アイテムマスターじゃなきゃ詰んでる系のアレコレ
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください
(攻撃すると同時に相手の体力? そういうのを吸い取るスキルなんすかね……?)
多分だけど、木偶人形の推察は正しい。キモウサギは舌で貫いた敵の養分を急速に吸い取り、自身を回復させるみたいなスキルも持っているんだろう。
モンスターを呼び出すスキルの本質は敵の邪魔をする為のものじゃない……雑魚モンスターというキモウサギにとっての回復アイテムを補充するためのスキルなんだ。
(アタシがチューチューされる心配はなさそうなのが、唯一の救いっすね)
木偶人形の言う通り、あの太い注射針のような構造的に相手の皮膚を突き破らないと体力が吸えないと思う。
【ゲージシステム】の力でダメージは受けても肉体の損傷を防ぐことができる木偶人形の体に突き刺せない以上、彼女から体力を吸い取るようなことはできないはずだ。
(それで……どっすか? このまま【炎柱】でキモウサをチマチマ削り切れそうですか?)
(無理)
そうこうしている内に、また近くにランイーターが出現してはキモウサギを見て逃げていっている。
その間隔は間違いなく【炎柱】のインターバルよりも大分早いし、さっきまで考えていた戦い方だとジリ貧にしかならねぇ。
(キモウサギの舌をちょん切るしかねぇ)
言うのは簡単だけど、容易な事じゃない。傷付ける手段があるとすれば【オーラブレード】だけど、デュアルモードだと威力不足、バスターモードだと速度不足で舌の動きについていけなさそうだ。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛‼」
「うぐっ!?」
ヤバい……! 考えながら操作してたせいか、また一撃食らわせちまった……!
(【リカバリー】だ!)
虎の子の回復スキルを使う。回復量はポーションと同程度で連続使用できないけど、アイテム消費量を抑えることくらいは出来る。
俺の思考を遮るように、かなりの速度で振り回される長い舌。隙の少ない中距離攻撃と回復が同時に出来るなんて、厄介なスキル持ちやがって……!
……覚悟を、決めるしかないらしい。
(まずは動きを止めなきゃ話にならない……リスクを取りに行くぞ!)
(あいあいさー!)
手をこまねいていたら確実にやられる……それを確信した俺は、右スティックで細かく視点を調整し、ホログラム画面に木偶人形とキモウサギ、舌の全体像が映るようにし、木偶人形をキモウサギの方に向けて走らせた。
伸縮自在に動く舌による中距離攻撃を得意とする奴に接近するのは容易じゃないけど、間合いに入ってしまえばどうにかできると、【アイテムボックス】の中身を思い返しての断行だ。
「ガァアアアアアアアアアアアアアアッ‼」
こっちの企みを本能で予感したのか、キモウサギの攻撃は更に苛烈なものになる。
無規則に、縦横無尽にのた打ち回る蛇のように蠢く舌が地面を砕く勢いで振り回され、その一撃一撃が全て木偶人形に狙いを定めていた。
「……こんのぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
砕け散る瓦礫がぶつかって体力ゲージが細かく削られながらも、木偶人形は咆哮を上げながら舌の直撃だけは掻い潜り、前へ前へと踏み出し続ける。
感覚としてはリズムゲームに近い。舌の全体像を遠目の視点から捉えている俺はある程度キモウサギの攻撃を予見することができる。それに合わせて、頭の中で回避方法をイメージしつつ、時に舌が鑢のように体に擦れて体力ゲージをガリガリと削りながらも、木偶人形をギリギリのところで避け続けさせた。
「グォオオオオオオッ‼」
あともう少しのところでこちらの間合いに入る……その瞬間、焦れたように叫んだキモウサギの舌が、木偶人形を背後から貫こうと迫ってきた。
その速度は木偶人形のスピードよりも断然速く、普通なら背中からの一撃をもろに食らうところなんだろうけど……木偶人形自身にはそれが見えなくても、彼女を操作する俺にはその攻撃が見えている。
(【爆雷】!)
