今更より戻してとか言われても断固拒否!
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください
調査によってすぐに新藤が犯人であると分かったらしいけど、警察と、協力者であった冒険者は新藤を取り逃がしたらしい。
……いや、少し語弊がある。正確には、突然現れたゲートに新藤がどこかへ飛ばされたかと思えば、そのゲートはすぐに閉じて追いかけられなくなってしまったらしい。
これまでに無かった異常現象にギルドも警察も困惑したが、俺たちが持ち帰った映像によって、新藤は正式に死亡したものとして扱われることになった。
「とりあえず、これで百瀬と千堂に無理言って、美波を見てもらわずに済むな」
「今LINEで犯人捕まったって事と一緒に伝えましたけど、二人とも気にしてないみたいですけどね。むしろ仲の良い後輩が出来て楽しかったって言ってます」
ユース王決定戦の日に襲われ、その次の日には俺たちは防犯に力を入れていたりした。
防衛に定評のある《神奈川守衛隊》に即日配達してもらった、強力な結界を張れる設置型のマジックアイテムを家の塀に置いたり、百瀬と千堂に頼み込んで、同じ学校に通う美波のボディガード頼んだり。
本当なら美波の事は俺たちで何とかしてやれれば良かったんだけど、他校に通ってて時間スケジュールが違う美波を護衛するには、それこそ俺たちが学校を休んででもやらなくちゃならなかった。出来ることといえば、精々登校の時に送ってやるくらいだ。
百瀬たちは「これでやっと恩返しできる」って意気込んでくれてたのが、幸いだったな。
「俺が事の発端なだけに心苦しかったんだけどな」
「誰もユースケのせいだなんて思ってませんって。何も悪いことしてないのに、襲われた側に責任があるなんて、そんな馬鹿な話があるわけないじゃないっすか」
「まぁ……な」
「外出を自粛してた美波ちゃんにも連絡しましたけど、「家で出来ることに集中できたから、かえって良かった」って言ってますしね。先輩とも仲良くなれたし結果オーライとも」
県外にいる親父とお袋はともかく、美波の外出にも規制を掛けちまったけど、当の本人はまぁのほほんとしたもんだった。アイツは結構インドア趣味なところもあるし、それに没頭できたから丁度良かったらしい。
「むしろ襲われた兄の事など一切心配せず、カズサの方を心配してたのが腹立つんだが」
「そんなことないっすよ。美波ちゃん、ユースケの見えないところではちゃんと心配してましたから」
「はっ。どーだか」
……まぁ、災難な事ではあったけど、結果的に何事もなく事件が収束したし。…………美波も学校で仲の良い相手が出来て良かったんじゃね? いや、どうでも良いけど。どうでも良いけど。大事な事だからもう一度言うけど、どうでも良いけどな!
「にひひっ」
「な、何だよ」
なんか凄い温かい視線を向けてきやがった。一体急にどうしたんだろう?
