作者の母校はマジでこんなんだった
先日お話ししたとおり、諸事情により明日の投稿はお休みさせていただきます。皆様には心よりお詫び申し上げます
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
「お前ら……何時の間にそんな仲良く……」
「は? 何でもいいじゃん。変な詮索しないでくれる?」
先ほどとは一転して辛辣な態度をとる愚妹。
これは一体どういうことだ? いつの間にか妹とカズサが実の姉妹のよう仲良くなってやがるぞ。羨ましいとかそんなことは決してないんだが……この釈然としない気持ちはなんだろう?
コイツ……反抗期に突入した途端に俺の事をゴミを見るような目を向けるようになったくせに。
「いや、アタシは普通にしてたつもりなんすけどね。なんか仲良くなっちゃいまして」
「えへへ……私、実は兄貴じゃなくてお姉ちゃんが欲しかったんだよね」
なんて事だ。住み始めて三日くらいはお互いに距離感が掴めずにいたはずなのに、気が付けばカズサは兄である俺より妹と仲良くなってやがる。
俺が数年間埋められなかった妹との溝を数日で埋めてくるとは……カズサ、恐ろしい子……!
「カズ姉はお兄なんかと違って気配り上手だし、デリカシーもあるし、お姉ちゃんが居たらこうだったのかなって」
「どういう意味だこの愚妹」
「だってお兄って何時もトイレの蓋を開けっぱなしにしてるし、私が淹れたお風呂に私を差し置いて真っ先に入るし」
「何おう!? そういうお前こそ俺の事を汚物みたいに扱いやがって!! 知ってんだぞ、お前が俺が入った後の湯船から湯抜いてることくらい! 俺は思春期の娘を持ったオッサンか!?」
「それだけじゃない! 私の服と自分の服を一緒に洗おうとするし! お兄ってエッチなマンガいっぱい買ってるっぽいし、私の服見て変な気を起こしたりしてないでしょうね!?」
「はぁー!? 自意識過剰すぎるんじゃないですかねぇ!? 俺だってエロい目で見る相手くらい選ぶっつーの! 何が悲しくて貧相なスタイルの妹なんぞに欲情せにゃならん!?」
「言っちゃいけない事を言ったわねこのクソ兄貴! もう怒った! ぶっ殺してやる!!」
「上等だよこのクソ妹! 今日という今日は兄に勝てる妹など存在しねぇことをその身に刻み込んでやる!」
「はいはい、喧嘩しない」
臨戦態勢を取る俺と美波の間にカズサが割って入る。
「今は料理中なんでね。台所で暴れたら危ないっすよ」
「「あ、ごめん」」
そう言われて俺と美波は冷静さを取り戻す。普段は簡単な料理ばかりが作られる台所では、出汁から作る味噌汁やら、ふっくらした卵焼きやら、香ばしい焼き鮭やらがカズサとお袋の手によって手際よく作り出されていた。
「ママさん、卵焼き出来上がりましたよ」
「まぁ上手! 今すぐ我が家のお嫁に来てもいいのよ?」
「あっはははは。考えておくっす」
これまたやけに仲良さげな様子のカズサたち。そこにスーツに着替えた親父がリビングにやってきた。
「今日も良い匂いだねぇ。二人とも、毎朝ありがとう」
「おはよーです、パパさん! ママさん、仕上げはアタシがやっとくんで、パパさんにお茶入れてあげてください」
「ありがとう、カズサちゃん。後はお願いね」
親父は朝になると、お袋が淹れた熱いお茶を飲む習慣がある。それを見越したカズサがサラリとお袋をフォローしていた。
カズサが正式に九々津家の住人になってからしばらく……すっかりこの家に馴染んでいる。ただ住まわせてもらうだけじゃ申し訳ないと家事も率先してやってくれるし、俺も美波もカズサが作る食事に胃袋を掴まれた気分だ。
「ていうか、何で料理までできるの?」
「え? ……さぁ? なんか出来るんですよね。レシピさえあれば、大抵の物は作れると思います」
俺が使用する以前の記憶が殆どないこの木偶人形は、不思議な事に色々な知識がある。少なくとも俺の部屋やスマホ、本から得た知識じゃない事まで。その中に家事全般が含まれていたのだ。しかもやたらと上手い。
