戦闘力たったの5……ゴミめ
まず土下座でお詫びします。まさか僕としたことが寝落ちをしてしまうなんて……! 次はちゃんと宣言通りの時刻に投稿するようにするので、なにとぞ……なにとぞご容赦を……!
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
モンスターバスターという、世界中で大人気のゲームがある。
プレイヤーはモンスターを倒す冒険者になって、モンスターを倒し、剥ぎ取った素材で強い武器や防具を作っていくというアクションゲームだ。第一作目からヒットしてシリーズ化を重ね、家庭用ゲーム機から携帯ゲーム機、更にはPC版まで販売され、実際に冒険者になる気概がない人でも、疑似的にモンスターと戦えるというものだ。
「クエストクリアー!」
『おっつー』
『乙ー』
パソコンに接続されたコントローラーを軽く放り出し、【QUESTCLEAR】と記された画面を、通信機能によって送られてくる二村と八谷の声を聞きながら感慨深く眺める。
このゲームには二人と遊んだ思い出が詰まっていると言っても過言ではないし、名作だけに飽きることが無い。でもしばらくの間、このゲームを起動することが無いと思うとどこか寂しくもあった。
『明日から本格的に冒険者として活動するんだよね』
「あぁ。頑張ってくるよ」
『九々津氏がログインしないとモンバス環境も寂しくなるけど、頑張れ。怪我にだけは本当に注意してね』
『今こそ、反逆のカウントダウンを刻む時! 九々津殿を裏切ったビッチを悔しがらせ、後悔させてやるのです!』
今日この日まで、この二人には冒険者を始まる前の事前情報の点で色々と助けられた。登録に必要な物、新人が一番初めに行くべき場所とか、買うべき物とか、そういった情報を率先して調べて教えてくれた。
本当に感謝しかない。心配しながらも送り出してくれた二人には、ちゃんと報いなきゃな。
「それじゃあ、俺はもう寝るよ。明日の夜にでも異世界の事とか、色々LINE送る」
『『健闘を祈る!』』
俺は友人二人の応援を聞きながらログアウトし、パソコンの電源を落とし、明日に備えて早めに就寝する。
これが、運命の日の前夜のことだった。
=====
時は少し進んで春休み。冒険者になる為に両親を説得し、春休みが突入するまでに一週間の講習を終えて、俺は綺麗な外見をした大きな建物の前まで来ていた。
冒険者ギルド第十七日本支部。元々は屋内駐車場を含めて地下一階から地上4階にまである大型ショッピングセンターだった場所だが、青果コーナーの一角が突如異世界へのゲートに変貌。冒険者ギルド本部が建物ごと買い取り、ギルド支部として改装した。
今では冒険に必要な道具や携帯食料、異世界から持ち帰られた資源や道具を中心に売られていている建物の正面出入口から入ってすぐのところにある、総合受付に俺は向かう。
「すみません、冒険者登録をしたいんですけど」
「かしこまりました。こちらのボタンを押して整理券を取り出して、少々お待ちください」
職員のおばさんが手で受付カウンターの上にある小さな機械を示す。説明を軽く聞きながらボタンを押すと整理券が出てきてそれを取り、待つこと十数分。俺が持つ整理券の番号が呼ばれたので、登録窓口と呼ばれるところに向かうと、そこには既に中年の事務員が待ち構えていた。
「お待たせしました。今回は冒険者にご登録という事ですね」
「あ、はい」
「ご登録、ありがとうございます。それでは早速ご説明に移らせていただきますが、まずこちらに住所や御氏名、登録者本人の連絡先や、緊急時の連絡先などを書いてください」
俺は言われたとおりに差し出された書類の欄を埋めていく。他にも持病の有無の確認や、住民票やマイナンバーの提出とか、死亡誓約書とか、色んな書類に証明書が俺と事務員の間で行き交う。
アニメや漫画とかだと、冒険者は金さえ払えばなれるみたいな風潮があるけど、実際は書類とか色々書かないとならない。
まぁ、現実なんてこんなもんだ。幾ら条件が緩いとは言っても、その辺りはしっかりしとかないと無用なトラブルとか起こるしな。
「それではこちらがスキルカードとなります。受け取り料金として三十万円となりますが……」
