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課金ガチャは滅びればいい。ガラガラの白玉も滅びればいい

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


 土曜日。ほぼ全ての学生が狂喜乱舞するであろう、二連休の始まり。月曜日か金曜日が祝日なら尚良い。

 そんな麗らかな一日の昼前……俺たちは千堂沙月と百瀬瑠衣の二人を伴って、花橋ダンジョンまで来ていた。


「へぇ~……ここが花橋ダンジョンかぁ! 洞窟の中にこんな場所が広がってるなんて、今でも信じられないよねぇ」

「でも本当に良いの? 私たちは助かるけど、こうも助けられてばかりじゃ申し訳ないわ。まだちゃんとお礼だって出来ていないのに」


 百瀬と千堂が眉尻を下げながらカズサを見る。


「良いっすよ。ユースケと話し合って、そのお礼をしてもらうために二人の戦闘力を上げる必要があるってだけですし」


 そんな二人に対して、カズサはヘラッとした笑みを浮かべながら顔の前で手を軽く振るのを、ホログラム画面越しに俺は見つめていた。


(……と言う事でいいんすよね、ユースケ)

(うん。いつか絶対に協力者は欲しいと思ってたしな)


 ダンジョンの中には、単独では絶対に攻略できないものが存在する。所謂ギミックと呼ばれる仕掛けを解かなければ道が開かれない仕組みになっている高難度ダンジョンで、主に三~四人くらいの冒険者が揃わなければ絶対に踏破できないのだ。

 そこで協力者の条件として重要になってくるのは当然ながら戦闘力。ほぼ同じレベルとは言わないし、見劣っていてもいい。ダンジョン内のモンスターとの戦いに付いて来れるだけの力があればいいのだが、それでもやっぱり高い方が良いじゃん?

 だからこうして今までのお礼に多人数用ダンジョン踏破に付き合ってくれるという千堂と百瀬の戦闘力を上げることは、俺たちにとっても大きな利になるわけだ。


「さて、それじゃあお二人のスキルカードを見せてもらっても良いっすかね?」

「はい、これ」


 自身から取り出したスキルカードをそれぞれ見せてもらう。


 ―――――――――――――――――――――――――

 名前:百瀬瑠衣

 天職:魔術師

 戦闘力:212

【スキル一覧】

 ・インターバル短縮(魔)

 ・恐怖耐性

 ・相乗の絆

 ・詠唱

 ・キュア

 ・炎弾

 ・風刃

 ・コサックダンス

 ――――――――――――――――――――――――― 


 ―――――――――――――――――――――――――

 名前:千堂沙月

 天職:槍使い

 戦闘力:223

【スキル一覧】

 ・インターバル短縮(武)

 ・恐怖耐性

 ・相乗の絆

 ・槍術

 ・三連突き

 ・氷塵薙ぎ

 ・二段ジャンプ

 ・リンボーダンス

 ――――――――――――――――――――――――― 


 ……ツッコまんぞ。吉備ダンジョンではしょーもないスキルオーブが出ることもあるってことは知ってるし、そこを周回して戦闘力を上げてたなら二人の最後のスキルに関しても手にする経緯が想像できるから、ツッコまんぞ。

 ていうか、吉備ダンジョンしか行ったことないっていうのに、この有用性スキルの多さ……。しかも薙ぎ払いと共に冷気を放てる【氷塵薙ぎ】に、攻撃魔法スキルである【炎弾】って、最初っから覚えてるスキルだよな? これが一般職の基本スペックか……アイテムマスターとはえらい違いだ、泣けてくる。


「この【相乗の絆】って、何すか?」

「あぁ、これはギルドのくじ引きで偶然手に入れた、二つ一組のスキルオーブだったんだけど、瑠衣が三等当てちゃってね」


 マジかよ。あれで当たり引いたの?

