ToBeContinuity……綴り、あってますか?(英語力皆無の作者より)
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください
私、水無瀬薫はあっさりと立ち去っていく雄介を呆然と見送ることしか出来なかった。
3月の春休み前まで、ただの冴えないオタクだったとは思えないほど輝いて見える彼は、元カノで幼馴染みの私の事を歯牙にもかけてくれなかったのだ。
「何……でよ……」
二年生に進級してからというものの、雄介を捨ててまで選んだ司くんはどんどん落ちぶれていった。
冒険者なのに一般人である私に暴力を振るったり、脅したりするし、こんな最低な奴と知ってたなら近づこうとすら思わなかったって思ってる。
でも私は悪くない。だって司くんの方から近付いてきて、グイグイ口説いてきたんだから。私を唆した挙句、ストレス発散のために私を殴るなんて、どっからどう考えても百パーセント司くんだけが悪いに決まってるじゃん。
その上、司くんは冒険者犯罪を犯した。
冒険者犯罪というのは少年法でも守れないような重犯罪で、それを犯した者は厳罰に処され、残された家族たちは世間からの冷たい視線にさらされるって、ネットで見たことがある。だから司くんの両親は息子の葬式も開かずに逃げたんだろう。
そして世間からの冷たい視線は、彼女である私を始めとした、司くんのグループに居た面々にも影響を及ぼしていた。
犯罪者と親しくしていた……そんな私たちに貼られたレッテルが今、クラスメイトだけじゃなく学校中の生徒を遠ざけている。学校柄問題を起こすような生徒が少なく、苛めにまで発展しないだけマシかもしれないけど、これまでスクールカーストトップに陣取っていた私たちにとって、底辺に落ちるのは耐えられるものじゃない。
仲が良かったグループの友達も気が付けばバラバラに行動するようになったし……まさかこの私が、ボッチになっちゃうなんて……。
それに比べて、雄介がどれだけいい彼氏だったのか、今なら理解できる。
そりゃあ、前までは貯金だ何だって、彼女だった私にすらお金を出すことはしなかったし、特に顔が良いわけでも運動が出来るわけでも、勉強が出来るわけでもなかったよ。友達にも紹介し難かった。
でもなんだかんだ言っても私に優しくしてくれたし、私の事を一番に考えてくれていた。お互い悪ふざけでじゃれ合う程度に叩き合うことはあったし、喧嘩する時だってあったけど、痛いと思えるような暴力を振るうようなことは絶対にしなかった。
そして今となってはどうだろう……肩書だけでチヤホヤされていた司くんなんかと違って、雄介は冒険者として大勢の人に知れ渡るほどの活躍をしているのだ。
バイトしていたくせに財布の口がやけに固かった理由も、今なら分かる。きっと冒険者になるための資金を貯めていて、私の為にお金を稼ごうとしてくれていたんだって。
冒険者になって半年足らず。ギガントモンスターの討伐に多くのダンジョンの踏破、特殊な木偶人形による前代未聞の戦法という話題性を伴って冒険者界に彗星のように現れ、ユース王決定戦ではエキシビジョンマッチ枠に抜擢。
見事勝利を掴み取って若手冒険者最強の座を勝ち取り、いち早くニュースや雑誌で取りざたされる有名冒険者となった。
そして今、世間を大いに騒がせている、織田信長との激闘。モンスターとして現れた、日本一有名な偉人との戦いと、その戦いを制して手に入れたユニーク装備によって、いま日本中が雄介に注目していると言っても過言じゃない。
私はなんてバカだったんだろうって、今はつくづく思う。わざわざ逃がした小魚は、誰もが見上げるような大魚になるだけの素質があったというのに、それを見抜けなかった私は雄介を囲む皆の輪の外から、彼を眺めるので精一杯。
あのまま雄介の彼女の座に収まってさえいれば、自慢の彼氏として雄介を友達に紹介できて、凄く鼻が高かっただろう。彼が手に入れる莫大な金で、高校生とは思えないほどの贅沢をさせてもらえたに違いない。
そう思うと、手放した雄介の彼女の座が凄く惜しく思えた。少し前までそこに居たのは私だ。あと少し、あと少し我慢していれば、今みたいに惨めな学校生活を送らずに済んだのに。
だからよりを戻してあげることにした。司くんに酷いことされたんだって、反省してるんだって泣いて謝れば雄介は許してくれる……そう信じて疑わなかった。
でも現実は違った。可愛くなった私の方から折角告白してあげたのに、雄介は私が何かを言う隙も与えないくらい呆気なく告白を袖にして、さっさと立ち去ってしまったんだ。
雄介だって、私が戻ってきたら嬉しいと思うはずなのにどうして……?