「はい、あります」
「…………確認しました。それではこちらをどうぞ」
こうして貯金の大半を支払って渡されたのは、一見すると何も書かれていない、金属みたいな感触をした銀色のカードだ。それと一緒に、1cmも無さそうな小さな刃が付いた道具を渡される。
「そのカードをご自身の血で少し濡らせば、カードは九々津様の体内へ取り込まれ、魔力とスキルが発現されます。一応、注射器から血を吸いだすことも可能ですが……」
「あ、大丈夫です」
俺は刃で腕のところを少し切り、滲んだ血にカードを擦り付けると、カードは光を放ちながら俺の体の中へと吸い込まれる。アルコールで濡れたガーゼを事務員から受け取って傷口に押し当てながら、俺は説明の続きを聞くことにした。
「これに強く念じることで何時でもカードを確認出来ます。魔力とスキルが発現しましたが、スキル内容は天職によって異なることはご存じでしょうか?」
「知ってます。その辺りは結構予習してきましたし」
スキルカードを宿したからと言って、万人が同じ強さを手に入れられるわけではない。カードを宿すと同時に、冒険者にはそれぞれ天職と呼ばれる性質が与えられるのだが、それによって手に入れられるスキルは大きく異なってくる。
例えば剣士の天職を与えられた冒険者には身体能力を強化するスキルや、斬撃を飛ばすスキルを。
魔術師の天職を与えられた冒険者には火球や電撃を放つ魔法系スキルや、魔法を強化するスキルを。
珍しい天職や、そうでない天職もあるので十人十色とまでは言わないが、個人差によって結構違いが出てくる。
「そして厄介なことに、天職って後から変更できないんですよね?」
これは天職の決定要因がスキルカードではなく、冒険者に依存しているからだ。カードという外部がどれだけ調整されても、冒険者という内部を変えなければ意味がない。そして、現状天職を変えることのできる道具とかも一切見つかっていないのだとか。
「そうですね……スキルカードを宿して、初めて取り出す時が、冒険者として成功を収めることができるかどうかの分水嶺でしょう」
ソーシャルゲームで例えるなら、一回しかできないガチャを引くようなものだ。その後どれだけ課金しようと二度と引けない鬼畜仕様。
しかも天職っていうのはピンからキリまであって、中には登録したその日に冒険者を引退するという事例まであるくらいだ。一体どんな酷い天職だったのか、調べるのも怖い。
「すー……はぁー……」
そんな俺の今後を左右する、初めてのカード取り出しというガチャを今から引く。
俺は何度も何度も深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、祈るような気持ちで体の内側からスキルカードを取り出し、恐る恐るカードの内容を確認した。
―――――――――――――――――――――――――
名前:九々津雄介
天職:アイテムマスター
戦闘力:5
【スキル一覧】
・アイテム使用動作キャンセル
・アイテム強化
・アイテム調合
・鑑定眼
・アイテムボックス
―――――――――――――――――――――――――
「…………アイテム、マスター……?」
…………落ち着け。冷静になれ。これは何かの見間違いだ。
そう自分に言い聞かせて、俺は何度も眼を擦ってからもう一度スキルカードを確認する。
するとほら……天職の欄にはしっかりと……アイテムマスターって書かれてやがる。
「あ……その、何というか……御気の毒に……」
事務員の人が凄く言い難そうに同情の言葉をかけてくる。ぶっちゃけた話、俺の天職は同情されてもおかしくない、正真正銘の有名なハズレ職だった。
このアイテムマスターという天職が、冒険者としてはどれだけクソなのかを説明したい。
第一のクソポイントとして、アイテムマスターは最初期の五つ以外のスキルを習得できないのだ。攻撃系のスキルはおろか、戦闘力を補助するスキルすら覚えない。つまり、まともに戦えないという事だ。
これだけでもかなりのクソっぷりだが、第二のクソポイントが【アイテム強化】のスキル。
