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廃人ゲーマーはゲーセンにおいては冒険者より強いでござる

皆様の……皆様の応援あって、ローファンタジーでランキング5位に入れました!

作中の設定や気になることがございましたら、感想にてお知らせください。次話の後書きにてお答えさせていただきます。



 カズサが編入してきたその日の昼休み。休み時間の度に引っ張りだこにされていた彼女はクラスメイトたちに断りを入れ、学校内案内と称して俺と二村、八谷の三人と屋上付近の踊り場で昼飯を食っていた。

 ちなみに余談だが、一之瀬という姓は、便宜上俺が適当に付けさせてもらった苗字である。


「という訳で、改めまして。カズサっす。ちゃんと挨拶するの初めてでしたよね」

「こ、これはご丁寧に。僕は八谷と申します。以後よろしくお願いします」

「ぼ、僕は二村。よろしく」


 実を言えば、二人がちゃんとカズサと話すのは今日が初めてだったりする。

 カズサや動画の事は事前に知らせていたけど、カズサが正式に家に住むようになってからは日用品の買い出しとか、美波との付き合いとかで色々バタバタしてたからな。


「しかしこれは革命ですよ九々津殿~。元カノを寝取られたかと思えばアイドル級美少女と急接近とは、九々津殿はなろう系ラブコメの主人公だったのですか?」

「でも頼りになる仲間が出来たみたいで本当に良かったよ。えっと……カズサ氏、で良いのかな? 今後とも、九々津氏の事をよろしくね」

「いえいえ、こちらこそ。何時もユースケに良くしてくれてるみたいで……今後とも、ユースケの事をよろしくお願いします」

「お前らは俺の母ちゃんか」


 ペコペコと頭を下げ合う三人。三者面談の時にお袋が担任に同じような事をしてたのを思い出して、妙に恥ずかしいから止めてくんない?


「それにしても、まさか二人が俺たちの動画を宣伝しててくれたとはな。だから一日でこんなにバズったのか」

「でゅふふふ。サプライズは成功のようですね」


 SNSでもそうなんだけど、何よりこの二人はその筋で名の知れたゲーム実況者で、俺たちが動画を投稿しているのと同じサイトを使って投稿してるんだけど、そのサイトではおすすめ機能という、他の投稿者の動画を他の利用者に宣伝することができるという機能がある。

 それによって二村たちが宣伝した俺たちの動画が連鎖的に広まって、その結果バズったという事か。


「まさかこんな形で広まるとは思わなかったすねぇ」

「あぁ。俺たちも動画投稿始めたのはついこの間からだしなぁ。おすすめ機能の事までは把握してなかった」


 そういう点では、SNSも同じだ。冒険者業を始めてから細々と簡素な活動記録をアップしてきたけど、世間に自分の事を拡散するようなアプリは使ったことなかったし、色んな機能を失念しているから、自分ではいまいち使いこなしてる感がない。

 やり方自体は分るんだけどなぁ……使いこなすには少し掛かりそうだ。改めて色々調べ直そうっと。


「とは言っても、動画の内容あってのバズり方だけどね。それくらいカズサ氏と九々津氏の動画は、冒険者界の常識を超えている」

「そこは俺たちも狙っての事だからな」

 

 色々と至らないところもあっただろうけど、動画を見てくれさえいれば皆驚くだろうことは予想していた。美少女化&チート化した木偶人形を操る、戦闘力たったの5の冒険者なんて、俺たち以外にいないからな。


「まぁ僕らは冒険者業では役に立たないけど、ネット関連なら色々助けられると思うから」

「遠慮なく頼ってくれても大丈夫ですよ」

「いやぁ、お二人には本当に助けられちゃいましたね」

「ホントにな。二人ともありがとう。今度何か奢るわ」


 このくらいしないと割りが合わない。収入だって入ったことだし、


「「それじゃあ、若返りの飴を」」

「なめんな」


 飯でも奢るって言いたかったのに、何が悲しくて一粒一億円もするような激レアアイテムを奢らにゃならん。


「冗談冗談。ハンバーガーでも奢ってくれればこちらとしては満足です」

「ポテトとジュースも付けて奢ってやるよ」


 =====


 そしてようやく下校時刻になり、カズサを含めた俺たち四人はゲームセンターに遊びに来ていた。

 放課後もクラスメイト達に誘われていたカズサだったけど、家や学校の近隣の案内を前から約束していたということで、今日は俺たちと一緒に遊び回ることにしたわけだ。

 で、やってきたのがゲーセン。カラオケだのボーリングだの、そういったアミューズメント施設と、数多くの飲食店が一緒になった大型モールにある施設の一つで、休日や放課後になれば数多くの学生で賑わう場所だ。