そんな訳で、何故か料理洗濯掃除まで出来る高性能なアイテムは、既に我が家になくてはならない存在と化していた。
「それじゃあ手を合わせて、いただきます」
『『『いただきまーす』』』
お袋の号令と共に朝食にありつく九々津家一同とカズサ。両親が不在の時は別々に食事を摂ってるけど、逆にお袋か親父がいる時は普通に家族団欒の食事をしていたりする。俺と美波は相容れないが、一緒に飯も食えないほど険悪でもないのだ。
「ん! 今日も美味しー! やっぱり日本人の朝はこうじゃないとねぇ」
「今日のお味噌汁、カズサちゃんが一から作ってくれたのよ。美波もインスタントばかりじゃなくて、少しは凝った手料理でも作れるようにならないとねぇ。将来男の胃袋を掴めないわよ?」
「う……い、痛いところを。……カズ姉、今度料理教えてくれない? 私、あんまり得意じゃないから……」
「いいっすよー。それじゃあ、今日の晩御飯は一緒に作りましょうか」
女性陣の談笑を耳にしながら、俺は対面に座る親父に話しかける。
「なぁ、親父とお袋ってまた東京に戻るんだろ?」
「そうだね。本部の厚意でしばらくこっちに帰ってたけど、そろそろ出張に戻らないとね。それがどうかしたのかい?」
「その前に聞いときたいんだけどさ、カズサが学校に通う事になったって言ってんだけど、マジ?」
「うん。このことはカズサさんにも了承を得ていてね……出来れば雄介には、彼女の学校生活をサポートしてほしいんだ」
「それは良いんだけど、何でまたカズサが高校に通う事になったんだ? あいつは殆ど人間みたいな感じだけど、アイテムで戸籍もないぞ」
学力然り、入学手続き然り、普通の人間とは色々と違うカズサがただ学校に入学するにしても色んな障害があるはずだ。
「これは国と冒険者ギルドの意向でね。……雄介はテイムシールというものを知ってるかな?」
「モンスターを使役することができるアイテムだろ?」
推奨戦闘力が高いダンジョンには、極稀にモンスターを使役して一緒に戦ったり、採取の手伝いをさせたりすることができる、札型のレアなアイテムが入った宝箱が出現することがあって、俺もいつか絶対に手に入れようと思っていたものだからよく知っている。
「モンスターはテイムシールによって人間への害意が無くなるんだけど、ここ数年間でサキュバスといった人間に近い姿をしたモンスターを使役する冒険者も増えていてね。そう言ったモンスターたちが人間社会に馴染めるかどうかを、各方面に協力を仰いで世界各地で実験しているんだ」
モンスターの中には可愛らしい小動物のような姿をしているものから、そこらのアイドルよりも美人な人型モンスターも多く存在している。流石に大型モンスターを地球で召喚することは禁止されてるけど、小型や人型モンスターは、使役している冒険者によって地球でも活動させるのは合法なのだ。
その背景には、国際連盟は冒険者ギルドを通じて、異世界に生まれたモンスターたちがどれだけ人間社会に馴染めるのか、その実験をしているという事情があるらしい。
「テイムシールは多くの冒険者が憧れる人気アイテムだからね。手に入るダンジョンの情報が拡散している今、これからどんどん地球で活動するモンスターも増えるだろう。地球でも被害が及んでいるだけにモンスターに対する厳しい視線も存在するけど、それと同時に大きな戦力でもあるしね」
親父の言わんとしていることが何となく理解できた。これからどんどん増えるであろうモンスターが問題を起こさないか、そして問題を起こさないための対処方法を今の内に知っておきたいという事か。
「カズサさんはモンスターではないけど、同じ異世界の産物だ。彼女の事を各方面に説明した時、一般人に異世界の存在を触れさせるためにも、この実験に協力させることはできないかと通達があってね。カズサさんは乗り気だったけど、最終的な決定権は雄介に委ねると、そう言っていたよ。入学手続きといった諸々の問題は、国を通して全て解決するしね」
「まぁ、アイツが通ってみたいって言うなら、俺もそれで良いと思うけど」
