフラー。神秘を否定した信長の力は、全ての魔法への耐性を得る。
《装備スキル》
・爆雷
・炎柱
・絶氷
・鉄槍
・烈風爪
・魔天之災渦
・六天の守り
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信長が遺した強化槌によって新たに獲得した新スキル、【魔天之災渦】。元々は【威光之渦】という人間やモンスターを引き寄せるスキルだったけど、【アイテム強化】によって、周辺に存在する任意の敵だけを引き寄せたり、逆に弾き飛ばしたりすることのできる上位互換スキルに変化した。
今回は引力……引き寄せる力によってゾンビナイトたちをカズサの方へと無理矢理引き寄せる。ロクに体勢を整えられずに、若干浮きながらカズサの方へと集まってくるゾンビたちに、紫電を迸らせるガンブレードを振るう。
(ぶった切れ!)
体を限界まで捻ってから解き放つ回転斬り。紫電の残光に触れたゾンビナイトたちは為す術もなく胴体を両断された。
剣圧で壁に叩きつけられ、体を真っ二つにされても腕だけで動こうとする辺り厄介だが……そこにフォローを入れるように、深山さんが一匹ずつゾンビナイトの頭に剣を突き立てていく。
「お見事です! 流石は今話題の冒険者、このダンジョンは初めてと伺いましたが、見事な対応ですね! あ、こちらモンスターの魔石とカードです」
「あ、これはどうもご丁寧に」
「情報によると、ここはまだまだ入り口付近。気を引き締めて進みましょう」
消滅したモンスターが遺した魔石やカードを全て俺たちに譲ってくれる深山さん。依頼で他所の冒険者に協力する時、アイテムの類は全て依頼者に譲ってくれるのも、《神奈川守衛隊》の良心的なところ……他のクランなら、ダンジョンで手に入れたアイテムや魔石、カードの一部を報酬にと持っていくところも多いしな。
(それにしても、頼りになる壁役がいるだけで大分違うな)
(ホントそれっすよ。アタシたちだけなら、もっと苦戦しててもおかしくなかったですしね)
カズサの戦闘力とほぼ同じの推奨戦闘力を誇るダンジョンに来るのは、何気に吉備ダンジョン以来だ。あの時は出てくるモンスターの行動やスキルはどれも大したことなかったけど、弓原ダンジョンくらいの難易度ともなると、モンスターのスキルの厄介さは跳ね上がってくる。特に幽霊系のモンスターとかな。
やっぱり仲間を雇ってよかった。天職の関係で火力のあるスキルは覚えていないものの、深山さんは何気に戦闘力が5万越えと素の身体能力はカズサよりも高い。クランに所属すれば頼れる仲間と一緒に難易度の高いダンジョンにも気軽に挑めるというし、やっぱりクランに加入することを検討した方が良いかもな。
ご質問があったのでお答えします。
Q『これから夏休みの話になっていくのなら当然水着回なども期待してますが○ンハンでは容量の関係で削除されてしまった水中戦の実装はあるのでしょうか?』
A『実装しようと思ったら、水中専用のスキルや魔法の装備を考えなきゃですね。ただこちらから言えるとしたら、水中戦があるかどうかは完全に未定という事です』
Q『当然、テイムするのはモフモフ系でしょうな?』
A『モフモフ系も捨てがたいんですが……正直、色んな候補があり過ぎてメッチャ悩んでます。個人的にはどんなモンスターにも魅力があり、ストーリーを問題なく動かせる自信があるので何でもいいんですが、テイムモンスターで一番読者人気がありそうなのが分かれば……』
Q『この世界って冒険者になる人とならない人だと収入にかなり格差有りそうだけど冒険者にならない人達にはデメリットしかない気がします。異世界に行かないとしても数十万程度を惜しんで職業を獲得しない理由がよく分からないかな。冒険者にならない場合のメリットが有るなら書いて欲しい』
A『第2話で少し書いたと思いますけど、冒険者というのは利益が大きい分、死亡率が高い仕事です。雄介とカズサのような特殊な守りがあるならそうそう死なないんですけど、攻撃食らって骨折して、そのままモンスターにやられるという冒険者も少なからずいて、資格取得できる義務教育が終了した一般人はそれを知っているんです。幾ら大金が入ると言っても命あってこそですからね。憧れを憧れのままに、現実的に生きている人も多いんです』
Q『ダンジョンの推奨戦闘力ってソロの場合じゃなかったですかね?戦闘力4万越えで推奨4万んダンジョン行くのは困難とはならないと思います。それなら推奨戦闘力5万のところに行きたいからパーティー依頼した設定の方がよいのでは?』
A『今回の話で語った通り、幽霊系という厄介なモンスターがいるからというのが、理由の一つですね。更に詳しいことは追々で』
Q『1/2位の戦闘力が求められるダンジョン周回する方がスキル集めも戦闘力強化も効率的な気がする』
A『究極的に言って、戦闘力強化だけならどこのダンジョンでも大丈夫です。ただスキル集めに関してですが、難易度の高いダンジョンであるほどレアで強力なのが出ることもありますから』
Q『信長がめちゃくちゃ凶悪なスキルを戦闘力2だとしてできるとのことですけど、でしたら戦闘力ってなんなのですか?』
A『戦闘力とは身体能力を大雑把に数値化した物であり、体の内側に内包した魔力の質です。スキルによって発動者のスペック以上の威力が出るのもありますが、魔力攻撃の威力はこの魔力の質によって決まります数値が高くなるほど、魔力の質が上がります。それにしても戦闘力2の信長ですか……きっと挑戦者は赤ちゃんで、信長も赤ちゃんになりますね。それで小さい玩具の火縄銃からビーム出すんです』
Q『FFACの合〇剣みたいな武器ってあるんですか?あったら超究〇神覇斬ver:5みたいなの覚えて欲しいなあ(厨二心をくすぐられるので、とても。)』
A『六本とまではいかなくても、ガンブレードには合体機能がありますからね。超究〇神覇斬ver:5みたいなのが出来るかと言われれば首を傾げざるを得ませんが……すでにガンブレードという前例がある以上、合体や分離機能がある武器はこの世界のどこかにあると思われます』
Q『今までの内容的に、主人公が活動している地元が田舎という事はなさそうなのに、パーティーを組んでいる人達が全くいない、ソロ冒険者しかいないなんてあり得るのか?
二人とは言え、千堂と百瀬はパーティーを組んでいなかったか?それとも、冒険者ギルドが諸々を管理するという発言から察するに、個人が集まって協力し合うパーティーではなく、いわゆるクランのような組織的な集まりの事をパーティーと言っているのか?』
A『ご指摘通り、この作品におけるパーティというのは一定条件を満たした者の主導の元に構成された組織的、企業的な集まりの事を指します。千堂たちのように単に親しい者同士で集まって冒険する(新藤の知り合いの大学生冒険者サークルみたいな)のも多いですが、そう言った面々はパーティとは呼ばないんです。詳しくはまた本編でお話ししようと思います』
Q『ティムやはり装備できるリビングメイルでしょうか?』
A『それもアリと言えばアリですが……すごく悩みますね。候補が多くて現段階では決まっていないんですよ。それこそ、読者アンケートでも取りたいレベルです』
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