タグのハーレムが主人公に適用されるなんて、何時から勘違いしていた?
諸事情あって、明日か明後日の投稿はお休みさせていただきます。楽しみにしていただいている読者様には、心よりお詫びします
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
俺とカズサがギガントモンスターを倒し、異世界から地球に戻ってきた時の話を軽く説明しよう。
基本的に異世界へのゲートは厳重に閉ざされていて、スキルカードを提示できる冒険者だけが通ることができる。だから俺は面倒な説明を避けるために、地球に戻ったらすぐに【木偶同調】を解除して、カズサに【アイテムボックス】に入ってもらうんだが……極限状態が続いた激戦後の朦朧とした頭だったのが災いして、【木偶同調】を解除しないまま地球に戻り、ギガントモンスターの討伐部隊やギルドの職員と鉢合わせてしまったのだ。
当然の如く身分証明が求められるが、ギルドに正式な登録がされていないカズサは拘束される可能性が高い。
事情を説明すれば問題無かったのかもしれないと後で反省したんだが、深夜テンションみたいな感じで頭がおかしくなってたこの時の俺は、「動画投稿前にカズサの正体をネタバレしたくない」という考えに囚われてしまい、カズサの口を介してギルド職員にこんな事を言った。
「東京本部に単身赴任に行ってる九々津支部長を呼んでください! その人の子供ですから!」
この冒険者ギルド第十七支部の最高権力者……すなわち、非常に頼りになるパパを召喚したのである。
=====
息子の俺が言うのもなんだけど、親父は結構なお偉いさんだ。地元のギルドの支部長で、冒険者ギルド全体でも結構な影響力がある役員の一人。海外出張とかで重役会議に参加することもしばしばあるのだとか。
そんな人物の子供だと言うことで、職員も首を傾げながらも連絡してくれたらしく、親父は単身赴任先から激レアな空間転移系のアイテムで東京からお袋を伴って、一瞬で地元に戻ってきてくれ、とりあえずカズサの事は支部長が預かるという事でその場は纏まったのだった。
「さて……」
そして話し合いの場は我が家のリビングに。テーブルに父である九々津修一と母の燈子、妹の美波に俺、そしてカズサを交えた第五十四回九々津家緊急家族会議が開かれる。
「こうしてこの会議が開かれるのは何時振りだったかな? 前回の議題は確か……僕のシュークリームを勝手に食べた犯人捜しの時だったか……」
「それお袋が賞味期限が完全に過ぎてて腐ってたのを捨てただけっていうオチが付いた奴だよな」
大分古いのを放置してたのを忘れて、親父が一人で勝手に大騒ぎした奴だ。会議開始十秒で解決した。
「あの時は僕の胃袋を守ってくれてありがとう、母さん」
「何を言っているのよ、貴方を支えるのなんて当たり前の事じゃない、お父さん」
「……ハニー」
「ハニーって」
なんか二人の世界に入りかけてる親父とお袋に砂糖を吐きそうになるのを何とか堪える。俺と美波と違い、二人の夫婦仲が良好なのは結構な事だが、それを見せつけられるこっちの身にもなってほしい。
「それより、本題に移らないの?」
「おっと、そうだったね。職員からは断片的に色々と聞いたけど、改めて雄介の口から聞かせてもらっても良いかな? そちらのお嬢さんの事も含めてね」
柔和な表情が特徴的な親父と、何時も笑顔なお袋は目で嘘は吐かないようにと訴えかけてくる。当然俺が嘘を吐く理由もないので、カズサの正体や力の事を含めて、これまで起こったことの全てを正直に話した。
「なるほどなるほど。雄介、ちょっとこっち」
「ん? 何?」
お袋に手招きされて歩み寄ると、お袋は笑顔のまま俺の両頬を抓り上げてきた。
「お父さんもお母さんも、雄介がアイテムマスターなのに異世界に行ったことなんて知らなかったんだけどなぁ。普通に戦える天職になることを前提に冒険者業を許可したつもりだったんだけど」
「いははははははは!? ギフ! ギフ!」
顔は笑顔なのに声と目が怖い! やめて! もう俺のほっぺの伸縮力はゼロよ!
「まぁ、過ぎた事を言っても仕方ないし、今はこの子のおかげで活躍できてるみたいだしね。……えぇっと、カズサちゃんだったかしら?」
「あ、はい」
「雄介の事を助けてくれてありがとうね。これからもこの子の事、よろしくお願いします」
「いえいえ、お気になさらず。アタシも好きでユースケと戦ってるんで」
この許してもらえたムードの中でも、俺のほっぺをグイグイ引っ張り続けるお袋。あの……心配かけたことは本当に悪いと思ってるんで、いい加減放してもらえませんかね?
