最後は結局正道がモノを言う世界なんだよね
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
とりあえず、それから幾日かが経過した。
大会の準備で色々と忙しい俺たちの事を理解したのか、ここ最近は付き合いが悪くなっても気にする様子もなく、二十歳未満の有名な冒険者をリストアップし、情報収集をしてくれる二村と八谷に感謝しつつ、今日も今日とて俺とカズサは異世界に行く。
(おっ! 目当てのものが出ましたよ、ユースケ!)
(やっとか!)
花橋ダンジョンを延々と周回し、俺たちはようやく目当てのものを手に入れる。
爪先で描いた軌跡に沿って、五つの鎌鼬を放つ魔法スキル、【風爪】を装備品に付与できる強化槌だ。
目当てのものを手に入れた俺たちはそのままギルドに戻り、仮眠ついでにギルドに設けられている休憩部屋(シャワーとツインベッド付きで二時間五百円)を借りて早速マフラーに使ってみることにした。
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品名:五元のマフラー
炎、雷、氷、地、風の属性を宿したマフラー。首に巻くだけで五属性への耐性を得る
《装備スキル》
・爆雷
・炎柱
・絶氷
・鉄槍
・烈風爪
・五元の守り
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目論見通り、【風爪】よりも威力と範囲が増した上位互換スキルとして付与されるが、それだけじゃない。
魔法攻撃としてポピュラーなのは地、氷、火、風、雷の五つ。中にはそれ以外の属性の魔法攻撃もあるけど、ハッキリ言って稀……有名冒険者でもなかなか持っていない。
このマフラーは既に、巻くだけで大抵の魔法に対する耐性を得る事が出来る、魔法の装備の中でも上位に食い込む性能に至ったのだ。
「さて、マフラーは強化したわけだが……今日の本題はこっちだな」
そう言って俺はベッドの上にある物を置く。それは冒険者を始めた当初、高額すぎてとても手が出せなかった、店で売ってるスキルオーブと二つの強化槌だった。
「感慨深いものがあるっすね。前まではお金なくて買えなかったものが、こんなに沢山買えるなんて、お金持ちになった気分っす」
「まぁ全部で三つくらいだし、沢山って程でもないけどな」
それでも合計すると、大体一千万近くになったんだけどな。おかげで貯金が殆ど吹き飛んだ。
冒険者って上に行こうと思えば思うほど必要経費が嵩むし、魔法の装備やらスキルオーブの類の販売はギルドが一手に引き受けてるから中古品探すとかも出来ないし、まぁそこは仕方ない。
「買ったのは確か、俊速の強化槌が二つに……【リカバリー】を習得できるオーブっすね」
「あぁ。特に【リカバリー】は高かった」
物にもよるんだけど、スキルオーブや強化槌は常時発動型よりも任意発動型のスキルが宿ってるものの方が高額である傾向がある気がする。インターバルが必要な分、効果が強力だからか。
「それじゃあ早速……まずは俊足の強化槌二つを合成して……韋駄天の強化槌にする」
効果は単純……脚力が強化されるスキル常時発動型スキルを装備品に付与するというものだ。俺たちが持ってる魔法の装備の中で、常時発動型のスキルは【モードチェンジ】くらいなもんだったけど、筋力が上がったり耐久力が上がったり、そういう防具はかなりポピュラーなんだよな。今の今まで手に入れてなかったことの方が不思議なくらいだ。
「店に同じ種類の強化槌が置かれてたのは凄くラッキーでしたね」
カズサの言う通り、資源を合成すれば作れる消費アイテムとは違い、オーブや強化槌、魔法の装備などは出現率が完全にランダムで、狙った物を確実に得ようとするのはほぼ不可能。
大きなギルドにある専用店なら目当ての物を見つけられる可能性もあるけど、それだってかなり低いのだ。
今回俺たちが俊足の強化槌を二つ手に入れられたのだって、【俊足】のスキル自体が比較的手に入りやすいとされるから。それでも複数個を手に入ったのは運が良い。
「で、これを付与する装備品は……」
「これっすね!」
そう言ってカズサが小さめの紙袋から取り出したのは、ギルドの近くにある雑貨屋で購入した金属製のブレスレットだった。
装備スキルをマフラーに一極集中させるのもなんだし、ステータス向上系の装備品として買っておいた、どんな状況下でも身につけやすい装飾品だ。
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品名:神速のブレスレット
身に着けるだけで神速の如き敏捷性を得る腕輪。魔力が宿ることで強度が上がった。
《装備スキル》
・神速
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【韋駄天】から【神速】へと昇華され、何の変哲もないブレスレットは魔法の装備に進化した。
続いて一旦【木偶同調】を発動してから【リカバリー】のスキルオーブをカズサに使うと――――
「ん。ちゃんとスキルが強化されて、【リカバリー】が【リジェネ】っていうスキルになりましたね。どうっすか? 似合います?」
さっそくブレスレットを手首に嵌めて見せびらかせてくるカズサ。薄っすらと電灯の光を反射するシンプルなブレスレットは、華美ではないが故にカズサを引き立てる装飾として収まっていた。
「いいじゃん。超似あう」
「にひひ」
褒められて嬉しかったのか、カズサはやたらと嬉しそうにはにかんだ。犬耳や尻尾が生えていたら、ピコピコ揺れたりブンブン振っていそうだ。
何はともあれ、これで今出来ることは全部出来た。ここに至るまでの道程を思い返せば、ギガントモンスターを倒してからというもの、俺たちの冒険者業はとにかく順調……動画投稿もだ。
正直、俺もカズサもトークの技術とかは無いし、編集も拙い。だからシンプルな冒険者活動記録って感じの動画を上げてるんだけど、カズサという物珍しさによって集まってきた視聴者さんたちからは、確実に評価されている。
この間の竜山ダンジョン攻略や、【アイテム強化】に隠された力を公開する諸々の動画も評判が良かった。ボスモンスターとの戦いを客観的な視点から撮影した動画なんて滅多にないし、【アイテム強化】に関しても、まさかこんな力が隠されていたなんてと、驚きのコメントが多数寄せられていたし。
今となっては、下手に受けを狙いに行って総スカン食らう方が恐ろしく感じる。俺たちはかなり特殊だから他の冒険者の参考になるかは分からないけど、やっぱり真面目な活動動画とか、やってみた系の動画とかの方が受けが良さそうだ。
「……? ユースケ、スマホ鳴ってますよ」
仮眠室に鳴り響く、聞き馴れた着信音。俺のスマホに電話が届いたようだ。
ディスプレイを見て見ると、名前は未表示で、電話番号にも見覚えがない。一体誰だろう……?
