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新しいスキルは得られないとは確かに言ったが、強化できないとは言っていない

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


 推奨戦闘力5600。普段通ってるゲートの近隣にあるダンジョンの中でも最難関といえる竜山ダンジョンは、高い塔のような構造をした、ガチ勢への登竜門と呼ばれる場所だ。

 出現するモンスターは主にドラゴニュートという硬い鱗と強靭な筋力を兼ね備えた半人半竜で、それぞれが金属製のしっかりとした造りの武器を装備し、攻撃スキルを多用する難敵だ。

 極めつけに最奥……と言うよりも、最上階に出現するボスモンスターはワイバーン……大きな翼を翻して冒険者を襲う、あらゆるモンスターの中でも屈指の戦闘力を誇る、ドラゴン系と呼ばれるモンスター群の一種だ。

 毒の爪と強烈な炎の息吹、卓越した飛行能力を持つ難敵で、この辺りの冒険者たちはこのワイバーンをソロで倒すことで、周囲からガチ勢と認められている節がある。


「ていっ!」


 とは言っても……だ。【毒無効】のスキルを持ち、魔法の装備と化したマフラーによって炎への耐性を得て、【三段ジャンプ】と【ブースト】で疑似的な空中戦が出来る、戦闘力1万5000越えの俺たちの敵じゃなかったけどな。

 空中を連続で跳躍して、バスターモードに変形させたガンブレードで首を落とし、あっさりと仕留めることが出来た。


(それで……どうでした?)

(そうだなぁ……ここに来るまでの間で苦戦自体はしなかったけど、ドラゴニュートで対人戦の練習は出来たと思う)


 その実戦経験を得ること……それは今の俺たちにとっては急務だ。


(難点があるとすれば……やっぱアレだな。箱庭型のダンジョンほどモンスターの数が多くないから、戦闘力上げにはラミア道場の方が効率がいいってことかな)


 花橋ダンジョンのような箱庭型は、吉備ダンジョンや竜山ダンジョンみたいな迷宮型よりも大分モンスターの数が多い。だからこそラミア道場なんて言うやり方がまかり通った。

 ちなみに余談だが、他の冒険者への情報提供としてラミア道場のやり方を動画にアップしたんだけど、花橋ダンジョンはそこまでの賑わいを見せていない。

 コメント欄では感心したり、驚かれたりしたんだけどね。花橋ダンジョンまで付いてきてくれるアイテムマスターの伝手が必要だったし、俺たちと同じ手段は真似できそうになかったんだとか。下手な攻撃スキルで沼地の中のラミアを仕留めても、魔石やスキルカードは沼の底に沈むし。


(さて……もう一つの本題に入るとしようかね)


 そう言って、俺はカズサを操作してワイバーンのスキルカードを手にし、出現した宝箱を開ける。

 まずはスキルカードを取り込んでみると、【アイテム強化】込みで戦闘力が1000も上がった。これはラミア道場を一周するよりも高い数値なんだけど、ここまで来る道程は長いし、ワイバーンは飛び回るから、ラミア道場を四周する方が早いんだよな。迷宮型のダンジョンって、壁や天井を壊してショートカットとかできないようになってるし。

 

(さて……じゃあ言ってた通り、一枚貰うぞ)

(はいはーい)


 そう言って、俺はドラゴニュートが落としたスキルカードの内の一枚を取り込み、残りはカズサに使う。

 以前、俺たちの動画を見てくれた視聴者から自衛策は持っていた方が良いと言われたことがある。顔出しして有名になれば、その分犯罪を企む奴も増えてくるし、カズサが常に俺を守れる状況下にあるわけじゃない。

 スキルをまともに覚えられない俺は、冒険者に襲われればどうしても後れを取るしかないけど、それでも逃げ回ることくらいは出来るようになった方が良い……そんな言葉を受けた俺は方針を見つめ直し、急を要さない限り、一度の攻略で手にしたスキルカードの内の一~三枚くらいは自分で使うことにしたのだ。


(おお、流石は推奨戦闘力5000越えにいるダンジョンのモンスター。俺の戦闘力が205に跳ね上がったぞ!)


【アイテム強化】込みとは言え、凄い上がり方だ。今なら吉備ダンジョンを素手で攻略できる気がする……! 


(んー……でもやっぱり、新しい戦闘力上げの場所は、箱庭型に絞ったほうが良いっすね)

(そうだな……で、後は宝箱の中身だけど)

  

 これまでのダンジョンとは比べ物にならない難易度に比例してか、竜山ダンジョンの踏破報酬はスキルオーブや強化槌が二つ以上出ることも珍しくないらしい。

 内心ワクワクしながら宝箱を開けると、中に入っていたのはスキルオーブと強化槌の二つだった。効果はどれほどのものか……俺は早速【鑑定眼】でスキルオーブを調べてみる。


(ユースケ……鑑定のスキルオーブ……どう思います?)

(凄く……ガッカリだよ)


【鑑定眼】を習得できるスキルオーブって……既に持ってるっちゅうねん。これが物欲センサーの力だというのか……!


(これは売りに出すしかないかなぁ)


 最初から持ってるスキルだけにありがたみが薄いけど、【鑑定眼】はレアスキルの一つだし、高く売れる。俺が持っていても意味があるとは考えにくいしな。

 例えば、【三段ジャンプ】のスキルを持っている冒険者が、【三段ジャンプ】や【二段ジャンプ】を習得できるスキルオーブを使おうとしても弾かれてしまう。

 これは同じスキルや下位互換が重複しないようにする為に備え付けられた、スキルカードの機能の一つらしい。習得したスキルを強化するには、上位互換スキルを宿したオーブを使わなきゃならないのだ。

 中には使用回数を稼ぐことで強化できるスキルもあるけど、そういうのは主に耐性系スキルで、それ以外のスキルが使用回数で強化されたなんて話は聞いたことがない。

 詳しいことは未だに解明されていないから俺も詳しくは分からないけど――――


(あれ? でも【アイテム強化】を持ってるユースケがオーブを使ったら、上位互換スキルになるんすよね?)