 

「しかも大型スーパーも一緒になってるから、遊びの帰りに買い物がしたければここを使うのもありだぞ」

「ほうほう」


 興味深そうに周囲を見渡すカズサ。するとあるゲームに興味が惹かれたのか、目を輝かせながら俺の袖を引いてきた。


「ユースケ! アタシもアレやってみたいっす!」

「ほう……パンチングマシーンですね」


 殴った衝撃の強さを点数として表し、その高さを競い合う、ゲーセンでは定番のゲームだ。しかも冒険者対応型と書いてあって、普通のパンチングマシーンよりもやたらと頑丈そうな造りになっている。


「最高得点は1万ちょい……二位との差がえぐいな」

「一般人ならどれだけ強く殴っても500を超えるか越えないかだもんね。一位の人は絶対に冒険者だよ。えっと名前は……SINDO。あれ? この辺りでこの名前の冒険者といえば……」


 十中八九、うちの学校の新藤の事だろう。基本的に冒険者って儲かるから、大学生や社会人みたいに、ガチ勢よりであればあるほどゲーセンじゃあ満足できなくなり、金のかかる遊びにハマることが多いと、どこかで聞いたことがあるし。


「ふっふっふっ。それじゃあ一位を抜く気でやってやるっすよ~」


 冒険者として稼げるようになってからというもの、冒険者業で得た金銭は貯金分を除き、カズサと分割するようにしている。

 カズサは自分の財布から取り出した硬貨を投入口に入れ、グローブを右手に嵌めて肩を慣らすように回すと、左足を前に出して右腕を引き……ボッ! という空気を引き裂くような音と共に拳を放った。


「おわぁああっ!?」


 凄まじい打撃音がゲーセン内に響き渡り、辺りの人間が何事かと一斉にカズサに注目する。

 異世界産の特殊素材で造られたパンチングマシーンは壊れこそしなかったが、表示された得点は驚異的なものだった。


「9万9999って……カンストしとる!?」

「どーすっか、ユースケ! 見ました? アタシの実力!」

「いや……ただただ凄いとしか。この手のゲームでカンストを生で見ることになるとは思わなかったぞ」

「えへへへ」


 頭を撫でてやるとやたらと嬉しそうにされるがままになるカズサ。

 これが戦闘力1万越えの力か……コイツとだけは絶対に手足が出る喧嘩をするまい。あんなん食らったら肉塊にされる。

 ちなみに、記録更新したことで名前を登録する際、カズサは【Y&K】なんていう名前を付けた。どうやら俺とカズサ、二人のイニシャルらしいが、記録を更新したのはカズサ一人の力なのに、これはおかしくないかと聞いたら、「今のアタシの力はユースケあってのものですから」なんて、ちょっと気恥ずかしくなる事を言ってきた。


「ノッてきたっすよぉ! この調子で全ゲームを制覇してやるっす!」


 記録が塗り替えられた画面を満足そうに眺めると、カズサ率いる俺たちは次々とゲームに挑戦していく。

 ゾンビを撃ち殺すシューティングゲームに始まり、エアホッケー、UFOキャッチャー、レースゲームにダンスゲームといった体感系のゲームの記録の殆どを塗り替えていく。

 UFOキャッチャーこそそうでもなかったけど、他はカズサの並外れた動体視力が大なり小なり反映されるゲームだからな。どの冒険者にも言えることだけど、小手先のテクニックが重要じゃない遊びにはとことん強い。


