戦い方を真似されるのが動画投稿の常な訳でして
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください
「無警戒に突っ込んでいって……即死しましたね」
フラグもクソもねぇ瞬殺だった。もう何しに出てきたの? って言いたくなるレベルの瞬殺だ。二秒はねえよ、二秒は。
いや、大会に出場しようとした時点で新藤だってそこそこ戦闘力を上げてたんだろう。でも相手が悪すぎたな。
「黒犬屋……俺も知ってる有名冒険者だ。ほら、この間アサガオを聖水で育ててみたっていう動画見ただろ? あの人だよ」
「あぁ、アサガオが最終的にラフレシア並みに大きくなった、あの」
冒険者歴は四年になる、ユースの中ではベテランの域にある人で有名だ。
こっちで確認できた限り、確か戦闘力は1万3000くらいだったか……当然大会に向けて強くなってるだろうし、このまま順当に勝ち進めば、エキシビションマッチで俺たちと戦うのは黒犬屋だな。
「おっ! またあの人勝ちましたよ!」
そしてその予想は見事的中していた。
遠距離から強弓を引き絞って放たれる矢は凄まじい速度を叩き出す上に命中精度もえげつない。更に位置取りや回避も上手いらしく、常に相手と距離を開けた状態で余裕をもって攻撃を対処しているようだ。
「あれ? でも矢の威力は大したこと無さそうっすよ?」
「モンスターとの実戦と違って、今回の大会のルールじゃとにかく相手に攻撃を当てることが重要だからな」
戦闘力1万越えの冒険者が放ち、速度がある割に、矢は石舞台に浅く突き立ってる程度。
あくまでこれは試合で、それに合わせたルールがある。そう思えば威力や耐久力は無用、勝利の鍵となるのは回避力とスピードってところだな。
[試合終了――――! 勝者、黒犬屋選手! 超絶技巧の弓捌きで、見事優勝を勝ち取りました!]
それからトーナメントを勝ち進んでいくにつれて、何度か拮抗した戦いを繰り広げたものの、下馬評通り黒犬屋が優勝を勝ち取る。
液晶画面から聞こえてくる司会の声と、控室まで轟く歓声を聞いてから、俺は【木偶同調】を発動させ、戦支度を整えると、運営のスタッフがノックの後に部屋に入ってきた。
「間もなく入場の時間です。入場口までご案内しますので、どうぞこちらへ」
そのままスタッフの後ろに付いて行くと、すぐに入場口へと辿り着いた。
体が振動するかのような大きな歓声の波と、内側から湧き上がってくる、実戦とはまた違った緊張感。恐らく、反対側の入場口にいる黒犬屋も同じ気分を味わっているんだろう。
[会場の皆様、長らくお待たせしました! これよりユース王決定戦恒例の、エキシビジョンマッチを開始します! 実況及び解説は引き続きこの私、山本と――――]
[講話社所属冒険者の、みっしーです。よろしくお願いします]
[それでは早速選手入場! 北側入場口より現れるのは、今大会の覇者である黒犬屋! 冒険者歴四年、巧みな弓捌きと堅実な戦い方から既に大手冒険者パーティや企業からのスカウトを受けている彼は、このエキシビジョンマッチでどのような戦いをするのでしょうか!?]
[未来のランカー候補としても名高いですからね。格上との戦闘は経験済みでしょうし、実戦とデュエルは別物。例え戦闘力で劣っていても、勝機を作り出すことは可能でしょう]
舞台の周りにはテレビカメラが回っているのも見えた。
昔、テレビに出てくる同年代の奴を見て、「コイツ俺とタメ年かよ」って驚いたりもしたけど、俺も今同じ場所に立ったんだなって思うと、何か感慨深い。
[そして南側出入り口から現れるのは前代未聞の冒険者! 冒険者になって約三ヵ月! 可憐に変貌した木偶人形を操り、ギガントモンスターまでも討伐してみせた話題沸騰中のカラクリ選手と、その相棒カズサさんの入場です!]