 ギルドとかには年に何回か冒険に役立つアイテムやスキルオーブ、魔法の武器を景品にしたくじ引きが開催されることがあるんだけど、中々当たりが出ないことから実は中身は全部ハズレなんじゃないかという噂が立っていたんだけど……。


「この子、昔っから運が良いのよ」

「えへへへ……」

(羨ましい……)

(ユースケ、三十回くらい回して全部ティッシュでしたもんね)

 

 貯めまくったくじ引き券が全てポケットティッシュに代わることほど哀しいことはない。課金系のスマホゲームとか普段しない口だけど、あの時ばかりはガチャ爆死という言葉の意味を痛感した。


「で、このスキルの効果は、同じスキルの持ち主が近くにいる時、お互いの戦闘力が1.5倍になるのよ」

「マジっすか」


 コンビ組んで戦う分には間違いなく一線級のスキルだ。事実上、二人のステータスは300を超えていることになる。

 俺たちみたいに取得経験値が二倍になるわけでもないこの二人が、思ったよりも早くに吉備ダンジョンを攻略してたことに首を傾げた事もあったけど、このスキルがあったからなんだな。 


「そう言えば、カズサちゃんって今どのくらいの戦闘力なの?」

「ギガントモンスターまで倒しちゃったっていうし、最後に見た時よりずっと強くなったんじゃないかしら?」


 余談だが、今後協力してもらう事も増えるであろう二人には、既にカズサの正体とかと一緒に名前も伝えている。勿論、口外しないことを条件にな。


「アタシ? 今はこんな感じっす」

 

 これから協力してやっていく身だ。こちらのスキルカードも提示した方が良いだろうと判断し、俺はボタンを押して二人にカズサのスキルカードを見せてやった。


 ―――――――――――――――――――――――――

 名前:カズサ

 天職:木偶人形

 戦闘力:15876

【スキル一覧】

 ・全スキル習得可能

 ・ゲージシステム

 ・不壊の担い手

 ・空中殺法

 ・毒無効

 ・ノックバックカウンター

 ・ミラージュステップ

 ・木偶同調

 ・三段ジャンプ

 ・コスチュームチェンジ

 ・会心の瞳

 ・リカバリー

 ・ブースト

 ―――――――――――――――――――――――――


 ギガントモンスターの討伐後も花橋ダンジョンで戦闘力を上げまくり、ギガントモンスターのスキルカードを取り込む事で戦闘力が激増。比較的弱いギガントモンスターなら真っ向勝負で勝てるまでに至った。

 ちなみに、ギガントモンスターのスキルカードを取り込む瞬間は投稿用の動画に既に組み込んでいたりする。

 

「えぇ!? もうこんなに高く!?」

「話には聞いていたけど……まさか九々津くんの【アイテム強化】がここまでの影響を与えていたなんてね」

「ふっふっふっ」

 

 ドヤ顔を浮かべるカズサだが、実を言うと俺も内部空間で同じくドヤ顔を浮かべていたりする。

 ハッキリ言おう……俺とカズサは、戦闘力だけなら既にランカーの最低水準を満たしている。後は実績や知名度さえ上げてしまえば、俺たちは晴れて世界トップ100に入る大人気冒険者なのだ。


「それじゃあ、早速行って来るっす」

「お願いね。流石に今の私たちの戦闘力で花橋ダンジョンを進める気がしないから」


 今回の作戦はいたってシンプル……俺たちがラミア道場やボスモンスターから手にしたスキルカードやオーブを丸ごと二人に渡すという、寄生ハイエナプレイだ。

 戦闘力を上げるにはスキルカードを取り込む必要があるという冒険者の特性上、新人冒険者をこういうやり方で強くする指導方法が確立されている。

 伝手のある奴なら、冒険者になったその日の内に、ダンジョンに挑めるまでに戦闘力を上げることだってできるのだ。


(まぁ、実戦経験もちゃんと積まないとなんだけどな)

(戦闘力と実際の強さがチグハグな冒険者も多いらしいっすからね)