「一之瀬……カズサ……!」
理由を考えてみると、それはすぐに思い至った。きっと雄介は、あの女に唆されているんだ……!
なんて奴なの……私の方が雄介と長い付き合いで、雄介の事を何でも知っている。それを横からしゃしゃり出てきて私の雄介を奪っていって……人形のくせに! アイテムのくせに! ただの道具のくせに!
「雄介の隣は私の場所だったのに、どうしてこんな……!」
=====
凄まじい轟音が異世界の空に響く。カズサの上空に出現し、一気に膨張した黒い太陽は、青々とした大平原の一部をくり抜いたように、綺麗なクレーターを明けていた。
(検証終了……凄いスキルばっかりだな、このユニーク装備)
(攻撃スキルも信長さんが使ってた時からヤバいのばっかで、戦ってる時は凄い厄介と思ってましたけど、いざアタシたちで使ってみると超頼りになりますね)
ある日の放課後。異世界の開けた場所でユニーク装備の性能を確認していた俺たちだったけど、その性能には良い意味で驚かされるばかりだ。
【星切之太刀】は【オーラブレード】の完全上位互換スキルで、威力も段違いだし一度発動すれば、こちらの意思で解除するまでずっと効果が続きっぱなしという破格の性能だ。しかも解除と同時に振るう事で、斬撃を飛ばすという遠距離攻撃も出来る。
【天魔轟砲】は信長が使ったのとほぼ同じ性能。ガンブレードから極太ビームを発射するんだけど、デュアルモードでは威力が落ちる代わりに二発同時発射、バスターモードではビームは一発の代わりに威力が超高くて数秒間放射され続けるから、薙ぎ払いも出来る。
【滅陽】は信長が見せた通りの広範囲、高威力攻撃だ。現状俺たちが繰り出せる攻撃の中でも最大火力を誇るけど、インターバルは二十四時間。しかも範囲が異様に広いこともあって、周囲に人がいる時には絶対に使えないスキルだな。
【覇王之威光】は全状態異常の無効化。カズサにとって毒関連は既に問題はないけど、信長が使ったみたいな封技の状態異常を引き起こすスキルを始めとした、厄介な状態異常系のスキルは数多く存在する。それを全て遮断できるなら、非常に心強い守りだ。
【暴君特権】は全スキルのインターバルを二分の一まで短縮する破格の性能。インターバルを短縮するスキルは数多くあるけど、それらは特定のスキルだけに効果があったり、短縮時間が短かったりと、何らかの制限がある。それに比べてこのスキルがどれだけ破格なのかが理解できるだろう。信長がビームを乱射してきたのもこのスキルの影響だろうな。
【魔王之蹂躙】は敵にダメージを与える度に、こちらの傷が少しずつ癒えていくというスキル。その回復量は与えたダメージが大きければ大きいほど増していき、うまく立ち回れば回復ポーション無しでも戦いを切り抜けられるかもしれない。
【侵略者】は敵がアイテムやスキルで自己強化した時、その強化分の恩恵をこっちも受けられるようになるというもの。しかもその効果は一方的で、敵の自己強化によって戦力差が縮まったり、離れたりすることが無いのだ。
(で……イマイチ謎なのが、この三つか)
そして……【滅神属性】に【対神属性】、【神越属性】の三つ。効果を確認してみると、それぞれ神を唯一傷付けられ、神の力を唯一防ぐことができ、神に唯一トドメを刺すことができる常時発動型スキル……らしい。
実を言うと、神というカテゴリーに属するモンスターは結構な数が見つかっている。いずれもドラゴン系モンスターに並ぶ強大な力を持っているけど、日本では加具土命が倒されたし、ギリシャではアフロディーテが討伐された。有名な話では、世界冒険者ランキング1位……ランカーの頂点に立つ人は、北欧のダンジョンで雷神トールを倒し、ユニーク装備を手に入れたのだとか。