「どうも~っす」
観客席が爆発したように黄色い声援が響き渡る。もし俺がカズサの内部空間に居らず、普通の表に出て歩いていたら、緊張で何も考えられなくなりそうな視線の声の集中砲火だ。
そんな中でも、カズサは暢気に笑いながら手を振っている。俺は映像越しだから冷静さを保ててるけど……コイツ、やっぱり肝が据わってるよな。
[冒険者になってから短い期間でギガントモンスター討伐に、3万に迫る戦闘力。戦い方を含めて、史上類を見ない異色の冒険者といっても良いですね。動画を拝見させていただきましたが、スキルや装備品もユースとは思えないほど強力で……総合的に見れば、既に下位ランカーにも通用しますよ。唯一ネックな点があるとすれば戦闘経験がまだ浅いという事でしょうか……それでもこの戦い、カラクリ選手が優位と言わざるを得ません]
[まさに若手の中でも最強の冒険者! しかし黒犬屋選手も歴戦の雄……二人がどのような戦いをするのか、今から期待に胸が膨らみますね!]
実況と解説の声を聞きながら、審判に促されて俺たちは初期位置に付く。黒犬屋の対面、互いに石舞台の端と端。
(戦闘力は1万7543……気を付けろ、事前データより戦闘力が上がってるぞ)
戦闘力1500くらいしかなかった新藤が瞬殺されたのも頷ける数値。ネットで黒犬屋の戦闘力が1万3000くらいって公表されてた動画がアップされたのはつい三日前……この上がり方から察するに、もしかするとラミア道場を使ったか?
武器を構えた両者の間に緊迫した雰囲気が流れたことを察したのか、会場はさっきまでの喧騒を忘れたかのように静かになった。
[例年までは二十歳以上の実力派がエキシビジョンマッチを担当していましたが、カラクリ選手は二十歳未満の冒険者。これに勝った者がユース王決定戦、事実上の優勝者といっても過言ではないでしょう]
[それでは……ユース王決定戦エキシビジョンマッチ…………試合、開始ぃい!]
開幕の音と共にカズサは右手のガンブレードの銃口を黒犬屋に向けると同時に三連続で発砲する。
事前登録の際に右手に持ってる方だけ銃機能を使う事を申請しておいた。火を噴いた銃口から放たれる弾丸はあくまで牽制……楽々避けた黒犬屋と距離を詰めるための囮だ。
「しっ!」
再度ステップをしながら、黒犬屋は左手に光の矢を顕現させる。あれこそ弓使いの天職の固有スキル、マジックアローだ。
あれは有名だから知っている……インターバル無しで、無制限に魔力の矢を作り出すことができるスキル。それを確認しながら、カズサを黒犬屋に接近させる。
(当たらなければどうということはない!)
迎え撃つように放たれる光の矢の三連射。それらの内の二本を【ミラージュステップ】で擦り抜けながら回避し、最後の一本は弾いた瞬間――――
(ふぁっ!? 何すか、コレ!?)
カズサの体が突然淡く光り始めた。こちらのスキルによるものじゃない……黒犬屋の仕業だ。
「さぁ……ここからが本番だ」
瞬時に二本の矢を同時に放つ黒犬屋だったけど、その矢は明後日の方向に飛んでいく。
絶対に何らかの意図がある……大会のルールを鑑みて、弓使いが使ってきそうなスキルといえば――――
(やべぇ!)
俺は慌てて右スティックを操作して、ホログラム画面に映る視界を大きく広げる。そこには、三本目を矢を番える黒犬屋と、直角に軌道変更してカズサ頭上から迫る二本の矢が映っていた。
(【爆雷】!)
カズサを中心としたドーム状の範囲攻撃、【爆雷】を咄嗟に発動して三本の矢を弾く。元々魔力で出来た矢は強烈な攻撃を受けることで消滅したが、それに慌てた様子もなく再度二本の矢を同時打ちしてきた。
今度は単調な軌道で真っすぐ向かって来る矢。それ自体は難なく避けることは出来たが、二本の矢はカズサの背後で半回転して、一切速度を落とすことなくカズサの背中に迫る。
最初に放った三本の矢は、敵にマーカーを付けるスキルだったのか。
(追尾系のスキルだ! 避けるんじゃなく、弾くことに徹するぞ!)
(了解っす!)
黒犬屋という冒険者が上げる動画の特徴として、戦いに関するものが少ないというものがある。戦闘力自体は高く、高難度ダンジョンを踏破していることは分かっているけど、スキルに関してはあまり知られていないのだ。
だから俺たちは彼が使ってくるであろうスキルを、これまでのトーナメント試合を見て出来る限り研究しようとしたんだけど……あろうことか、黒犬屋は純粋な戦闘技術だけで勝ち進んできたのだ。
(コイツ……この戦いの為にわざと手を抜いてやがったな!?)