「いやぁ、似た者兄妹だなって。普段はいがみ合ってるくせに、心の中じゃちゃんと心配してるんですねぇ」
「は? 意味不明な事を抜かすな。全世界の兄弟間において序列最上位に君臨する兄である俺が、序列最下位に位置する妹とどこに似た要素があるんだ? 兄が妹を心配すると思ったら大間違いだぞ!」
「ここ一週間、美波ちゃんの様子を聞いて何事もなかったと分かった時にはあからさまにホッとした顔をしてた人が何言ってるんですか」
「べべべべべべべべ別にそんにゃ顔してねーし‼」
「いやいや、本当にそっくりですよ。美波ちゃんも似たようなリアクションとってましたもん!」
何がそんなにおかしいのか、目尻に涙まで浮かべてケラケラ笑うカズサ。
「とりあえず、お前が思っているのは全部誤解だから! すぐに認識を改めるんだ!」
「二人ともお互いの事になると、どうしてこうも素直じゃないんすかねぇ。仲良くて結構な事じゃないですか。喧嘩するよりマシっすよ」
「おい止めろ。優しい笑顔で「仕方ない人だなぁ」みたいな感じで溜息を吐くんじゃない。マジでそういうのじゃねーから」
くっ……! なんか変な弱点を見られてしまった気がしてならない……! 別に、美波の事なんて本当に何とも思ってないんだからな! クソ生意気で反りが合わないのは本当だし、心配したのだって家族として当然のことだし。実は隠れシスコンだなんて不名誉極まりない吐き気を催すレッテルを張られたら堪ったもんじゃねぇ。
「それはそうと、今回の動画はどうするんですか?」
俺が操作するパソコンの画面を覗き込み、カズサは問いかけてくる。
「一応、公開はするつもりだ。今後こういうモンスターが現れる可能性がありますよって、動画を見ている冒険者たちに伝えるのも俺たちの役目だろうし」
俺たち自身も忘れてたけど、信長と戦う前に仏寺ダンジョンを探索してる時からカメラは回ってたんだよな。まさに内部空間での撮影が本領を発揮したというべきか……あんな激戦もバッチリ撮影できてしまった。長時間撮影もできる最新のバッテリー搭載型を買ってよかった。
「ただ、今回は人死が出たからな。最初は俺も自粛した方がいいかとギルドや警察に聞いたんだけど、別に問題無いって言うし。勿論新藤が出た部分はオールカットしなきゃだけどな。完成した動画はギルドと警察に検分してもらう必要もあるし」
「まぁ、当然っちゃあ当然っすね。で、今作ってるのが、その動画って訳っすか」
三連休の最終日、全ての事情聴取を終えた俺たちは家で動画編集に勤しんでいた。
警察やギルド側も、新藤の死因はモンスターとの戦闘により死亡という、俺たちの事を隠した大雑把な情報を公表するつもりらしい。信長に殺されたとか、そういう事を告げることはないのだとか。
仏寺ダンジョンは消滅し、織田信長というモンスターと戦うことはもうできなくなった今、そういう情報規制をしても問題はないだろう。
……ただ気になるのは、ギルドが信長の音声を全てカットし、喋ったことも公表しないようにと、きつく言いつけてきた事だ。動画のコピーも持っていったし……確かに特殊なモンスターだとは思ったけど、ギルドは一体何を気にしているんだろう?
=====
それから一ヵ月が経過した。
新藤が指名手配された数日後には異世界で死亡したというニュースは瞬く間に世間を駆け巡り、学校に押しかけてきた記者がようやく落ち着きを取り戻した。
意外な事に、葬式とかは執り行われることはなかった。それも新藤の両親が、息子が指名手配されると同時に海外にとっとと引っ越してしまったかららしい。
冒険者犯罪は無実の家族にまで世間からの冷たい声が浴びせられる。その影響を考えれば国外に出てしまおうというのも分かる話だけど……まさか葬式すらしないとはなぁ。
あくまで風の噂だけど、両親ともに浮気していたとか、金に物を言わせてその浮気相手と駆け落ちしたとか、色んな話が学校にまで舞い込んでくる。
三連休の前までは新藤が使っていた机はただの空席になり、彼が本当にここに居たのかさえも疑わしいほど、新藤司という人物の痕跡は消えてなくなった。
学校唯一の冒険者として人気者だった新藤だ。初めは多くの生徒たちが新藤の死を悲しんで、学校全体の雰囲気も暗くなるんじゃないかとも思ったけど……現実は違った。
