ネット社会にご用心
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください
「そう言えば、知ってる? 最近新藤氏が荒れてるって話」
カズサが編入してから早一ヵ月。午前の休み時間中、俺の机の周りに集まってきた二村がふと呟く。
「みたい……だな。休み時間の度に教室から離れてるし、取り巻き連中も何か減ってる感じがするし」
気が付いた時には、アイツの取り巻きなんて薫を含めて三人くらいしか残っていないと思う。少なくとも、始業式の日に新藤と駄弁っていた面子の内の二人は、ここ数日新藤から離れて教室で駄弁ってる。
「原因は……もしやこれかもしれませんねぇ」
そう言って、八谷はスマホの画面を俺と二村に見せてくる。とある冒険者のSNSページだ。
そこには十七支部で受付嬢に変なイチャモンを付けていたっていう、高校生くらいの男冒険者の話題が載せられていた。
「顔や姿は映されていませんが……この辺りの高校生で男の冒険者って言うと、我らが間宮高校では九々津殿か、新藤殿のどちらかですから。文句の内容も「アイテムを強化しろ!」と大騒ぎしていたと書かれていますし……これはもしや本当に新藤殿なのでは?」
「あー、多分ていうか、十中八九そうだと思う。俺たちもたまたまその場に居合わせていたからさ」
「新藤氏……不味いんじゃないの? 冒険者ってとにかくイメージが大事な職業でしょ? 気になって彼のSNSも見てみたんだけど……ほら」
新藤のSNSのコメント欄には、十七支部で質の悪いクレームを入れてただろって言及する声が幾つか送られていた。大事にこそはならなかったけど、あの件が切欠で新藤のイメージが大幅にダウンしてしまったらしい。
公的な処罰は免れても、人の口に戸は立てられない。例えネット上に自分の情報を一切公開しない冒険者であっても、悪評が立つような行いをすればどこからともなく漏れるのが、今の冒険者社会だ。
実際、とある企業に所属していた、テレビ出演もするくらいの冒険者が不倫して奥さんに離婚裁判を起こされた時、どこからか情報が洩れて人気を失い、企業から契約も打ち切られて落ちぶれたという話は有名だしな。
……俺たちもマナーとルールには気を付けないと。
「これが原因かどうかは断定できないけど、少なくとも機嫌悪そうなのは確かだな。そりゃあ人も離れていくか」
戦闘力が500も越えれば、一般人からすれば超人の域だ。新藤の戦闘力はそれを遥かに上回っているだろうし、そんな情緒不安定な冒険者と一緒に居たくないのは当然だ。
「それに比べて、カズサ氏はすっかり学校に馴染んだよね」
最初はどうなるものかと不安もあった彼女の学校生活は順風満帆だ。
人当たりの良さも相まって大抵の相手と良好な関係を築いているし、話題の冒険者の片割れみたいな存在という物珍しさもそうさせているんだろう。
体育の授業は当然のようにチート状態を発揮。この間なんて女子バスケ部のレギュラー連中をドリブルでごぼう抜きにするんじゃなく、ボールを持った瞬間にコート内のどの位置からでもダンクを叩き込むという荒業をやってのけて話題になっていた。まぁ、冒険者ならこのくらいはやってのける奴も多いけどな。
「後、やたらと料理が上手いってことで女子から頼られてるしな」
ウチの学校、男子が中心の情報技術、女子が中心の家庭科の選択授業が週四時間あるんだけど、家庭科を選んだカズサはそこでも話題を集めている。
俺や八谷、二村の選択科目は情報技術を選んでるから伝え聞いた話だけど、クッキーを作る授業でそれ用の材料しかない筈なのに、何故かやたらと豪華で本格的なケーキを作り上げたのだとか何とか。
何言ってるか分かんねぇと思うが、どうやら本当の事らしく……家庭科の授業の後、カズサが俺や二村たちにカットされたケーキを配ったことがある。
……菓子作りって、ちゃんと材料揃えないと作れないって聞いたんだけどなぁ。ちなみに味は美味しかったです。
「進級してから九々津殿が弁当派になったかと思えば、それも全てカズサ殿が作っていたのでしょう?」
「しかも凄く上手で盛り付けも綺麗なやつ。この間、珍しく教室で食べてたら周りの女子に見られてからというもの、ああいう風に呼び出されることも多くなったよね」
俺たちは女子グループに混ざるカズサを見る。丁度彼女は一冊のノートをクラスの女子に渡しているところだった。
『はい、これ。彼氏さんが好きっていう料理のレシピを書いときました。個人的に作りやすいやり方にしましたけど、分からなかったらまた連絡してください』
『ありがとぉ、カズ~。料理できないのに弁当作るなんて見栄張った時はどうしようかと思った~。今度お礼するね』
『ねぇカズ。続け様で悪いんだけど、私も相談良い? 実は今度お母さんの誕生日で……』