「ていうか今気づいたんだけど、ここの体感系のゲームって殆どが新藤が一位だったんだな」

「それも全部カズサ氏が記録塗り替えちゃったけどね」


 登録名が全部同じで、二位との点数差も似たような感じだったからすぐに分かった。アイツら、ここで遊んでたりしてたんだなぁ。

 俺と二村、八谷も偶にここに遊びに来るけど、今まで気付かなかった。まぁ、新藤みたいな陽キャが遊びそうな体感系のゲームと、俺たちが頻繁に遊んでる格ゲーとかが置かれてるスペースの間に、学生に不人気なスロットとか競馬のゲームスペースが置かれてるからなんだろうけど。同じゲーセン内でも住み分けがされているというか。


「いやぁ、ゲームって楽しいっすね! こう、記録を塗り替える瞬間が何とも言えないっす! ここに来るまでの殆どのゲームを総ナメしてやりましたし、アタシの事は、これからゲームの女王と呼んでくれてもいいんですよ?」

「ほう、大きく出ましたねカズサ殿。女王を名乗りたければこのゲームの代名詞、ストレート・ソルジャーズで僕と一勝負どうですか?」

「望むところっすよ! 格ゲーでもアタシの動体視力があれば余裕ってことを証明してやるっす!」

「あ、カズサ氏。初心者ならこのキャラをお勧めするよ」


 そんな新事実より、カズサと二村たちが仲良くなったことのほうが重要だ。

 二村も八谷も三次元の女には苦手意識がある方だったんだけど……相棒と親友たちが馴染んでよかった。


「……げっ」


 そんな時、楽しい時間に水を差すかのように新藤と薫のグループがゲーセン内に居るのを見かけた。幸い向こうはこっちに気が付いていないみたいだけど……ハンバーガーを奢ることを理由に三人を連れてゲーセンから出た方が良いか?

 スロットの陰から新藤たちの様子を窺い、気付かれないように退店する機会を探っていると、パンチングマシーンやダンスゲームといった体感系のゲームの画面を見ながら連中が何かを騒ぎ始めた。

 会話の内容は聞こえないけど、何やら新藤が荒れてる様子。そんな新藤の方に、薫が心配しながら触れようとすると――――


「――――――――っ‼」


 新藤はその手を強かに弾いて怒鳴りつけ、乱暴な足取りでゲーセンから出ていった。

 他のメンバーも慌ててその後を追いかけていって、その後ろを薫が泣きそうな顔で手を押さえながら追いかけていく。

 一体何だったんだ……? 少なくとも、二年に上がってから先週までは何時もと同じだったように思うんだけど、思い返してみると今朝から様子が可笑しかったような気も……。


「うわぁああああああああっ‼ ユースケェ、あの眼鏡なんなんすかもぉー‼」

 

 そんな俺の思考を吹き飛ばすかのように、半泣きになったカズサが俺に泣きついてきた。

 何だ? 一体何があったんだ? そして八谷、そのドヤ顔は一体どうした?


「一発弱パンチ食らったと思ったらそのまま延々と画面の端っこで体力ゲージ空になるまでボコボコにされたんですけど!? チートっすか!?」

「チートとは心外な。ちゃんとシステムに則った無限コンボにござるよぉ~。如何に動体視力に優れようとも、このゲームの全コマンドから裏技、当たり判定を完全に把握している僕には勝てないという事を理解しましたか? でゅふふふふふふっ!」

「く、悔しいぃいい‼ ユースケェ、仇とってください! アタシたち、一心同体の相棒ですよね!? ユースケの屈辱はアタシの屈辱で、アタシの屈辱はユースケの屈辱っすよ‼ あの眼鏡に目に物を言わせてください‼」

 

 どうやらゲームに関しては手加減知らずの八谷にボッコボコにやられたのが相当悔しかったらしい。カズサは涙目で俺を引っ張ってゲーム機の前に座らせる。


「言っとくけど、八谷は家でも専用コントローラーで練習しまくってる格ゲー廃人で、大会で何度も優勝してるような奴だからな? 俺の勝率なんてせいぜい四割だし、あんまり期待すんなよ?」

「でゅふふふふふふっ! 久々に手合わせ願いましょうか、九々津殿!」


 こうして俺たちの放課後は過ぎていく。余りに楽しすぎて、俺は何時の間にかさっき見た薫たちの事をすっかり記憶の彼方に追いやっていた。


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