キモウサギの本体と伸びて迂回するように迫ってくる舌先の中間……そこに来て全方位魔法攻撃スキルを発動させる。
木偶人形の全身から迸る眩い雷撃。決定打を与えるには程遠いけど、拡散された強い電流はほんの僅かの間だけ、キモウサギを硬直させることが出来た。
(今がチャンスです‼)
最後の一歩は力強く地面を踏みしめ、加速しながらキモウサギを間合いに捉え、□ボタンを二回だけ押す。
「ギィイイイイイイイイイッ!?」
悍ましい悲鳴を上げながら全身に電流が走り、体のみならず伸びきった舌全体を痙攣させるキモウサギ。その足元には、電撃罠が二つ設置されていた。
【アイテム強化】によって威力が増した罠による拘束……それも二つとなると、流石のギガントモンスターでも身動きを封じられたみたいで、俺は心の底から安堵した。正直、これで失敗したらお手上げだったからな……。
(時間が惜しいっす! ユースケ、急いで!)
そのまま高く跳躍し、【三段ジャンプ】の力でそのまま空中でもう一回ジャンプ。体を縦に半回転させ、頭を下にしたところで、上になった足裏で天上を蹴る要領で三回目のジャンプだ。
ガンブレードをバスターモードに変形させ、【オーラブレード】を発動。跳躍の勢いと重力加速によって凄まじい速度を叩き出しながら舌に向かって落ちる一撃は、まるで天空から射られた光の矢みたいだった。
「貫けぇえええええええええっ!!」
今の俺たちが出せる最も貫通力の高い一撃は舌先を見事に貫き、地面に縫い付けることが出来た……が、ここで電撃罠の効果が切れ、キモウサギの舌はまた動き出そうとする。
この程度の傷じゃあ、舌の動きを阻害するまでには至らなかったらしい。キモウサギのパワーを考えれば、深々と地面に突き刺さったガンブレードなんて簡単に抜けるだろう。
(でもな……そんな事は織り込み済みだぁ!!)
俺はL2ボタンを押し、マフラーに込められていた氷の力……【絶氷】を発動させた。
木偶人形の手からガンブレードに伝わる強大な冷気はキモウサギの舌を内部から凍てつかせ、壊死させる。ここまですれば流石に動かせなくなったらしく、俺はガンブレードをそのままに素手で木偶人形をキモウサギの眼前まで跳躍させた。
得物は舌の動きを止めるために置いてきたけど、俺はアイテムマスターだ。剣とか槍とか、そういうのだけが武器じゃない。
(ありったけを奴の口に投げ込めぇえ!!)
【アイテムボックス】にあったありったけ……二十個の壺爆弾をキモウサギの大きな口の中に全部投入し、更に魔符を五枚取り出す。
主に吉備ダンジョンで得た、下級の魔法スキルである【魔弾】を一回だけ使用できる使い捨てマジックアイテムだけど、当然スキルによって威力は強化されているし……何より、ここまで近づいたら目ん玉に外しようがねぇ!
((ふっ飛べぇええええええええええええっ!!))
俺と木偶人形が同時に叫ぶと同時に、魔符から撃ち出された魔力の弾丸が九つあるキモウサギの眼球を五つ貫き、口腔内で二十個の壺爆弾による大爆発が引き起こされ、鋭利な牙が無数飛び散った。
「あだっ!?」
爆風に吹き飛ばされて地面に叩きつけられる木偶人形。即座に受け身を取らせつつ跳躍させ、ガンブレードを握らせると、ドサッという重い音と共に根元から千切れた舌が血を吹きながら地面に落ちた。
(へっへっへっ。やったっすよ、ユースケ!)
あれだけの攻撃を食らえば、いくら頑丈な舌でも千切れるだろう。
まさに会心の手応え。キモウサギを倒したことを予感して高揚としながらガンブレードを引き抜くと、横たわった舌は光の粒子となって消えて……キモウサギは未だ倒れずにこちらを睨みつけていた。
(まだ死んでないのか!?)
(でもあの重傷っすよ!? これならきっと……!)
確かに、キモウサギの顔面は酷いものだった。口周りはグチャグチャになってるし、目玉も【魔弾】と爆発によって七つ潰れている。
もう回復も出来ない上に、主力である舌を失えば、残っているのは近接戦が苦手そうな短い四本足のデカいウサギだ。
止めを刺せていないだけで、勝てると確信した。単調な攻撃しか出来なくなったギガントモンスターなど、恐れるに足らないと。
……だから俺たちは、思わず失念していた。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ‼」
キモウサギには、まだ主力となり得るスキルが残っていたという事を。
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