身近な人物の死に動揺こそ見せはしたものの、誰もが新藤がいないことを当たり前のように受け入れて、日常を謳歌している。
強いて言うなら、新藤とよくツルんでいた陽キャたちが一気に大人しくなったことだろうか。これまで新藤の肩書を笠に着ていたからこそクラスの中心に居られた奴らだけど、カズサが編入し、トドメとばかりに新藤までいなくなってしまったから、生徒間で幅を利かせることが出来なくなったんだろう。
俺たちが信長との戦いの映像を講話社と協力して世間に流したのはその時だった。本当ならもっと早くに流しても良かったんだけど……何となく、俺たちの中で区切りを付けたいと思って、講話社と相談の末に、新藤の事件が落ち着きを取り戻したタイミングに動画をアップし、雑誌を発行したのだ。
日本人で知らない奴はいない、かの第六天魔王と新進気鋭の冒険者の激闘は全世界に轟き、新藤の死はあっという間に人々の記憶から追いやられていく。
生徒たちはしばらくの間、俺たちの話題で持ちきりになったりしたし、動画は盛大にバズってネット中大騒ぎになった。……まぁその弊害というべきか、新藤の一件以降、学校に来なくなっていたマスコミが再び現れるようになって騒ぎになったのは……申し訳なかったとしか言いようがない。
「ふぅ……」
慌ただしい毎日、騒がしくなった学校生活。そんな日常にも少し慣れてきた。
今では俺とカズサ、ついでによく俺たちと共に行動をしている二村と八谷にまで、新藤の時と同じように……いや、それ以上に一目置いているような視線が向けられるようになった。
それも学校でだけじゃない、ギルドや街中を歩いている時ですらだ。時々、見ず知らずの相手に呼び止められて「ファンです」とか、「握手して」とか、「武器見せて」とかいろんなことを言われるようにもなったし、今となっては本当に有名人になったんだと実感したもんだ。
ただまぁ、学校でも急激に話す相手が増えた俺たちだけど、トイレにまでわざわざ付いて行こうとする奴は居ないらしい。居ても困るんだけどな。
「あぁ~、夏休みどうしよっかな」
教室を離れてトイレで用を済ませ、心地いい流水で手を洗いながらそんなことをボヤく。季節はもうすっかり夏になった。
去年までの夏休みの予定なんて、ゲームして遊ぶかバイトに行くかくらいだったもんだけど、今年からは違う。去年みたいに二村と八谷を交えて徹夜で遊び倒すというのも捨てがたいけど、せっかく時間があるんだからどこかまた遠くまで冒険に行くのもいいなぁ。
「雄介」
「か……水無瀬?」
そんな事を考えながらトイレから出ると、待ち構えていたのか、薫が俺に声をかけてきた。下の名前で呼びかけたけど、もう彼氏彼女でもなければ友達でもない相手と親しくするつもりはないので、少し慌てながら訂正する。
「そんな……他人行儀な呼び方しないでよ。私と雄介の仲じゃん……?」
「はぁ……」
なんか気の抜けた返事が出た。俺とお前の仲って……嫌な別れ方をした元恋人で今は赤の他人でしかないと思うんだけど。
「あのさ……私、凄く大変だったんだよね。あれから司くんと付き合ったりしたんだけど、アイツ外面ばっかりですぐに本性出したというかさ、私の事奴隷扱いしたり、暴力振るってきたりして、もう凄く辛かったの。本当、死んでくれてよかった」
「はぁ。……大変、だったんだな?」
暴力と聞いて眉を顰めたけど、当の本人はもう死んでるし、対人スキルか何かを使ったのか、薫にも怪我らしい怪我はない。だから俺から言う事は何もないんだけど……。
「そう、本当に大変だったの! でもそんな時に雄介と過ごした幸せだった時の気持ちを思い出しちゃって、凄く懐かしくなって。なんであの幸せを手放しちゃったんだろうって、後悔ばかりしてて。雄介は司くんなんかと違って、何時も私に優しくしてくれてたのにね」
俺はさっきから何を聞かされてるんだろう? 愚痴でも言いに来たのかと思ったら、話が可笑しな方向に向かっていってる気がするぞ。
「私たち、今からでもやり直せると思うの! 私も本当に反省したし、もう雄介から離れていったりしない。雄介だってまだフリーなんだし……」
……ん? えぇっと……この展開は、もしや?
