元カノ関連のシリアスとか無意識で吹っ飛ばす
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください
一体どうしたんだろう? 冒険者やそうでない人問わず、辺りの人間が何事かと視線を集中させる中、それに気付いている様子のない新藤はどんどんヒートアップしていく。
「アイテムマスターなら出来んだろ!? ここにオーブもカードもある! これで俺の取得戦闘力を二倍にして、もっと良いスキルを覚えさせろって言ってるんだ!」
「で、ですから! そのような事は出来ません。アイテムマスターの【アイテム強化】は、発動者ご本人以外に効果が反映されないのです」
「嘘だ! だってこの動画じゃあ出来てるだろーが‼」
「私もその動画は拝見しましたが、その投稿主であるアイテムマスターは、極めて特殊なマジックアイテムを併用していてですね……」
どうやらクレームというか、文句というか……って、あれ? もしかして新藤が言ってるのって……。
「もしかして、アタシたちの動画のこと言ってるんですかね?」
「多分……ていうか、間違いなく?」
聞こえてくる会話の内容から察するに、そう言う事なんだろう。
一応動画内では、強化槌に関しては真似できても、スキルカードやオーブに関しては真似できないことを説明したんだけどな。これに関しては百瀬たちにも協力してもらって検証したから間違いないし。
「動画の内容……分かりにくかったのか?」
「そうかも……ですね」
そう言えば、動画の感想覧でも『ギルドのアイテムマスターを頼れば、自分も取得戦闘力を二倍に出来ますか?』みたいな事を言ってる視聴者さんがいたなぁ。俺たちの編集に問題があったのか、はたまた取得戦闘力二倍やオーブの強化という結果だけ見て、過程や条件が頭から抜け落ちているのか……理由は分からないけど、何らかの誤解を与えてしまっているらしい。
そんな事を俺たちが話していると、吉川さんが新藤を慌てて止めに入った。
「失礼、支部長代理の吉川です。一体どうなさったのですか?」
「あぁっ!? 支部長? だったらこの受付何とかしろよ! 適当なこと抜かして俺を騙そうとしてんだぞ‼」
いや、騙してねーよ。受付さんが言ってることは多分本当の事だよ。
そこから少し聞き耳を立ててみると、やっぱり新藤は【アイテム強化】の詳細とかを勘違いし、取得戦闘力が二倍になることも、スキルオーブを使えばより強いスキルになることもカズサが居て初めて成立という事を理解していないらしい。
それを吉川さんや受付嬢さんが何度も訂正しようとしているけど、頭に血が上っているのか聞き入れる様子もない。流石に止めに入ったほうが良い雰囲気になってきて、周りの冒険者たちも身構え始めている。
「九々津の奴だけ不公平だろ‼ なんで俺には出来ないんだよ!? お前ら、冒険者のサポートが仕事なんだろ!? この役立たずが‼」
ちょ!? 不満なのは分かったから個人名を大声で叫ぶな‼
そう口に出そうとしたけど、それよりも先に限界が来たらしい受付嬢さんが少しムッとした顔で言い放つ。
「私どもにも出来ることと出来ないことがあります! 無茶なクレームを申し付けられましても、対応できません‼」
言ってることは至極尤も。しかしそれを強めの口調で言ったのが気に入らなかったのか、新藤は静かに……それでいて先ほどよりも剣呑な雰囲気を発し始めた。
「テメェ……! 女の分際で男に……それも冒険者に口答えしてんじゃねぇよ……!」
青筋を浮かべながら新藤は拳を握る。アイツまさか……受付嬢さんを殴る気なんじゃ……!?
「待――――」
「はい、そこまでっす」
「ぐあっ!?」
止めに入ろうと声を上げかけた瞬間、既に間に間合いを詰めたカズサに肩を掴まれ、新藤は痛みに顔を歪める。
あれ以上は流石に見逃せねぇ。今、新藤は明らかに受付嬢さんを殴ろうとしていたからな。冒険者の腕力で一般人をグーで殴るとか、正気じゃない。
「大丈夫っすか、お姉さん?」
「は、はい。ありがとうございます」
「そっすか! それは良かったです!」
「い、いえ……そんなっ」
ニカッと快活に笑うカズサに、顔を赤らめてモジモジし始める受付嬢さん(美人)。あれ? 何か……様子がおかしくね? そして何だろう……どうして俺はこんなにも見せ場を奪われた感を味わってるんだ……?