 戦闘力も高く、強いスキルも備えているはずなのに、立ち回りが未熟とかになったりな。そういう奴は何かと危険だから、戦闘力が上がっても実戦経験というのは大事だと思う。


「それじゃあ、催涙爆弾買ってくれました?」

「うんっ。流石にこれくらいはこっちが出さないとだしね」


 千堂たちから大量の催涙爆弾を纏めて渡される。これが無いとラミア道場が成り立たないからな。

 ……ちなみに、ラミア道場のやり方を二人に教えた時、ちょっと引かれた。解せぬ。


「それじゃあ、行って来るっす!」


 その場で上に向かって跳躍し、二回目のジャンプで空中ダッシュするように前へ向かって跳ぶと、凄まじい速度と共にカズサの体はあっという間にラミアが潜む沼地付近まで運ばれていく。

 これが俺たちの新スキル、【ブースト】だ。

 元々は【クイック】という瞬間的な超加速が出来るスキルだったんだけど、強化されたことによって速度や効果時間が増したわけである。

 しかも【三段ジャンプ】との相性も良いし、スキルインターバルも二十秒と短めだ。


(それじゃあユースケ、何時もの行ってみましょうか!)


 そんなカズサの言葉と共に俺はコントローラーを操作し――――


(そぉいっ!)

『『『ギィイイイイイイイイイイイイッ!?』』』


 沼地が真っ赤になり、ラミアが泣きながら出てくるところを、傍らで三脚にセットされたビデオカメラでバッチリ撮影するのだった。

  


ご質問があったのでお答えします。


Q『万が一の時の為に、少しは自分自身の戦闘力を強化しないのか?

戦闘力を上げれば身体能力が上がるのだから、身体能力が上がれば当然、手先の器用さも上がるし、手や指を動かす速度も上がるよね。

という事は普通では不可能なコントローラー捌きが可能になり、結果的に戦闘が楽になると思うのだけど。それに判断力や賢さも上がるのなら、更に戦闘を優位に進める事が出来るよね。』

A『ちょっと難しい質問なんですけど、戦闘力の上昇=コントローラー捌きの上昇とは一概に言い切れないんですよね。戦闘力の上昇に伴って身体能力が上がりますが、それは主に膂力や脚力、体の耐久度であって、器用さや判断力、知力が上がるわけではないです。まして、関節があり得ない動きをするようになる訳でもないですからね。まぁ、指を動かす速さが上がるのは確かですし、何時までも戦闘力5のままでいるつもりもありませんから、現段階なら、そこらの雑魚モンスターのスキルカードを少しずつ取り込んでいけばいいかなって思います』


Q『歴代のアイテムマスター達は戦闘力を獲得する為の創意工夫や試行錯誤でどんな事をやってきたんだろうか?消費アイテムをギミックウェポンの一部として扱う事が可能なのか?とか』

A『戦いにおいては弱いだけであって、アイテムマスターは結構レアな天職です。その分、固有スキルの試行錯誤や創意工夫の幅が狭く、何より通常のやり方では新しいスキルを一切覚えないと判明してからは、もっぱら冒険者のサポート係でしたからね。まず戦闘力を獲得しようなんて言う奇特な者は殆どおらず、雄介以外は皆途中で諦めましたから、過去に実例はほぼありません。精々、普通の冒険者にスキルカードを恵んでもらうくらいです。あと、物にもよりますけど、消費アイテムをギミックウェポンとして活用することは出来ますね』


面白いと思っていただければ、お手数ですが下の☆☆☆☆☆から評価ポイントを入れて下されると幸いです。

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― 新着の感想 ―
コサックキック、リンボー回避!
[気になる点] 消費アイテム効果倍化って大儲けできるよねこれ
[良い点] タイトル!です [一言] 模範?的ざまぁwwwwで面白いです! 毎回のタイトルをとても楽しんで読ませてもらっています! からだに気をつけて毎分投稿に勤しんでください!()
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