最近、カズサは料理関連でやたらと頼られることが多い。早くも愛称で呼ばれてるし、このまま調理部でもできるんじゃないかってくらいの勢いだ。
「身体能力は高く、家事万能とは……カズサ殿って、欠点とかないのでは?」
「いや、勉強は苦手だな。この間の歴史の小テストでサービス問題あったろ?」
織田信長が明智光秀に討たれた場所はどこっていう、日本に生きている学生なら殆ど知っているような問題だ。答えは当然、本能寺な訳だが……。
「カズサの知識には色々と偏りも多いのは知ってたけど、何をどう覚え間違えたのか、答えに性欲寺って書いててなぁ」
「そっちの本能!?」
あれでも授業は真面目なんだが、どうにも性に合ってないらしい。座学の授業の後は、難解な単語を耳に入れ過ぎて、頭から煙でも出てるんじゃないかってくらいグッタリしてるし。
まぁ総合的に言って、今学期に入ってからというもの、新藤の人気は下がり、カズサの人気はうなぎ上りになっているってことだ。
「それにしても、冒険者として登録されているのは九々津氏なのに、君はあんまり変わり映えしないね」
「まぁ動画の主役は華があるカズサだし、こうなることは大体予想ついてた」
それはそれで別に良いと思っている。そうした方が人気出るし、目立ってないだけで俺自身も注目されてるし。
「お待たせしましたー」
そんな事を話していると、渦中の人物であるカズサが戻ってきた。
「おかえり。……あ、そうそうカズサ」
「うん? どうしたんすか?」
「さっき例の件で連絡があったぞ」
ユース王決定戦エキシビジョンマッチに関する話をする日時……それが決まったのだ。
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それから一週間後……再び竜山ダンジョンを攻略した俺たちは、踏破報酬である宝箱の中身である二つの強化槌を回収。両方ともブレスレットに使用する。
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品名:超人のブレスレット
身に着けるだけで身体能力が飛躍的に上がる腕輪。特に敏捷性を高く上げることができる。
《装備スキル》
・神速
・剛腕
・鉄塊
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身に着けるだけで腕力を上げる【剛腕】。肉体の耐久力を上げる【鉄塊】という常時発動型スキルを付与できたことに満足し、続いてワイバーンのカードをカズサに取り込ませて、今の戦闘力を確認する。
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名前:カズサ
天職:木偶人形
戦闘力:27876
【スキル一覧】
・全スキル習得可能
・ゲージシステム
・不壊の担い手
・空中殺法
・ポイズンヒール
・ノックバックカウンター
・ミラージュステップ
・木偶同調
・三段ジャンプ
・コスチュームチェンジ
・会心の瞳
・リジェネ
・ブースト
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戦闘力はあともうちょっとで3万に突入するところまで来ていた。スキルも装備品も充実してきたし、大会に向けての準備は十分どころか十二分といったところか。この間聞いた話が本当だとすると、実質アイテムが使えなくても大会では敵無しだろう。
俺自身の戦闘力も念の為にラミア道場で5000くらいまで上げたし、あとはどういう形で俺たちがユース王決定戦に関わるのか……それを聞くために、柴田さんとの待ち合わせ場所へと急行するのだった。
ご質問があったのでお答えします。
Q『撮影って有人がすればいいのでは?地球からでも電波届くんでしょ?魔物にカメラ潰されたりするの?』
A『冒険者カメラマンが撮影カメラを担いで冒険者リポーターを撮影するという手法もあります。ですがその場合カメラマンにかなりの戦闘力が求められますね。生半可な戦闘力ではカメラどころか命も奪われますから。だから基本、超小型カメラが主流なんですよ』
Q『質問なんですが、主人公とカズサって木偶同調っていうスキルで同期状態になるんですよね?そうしたら片方がスキルカードで強くなるともう片方にも影響があると思うんですが、そこらへんはどんな感じになってるんでしょうか?それともスキルカード使用時は同調スキル切って(安全な場所で)使ってる感じですか?』
A『同期状態もそこまで万能じゃないんですよね。それに【木偶同調】は一体化というよりも、内部空間という隔絶された場所に雄介を避難させるという意味合いがありますから、たとえ内部に居てもスキルカードやオーブの影響はないんですよね』
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