「いいの、お母さん? だってあのハズレで有名なアイテムマスターだよ? あのお兄だよ? 冒険者、辞めさせた方が良いんじゃない?」
「ふぃなふぃへめぇ! ほーひうひみふぁふぉあ!」
「勿論親としては心配だけど、現にこの子たちはギガントモンスターを倒すだけの力を手にしたみたいだし……ギルドの人間としての見解を交えて言わせてもらえば、自衛の術を持っていてほしくもあるしね」
ゲートは、今なお増え続けている。地球にモンスターが現れることもあるし、好景気でも平和とは言い切れないのが今の世の中だ。
それ関連で一番大きな事件は、つい三年前にも起こっている。突如某県の街中に出現したゲートから多数のモンスターを始め、ギガントモンスターまでもが現れ、その街に居た人々の六割以上が死亡した事件は、この日本ではあまりに有名だ。
それを知っているからこそ、親父もお袋も俺に自衛の術を身につけて、美波と俺自身の命を守ってほしいと願っている。だからアイテムマスターでも、カズサという強大なアイテムを手にした俺に冒険者を止めろとは言い難いんだろう。
「とりあえず、カズサさんの事は公にしない方向でギルドに説明をしておくよ。ただカズサさんが〝雄介が所持するアイテム〟という事を証明しないといけないから、また明日ギルドに付き合ってもらう事になるけど」
「わはっは」
「さてと! 堅苦しい話も終わったし、カズサちゃんのお部屋も用意しないとね」
ようやく俺のほっぺを放したお袋の言葉に俺とカズサ、ついでに美波が目を見開く。
「部屋って……カズサの?」
「え? この人も一緒に住むってこと?」
「いやいや、そこまでお世話になれないっすよ。アタシ、基本的に【アイテムボックス】で寝起きしてますし」
それか俺の部屋でな。マンガ読みながら寝落ちすることもちょくちょくあるから、その度に俺は一階のソファで寝てるし。
「息子の恩人をもてなさないなんて親の名が廃るわ。どうせ部屋なら余ってるんだし、雄介と一緒に行動し続けるなら、いっそのこと正式にこの家に住んじゃいなさい……お父さんもそれでいいでしょう?」
「うん。アイテムといっても殆ど普通の人間と変わらないみたいだし、年頃の女の子が年頃の男の子と、毎日同じ場所で寝起きするのもね。正直、雄介が何が間違いを犯さないか少し不安だ」
でも、正直お袋の提案は助かる。ソファで寝ること自体はどうってことなかったんだけど、カズサって年頃の男の部屋で無防備に寝たりするから、十代童貞の精神衛生的にあんまりよろしくなかったんだよね。ぶっちゃけ寝込みを……と言う考えが頭を掠めなかったと言えば嘘になるし。この辺りを理解しているあたり、流石は親父というべきか。
……まぁ、戦闘力がゴミな俺がギガントモンスター潰せるスペックのカズサ相手にそんなことしたら捻り潰されるんだけどね。
「でも……ユースケと妹さんは良いんすか? いきなり同居人が出来るみたいな感じになっちゃうと思うんですけど……」
「親父とお袋が言うんならいいじゃないか?」
「……どっちみち、この家はお父さんとお母さんのだし、こんな兄貴でも家族を助けたのには変わらないしね」
さっきから「こんな」とか、「あの」といった枕詞の意味を、いい加減拳で問い質したくなってきたぞ。
「えっと……それじゃあお言葉に甘えまして」
そう言うとカズサは居住まいを正し、深々と頭を下げた。
「今日からこの家でお世話になるカズサっす! 九々津家の皆々様、不束者ですが何卒よろしくお願いします!」
=====
そんな事があって、カズサは正式に我が家の住人となった訳だが、実を言えば俺は少し不安があった。
美波の事である。反抗期なのか生来のものなのか、中々に気難しい年頃の妹が、突然現れた同居人をすんなり受け入れられるとは到底思えない。
なにせ全ての弟妹から尊敬の念を向けられるべき兄である俺ですら邪険にする愚妹である。
カズサはアレでもさっぱりとした気性だから大抵のことは気にしないし、自分から美波に突っかかるようなことはしないと思うけど、美波が心無い事を言ってカズサを傷付けるのだとすれば、彼女の相棒として放っては置けない。
「俺が一肌脱いで、二人の仲を取り持たないとな」
いくらクソ生意気でも妹だ。美波がカズサと仲が悪いなんてことになるのは、流石に悲しい。そうならないように俺が骨を折らないとな。
そんな覚悟をカズサが家に住み始めた夜にして、時が過ぎて現在。二年に進級し、一学期始業式の翌日。
「カーズ姉♡」
クソ生意気な妹が、兄である俺ですら見たことないくらい、カズサにデレていた。
ご質問があったのでお答えします。
Q『戸籍あんの?』
A『普通の戸籍はないです。学校に入るに至った経緯は、次話辺りにでもお答えしますね』
Q『木偶に戸籍偽造しちゃう御両親、何者?』
A『今回お話ししたとおり、冒険者ギルドの結構なお偉いさんですね。戸籍は捏造しなくても、ちゃんと国を通じて正規に作ることは出来ます。……まぁ、普通の戸籍は作ってませんけど』
Q『今後主人公が戦闘力を上げることってあるんでしょうか? 戦闘力5のままだと実績を上げても不正を疑われて面倒なことになりそうですが…』
A『戦闘力は上げる意味がないので上げません。ただまぁ、動画配信してどんどん有名になる予定ですから、その辺りの事は問題無くす予定ですよ、はい』
Q『普通のアイテムマスターは生産する事が多いが、スキル付き装備を作れるんだろうか』
A『強化槌という、装備品にスキルを付与するアイテムが既にありますからね。魔法の装備に関してはどうにもできませんが、消費アイテムとかなら材料があればその場で作れたりしますよ』
Q『トントン拍子で世界一の冒険者になれた件について~今更より戻してとか言われても断固拒否!~
とタイトルにあるから、いつ隠すのやめるんだろう』
A『動画投稿もありますし、そろそろ隠すの止めます』
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