薫エピソード・不穏
ランキング3位に上がっていました! これも全て皆様の応援のおかげです!
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
私と雄介は小学校5年からの付き合いだった。
切っ掛けは正直憶えていない。気が付けば一緒に遊ぶようになっていて、一緒にいるようになって、一緒の中学、高校に進学して、気が付けば両片思いになっていたっぽい。
そんな私たちの関係も、高校一年の段階までは良かった。お互いゲーム好きが幸いしてか、一緒に遊んだりしている時は凄く楽しかったし、中学の時に正式に彼氏彼女になってから幸せだったように思う。
でも、今となってはその当時の感情が本当だったのか、記憶が曖昧だ。
転機は高校生になって、周囲に遅れて身嗜みを意識するようになってから。周りの子たちは化粧したり、髪の毛を綺麗にセットしたりしてドンドン可愛くなっていくのが羨ましく思えて、真似してみたのが始まり。
野暮ったい制服のスカートの丈を短くして制服を可愛く着こなしたり、女性誌を買ってメイクの練習をしたり、流行のヘアスタイルを勉強したり……そうしていく内に、黒髪三つ編みで眼鏡かけてた地味だった私は、夏休みデビューする形でセミロングの茶髪とコンタクト、薄化粧を決めた今時の女子高生に変貌を遂げていた。
『おぉ!? いいじゃん、見違えたぞ! 似合ってる似合ってる!』
そんな私の変化を、当時彼氏だった雄介が好意的に受け入れてくれたこともあって、私は内心ではドキドキしながら学校に行ったんだけど、周囲からの受けは予想以上に良かった。
これまで私の事なんて見向きもしなかった皆が、私の事を可愛いって褒めてくれて、それが自信に繋がり気付いた……これまで可愛い部類に入る女子は素材が良いからなんだと思ってたけど、可愛いは作れるんだって。
それからはファッションや化粧といった、一般的な女子高生の趣味に没頭していった。あれだけ好きだったゲームや漫画からは次第に離れていき、新しい女友達と化粧やアイドルの事で盛り上がることの方が面白いと感じるようになったんだ。
そうしていくと、次第に雄介が彼氏であることに不満を感じるようになった。だって友達の彼氏は皆あんなゲームオタクじゃないし、運動も勉強もそこそこ出来てそこそこカッコいい。
だから友達に雄介を彼氏だって紹介するのも恥ずかしくなって、彼氏がいることは言っていたけど、それが雄介だって事は適当な理由を付けて黙ってた。
本当は別の彼氏が欲しくなってきたけど、雄介との間にもこれまでの積み重ねがあったから中々縁を切り難くて……そんな鬱屈とした気持ちを抱えたまま過ごしていたある日、同じ学年で冒険者になった男子の事で話は持ちきりになった。
新藤司くん……学年で一番のイケメンで、高校生なのに社会人並みの収入があるっていう男子に、他の女子たちは勿論、私も夢中になった。
今思えば、夏休みデビューを切っ掛けに価値観が変わったんだと思う。前までの私なら〝一緒にいて楽しい〟ことを相手に求めていたけど、今の私はお金とかルックスとか肩書とか……何かと将来性があって、他人に自慢して紹介できる、そんな要素を人間関係に求めるようになった。
別にそのこと自体を悪いとは思っていない。先の事を色々と考えたら、私の考えはいたって普通のはず……だと思う。何はともあれ、私は司くんという存在を知ってから、如何にして雄介と縁を切り、司くんの彼女の座に収まるかを考えていた。
そこから先の展開は少し長かったけど、過程は単調だった。友達が皆彼氏持ちの中で私だけ居ないっていうのも何か嫌だったから、司くんに振り向いてもらえない場合の保険として雄介との交際を続けつつ、さりげなく司くんにアピールし続けていると、司くんの方から言い寄ってきてくれたのだ。……でも。
『彼氏いることは知ってるけどさぁ、絶対俺の方が満足させられるって。だからあんなオタ捨てて俺にしとけ。な?』
その言葉で、私はちょっとだけ自分のしていることに疑問を持って、司くんに答えを保留にしてもらった。もしかして、私のしていることって二股紛いの事なんじゃないかって。
でもそんな悩みも、友達に相談した途端に完全に霧散した。
『えー? 男を乗り換えるとか皆やってるよー。今カレに不満があるならさっさとフッちゃえばいいじゃーん』
その言葉で私は目が覚める気分だった。皆やってる……その言葉が免罪符になったんだ。
私はすぐに雄介と二股する形で司くんと付き合うことにした。デートもしたし、キスもしたし、皆やってるって言われて処女だってあげた。それが三学期の二月上旬の話……それから三月の下旬くらいまで二股を続けてたんだけど、どうしてさっさと雄介の事を捨てなかったのか、それは今でも分からない。
ただこのままじゃ司くんに悪いかなって思って、春休み前には雄介の事を捨てた。
そうしたら何か肩から荷が下りたみたいな軽い気持ちになって、何も考えずに能天気に司くんを始めとしたカーストトップと遊ぶようになって、私は確かに幸せを感じていたんだ。
正直、司くんに私以外の彼女がいることは知ってたけど、その事も気にならなかった。司くんは冒険者で学校一モテるから仕方ないって思ってたし、何より金払いが良くて何でも買ってくれるから、私としては不満がなくて、変わらず彼氏彼女の関係を続けていた。
雄介の事なんて、春休み明けに教室で見かけるまで完全に忘れていたし、久々に見た幼馴染が相変わらずダサいオタと付き合っているのを見て、思わず嗤ってしまった。