自分よりも高い戦闘力を持つ相手との戦いを想定して手の内を隠す……それを実行できる技術は尊敬は出来ても、策自体を軽蔑することはない。目的の為、人道に反しない限りで手段を選ばなかっただけだ。
そしてどんなスキルかは分からないけど、外れたら大きなカーブを描きながらターゲットを追い続ける一般的な追尾系のスキルよりも、直角の軌道を描いて無駄が一切ない動きで追いかけてくるこのスキルの方が断然凶悪だ。追尾系スキルの中じゃ、間違いなく上位に位置するはず。
(だが……!)
【マジックアロー】は強い攻撃を受けることで消滅することは、さっきの【爆雷】で証明済みだ。
その上、恐らくそう何本も矢を連続で放てないだろう。【マジックアロー】はユース王決定戦のルールによって、その使用方法を制限されたスキルの一つで、三本以上の矢を同時に出してはいけないことになっている。
そうでなかったら、追尾系スキルと併用して何十本、下手をすれば何百本の矢が延々と追いかけてくることになるし、まともに食らえは【スケープバリア】はあっという間に砕かれてハリネズミだ。
(勝てる敵だ……!)
戦闘力差1万近くの壁は大きい。俺はコントローラーを操作してカズサにガンブレードを振るって迫ってくる三本の矢の内の二本を弾き、一本を紙一重で避けると、大きな火球を放つ攻撃魔法を【ミラージュステップ】で正面から突っ切り、矢を番える黒犬屋に【ブースト】を発動。矢を置き去りにする速さで一気に接近する。
遠距離武器の使い手っていうは、大抵間合いの内側に入れられるのに弱い。たとえ近接戦闘の手段があっても、得物の性能差と戦闘力差で押し勝てるはず。
そのまま飛び退く暇すら与えずにガンブレードの間合いに黒犬屋を収める。そのまま両手の刃で切り裂いて、一気に【スケープバリア】を二枚持っていく……つもりだったが。
「君には、良いスキルを教えてもらったな!」
「なっ!?」
両手の刃は後ろに飛び退く黒犬屋の体を透過した。そのスキルの正体を瞬時に察しはしたけど、時既に遅し。不意を突かれてできた隙を見逃さず、黒犬屋が放った三連射……その内の二本は弾いたけど、一本はカズサに直撃し、【スケープバリア】を一枚割られてしまう。
[先制攻撃を決めたのは黒犬屋選手~~~‼ 戦闘力で大差をつけられた相手に、実に見事な立ち回り! しかし、今当たるはずだった攻撃が、黒犬屋選手の体をすり抜けたように見えましたが、私の錯覚でしょうか……?]
[いいえ、錯覚などではありません。今、黒犬屋選手が使ったのは、カラクリ選手も得意としている、相手の攻撃をすり抜けるスキル【ミラージュステップ】で間違いありません]
ご質問があったのでお答えします。
Q『スキル外スキルってのはこの世界にあるのだろうか?
ex.(一刀両断というスキルがあったとしてソレを身体能力で模倣する行為)』
A『まったくの0とは言いませんが……一般人には難しいでしょうね。仮に出来るとしたら冒険者なのですが、冒険者がそれをやってのけた瞬間には、既にスキルとして昇華していますから。カード未表示のスキル染みた技っていうのは、そうそうあるものではないかと』
Q『いまさらですけど不壊の担い手の効果でガンブレードの弾丸って壊れなくなってるんですか?
そもそもアイテムに効果のるなら捕縛系が大変なことになるけど』
A『ガンブレードで発射されるのは魔力の塊なんですが、これは装備品に含まれていないのでスキルの効果適用外……つまり相殺可能です。鞭などで相手をグルグル巻きにすれば脱出は困難ですが、それも相手によりますかね。体が大きすぎるモンスターとかなら、相応のスキルを併用しなければなりませんし』
Q『前から思っていましたが、木偶同調していれば互いのスキルを使えるのでは?』
A『使えますね。まぁ、【木偶同調】中、雄介は強制的にカズサの内部空間に入りますから、使えたところで意味ありませんけど。スキルを解除すれば当然スキルの共有もなくなりますし』
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