(そうなんだよなぁ)


 今までスキルを覚えることから遠ざけられてきたため、アイテムマスターの可能性は未だに多く眠っている。その辺りの事を調べても出てこないし、正直言って俺がこの鑑定のスキルオーブを使ったらどうなるのか、想像もつかない。

 使っても意味がないと思う一方で、もしかしたらという気持ちを捨てきれないのだ。


(いっちょ……やってみるか)

(やっちゃいますか)


 これまでカズサに対して使っていたスキルオーブ……それを今初めて俺自身に対して使う。

 内部空間でカメラの位置もセットし直して準備完了。【アイテムボックス】を経由して手のひらに載せた鑑定のスキルオーブを自分自身に使うと、バチバチという電流のようなものがスキルオーブから迸る。

 

(おわあああああああっ!?)

(ちょ、ユースケ!? 大丈夫っすか!?)

(だ、大丈夫! 見た目だけみたいだ!)


 しかし、不思議と痛みとか苦しみとかはない。悲鳴を上げたのだって、単に驚いたからだ。

 スキルオーブはまるで拒絶反応を示しているかのように電流のようなものを流しているけど、そのままゆっくりと俺の体に浸透していき、辺りは静けさを取り戻した。


(取り……込めたのか?)


 恐る恐る自分のスキルカードを取り出し、内容を確認してみると―――――


(お、おおおおおおおおおおおお!?)

(こ、今度はどうしたんすかユースケ!? なんか変な事でも起きました?)

(ちょ、これ見てみろ!)


 スキルカードは【アイテムボックス】には入れられない……俺は思わず【木偶同調】をわざわざ解除して、自分のスキルカードをカズサに見せてやった。


「えっと何々? ……あれ!? 【鑑定眼】のスキルが……!」

「資源の詳細を見抜くだけじゃなくて、モンスターの生態や戦闘力を見抜けるスキル、【天眼】にパワーアップしている……!」


 こんな嬉しすぎる結果は予想だにしていなかった。初期スキル以外は覚えられないとされていたアイテムマスターが、まさかこんな形で新しいスキルを得ることになるだなんて。


「一回だけだから何の確証もない……何か、新しく試せるスキルオーブは……!」

「あ、だったらアレやってみないっすか? あの余りまくった耐毒のスキルオーブでやるって言ってた奴」

「おお、あれか!」


 そうだ、その手があった。

 俺は再度【木偶同調】を発動。カメラを取り出してセットし直し、これまで使ってこなかったアイテムマスターのスキル、【アイテム調合】を発動し、耐毒のスキルオーブ二つを調合する。

 大体の使い道としては異世界で得た資源をマジックアイテムに調合するためのスキルなんだけど、同じスキルオーブ二つを調合すると、上位互換スキルが秘められたオーブになるということは大々的に広まっていた。

 つまり、この対毒のスキルオーブ二つは、【毒無効】を習得できる無毒のスキルオーブになるという訳だ。


(よし……じゃあ行くぞ!)


【木偶同調】によって俺のスキルをカズサと共有する状態にし、今度は無毒のスキルオーブをカズサに対して使う。

 さっきと同じように電流みたいなのがオーブから流れたけど、オーブはゆっくりとカズサに取り込まれた。そのままカズサのスキルカードを確認してみると、そこには俺たちが睨んだとおりの結果が表示されていた。


(【毒無効】のスキルが、毒攻撃を食らうことで逆に体力や傷が回復するスキル、【ポイズンヒール】に変化してるぞ!)

(ふぉおおおおっ!? マジっすか!? これって実は大発見じゃないっすか!? カメラでちゃんと撮りました!?)

(あぁ、バッチリだ!)


 ここで俺たちは新事実を新たに発見した……【アイテム強化】があれば、習得済みのスキルと同じスキルを宿したオーブを使う事で、スキルを強化できるという事を。



ご質問があったのでお答えします。


Q『スキルカードが冒険者が持つものとモンスタードロップのもので同じ名称になってるのと、

スキルオーブで覚えられる特殊技能もスキルカードで上げられる戦闘技能スキルもどっちもスキルって纏められてるようで少し気になった。

オーブでもアイテムマスターだと全スキル習得無いなら何も覚えられないのでしょうか?新藤と生身で対決あるなら辛そう』

A『【全スキル習得】がなければ、アイテムマスターはオーブを使ってもスキルを習得できません。そもそも【全スキル習得】すら覚えられないという可能性も残ってますからね。激レアスキルで、アイテムマスターに回ってくる物じゃないから試されたことがないですし。あと、モンスターがドロップしたスキルカードで上げられるのは戦闘力だけです。名称が紛らわしいなら、これからはカードやオーブという風に略しましょうかね』


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― 新着の感想 ―
[気になる点] もしかして、視聴者=我々? ハッ!?まさか猫耳で語尾がにゃの女の子を出せと言えば追加されるのでは!? [一言] こういう新しい発見で強くなっていくのがワクワクします。 楽しい展開ですば…
[気になる点] そもそもアイテムマスターって如何いう職?アイテムを作る生産職?戦闘をこなす戦闘職?仲間を助けたり仲間や自分を強化したり敵にデバフを与える支援職?
[気になる点] 推奨戦闘力はソロでの基準値?パーティを組んでいる場合は戦闘力が推奨戦闘量より低くても問題なし?
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