カズサが学校に通っている俺や美波を少し羨ましそうに見ていることは知っていた。カズサが望んで学校に行きたいというのなら、俺としてはそれを叶えてやりたい。
「それに学力面に関しては、雄介の学校なら問題ないし」
「確かに」
うちの学校、間宮高等学園は成績不振者への救済措置というものがあって、テストが全部赤点でも補習無しで進級できる。
不良や成績が悪い学生向けの学校で、入学試験の時に申請すれば学力テスト免除で作文と面接だけで入学できるし、入学すれば問題を起こさず、授業はサボらずに板書が書かれたノートを提出すれば問題ない。要は高校卒業資格はやるから真面目に学校生活を送れってことだ。
「かく言う俺も、冒険者業を視野に入れてこの学校に入ったからな。おかげでテストなんて全部赤点だったぜ」
「うん、胸を張って言う事じゃないよね」
もちろん、成績が悪ければ大学への推薦状なんて書いてもらえないわけだが……そこはもう気にしてはいない。
高校を卒業したら、カズサと一緒に冒険者業に専念するつもりだからな。
ご質問があったのでお答えします。
Q『戦闘力5で育成する意味がない理由がよくわからないのですが、仮にパワーレベリングして(上昇率鈍いと仮定しても)戦闘力10になったら単純に今の単純に2倍の強さか2倍近くの補正はかかりますよね?日常生活に補正が入るなら、しかもダンジョン外で被害を受けるケースがあるなら尚更、(楽に上げられる範囲では)やらない理由がないような。
アイテムマスターなのに人形での戦闘しか考慮しないとか、人形に入るまでのタイムラグとか一時的にでも使用できなくなるケースを全く想定してない状況って、何らかの洗脳受けてる状態だったりするんでしょうか』
A『少々誤解されているようですが、初期戦闘力が5だから戦闘力を上げないのではなく、初期スキル以外のスキルを一切覚えられないから、雄介の戦闘力を上げる優先順位が低いんです。たった1の戦闘力が命運を分けかねないですし、日常生活での利便性などを捨ておいてでも主力である木偶人形を徹底強化したいという考えですね。【木偶同調】のタイムラグも事前に発動しておくことで解決できますし。雄介にとってアイテムが使えなくなるのは死亡と同義ですが……その辺りはまぁ、どうとでもします。ちなみに洗脳とかそういうのはありません』
Q『このままいくとタイトル変更になりませんかね~。結局、妹寝取られてるやん!』
A『質問を返すようで大変恐縮なのですが……なぜタイトル変更になりかねないのでしょうか? ちなみに、寝取られに分類されるほど雄介と美波の仲は良くないです』
Q『不正云々はまあ政治力で如何とでもするんだろうけども、本人の物理的自衛力が無いのでは詰む場面が絶対に発生しないとは言えないんじゃ?
んな訳で耐性や反応系と知識や警戒系の各種スキルオーブ、更にはスキルカードも幾つか本人に使った方が比較的安全じゃないかな?と』
A『確かにその方が安全にも見えますが、スキルカードを宿した人間は、非常時において戦力の一つとして数えられ、否応が無く戦いに駆り出されることがあるので、どっちの方が安全とは一概に言えないんです。オーブもスキルカードを宿した人間以外には使えないですしね』
Q『折角アイテムボックスがあんのに所謂ぶんどる系のスキルやアイテム回収系スキルのは無いん?』
A『あるにはありますが、欲しいスキルを狙ってとるのってほぼ不可能ですからね。特にぶんどる系……アイテムや装備品を盗むといったスキルは激レア枠ですし。いつか登場させたいとは思いますけどね』
Q『恋人ムーヴをまわりに見せつけちゃったから、動画投稿で人形だとばらすと、人形に恋人のふりさせてる痛い奴扱いされちゃうからどーすんだろ』
A『それは考えてなかったです(笑)。恋人だと明言していないってことで、何とか弁明の余地はありませんか?』
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