周りを見渡してみると、他の男性冒険者の方々も俺と同じ、何とも言えない微妙な顔をしている。受付嬢さんに何事も無くてホッとしているのは事実なんだけどな。
……なるほど。困ってる美人を助けるフラグを奪われたからか。
「さぁて、そろそろ落ち着いてもらえませんかね? 他の人の迷惑っす」
「痛ぇっ!? は、放せよ‼ 女の分際で生意気……ぐあああっ!?」
「男とか女とか関係ないっすよ。マナーはちゃんと守るのは、冒険者以前の問題じゃないっすか?」
暴れる新藤の肩を揉んで動きを制するカズサ。体格こそ新藤の方が上だが、【天眼】で確認したところ、戦闘力に差があり過ぎる。現に今、カズサはかなり手加減したやり方で止めてるし。カズサが本気で掴んだら、新藤の肩は今頃握り潰されてる。
ああなったら、スキルでも使わない限り暴れようがないが、流石にそこまで我を忘れていないっぽい。
「冒険者とは、力を持つが故に品格を求められる者。今のところ実害はありませんが、これ以上騒ぐようでしたらギルドとして相応の対応をさせていただきますが?」
「…………っ!」
それを察したのか、吉川さんは能面のような無表情を張り付けて、怒りを感じさせる淡々とした声で忠告する。
そこでようやく周囲に目を向ける余裕が出来たのか……周囲の人間から白い眼で見られることに気が付いた新藤は、力を緩めたカズサの手を振り払うと、逃げるようにその場を後に走り去っていった。
「申し訳ない。おかげで助かった」
「いえいえ。……それよりもユースケ、なんかあの人様子がおかしくなかったっすか?」
「うん……前まではあんなんじゃなかったと思うんだけど……」
春休み以前……間宮高校で唯一の冒険者だった新藤は、周囲からの尊敬の視線を一身に集め、優越感からか何時も上機嫌な陽キャで、問題らしい問題も起こさなかった。……まぁ、彼女を寝取られたことは、今でも確執に思ってるけどな。
しかし今の新藤はどうだろう。思い返してみれば、学校でも目立つことが少なくなってきたような気がする。
「一線を超えないことを願っているけど、彼の事はこちらでも注意しておくよ。それで先ほどの件なのだが……いいだろうか? そんなに時間も取らせない」
「あぁ、はい。大丈夫です」
その後、俺がこれまで手に入れた強化槌と、実際に使う事でどのようなスキルを得たのかを説明し、当初の目的を果たしてから仮眠室に戻って眠りにつくのだった。
=====
そして俺が起きたのは三時間後……聞き馴れたスマホの通知音によってだった。
「ん……んぅ……通知……?」
目を開けてみると、俺はベッドのヘッドボードを背もたれにしながら胡坐をかいた状態で、カズサは俺の前で猫のように丸まって静かな寝息を立てていた。
寝る直前、俺たちはベッドの上で向かい合いながら駄弁ってたのは憶えてるんだけど……どうやら俺とカズサは揃って寝落ちをしていたらしい。おかげで体のあちこちが痛い。
「で、誰からのLINEが……は? 薫?」
痛みに耐えながらスマホの画面を見てみると、表示された送り主の名前は、あの日以来一度も連絡を交わしていなかった薫の奴からだった。
一体何事かとメッセージを確認してみると、「相談したいことがあるんだけど」という、簡素な文章が表示される。アイツが今になって俺に相談とか、一体どうしたのかと思いもしたけど――――
「アホらし」
そっちから話しかけんな、拘るなって言っておきながら、虫の良いLINE送ってくるなっての。
何を相談したいのかは知らないけど、悩みがあるんなら他の奴……それこそ、新藤にでもすればいいんじゃなかろうか。
とりあえず、俺が答えてやる義理はねぇ。なんやかんやあってブロックし忘れてたけど、これを機にブロックするわ。
「あ~……クソ」
思わず嫌な事を思い出してしまった。LINEくらいでと思われるかもしれないけど、そっちの都合でフッておいて、さも当然のように相談を持ち掛けてくるなんて、勝手にもほどがある。
俺は胸の奥から黒くてドロドロした感情が湧き上がってくるのを自覚した。
薫に対する未練とか愛情とか、そういうのはもう欠片も残っていないのは間違いない。でも初めての恋愛があんな形で終わって、俺の中に確執が変な形に歪んで残っているらしい。
もう吹っ切って何とも思わないっていうスタンスを貫けばいいのに、実際は――――
「チ〇コバ〇トの雨がああああああ!」
「ふぁっ!?」
やたらとデカい音量の寝言と共に飛び起きるカズサ。そのまま眠気眼で慌ただしく左右確認すると、その視線は俺に固定された。
「……あれ? ユースケ……? 何時の間に服を着たんですか?」