相変わらず底辺を這いつくばっているんだなって。司くんとは比べ物にならないダサい男……今となっては、どうしてあんなのと付き合ってたのか謎過ぎる。
『ユースケ』
でも……そんな私の優越感にも似た感情は、たった一人の人物の登場で吹き飛ばされた。
この世のものとは思えない……それこそ、前にテレビに出ていた異世界のモンスター、サキュバスみたいな人外並みに整った美貌を誇る女の子が、突然雄介と親し気に腕を組んで、やけに親密そうに話していたのだ。
そんな彼女を一目見た時、私は女としての負けを否応なしに突き付けられた。化粧も何もしてないのに際立つ白い肌に、アイメイク要らずの大きな瞳。形の良い鼻に瑞々しい唇。髪に至ってはどんな風に手入れしているのかも分からないほど艶やかだ。
一体雄介とどんな関係なのか……どうして雄介がこんな美少女と親しそうにしているのかが分からないまま時間が過ぎていき、その答えを知ったのは休み明け、ネットに上げられた一本の動画によってだった。
なんと雄介は私が知らない間に冒険者になっていたのだ。あの美少女は戦うためのアイテムらしく、外見の美しさや前代未聞の力を秘めていること、そして半月足らずでギガントモンスターまで討伐するという、これ以上にないほど華々しいデビューを飾っているという事も知った。
しかもその日の内に当の美少女……一之瀬カズサは国の意向だか何だかでウチの学校の、同じクラスに編入してきたのだ。
まるでかつての司くんみたいに……ううん、冒険者として成功の兆しを既に見せ始めている雄介と一之瀬さんは、司くん以上の注目を浴びながら人に囲まれるのを見て、私は自分の胸の中でモヤモヤとした、正体不明の気持ち悪い感覚を味わう事になったんだけど、それと同時に司くんの様子がおかしい事に気が付く。
普段は上機嫌でいることが多い人なのに、雄介と一之瀬さんの周りに人が集まり始めてからというもの、見るからに機嫌が悪そうな雰囲気を発していたのだ。
これは不味いと、私を含めたグループ全員が思った。司くんを中心とした私たちのグループでは、とにかく司くんの機嫌を損ねないことを暗黙の了解としてきたから。
司くんを怒らせればお金を出してもらえないし、喧嘩になったら絶対に勝てない。それを良く知っていた私たちは、気分転換に司くんを誘って遊びに行くことにしたんだけど……その選択が間違いだった。
まずは司くんの冒険者としての力が発揮できて、無理な接待をしなくてもマウントを取りやすいゲーセンにでもと思って連れてきたんだけど……司くんが記録を塗り替えたと自慢していた体感系のゲーム、その全ての記録を大きく更新されていたのだ。
『はぁ!? んだよ、コレ!? 一体誰が……!?』
シューティングゲームもダンスゲームも司くんの記録を大きく上回り、パンチングマシーンに至ってはカンスト記録。こんな事が出来るのは、所謂ガチ勢の冒険者くらいなもの。
一体誰が司くんの記録を塗り替えて彼の苛立ちを煽るようなことをしたのか……半ば八つ当たりみたいな気持ちを抱きながら画面を見てみると、そこには【Y&K】という、正体が凄く連想しやすい二人分のイニシャルが、堂々と一位に輝いていた。
『え……えっと、気にしなくてもいいよ司くん。所詮はゲームの事なんだし……』
理由はよく分からないけど、司くんが雄介やカズサを見てイライラしてるのは何となく察しがついていた。そんな二人が司くんの記録を塗り替えたとしか思えない現状に、怒り震える司くんを慰めようと恐る恐る肩に触れてみたんだけど……私の手は強かに払いのけられてしまった。
『うるっせぇ! 下手な慰めなんていらねぇんだよ、ブス‼』
呆然とする私を放置して乱暴な足取りでゲーセンを後にする司くんと、その後を慌てて追いかけるグループメンバーたち。
『……一体、どうしちゃったの? 司くん……』
何で……どうして……司くんは何をそんなに苛立っているの? 彼女なのに、全然分からないよ……。
何かが軋み、壊れていく音が聞こえてくる。漠然とした不安を抱えながら、私は痛む手を押さえながら彼らの後を追いかけていった。
ご質問があったのでお答えします。
Q『雄介の戦闘力は上げないのですか? 上げておいた方が良いと思います』
A『要約すると、こういう質問とアドバイスが多かったのでお答えしますが……そろそろ上げます』
Q『今回の作戦はいたってシンプル……俺たちがラミア道場やボスモンスターから手にしたスキルカードやオーブを丸ごと二人に渡すという、寄生ハイエナプレイだ。
これってアイテムマスターの能力で強化されたアイテムを他人に使うという認識でいいんでしょうか?
3話では
これだけでもかなりのクソっぷりだが、第二のクソポイントが【アイテム強化】のスキル。〜
何とこのスキルの効果は自分にしか適用されない。
とありますがその場合だと強化されたスキルカードなんかも自分以外使えないのでは?それとも別扱いですか?』
A『スキルカードだけ渡している状態で、【アイテム強化】の力は反映されませんね。戦闘力の上がり方も、雄介なら1枚で30のところを、千堂と百瀬は従来通り1枚15です』
Q『そもそもアイテムボックスのアイテム奪えたりするのかな?奪取系のスキル以外で』
A『無理ですね。構想している中では、奪取系スキルでもアイテムボックス内の物にまで手が出せる類のは考えていませんし』
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