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信長コスチュームってわけじゃないです

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください


 爆煙を突き破って地面を転がったのは、カズサだった。右手には刀身や銃身が粉々に砕けたガンブレードが握られていて、もう武器として成り立っていないことを暗に告げていた。

 

(さっきの音は、やっぱりガンブレードが……)


 武器は失った。これで倒せていなければ、勝率は絶望的……俺とカズサは固唾を呑んで煙が晴れるのを待つ。

 濛々と立ち込める黒い煙が気流に流されていく。徐々に小さくなっていく煙の中に、信長は悠然と立っていた。


「くくくく……あのような無茶な自爆に勝敗を委ねるとは、とんだ大うつけよの……」


 その声は、不敵でありながら凄く楽しそうで、どこか穏やかだ。やがて全ての煙が流され、信長の体力ゲージが露になる。


「よかろう。持っていくがよい、英雄の号……!」


 緑色のゲージは全てなくなり、信長の鎧は斜めに大きく切り裂かれ、その裂け目からは青い炎が漏れ出している。

 倒したんだ……俺たちは、仏寺ダンジョンのボスを。第六天魔王、織田信長を。


「貴方は、結局何者だったんですか……?」


 カズサの言葉は、俺が頭のどこかでずっと抱いていた疑問だった。

 会話が出来るという特殊性に加えて、【天眼】で見た意味深な情報。この織田信長が、単なるボスモンスターじゃないってことは俺もカズサも何となく理解している。


「何者も何もあるまい。儂はこの虚ろの地の主。尾張の国主、織田信長であった者。あるいはその残滓。またあるいは馬鹿話に乗った大うつけ。新時代の英雄に倒された、旧時代の覇者。人類が落日を超えるための試練に組み込まれた、神仏の敵である」  

「落日……?」


 それは織田信長というモンスターの情報の中で一番目を引いたワードだ。それが一体何を指すのか……それを問い質そうにも、時間が足りないらしい。

 気が付けば業火は寺院や雑木林全てを焼き尽くし、黒い焼け跡だけを残して鎮火していて、眩しい日の出がカズサと信長を照らしていて……信長の体は、見る見るうちに青い粒子になって分解されていっている。


「人間五十年……何かを成し遂げるには余りに儚く、度し難いほどに愚かしい。……じゃが、まこと面白き生命(いのち)よ」


 だというのに、信長は心底楽しそうに笑った。


「愚かしさの中に、儂の目を晦ませるほどの輝きを持つ、我らが導いてきた者ども。その在り方が今なお続いているというのなら……あの乱世を駆け抜けた甲斐があったというものじゃ。のぅ……? サル……タヌキ……そして、光秀よ」


 その姿は先ほどの苛烈さなど嘘だったかのように、どこまでも優しげで、どこまでも穏やかだ。

 現代において、織田信長は戦国時代の異端者であると同時に、冷酷極まりない合理主義者で、気に入らない者がいれば迷わず首を刎ねるような暴君だったと伝わっている。

 でも、もしかしたら……誰もが心を開いてしまいそうになるくらい優しい横顔。これが本当の織田信長の表情だったのかもしれない……何となく、そう思った。


「見事である、新しき世の英傑よ! 刹那の瞬間に過ぎ去る己が生……決して立ち止まるでないぞ」


 巻き散らされる蒼炎。崩れていく自分の体に構うことなく、大仰な仕草でカズサへと振り返った信長。その顔はさっきまでの青い炎で象られた亡霊のようなものじゃない……ちゃんとした生身の人間らしい造形の、どこまでも誇らしげな顔だ。


「貴様らがこれよりさらに先の世を生きるというのならば……この儂を打ち破った証を手にして進み、知るがいい。何故地球に異世界へ通ずる門が開かれたのか……何故我ら魔王が存在するのか……その答えの全てを解き明かし、見事、神を(ころ)してみせよ……!」


 そう言って、信長だった光の粒子は朝空に消えていった。最後の最後まで意味深で、俺たちに謎を残すだけ残していって。


「よく分かりませんけど……とりあえず、今日も何とか生き残れましたね!」

(あぁもう……本当に疲れたぁ……!)


 スマホを見てみれば、大体十二時間くらい戦ってたらしい。どんだけしぶとい敵だったんだ。武器も失ったし、戦闘用のコートもブーツもボロボロ……あの宝箱の中身を期待せざるを得ない。


(碌なもん入って無かったら、マジで怒るぞ)


 気力を振り絞ってコントローラーを操作し、信長が残していった宝箱をカズサに開けさせると、中身は織田木瓜紋が金糸で縫われたコートに黒革のブーツ、強化槌が一個。そして……何かデッカイ金属の塊だった。


(何だこれ? コートとブーツは多分ユニーク装備の類だと思うんだけど、この金属の塊は……?)


 ―――――――――――――――――――――――――

 品名:自在天の玉鋼

 触れた者に最も適した武具に変化する、神鉄にも匹敵する魔王信長が遺した兵装

 ―――――――――――――――――――――――――


 ……つまりこれをカズサが触れると武器になるという事か。どんなものになるのか……それは何となく予測が出来る。

 カズサが触れると金属塊は強い光を放ちながら二つに分かれて形を変え……光が収まるころには、反りのない厚みのある日本刀に火縄銃を組み込んだ、俺たちにとって馴染みのある二本のガンブレード和風バージョンに変化した。


 ―――――――――――――――――――――――――

 品名:魔王銃剣

 第六天魔王の力が宿ったガンブレード。一振りで地を割り、一射で天を貫く神殺しの証

《装備スキル》

 ・星切之太刀

 ・天魔轟砲

 ・滅陽

 ・モードシフト

 ・滅神属性

 ―――――――――――――――――――――――――

 ―――――――――――――――――――――――――

 品名:神仏ニ背ク外套

 第六天魔王の威を示すコート。神々の威光を跳ね除ける魔王の象徴

《装備スキル》

 ・覇王之威光

 ・暴君特権

 ・対神属性

 ―――――――――――――――――――――――――

 ―――――――――――――――――――――――――

 品名:信仰踏ミ躙ル具足

 第六天魔王の覇道を刻むブーツ。神仏を踏み越えて新たな時代に至る者の軌跡

《装備スキル》

 ・魔王之蹂躙

 ・侵略者

 ・神越属性

 ―――――――――――――――――――――――――


((ちゅ……中二っ……!))