「最初から着てるんですけど!?」
「え……あれ? でもさっきまで七色に光るパンツ一丁のサンタになって、空飛ぶママチャリから大量の駄菓子を爆笑と共にばら撒いてて……」
「お前は一体どんな夢見てたんだよ!? いい加減目を覚ませ!」
肩を揺さぶるとようやく意識が冴えたのか、ハッとした表情を浮かべるや否や、両手両膝をベッドマットに付けて項垂れるカズサ。
「…………駄菓子、食べ損ねたっす……」
「落ち込むより先に相方が変態仮装で空を駆けまわっていない事実にホッとしてほしかったんだけど……」
「何言ってるんすか。どんな姿をしていても、ユースケはユースケ……アタシの大事な相棒ですよ」
「おい、何だその生暖かい眼は!? さも現実で起きても受け入れますみたいな優しい笑顔は止めろ! 俺はまかり間違ってもそんな恰好はしねぇから!」
察するに、随分と愉快な夢を見ていたらしい。それがあまりにも可笑しくて、さっきまでの感情が綺麗サッパリ吹き飛んで思わず笑ってしまった。おかげで薫なんかの事で頭を悩ませるのもバカバカしくなったぞ。
あぁ……そうだ。本当にバカバカしい。どうしてさっきまであんなに気が滅入ってたのか不思議なくらいだ。
ご質問があったのでお答えします。
Q『まだ途中までしか読んでませんから先の展開で詳しい説明あるのかも知れませんが、ギルドにダンジョンリフォームを報告した際の言い訳が気になりますね。防御に定評のあるスキル持ちのいるパーティーは誰で、なぜ報告に来ないのか、ギルドこら質問されないのは何故?すぐバレそうな嘘過ぎて違和感感じます。』
A『ギルド側からすれば、提供された情報が本当なら、誰が報告しても問題無いからです。謝礼金の分配に関してもギルドが関与するところでもないですしね』
Q『カズサはほぼ人間と同じとのことですが身体的機能が人間と同じとの認識で大丈夫でしょうか?例えば毒霧を吸い込み咳をしてましたが生命活動に酸素は必要ですか?また、体内器官が人間と同じなら子供を妊娠することは可能ですか?』
A『人間とほぼ同じという認識で大丈夫ですよ。【ゲージシステム】というスキルによって怪我や疲労とは無縁ですし、不老の存在ではありますが、酸素を取り込まずにいれば体力ゲージが減っていきますし、やることやれば妊娠も可能です。ただ、エネルギー補充の為に消化器官全般は普通とは違いますけど』
Q『主人公は現段階では容姿は中ぐらいの可もなく不可もない感じだとは思うのですが将来的にカズサプロデュースにより服装や髪型でイケメンになれそうでしょうか?またそのようなプロデュース回は書く予定はありますか?』
A『ネタバレになるので多くは語りませんが……有名冒険者になればテレビや雑誌の取材が付き物になり、スタイリストさんが服装や髪形などを整えてくれます。そうなれば何時もセンスのない服を着ている雄介はちゃんと整えれば隠れイケメンに変身。そして薫はますますよりを戻したくなる……という構想はあります。まぁそれも皆さんがたくさんの応援や評価ポイントを送ってくださってこそですが。恥ずかしながら私、評価されないとモチベーションが上がらない駄目なタイプの作者でして』
Q『この世界にオタクが存在するのは、分かったのですが、中二病患者はいますか?中二病患者が、冒険者になっていたら、痛い必殺技や、恥ずかしい二つ名、パーティー名は、存在してますか?』
A『中二病? いますね。痛い必殺技や恥ずかしい二つ名、パーティ名もあります。例えば【爆雷】のスキルを【ジャッジメントボルト】とか勝手に改名したり、若気の至りで自分自身に二つ名つけちゃったり、中二病が集まって自分たちを《暗黒騎士団》とか名乗っちゃったり』
Q『質問なのですが、カズサの髪の長さ、髪型についてはどのようになっているのでしょうか?
体型と髪、目の色については描写がありましたが、髪型等に関しては何もなかったように思いまして』
A『少し癖のある、背中まで届く長さの銀髪ですね。実は緩いウェーブが掛かっているんです』
Q『範囲内強化アイテムとかなら他の人にも強化分も入るのかな?』
A『例えばモン〇ンの粉塵……もとい、使えば煙となって周囲に広がり、その煙に触れた人間の力を上げるアイテムがあったとして、アイテムマスターがそのアイテムを使った場合、煙の範囲は広がりますが、自分以外の人間には従来通りの効果しか現れません。使いどころを見誤らなければ、別に使うのはアイテムマスターでなくても良いという、残念仕様です』
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