「はい、もしもし」
[始めまして。こちら、九々津雄介様のお電話でお間違いないでしょうか?]
画面をタップして通話モードにすると、電話の向こう側から聞き覚えのない男性の声が響いてくる。
[突然のお電話、申し訳ありません。私、日本冒険者ギルドユース王決定戦運営本部の、柴田と申します。少々お時間頂きたいのですが……]
「構いませんけど」
大会の運営本部? 一体どうしたんだろう?
[ありがとうございます。実は九々津様には、運営本部からご提案……と言うよりも、ご協力をお願いしたいことがございまして]
「協力? どういうことですか?」
[はい、一からご説明させていただきます]
そう言うと、電話の向こうの柴田さんという人は、変わらず丁寧な口調で語り始めた。
現在ユース王決定戦の運営は募った参加者をトーナメント形式で振り分けている真っ最中らしい。これは運営のホームページを見れば一目瞭然なので、それがどうしたのかと思っていたんだけど、問題はこの後。
[参加者の方々をトーナメントに振り分けている最中、九々津様が最近動画で話題沸騰中の冒険者であることを知りまして。かく言う私も九々津様の動画を全て見させていただきました]
「え!? そ、そうなんですか!? まさかこんな形で視聴者さんと話すことになるとは……ご視聴ありがとうございます」
[いえいえ、こちらこそ何時も配信を楽しみにさせていただいております]
ヤバい……なんか嬉しい。実際に動画を見てくれてる人が楽しみにしてくれるってん、なんて褒め上手なんだろう。
[それで、話を戻させていただくのですが……結論から申し上げますと、九々津様には本大会に一般参加ではなく、エキシビジョン枠での参加をしていただきたいのですが、ご協力お願いできないでしょうか?]
ご質問があったのでお答えします。
Q『推奨戦闘力はソロでの基準値?パーティを組んでいる場合は戦闘力が推奨戦闘量より低くても問題なし?』
A『ソロでの基準値ですね。パーティを組んでいれば多少少なくても問題ありませんが、あまりに低すぎると、スピードのある雑魚モンスターに初見殺しされる可能性大です』
Q『【天眼】を人に使用した際、戦闘力以外はどれぐらい相手のことがわかるのでしょうか?例えば薫がもう経験済みだとか、進藤の人間性とか。
あとアイテムマスターは木偶人形は1体しか操れないのでしょうか?複数同時に操れれば、チ〇婆やサ〇リみたく、一夜で城や国を滅ぼせることが可能かもしれませんが。
最後にユース王決定戦に千堂と百瀬や進藤は参加するのでしょうか?個人的には新キャラに期待したいのですが・・・』
A『戦闘力以外は種族としての生態が分かるくらいですね。流石に性格とか経験とかは分かりません。
アイテムマスターが操れる木偶人形の数は、普通なら一体だけですが、雄介に操作されたカズサがさらに木偶人形を操作するというのは出来ます。上手くやれば大量操作も夢じゃないかもしれませんが、現状では無理ですね。
ユース王決定戦に関しては、百瀬と千堂は用事があって出場見送りです。新藤に関しては……この先をお楽しみに』
Q『初歩的な質問ですが主人公の立ち位置どーなってるの?毎回操作してますが操作中は移動しているのか、立ちっぱなしかん?モンスターは必ず前面しか出ないとか?無防備で背後殴られたら死にそうなのに誰もつっこまない…単純に描写見逃しただけなんですかね』
A『【木偶同調】の発動中、雄介はカズサの内部空間に入り込み、外部からの干渉を全て遮断された状態になります。そこでカズサを第三者視点から見た映像が映るホログラム画面を見ながらカズサを操作していますが、画面外からの奇襲をカズサが受けることはありますね。ていうか、花橋ダンジョンで一回奇襲受けましたし』
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