 名称も説明が中二病臭い……。特にこの新しいガンブレード……刃の部分だけが赤い黒刀って、狙い過ぎだろ。信長は派手好きだったっていう逸話が有名だし、その辺りが影響してるのか?


(でも……ちょっと惹かれるものがありません?)

(それは……否定、出来ない)


 中二だ何だと言っても、個人的にカッコいい。いざ装備してみると、カズサによく似合ってるし。何だったら決めポーズとか記念撮影とかしちゃいたいし。


(とりあえず、性能面とか強化槌は後日確認しよう。帰って休みたいし、新藤のこと……ギルドに報告しなきゃだし)


 異世界で死人が出た。それを目撃した冒険者はギルドに報告する義務がある。本当なら遺体なり遺品なりを持って帰らないといけないんだけど、信長の黒太陽で跡形も残さず消し飛ばされたからな。

 特に親しい間柄でもなかったし、むしろ嫌いな奴だった。でもだからって、死んでほしいとまでは思っていなかった。目の前で初めて人が死んで、何とも言えない気持ちになったけど、その事でウジウジして立ち止まるのは止めよう。冒険者を続けていれば、もっと辛い死別が訪れる日が来るかもしれないんだから。


(さぁ、帰ろう。地球に)


 気が付けば俺たちは焼け落ちた寺院ごと仏寺ダンジョンの外へと放り出されていて、ダンジョンの扉はどこを探しても見つかることはなかった。

 仏寺ダンジョンは信長が倒されたことで消滅したんだろうと、後日結論付けることになった。ユニーク装備は唯一無二……最初に条件を満たした者しか手に入れることが出来ない。第六天魔王は倒されたことで、その役目を果たしたんじゃないだろうかと。

 そうして俺たちは帰路に付き、ギルドに新藤の死亡をカメラを用いて証明した。かの有名な織田信長の登場にギルド側も大いに驚き、後日詳しい話を聞きたいと、俺とカズサは宿泊施設に案内されることになったんだけど、それと同時に驚くべきことを聞くことになる。


 どうやら新藤は、大会の日にトイレで俺を襲ったピエロの正体として指名手配されたばかりらしい。


ご質問があったのでお答えします。

Q『木偶同調は【六天之枷】の効果範囲外でしょうか?それとも運が良かっただけ?』

A『運が良かっただけですね。下手をすればスキルが解除されて二人とも殺されてました』


Q『これ枷対策で大量にまだスキル持ってったら何個以外封印とかが出てきて大変なことになる可能性が?』

A『そこまでは想定していなかったのですが……まぁ、敵対者の数が増えてスキルも増加するモンスターですから、可能性としてはあり得ましたね』


Q『【不倶戴天】と【侵略者】が由来こそ違えど効果は似てますね…。以下の解釈で良いですか?


・【不倶戴天】:素のステータス合計値の2倍

・【侵略者】:掛け算ではなく足し算。【不倶戴天】による計算の後に加算される。


つまりステータス差を埋めるなら…

・できる限りアイテムやスキルをガンガン使って【不倶戴天】の相対的な影響力を下げる。

・パーティメンバーは脳筋ステータスオバケではなく、技量の卓越したベテランが望ましい。

例1.パーティメンバー合計が基礎4万+バフ1万=5万 → 信長基礎8万+バフ1万=9万 → 戦力比5:9(56%)

例2.パーティメンバー合計が基礎1万+バフ4万=5万 → 信長基礎2万+バフ4万=6万 → 戦力比5:6(83%)』

A『その認識、大体あってます。バフをパーティ全体の合計値とするなら、戦闘力の差を埋めるなら確かにこの方法で正解ですが、【不倶戴天】は敵の人数が増えるごとにスキルも増えていきますからね。イタチごっこな言い方になりますが、自己強化スキルに、自分以外のバフの強制解除、デバフを与えるスキルとかも信長は結構簡単にとれるんです』


Q『ふと思ったんですが、寄生プレイが可能ならどっかの富豪が戦闘力かき集めて戦闘力100万位になりません?』

A『理屈は確かにそうですが、まずそれを引き受ける冒険者がどれだけいるかってことですね。彼らにとってもスキルカードはなるべく自分に使いたいですし、金を積まれても「自分で強くなれ」って一周しそう。それに冒険者でもない富豪といえば基本多忙なはずですし、需要があるのかどうかが疑わしいですね。まぁ自分の子供が冒険者になった時、親バカ発揮して最初から強い状態にしようとする富豪もいるかもですが』


Q『かずさを引っ込めて、ユースケとノッブの一騎打ちにして弱体化狙ったあと、爆弾系で一撃で倒せたりします?』

A『雄介に戦闘力差を埋められるかどうかがカギとなるでしょう。下手に強くなったのが裏目に出ましたね……ミラージュステップがあろうとなかろうと、銃撃の飴や砲撃を掻い潜って爆弾を当てれるかどうかといわれると、無理そうです』


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傾奇装備
[一言] なんでカメラ無事だったの
[一言] 誤字報告(後書き): 「自分で強くなれ」って一周しそう。 → 一蹴
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