そしてそのいずれも、【滅神属性】を用いたとか、そういう話は一切聞かない。しかもギルドから親父を通じて、この三つのスキルの事は絶対に他言するなと滅茶苦茶念を押された。何か……大変なことに巻き込まれたんじゃないかと少し不安になる。
(まぁ分からないことを何時までも考えてても仕方ないっすよ。それより、時間がちょっと半端に残っちゃってますけど、どうします?)
(ん……そうだなぁ)
日は既に沈みかけ、野営の準備もしていない俺たちに、ダンジョンに行く余裕はない。ならこの辺りを少しぶらぶらと探索してみるのも、たまには悪くないだろう。
スキルの謎は何時か解き明かされる時が来るかもしれないが……きっとそれは、彼女と冒険を続けた先に見つけるものだろう。未だ無数のなぞに満ち溢れる、この異世界を。
(ユースケユースケ! あっちに海がありますよ! 行ってみましょう!)
目の前のホログラム画面にはどこまでも続く蒼穹と夕日に煌めく海が広がり、カズサはまるで少年のような快活な笑みを浮かべながら、俺の手を引くかのように海を指し、それに導かれるようにコントローラーの左スティックを前へ倒す。
【木偶同調】を解除し、久しぶりに異世界の風を生身で浴び、気持ちいい水とこそばゆい砂の感触を足で感じる。何気に初めて見る異世界の海は、日本の都心部の海とは比べ物にならないほどに澄んでいた。
「水着でも持ってくればよかったなぁ。……いや、モンスターに襲われても怖いし、遊ぶのは無理か」
「大丈夫っすよ。ユースケも強くなりましたし、アタシがずっと傍にいます。何かあったら守りますから」
それ男が言うセリフだと思うんだけど……こんな考えは時代遅れか。
何か目的があるわけでもなく、俺たちは波打ち際で海水を蹴り、水平線に沈んでいく夕日を眺めながら語らう。
「夏休み、楽しみっすね! この夏は、一緒に色んな所に行って、色んな事をしましょうね!」
強くはなったけど、不穏な謎も抱える羽目になった。そんな状況の中でもカズサは前を真っすぐ見据えて笑う。綺麗な橙色に染まる海で水飛沫を上げる相棒は、眩い黄昏にも負けないくらい輝かしく見えた。
=====
冒険者ギルド、東京本部。
「まさか、僕の息子が関わることになるとはね。あまりこういう事情には関わってほしくなかったのだけれど……そうも言っていられなくなるのだろうね」
「九々津支部長。貴方の子息がこの一件に関わるのは反対か?」
「勿論。でもいつかは話すことになる可能性は、あるだろうね。でもそれを話すのは今じゃなくても良い……というのは、単なる親心だろう。本当なら早く話して巻き込まなければならないのは分かっているんだけど……雄介が関わる前に、全てが終わってほしいと願ってしまうんだ。あの子たちにとって、途方もない重荷になるはずだから」
「貴方の息子はまだ年若い……冒険者として気構えも完璧ではないだろうし、戦力的に既に使い物になっているとは限らない。その精神に無暗に負荷を与えて潰れる方が大きな損失……もし俺たちだけの手に負えなくなった時、次代を任せるに足る者を慎重に育てるのも、先達の務めだろう」
「年若いのは君も同じだと思うけど……そう言うということは、僕たち家族にとって都合のいい形で出たということで良いのかな? 何分息子が関わってることだから、僕は会議に参加すら出来なくてヤキモキしてたんだ」