これは名前の通り、アイテムの効力を上げるスキルだ。各種ポーションの効力や、攻撃アイテムの威力、罠アイテムの拘束時間を上げると、ここまで聞けば良スキルに聞こえるかもしれないけど、何とこのスキルの効果は自分にしか適用されない。
例えば俺が安物ポーションを自分に使う分にはスキルの効果が適用されて、普通の安物ポーションよりも強い効力を発揮するけど、俺が安物ポーションを他人に使う分には効果が無い。名前だけ見ると味方のサポートでもできるかと思えば、サポートできるのは戦闘において役に立たない自分だけというクソっぷり。
なら攻撃アイテムを用意してモンスターを狩れば良いと思われるかもしれないけど、そもそも攻撃アイテムって言うのは基本的にどれも高額でコストがかかる。弱いモンスターが落とす魔石と攻撃アイテム一個なら後者の方が高いし、強いモンスターが相手ともなればそれこそ山のように用意しなくちゃならない。
このやり方だと当然赤字になる。金銭面で余裕があるのなら動画のネタとしてアリだけど、新米冒険者にそんなことが出来る財産があるわけもなく……俺の知る限りじゃ、アイテムマスターが冒険者として活動出来ている例は存在しない。
そして第三のクソポイント。スキルカードには戦闘力という項目があって、これはその名の通り冒険者の素の戦闘能力を数値化したものなんだけど、アイテムマスターの初期戦闘力はとにかく低いのだ。
スキルカードを取り込んだ人間は身体能力が大幅に上がる。これは天職の力によるもので、普通の天職なら25とかあるのに、アイテムマスターの戦闘力たった5。これは一般人と同じ戦闘力と言われている、冒険者としてはまさにゴミのような数字だ。
有体に言えば、魔術師などの後衛職ではなく、命の危険のない後方支援でこそ輝く天職で、人気を集められる冒険者にはなれない……それが、俺が一生付き合っていくことになる天職だった。
「マジかよ……」
アイテムマスターになってしまった冒険者は、九割以上異世界には出ずにギルドの職員になって、冒険者たちが持ち帰る資源を調合し、アイテムを作り出す仕事をするという。
俺の頭に一瞬、それでもいいかという考えが過った。戦えこそしないけど立派な技能だし、ギルドに就職する時は優遇してくれる。将来への不安が無くなったと考えれば悪くはない選択肢――――
――――ユースケ
そこまで考えて、俺の頭に誰かの声と、「やっぱり雄介なんてそんなもんよね」って言う薫の馬鹿にするような嘲笑が浮かんだ。
ヤバい。何か滅茶苦茶ムカついてきた。この結果に納得して、何ありふれた顛末に妥協しようとしてんだよ、俺……!
「すみません、ありがとうございました。じゃあ、俺はこれで」
「はい。また何か御用がありましたらお越しください」
俺は受付を後にして、その足で道具売り場へと向かう。
あの事務員は、俺が冒険者ではなく、アイテムマスターとしての能力が活かせる裏方仕事を紹介してほしいと言ってくるに違いないとか、そういうことを思っているんだろう。
でも俺にそんなつもりは一切ない。大金払ってすごすご引き下がるのも納得できないし、妥協して逃げ出すのは格好が付かないし、何もせずに諦めるなんて以ての外…………まずはやるだけやってみようと思う。話はそこからだ。
「史上初、アイテムマスターで活躍する有名冒険者……良いじゃんか」
なんか話題を呼びそうなその言葉を口にすると、不思議と胸の内側から勇気が湧き上がってきた。
有難いことに、三件のご質問があったのでお答えしていきます。
Q、「妹って伏線ですか? 陽キャの餌食になるフラグ?」
A、「先の展開に関するネタバレになりかねないので深くは答えられませんが……発言から見て分かる通り、言うほど仲の良い兄妹じゃないので、余程のことが無いと妹が誰と付き合ったところで……ねぇ?」
Q、「異世界に通じるというあらすじが、ダンジョンを指しているわけではなさそうなので、場合によっては異世界転移になる? ならない?」
A、「ならない方向でお願いします」
Q、「あとオタ二人いい奴らじゃねーか…意外と名バイプレイヤーになったり?」
A、「今のところ構想は考えていませんが、そうなるようにしたいとだけ言っておきましょう」
面白いと思っていただければ、お手数ですが下の☆☆☆☆☆から評価ポイントを入れて下されると幸いです。