「私を、もう一度彼女にしてください!」
「絶対に嫌」
気が付けば即答していた。「今更都合が良すぎる」とか、そういう恨み節が頭をよぎることすらもなかった。何が悲しくて何とも思っていない相手と彼氏彼女の関係にならにゃならんのか。
「話ってそれだけ? それじゃあ俺、カズサのところに戻らなきゃだからさ。じゃっ」
呆然とする薫の横を通り過ぎ、カズサがいる教室へと向かう。その時の俺の心は、どこまでも穏やかに凪いでいた。
ご質問があったのでお答えします。
Q『毒吸収があるんだから毒発生を併用しないの?』
A『自分のスキルで生み出した毒を自分で喰らって回復するという手法で間違いないでしょうか? それでしたら、何時か毒攻撃スキルを手にした時にでも回復手段に使うのもアリですね』
Q『うん?もしかして、主人公と特定の木偶が引き合ったご都合主義って、こいつか、その同類が運命みたいなの操ったせいなのか?』
A『ご都合主義っていうのは、小説や漫画ではなくてはとても成り立たないものですが……そうですねぇ。ネタバレになるので多くは語りませんが、因果律や運命を操る力というのはこの作品には存在しませんね。何かを仕組むという風な事は出来なくもないですが』
Q『ポーションや回復スキルで暴行の傷を消したりしても容疑者の心を読んだり真偽を確かめたり自白させたり過去を見たりするスキルは無いのでしょうか?スキルがあっても物的証拠がないと逮捕とかできないのでしょうか?それとも新藤がただ単に傷か残らなければ良いと思っただけなのでしょうか?』
A『自白のスキルはありませんが、他人などの記憶を覗くスキルはあります。ただその記憶を見ることができるのはスキル発動者本人のみで、証言として扱われるくらいですね。犯人探しには役立っても、物的証拠は必要になります。ちなみに新藤はどんなスキルがあるのかを調べもしないので、傷痕さえなく、脅して口封じしてしまえば問題ないと思ってる困ったさんです』
Q『雄介とカズサがああいう形で出会ったのも何者かの意思によるものなのかな?』
A『物語にはご都合主義も因果関係も必要不可欠ですが、例え出会いが仕組まれたものだとしても、二人にとって大事なのは互いを想う気持ち。見合い結婚みたいなものです。答えになってないかもしれませんが、ネタバレ防止なのでご勘弁を』
Q『自分自身も多少は強化しないとスタミナ切れになって歩き回るのがキツイのでは?世界観としてはモンハンベースでアクションは他のゲームと掛け合わせたイメージかな?』
A『まだ途中までしか読んでいないとお見受けします。主人公の未強化問題に関しては話を読み進めていけば分かるので、ぜひ読んでいってください。あと、世界観のイメージ、モンハンであってます。作者、モンハン大好きですから』
Q『毒無効とかって体内の毒が作用しなくなるのですか?それとも体内から消えてなくなるのですか?
作用しないだけなら無効を取って即死毒を常用してれば病原菌とかが善玉菌もろとも死滅するんですか?それとポイズンヒールって毒の威力によって回復量も変わりますか?』
A『生物によって有益な毒素や菌があるように、有害な毒素などがあります。【毒無効】のスキルは、そのスキルを保有している生物にとって有害となる毒素や細菌が体に侵入するのを完全に遮断するスキルですね。善玉菌とか人間にとって有益な菌は無くなりません。あと【ポイズンヒール】ですが、こちらは毒の威力が強ければ強いほど回復量が上がる仕様です』
Q『コントローラー持って歩きながら木偶ちゃんに着いて行ってるのかと思ってたけど木偶ちゃんを纏って運んで貰ってた感じかな?』
A『イメージ的には大体あってますね。木偶人形の内部には特殊な空間があり、そこから外の様子を見ながら操作してるって感じです』
Q『あとがき見て思ったんだけど追い込まれて滅亡まで行きかけた人類なら全員強制で冒険者になる義務とか無いのかな?』
A『モンスターが地球に蔓延ってた頃は、徴兵制度が復活してましたね。モンスターを地球から駆逐し、地球の復興にも目途が立った頃には徴兵の回数も少なくなっていき、冒険者という職業が確立され、莫大な報酬が与えられるようになった四~五十年くらい前には撤廃されました。雄介くらいの年代となると冒険者やそれに関わる仕事に就くかどうかは自由みたいな風潮がありますけど、少し昔は義務的に冒険者になろうという人も少なくなかったんです。三十代~四十代に密集している傾向があり、色んな役割を持つ冒険がいるんですよね』
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