「あぁ。今後の状況次第で変わるだろうが……一先ずは九々津雄介……いや、カラクリという冒険者が〝英雄〟に足るかどうか、それを見極める方向で話が付いた。あとは情報が漏れないかどうかだが……」
「それは大丈夫だろう。訝しんではいたけど、幸いにも二人は口が固いし、口外すれば罰則があるとも言えば、情報を漏らすこともないだろう。……隠せば隠すほど世間からのバッシングを受けそうだけどね」
「仕方あるまい。何しろ、この一件は世間にとって刺激が強すぎる。ここ数十年で漸く落ち着いた世情に、たちまち大混乱を巻き起こしかねないと……そう言ったのは、他でもない国際連盟だ」
「……そうだね。それに、例え何が起きても何とかするのが僕たちの役目か。何はともあれ、これから忙しくなるからお互いに頑張ろう」
「無論、承知している。俺たちにとっても、この一件は早々に片付けたいからな。結果的に九々津支部長の願いに沿う形になるくらいで丁度いい」
「……あ~、それから。もし二人がこの一件に関わることになった時、二人の事を気にかけてくれるかな? 君になら安心して息子たちを任せられるんだ。愛宕禅十郎君……いいや」
「世界最強の冒険者、アイゼン」
ご質問があったのでお答えします。
Q『モン○ンとゴッ○イーターが合わさった感じかな?』
A『ゴッ○イーターはプレイしたことないんでね、世界観としてはモン〇ンがモデルになってます』
Q『その生物にとって有害な毒物の侵入を阻止するのが毒無効なら、掛け合わせる事により有毒となる物質を別々に摂取させたら効いてしまうという事ですか?食べ合わせが悪い食物を想像してもらえると分かりやすいと思います。』
A『しまった……食べ合わせの事をすっかり失念していました。そうか……その可能性があったんですよねぇ。読者の皆様には申し訳ありませんが、前回の後書きで書いたことを訂正して、有毒となる物が体に触れる、もしくは体内に侵入した時、その毒素を素粒子単位で消滅させる……という設定でどうでしょう? 学がなくて申し訳ありません』
Q『記憶力強化系統や気持ちを穏やかではなく静か(戦闘時考慮)にするスキルは作者さんの考えているものにありますか?そして、もう一度読みますがすでに記述がありましたらすみません。主人公があの時になんて考え喋ったのか覚えていたら動画にこのときどう思い行動したかあれば最高じゃないか。と思ったしだいです。気持ちを穏やかではなく静か(戦闘時考慮)にするスキルは深呼吸で発動など条件付きもありとおもいました。』
A『ありそうですけど、今のところ登場させる予定はないですかね』
Q『もし過去や記憶を見るスキルの「強化槌」が発見されてビデオカメラなどに付与できたら、過去を写すカメラができるのでしょうか?そしてその映像は証拠として認められるでしょうか?』
A『スキルの詳細にも寄りますが……そうですね。写された過去の映像を写真にしたり、後で観直したりできるなら証拠としては十分かと。現実でも監視カメラの映像が証拠になると聞きましたし。ただ注意点として、そう言ったスキルが付与された監視カメラを至る所に設置というのは無理ですけどね』
Q『カズサは、もしかしたら織田信長の上総介から?』
A『残念ながら、違いますね。カズサの元ネタは無くなった雄介の親友、一颯からなのですが、冒険者を始めるきっかけ……始まりの1を意識したネーミングです』
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